幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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カッターで指をザックリ切った所為で、微妙に執筆速度が落ちてたり。たつきショックもありますが。


第42話 ボス戦前

 例のボス、正式名称【機天・アスト】の討伐は、数日後の今週の土曜日という事に決まった。セナのこの人を纏めるというか、話をつける能力はとても俺は真似出来そうにもない。流石はギルマスと言ったところか。

 

 そんな事を考えながら、俺はリスポン場所のギルドホームを出る。無論デスペナ中ではあるが、基本この状態がデフォルトなので気にする事はなくなった。

 

「おい」

 

 そう歩く俺の肩が引き止められた。

 珍しい事もあると思い振り返ると、そこに立っていたのは怪訝な顔をしたランさんだった。

 

「えっと、お久しぶりですランさん。つららさんとはどうですか?」

「久しぶりに会った奴に聞く話題じゃないだろう、それは……」

 

 額に手を当て、溜め息を吐いてランさんはそう呟いた。切り口となる話題がこれしか思い浮かばなかったとはいえ、流石に無神経が過ぎたかもしれない。ちぃ、覚えた。なんちゃって。

 

「まあいい。そんな事より、俺が聞きたい事は1つだ。何が目的だ?」

「……はい?」

 

 いつでも動ける様な、所謂臨戦態勢でランさんが言ってきたが、正直全く意味が分からない。いや、何かを心配しているというのは分かるのだが、実際に心当たりがない。れーちゃん絡みで特に何かをした……してるな。成る程それか。

 

「今回の討伐、ことの発端はお前と聞いている。れーを動かしてくれた事には感謝するが、目的が分からん」

「目的って言われましても……日頃の恩返しと、手伝いとしか。自分の為でもありますけど」

 

 第3の街を突破して最前線に行く事で、一応ガチギルド(自称)のうちに貢献しようとかそういう考えもある。まあ、俺が加わったところで何かが変わるとも思えないが。

 

「成る程な。だが、お前は既に第4の街に到達してるだろう?」

「あれ、バレてましたか。確かに俺は【ルリエー】に到達してますけど、目的は変わりませんよ?」

 

 そう俺は笑顔で返す。ボスの行動パターン把握のために、戦いに行っている時、半分くらいズルをしていると思う方法で戦っている時の事だ。本気を出したら、あっけなくボスを倒してしまったのは事実である。しかも何度か。だけど、藜さんやれーちゃんを支援する目的は変わる事はない。だって俺支援役だし。

 

「それに、多分ランさんが思ってる様な事にはならないと思いますよ?」

「ほう?」

「だってれーちゃんって、うちのギルドの妹的な立ち位置じゃないですか。誰かに違う風に思われてようと、俺はそう思ってますよ」

 

 俺がそう言うと、ランさんは数秒警戒は続けたものの、僅かな間でまた柔らかい笑みに戻ってくれた。案の定、れーちゃん絡みの心配だったらしい。

 

「そうか、それなら安心だ。だが、1つ聞いても良いか? どうやってあのボスを倒した?」

「どうやってとは? PT組んでた可能性もありますけど」

「いや、お前の事だからソロだろうな。そしてステータスは極振りだろう? どうやって、取り巻きと本体を倒した?」

 

 好奇心の様な、疑っている様な目でランさんがこちらを見つめてくる。そういえば、これを知ってるのはれーちゃんだけか。

 

「企業秘密ですね。それにあんな戦い方、腕も頭も腐っちゃいますし、何よりゲームに飽きそうです。なので、表には出しませんよ」

 

 ちょっと遠くを見ながら俺は言う。

 あんな、ゲームじゃない戦い方は絶対にやりたくない。敵がすぐに溶けて、こちらは負けないなんてアレは完全に別ゲーだ。あの呪いの装備は、まさしく人を駄目にする呪いの装備だった。

 

「お前がゲームを辞めたら、れーが悲しむからな」

「ランさんって、とことんれーちゃん好きですよね……」

「兄だからな」

 

 誇らしげにランさんは言うが、一般的にそれはシスコンと言うのではないだろうか。れーちゃんが嫌がってない様だし、悪いシスコンではないようだが。

 

「あ、そうだ。ランさん、こっちも質問良いですかね?」

「なんだ?」

「ぶっちゃけ、どうしてつららさんと付き合う事になったんですか?」

「んゴフッ!?」

 

 ちょっと質問を投げて見たところ、目の前でランさんが噎せた。やはりつららさん関係の話題は、ランさんにとっては鬼門らしい。

 

「見ていて、そんなに分かるものか?」

「そりゃあもう。死に戻りして来た時、良くイチャイチャしてるの見ますし」

 

 そう言う時はフードを被りスキルを使い、二重のステルス状態でそくささとギルドを出ているが。見ていて感じるのは、なんというか、落ち着いてて楽しそうな雰囲気なのだ。ちょっと目星と聞き耳に成功しちゃっただけだから、これは許して欲しい。

 

「はぁ……そこまで見られてるなら良いか。言いふらすなよ?」

「それは勿論。噂話好きな女子でもないですし」

 

 多分セナ辺りに言ったら、すぐにギルド中に広まるだろう。けど、俺は俺で修羅場を目撃されてる事もあるしそれはしない。迷惑をかけるのもアレだしね。

 

「元々つららとはリアルでも知り合いでな。偶然ギルマスにスカウトされて再会して、結構そういう雰囲気が続いてる時にれーに『ハッキリして。しないなら嫌いになる』って怒られたんだ。そういう流れで付き合う事になった」

「えぇ……?」

 

 聞いてみれば、あまりにもつららさんが可哀想な理由だった。というかれーちゃんってリアルでは喋っ……いや、脳内変換の可能性が高いか。

 俺が困惑に満ちた目を向けていると、大きく溜め息を吐いてランさんは話を続けた。

 

「だがまあ、付き合ってみたら色々とアレでな。惚れた。改めて告白した。和解して付き合って今に至る。これで良いか?」

「はい! 満足です」

 

 色々とアレの部分が気になるけど、誰にでも探られたくない部分はあるので我慢しておく。いやー、やっぱり他人の恋バナは良いものだ。

 

「で、ここまで話したんだ。お前も何か、追加情報はくれるんだろう?」

「そうですね。なら、俺のも他言無用ですよ?」

 

 そう言って俺は《偃月》を取り出してランさんに渡した。やっぱり、使うならこれとスキルの組み合わせまでが良いと思う。

 

「それで斬ってきました。一応俺の切り札ですね。まあ、スキルやらなんやらを組み合わせはしましたが」

「成る程な……確かにこれなら出来るだろう。察するに【抜刀術】か?」

「そうですね。使ったら反射ダメージで死にますけど」

 

 抜刀して使った場合、空振りでもない限りどう足掻いても俺のHPは0になってしまった。だからこそ工夫はするのだが、やりすぎたせいでチート級になってしまった。アレは俺の主義に反するから問答無用で封印指定である。

 

「極振りはマゾって噂は本当みたいだな……」

「俺もここ数日で、パターン把握のために100回は死んでますしね」

 

 でもそのお陰で、攻撃は8割くらいは防ぐことが出来るようになった。HPが残り僅かになった時の物はキツイが、多分アタッカーだらけのウチのギルドならすぐに終わるだろうから気にしない。

 

「……楽しいのか? それ」

「ええまあ。じゃないと、こんな縛りつきでゲームをやってませんよ」

「それもそうだな」

 

 そんなあまりにも基本的なことを聞かれて、俺は笑いを浮かべながら答えた。脳を酷使しつつ、爆弾パーティーしたりエド・フェニックス(動詞)る……これをどう見れば、ゲームを楽しんでないという事になるのだろうか?

 

「お前は今日、これからどうするんだ?」

「そうですね……本当はもう少しボスに殺されて来ようと思ってましたけど、萎えたので支援役の本分を果たしますかね」

 

 ランさんと話した事によって、ちょっと戦闘意欲が消えてきている。なので、ギルドに戻って新しい紋章の開発でもしようかと思う。

 ちょっと、色々と作ってみたい効果のものが多いのだ。自分に使う事は無いようなものも結構あるけど。

 

「そうか。なら、俺の出番はなさそうだな」

「いえいえ。お話ありがとうございました。後は存分につららさんとイチャついて来てください」

「しないからな!?」

 

 一礼してから、俺はギルドホーム内に戻り自分の個人ルームへと直行する。そうして開いたのは、紋章の作成画面。自分で一から作るのは初めてだが、まあきっと何とかなるだろう。

 

 ・

 ・

 ・

 

 そんな考えで、寝転がりながら画面を弄る事に2時間程。俺の手元には、新しく2種類の紋章が出来ていた。いや、反転した効果の物も含めれば4つという事になるが。

 

「《加重》と《軽量》、エンチャントとカースの《クリティカル威力》バージョン。一先ずはコレでいいかな」

 

 何せ、やれる物事の幅がかなり広がった。重さの変更は地味に嬉しいし、クリティカルを弄れるなら更なる火力サポートも出来るだろう。攻撃&防御&クリティカルバフ……孔明……過労死……うっ、頭が。

 

「ちょっと遠隔verになるけど『故に侘助』とか『破段・顕象』とか。後は他にも、新しい組み合わせで錫月杖の軌道変更とか……」

 

 寝転がりながら天井に手を広げ、色々と考えを巡らしていくだけで面白そうな事が次々と湧き上がってくる。が、実践するにはちょっとばかり時間が足りない。流石に寝ないと生活に支障をきたす時間が近づいてきている。

 

 出来る事は、精々が魔導書に魔法をかけて遊ぶ事くらいだ。重くしても浮いたままだし、真に手足のように動かせるようにする為の練習と考えれば良いのかもしれないが……酷く虚しい。

 鈍い音を鳴らしてぶつかり合う魔導書を見ていると、何だか寂しい気分になってくる。ついでにこれ、脆い障壁でも混ぜたらもう少し綺麗になるだろうか?

 全く。こんな気分になるのも、あの呪いの装備が原因に決まってる(こじつけ)

 

「でもほんと、狂ってるよなぁ……」

 

 少し前に届いた『再調整が遅れて申し訳ありません』という旨の運営のメッセージと共に、?マークが取れ使用可能になったあのデメリット装備。被ダメの効果はそのままだけど、その他の効果が狂っていた。専用に調整と言っても無理があるくらいには。

 

【穢土ノ呼ビ声】

 Luk +50

 属性 : 闇

 状態異常 : 常世

 使い魔 : 骸ノ鴉 ×5

 状態異常付与、被付与確率上昇(極大)

 被ダメージ4倍

 耐久値 : なし

 

【常世ノ襤褸切レ】

 Luk +43

 属性耐性が減少(極大)

 骸ノ身体(HP変動効果反転・環境適応(闇))

 被ダメージ4倍

 耐久値 : なし

 

【擦リ切レタ草鞋】

 Luk +42

 空間侵食 : 常世

 被ダメージ4倍

 耐久値 : なし

 

【朽チタ闇】

 Luk +44

 状態異常効果反転

 彼岸ノ夢(幻惑 : 質感・映像)

 被ダメージ4倍

 耐久値 : なし

 

【怨霊ノ数珠】

 Luk +45

 状態異常範囲拡大

 被ダメージ4倍

 耐久値 : なし

 

【咒ノ耳飾リ】

 Luk +66

 自動MP回復

 被ダメージ5倍

 耐久値 : なし

 

 スキルとこの装備、そして仕込み杖を組み合わせると、戦闘がただの蹂躙になってしまう。しかも一度慣れたら最後、ズブズブと使ってしまうだろう。まさしく、人をダメにする呪いの装備である。

 

「使い魔とか、そろそろ実装されるって噂はあったけど初めて見たし」

 

 骨だけの鴉で、ただいるだけで鳴く事しかせず、加えてパーティ枠を消費する困り者だが。ソロプレイが基本の俺にとっては、あまり問題ではないが。むしろ【ドリームキャッチャー】が使いやすくなるだけだった。

 

「もうちょっと練習したらやめるか」

 

 呪いの装備は後回しとして、ログアウトして寝た方が健全だ。何事も、用途用法用量を守ってが1番に違いないのだから。……極振りしてるやつに説得力がないとかは、言わないでほしい。

 




Diesのアニメ、12話+配信か……配信の方まで見れたらいいなぁ

-追記-
イベ報酬装備の効果わからん……全然わからん。と、感想欄にジャガー姉貴が沢山いたので追記。

長杖
ただそこにいるだけの、ペットモンスター×5召喚
自分が状態異常を受ける確率が極大上昇
相手に状態異常を負わす確率が極大上昇
被ダメージ4倍

胴体
被属性ダメージが極大上昇
回復ポーションの効果がダメージポーションへ
一部地形のスリップダメージが回復へ
HP変動効果は、直接的なダメージは良く通る。反射ダメージでとか反転できません
闇っぽい環境に適応
被ダメージ4倍


条件を達成する度に、自身の周囲の環境を【死界】に変更していく。初期は自身の周囲10cmくらい。最大は不明。
被ダメージ4倍


自身の受けている状態異常の効果が反転する
相手の攻撃を食らった時、リアルな触感と映像を自分と相手にプレゼント! 送料無料!
被ダメージ4倍


自身が使ったり、自身に掛けられた状態異常の効果範囲が拡大する。
単体毒→範囲毒
被ダメージ4倍


そこそこの勢いで自動でMPが回復する。
細かい数字は決めると問題しかなさそうなのでカット。
被ダメージ5倍

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