幻想白徒録   作:カンゲン

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少し長くなっちゃいましたテヘペロッ


第十話 穏やかな宣戦布告

 

 宿を神社として諏訪子と一緒に暮らし始めたわけだが、予想していた通り内容の濃い毎日が続いた。

 諏訪子に頼まれた妖怪退治の仕事はそれほど大変なものではなかった。とはいえ諏訪子の言った通り、たまに力の強い妖怪に会うこともあったが、紫や幽香には程遠い。諏訪子一人で十分対処できるレベルのものだった。

 内容の濃い毎日となったのはむしろ、妖怪退治の仕事のない日のほうであった。

 俺は普段、村に出かけて妖怪による被害がなかったかどうかを聞いて回っている。諏訪子がやればいいのではないかと聞いたことがあるが、曰く、

 

「神様はひょいひょいと人前に出るもんじゃないんだよ。それに私が行くよりも、すでに妖怪退治の専門家として有名なハクが行ったほうが、みんな話しやすいでしょ?」

 

 とのことである。有名かどうかは知らないが、確かに見た目幼女の諏訪子が行くよりはいいだろうと思い納得した。

 

 最初は村人たちの話を聞いていただけだったが、そのうち村にいる退治人から修行させてほしいと頼まれた。今は俺と諏訪子で妖怪に対処しているが、俺もいつまでもここにいるわけではない。村人にも何人か力のある退治人はいたほうがいいだろうということで了承した。

 その他にも、医者としての依頼や様々な雑用、果ては個人の相談事なども引き受けることになっていた。なんだこれ。

 

 確かに忙しい毎日ではあったが、同時に楽しくもあった。今まで巡ってきた村はそこまで大きいものではなかったので、依頼もあまり来なかったのだが、ここでは毎日のように依頼が来る。まぁ依頼が来るということは困っている人がいるということで、あまり喜ぶものではないんだが。

 いろいろな場所でいろいろな依頼をこなしていたおかげか、今では村の中ではそこそこ知名度があるようで、歩いているだけでお礼を言われたり、物をもらったりすることも多い。

 ちなみに、俺は普段から『神様と相談しながら仕事をしている』と公言しているので、諏訪子への信仰も増えているようだ。

 

 

 

 神社に暮らし始めてから百数十年が経った。ずいぶんと長居しているな。最初にここに来た時よりも村は大きくなり、今では国と呼ばれるくらいにまで広がっている。

 だがそれに伴い、妖怪のよる被害は多くなっている。最近は妖怪に対抗できる退治人も増えたが、強い妖怪を相手にするにはやはり不安が残る。そういう妖怪は今まで通り、俺と諏訪子で対応しているというわけだ。

 ちなみに村が大きくなるにつれて諏訪子への信仰が増えたおかげで、今の諏訪子は多分俺より強くなっている。以前のテストで俺が張った結界も、簡単にとはいかないが破壊できるようである。

 

 さて、俺は今、国中を飛び回っている。緊急の妖怪退治だ。畑仕事をしていた人間十数人が妖怪に襲われて重傷を負ったらしい。たまたま近くにいた俺が妖力に気付いて急いで向かい、怪我人を治療したため死者はでなかった。致命傷となるような傷を負った人もいるためかなり危険な妖怪と判断。現在妖力を追って妖怪を探している。

 

「ここら辺のはずだが…」

 

 妖力を追って大通りにでる。見た限り妖怪はいない。ということは人間に擬態できる妖怪か、人間に似ている妖怪か。

 俺は空中で一つため息を吐いて集中し、妖力を探索する。いくら人間に擬態したとしても、妖力がなくなるわけではない。それに一度捕捉した妖力なら探すのはもっと簡単だ。探していた妖怪はすぐに見つかった。

 俺は見つけた人間に擬態している妖怪の周りに結界を張る。移動制限用の結界で、中にいるやつは指一本動かせやしないだろう。周りにいる人に危害を与えられたらマズいからな。

 

「な…体が…!? てめぇ、何故わかったぁ!」

「上手く妖力を抑えていたつもりだろうが、完璧に抑えてなけりゃ見つけるのは簡単だ」

「く、くそ……!」

 

 俺は地面に下り、手のひらに炎を作り出す。これは妖術の類だ。普段使っている結界術などと比べるとあまり使うことはないのだが、威嚇するのが目的ならこっちのほうが効果が高いだろう。

 

「や、やめてくれ! 俺が悪かった! ここにはもう二度と来ない!」

「……本当か? その結界を解いたら今すぐこの村から出て、二度と悪さをしないと誓うのなら許してやる。どうする?」

「ち、誓う! 誓うから命だけは助けてくれ!」

「…………いいだろう。もう悪さするなよ。さぁ、さっさと行け」

 

 俺は手のひらの炎を消し、同時に結界も解いた。妖怪が動けるようになったのを確認して、妖怪に背を向ける。

 

「ああ、助かったよ。ありがとう…」

「礼はいい。二度はないぞ」

「ああ…。お前を殺せば二度はないからな!」

 

 妖怪が叫んだと同時に、俺の左胸から太い槍のようなものが突き出てきた。生温かいものが喉をせり上がり、その場で吐いてしまう。吐いたものと左胸から滴る血で地面が赤く染まっていく。

 どうやら背後から妖怪の変形した腕で刺されたようだ。周りの人が悲鳴を上げているのが聞こえる。

 

「妖怪相手にお優しいことで! だからこんな目にあうのさ、仙人様ぁ?」

 

 背後の妖怪が心底愉快そうな声をあげて笑っている。楽しそうで何よりだ。だが俺は今、心底不愉快だ。

 

「二度はない。そう言ったからな…?」

「はぁ? そのなりで何言ってんだ?」

 

 この妖怪は勝利を確信しているようだ。言葉を話せるから多少頭がいいものかと思ったが、期待外れだったな。

 俺は腰の短刀を抜き、刺さっている槍のような妖怪の手を切断した。

 

「ああ!? てめぇ、なにしやがる!?」

 

 妖怪の言葉を無視して結界を張る。先程のものとは違い、一部例外を除いて何も通さない結界だ。この妖怪程度ではこの結界を突破するすべはない。

 胸に突き刺さっていた腕を引き抜き、傷口に力を集中させる。力の封印を解いてから、再生力も飛躍的に向上しているため、傷は数秒で塞がった。

 妖怪は結界を殴ったり蹴ったりと無駄なあがきをしている。お前にゃこの結界は壊せんよ。

 

「ま、待て! 頼む、待ってくれ!」

「何度も言わせるな。二度はない。残念だったな」

「待て! 止めてくれ!」

 

 妖怪の叫びを無視して、結界の中の妖怪に向かって力をぶつける。この結界は俺の力だけを通すという特性がある。つまり、相手からは攻撃されずにこちらから一方的に攻撃できるのだ。まぁ光や音も通すので完璧ではないが。

 俺の力をもろにくらった妖怪は吹き飛び、結界にぶつかり倒れた。しばらく様子を見ていたが、気絶しているようだ。俺は結界を解き、妖怪を担ぐ。

 周りで見ていた人達にもう安全だと声をかけると、歓声が上がった。

 

「あ、ありがとうございます! 仙人様」

「うん。死者もでなくて何よりだ」

「その妖怪はどうするんですか?」

「殺しはしない。だが、しばらく暴れられないようにはするよ」

 

 そういって俺は妖怪の妖力に干渉し、力のほとんどを引き抜く。これでしばらくは歩けもしないだろう。少しやりすぎだ、反省するんだな。

 周りの人達に一言告げ、妖怪を国の外に追い出すために空を飛ぶ。

 最近、喋れる妖怪は増えてきたが、紫達のように頭のいい妖怪にはなかなか会わない。彼女たちが特殊だったんだろうか。俺は移動しながらそんなことを考えていた。

 

 

 

 妖怪を適当な山の中に捨てて、国に戻ってきた。少しずつ空が暗くなってきているため、このまままっすぐ神社に向かうとしよう。

 今日の夕飯は何にするかを考えながらゆっくり神社に向かっていると、神社から諏訪子がすごい勢いでこちらに向かってきた。その表情にはかなりの動揺がみられる。どうしたんだ?

 

「ハ、ハクっ! ハク、大変だ!」

「なんだ、どうした諏訪子?」

「せ、戦争を申し込まれた!」

 

 戦争だと? なんとも穏やかではない言葉に思わず顔をしかめる。諏訪子は息を切らし顔を真っ青にしている。

 

「ど、どうしよう! 私どうすれば…!」

「落ち着け諏訪子。もう少し詳しく話を聞かせてくれ」

「落ち着けって言ったって…」

 

 相変わらずワタワタと慌てている諏訪子。落ち着くにはまだ時間がかかりそうだ。

 『申し込まれた』ということは拒否もできそうなものだが、諏訪子がそれをしないのは受けざるを得ないのか、拒否できないのか。今日の国の人達を見るに戦争のことなど知らなかったようだし、俺も知らなかった。何故諏訪子だけに伝わっているのか。わからないことだらけだ。

 

「こんな状況、落ち着いていられないよ!」

「こんな状況だから落ち着け。神様がそれじゃ民も不安がる。深呼吸でもして落ち着け」

「あ……そ、そうだね…」

 

 諏訪子はようやく冷静さを取り戻したようで、深呼吸して落ち着こうとしている。俺も諏訪子の話を聞かなければ何もできない。今は諏訪子が落ち着くのを待つとしよう。

 

「……ふぅ。ごめん、取り乱したよ」

「気にするな。それで、何があったか話を聞かせてくれ」

「うん」

 

 

 

 諏訪子の話を要約するとこうだ。今日俺が出かけている間に一通の文が来た。内容は『諏訪子の国の信仰を賭け、勝負しろ』というもの。差出人は大和の神のようだ。

 戦争と聞いて人間同士の戦いを想像していたが、これは神様同士の戦いというわけか。

 

「国にいるみんなが殺されちゃったりしないよね…?」

「信仰を奪うのが目的なら、信仰に絶対必要な人間に危害を加えたりはしないだろう。だから神様だけで戦うものだと思うんだが…」

 

 文の内容はこれだけ。詳しい日にちや場所、戦う相手もわからない。

 

「情報が少なすぎる。これじゃ対応策も考えられないな」

「ど、どうしよう……」

「……直接聞きに行こうか」

「え!?」

 

 わからないのなら聞きに行くしかない。大和の国の場所はわかるし、文には少し神力が染みついているから、行けば差出人を特定できると思う。

 

「で、でも危ないよ! 私も行く!」

「少しとはいえ、二人で行ってこの国を放っておくわけにもいかんだろう。それに行くんなら俺のほうが力の探索が得意だから向いてるだろ」

「でも…」

「大丈夫だ。戦うつもりはないし、たとえそうなったとしても簡単に死なないのは諏訪子も知ってるだろ?」

「……うん…」

 

 まだ不安そうな諏訪子の頭を安心させるようになでる。まだ完全にとはいかないが、少し表情が明るくなった。

 さて、決まったのなら早く行動したほうがいい。諏訪子と話している間に空が白んできた。一晩中話していたんだな。

 俺は早速神社を飛び立ち、大和の国に向かって移動することにした。

 

 

 

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 しばらく移動し、大和の国に到着した。諏訪子の国よりもはるかに大きい。もう太陽が完全に出ていて、周りに光を与えている。

 大和の国にも諏訪子の国と同じように門番がいるが、人数が多い。大きな霊力を感じる人もいる。妖怪退治の専門家だろう。

 正直、上から侵入するのは簡単だ。用事があるのはここにいる神であって、この国に用事はない。だが、礼儀はしっかりしていたほうがいいだろう。そう考え、門番たちの目の前の地面に下りる。

 

「なっ! 飛んできた…!?」

「妖怪か!?」

「待て待て、妖怪じゃない。白髪の仙人って呼ばれている者だ。ここの神様に用があって来たんだ」

 

 普段はこの名を自称したりはしないが、この名前が知られているのは事実。こういったほうが警戒が解けるだろうと思い名乗った。

 

「は、白髪の仙人…? 確かに白髪、それに腰の二刀…」

「この国にいる神様から文をもらってな。ただ内容にわからないところがあったから聞きに来たんだ。暴れるつもりはないよ」

「むぅ……。わかりました、どうぞお通りください」

「ありがとう」

 

 信じてもらえたようで門を通してくれた。門を通った俺は再度飛んで、文に染みついていた力と同じものを探す。それは簡単に見つかった。

 その場所に飛んで向かう間、下にいる人たち騒いでいた。まぁ見慣れない人間が飛んでいたら混乱するよな。俺は心の中で謝りながら目的地に向かっていた。

 

 

 

「ここか…。随分と立派な屋敷だな」

 

 目的地は神社か何かかと思っていたが、予想に反して豪華な屋敷だった。中からは複数の神力を感じる。神が複数いるのか。

 地面に下り、歩いて門の前に向かう。ここにも門番がいるが、国の入り口にいた門番と違い神力を感じるため、彼も神なのだろう。

 

「何だ貴様。見慣れぬやつだな」

「初めまして。別の国から来た者だ。ここにいる神様に少し聞きたいことがあって来たんだ」

「別の国だと? 怪しいやつだな」

 

 む、これは警戒を解くのは難しいかもしれん。確かに戦争を申し込まれた国から来たと言えば警戒するに決まっているが、まだそこまで言っていないのにかなり警戒している。

 

「おい。何を騒いでいる?」

「こ、これは神奈子様。いえ、この人間がここの神に用があると」

 

 どうしたものか考えていたら門から一人の女性が出てきた。いや、神力を感じるから一柱というべきか。

 青い髪に茶色に近い赤眼。そして感じる強大な神力。俺が探している力と同じものだ。

 

「初めまして。ちょうどいい、あなたに話があって来たんだ」

「我に? 見たところ普通の人間…………ではないようだな……」

「なっ!? 妖怪ですか!?」

 

 青髪の神が、俺の持つ力が普通とは違うことにすぐ気づいた。力の扱いにも長けているようだ。こうなると警戒されてしまうな。

 

「妖怪じゃない。白髪の仙人と呼ばれている」

「白髪の仙人? …なるほど、勝負を申し込んだあの国に住んでいる仙人か」

「そうだ。あの文には詳しいことが書かれていなかったんでな、聞きに来たんだ」

「…ああ! そういえば書くのを忘れていた」

「………………は?」

 

 何だこの神。意図的に書かなかったのではなく忘れていただけだと? だとしたらこの神様、もしかしてバカなのか?

 

「わっはっは! 勝負をするのが楽しみすぎてな。ついそのことだけ書いて送ってしまった」

 

 決定。戦バカだ。

 心底楽しみにしているような顔をしている神を見て、俺は大きなため息を吐いてしまった。糸を張りつめたような話し合いになるかと思ったのだが…。

 

「……じゃあ、内容を教えてくれ。いつ、どこでやるのか、相手は誰かとか」

「相手は我だ。どこでやるかはそちらが決めていいぞ。そちらの神は土着神だからな、その地から離れたら力が弱まるだろう。いつやるかだが…」

「それについては希望を出したい。少なくとは半年は待ってほしいんだが」

 

 この神の力を探ってから、俺は考え事をしていた。その結果、ある程度の時間が欲しいという結論に至った。準備には時間がかかる、ここを譲るわけにはいかない。

 

「む…、半年とはずいぶん長いな。もう少し縮められないか?」

「…………三ヶ月。これが限界だ」

「ふむ……わかった、それでいい。そちらの神に伝えてくれ、正々堂々勝負しようと」

「引き受けた。それでは」

 

 半年も時間はいらなかったが、最初に多めに言っておくと、次の譲歩したときの条件がいいように感じる。狙い通り、三ヶ月時間をもらえた俺は自分の国に戻ろうとした。

 

「待て」

「? なんだ?」

「お前、神ではないがそこそこ強そうだな。どうだ、我と一戦交えてみないか?」

 

 飛ぼうとしたところを引きとめられ、何かと思ったらとんでもない提案をしてきた。戦闘狂か、この神様。

 ワクワクした表情でこちらを見ている神様には悪いが、俺に戦うつもりはない。この国の門番にも暴れないと言ったしな。

 

「悪いが戦わないぞ。戦う理由がない」

「戦いは楽しいではないか。理由などそれで十分」

「そうは言ってもだな…」

「そちらの条件を飲んでやったのだから、これくらいいいだろう?」

「勝手に宣戦布告しておきながら何を言ってんだ、あんた」

「貴様! 神奈子様に向かってなんて口の利き方を!」

 

 ああ、門番さん。まだいたんですか…。確かに神様に対しての話し方ではなかったが、俺も相手が相手ならちゃんとする。つまり、この神様はちゃんとするに値しない気がする。悪い意味だけではないが。

 

「……はぁ、わかった。言っておくが、俺は諏訪子より弱いからな」

「諏訪子、というとそちらの国の神の名か。別にいいぞ、肩慣らしにはちょうどいい」

「肩慣らしとは言ってくれる。諏訪子より弱いが、お前に勝つのは簡単だ」

「ほう…」

 

 青髪の神を挑発する。さっきまでの余裕の表情を崩して、俺を睨みつけてくる。

 俺がさっき考えていた策には必要ないが、ここで俺がこの神様に勝てば、もしかしたら策は必要なくなるかもしれない。

 

「ならば今すぐやるとしよう。ここは地面も屋敷も頑丈だからな。暴れまわっても問題ない」

「わかった」

「問題あります! こんな場所で戦闘など…」

「いいから、お前は屋敷に入っていろ」

 

 門番が反対していたが、青髪の神の威圧のある一言で屋敷の中に走って行った。あの門番、今日は厄日だな。

 さて、目の前の神は派手に戦闘をしたいんだろうが、俺にそのつもりはない。一瞬で終わらせる。

 

「さぁ、いいぞ! いつでもかかってこい!」

「それじゃ、遠慮なく」

 

 俺は神様の力に干渉し、全体の七割近い神力を引き抜く。当然、急激に力を失った神様は何が起きたかわからないという顔をしている。

 

「な……力が…? 一体何をしたんだ…?」

「あんたの神力のほとんどを引き抜いた。今のあんたじゃ俺には勝てないよ」

「何…? そんなことができるのか……」

「悪いな。派手な戦いをしたかっただろうが、それは三ヶ月後まで待っててくれ。その時は俺も諏訪子も真面目に戦うよ。今は時間がないんでな」

「むぅ……わかった…。三ヶ月後を楽しみにするとしよう」

「すまんな、ありがとう。じゃ、またな」

 

 引き抜いた神力を神様に戻す。少し悪いことをしただろうが、それほど怒っているようにも見えない。器の大きい、いい神様だな。そう思いながら自分の国に戻ろうと空を飛ぼうとして…。

 

「ああ、待て待て」

「……今度はなんだ?」

 

 また引きとめられた。まだ何かあるのか?

 

「そういえば自己紹介をしていなかった。私は八坂神奈子(やさかかなこ)。この大和の国にいる神の一柱だ」

「ああ、これは失礼した。ハクだ、白いって書いてハク。妖怪退治の専門家兼医者だ」

「ほう、医者もしているのか。くっくっく、三ヶ月後を楽しみにしているぞ!」

「俺もだ。その時は全力で戦おう」

 

 自己紹介をすっかり忘れてしまっていた。力を探索すれば名前を聞かなくても特定できるから、こういうことがあるんだな。とはいえ、これは俺の失態だな。

 俺は神様、改め神奈子に全力で戦うことを約束して、今度こそ自分の国に戻るため、空を飛んだ。

 

 

 

「ハク、か…。神の力も支配するとは……とんでもないやつだな……」

「ああ、よかった! 周りが壊れていない! 怒られないですむ!」

「……悪かったな、門番よ……」

 

 

 




不憫な門番さん……彼に幸あれ。

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