fgoやってるみなさんは、英霊正装誰をお迎えしましたでしょうか? ジャンヌ・デオンくんちゃんと迷ったけどアナにしました。
色々なことがあった翌日の日曜日、俺は注文していたバイクを取りにギアーズに来ていた。やることがあるのと迷惑を考えて、一応時間は正午だ。
「すみません、注文していたバイク取りに来ました」
「応、よく来たな。全て完璧にできているぞ」
そう言う究極体じゃないシドさんの隣には、見た目はいたって普通のバイクが存在していた。サイドカー付きのその見た目こそ軍用という感じの素晴らしいものなのだが、バイクが放つ存在感のようなものが何段も違って見えた。
見惚れていたのだろうか、動きを止めた俺に、自信満々といった様子でシドさんが話し始める。
「このバイクの能力の話といきたいところだが、先ず始めに操作方法を教えよう。乗らなきゃ話にならないからな」
「はい」
こういう場合、素直に教えを請うのが一番だ。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥っても言うしね。
「【騎乗】スキルがあれば感覚で乗れるんだが、一応だ。右手でアクセル、左足でギアチェンジ、ブレーキは自転車と同じと覚えておけば大抵どうにかなる」
「え、そんな適当な感じで良いんですか…?」
「ああ、現実ほど難しくもないしな。倒れた場合も、ゲーム内では普通にどうとでもなる」
「アッハイ」
その点だけは、現実並みの身体能力しかない俺は魔法の補助が必須だろう。乗り方もまあ、ゲームだからということで納得するとしよう。基本は60%【騎乗】さんに頑張ってもらうことでどうにかできると思う。残りの5%? そりゃあ【気配感知】パイセンに振るに決まっている。
「問題は……なさそうだな。ならば、次に元の値段の倍ほどの金をかけて行った強化についてだ」
頷いて説明の続きを聞く姿勢をとる。というか、本体代より強化代の方が高かったんだ……
「注文にあったサイドカーの脱着自由の機能は、一度アイテム欄に仕舞えば自由に可能だ。そして速度と耐久性についてだが、そちらについても太鼓判を押そう。耐久値は普通は10,000程度のところを堂々と倍の20,000、最高速度は分かりやすくステータスに換算すれば900ってところだな」
「モンスターマシンじゃないですか…」
聞けば、ちゃんと舗装された道限定の速度らしく、外のオフロードな道だと450程度まで落ちるそうだ。いやそれでも十分過ぎるわ。
「作ったのはお前だからな。それに壁面も余裕で走行可能なうえ、操縦士をサポートする能力が追加されている。なんの問題もないだろう?」
「言われてみれば」
改めて考えればその程度、いつも戦闘でやってることに比べればなんでもない普通のことだった。実際に乗ってみないことには、正確には分からないけれど。
「ここからが、俺らが追加した装備だな。
さっきの補足になるが、1つ目は操縦士保護機能。乗ってる奴が風圧で吹き飛ばされる、振り落とされるとかの運転を妨害する現象から乗り手を保護する能力だ。
2つ目は、自動防御。バイクの運転中のみ乗り手の受けるダメージを耐久値で肩代わりする能力だな」
「なるほど……」
2つ目が地雷な気がしたけれど、ダメージ計算前に相手の攻撃が与えるダメージの数値で計算するから問題ないらしい。しかもバイク自体の防御力も計算に入るんだとか。この面倒さ、コンマイの臭いを感じる。 つまりこのバイクはDホイールだった?(迷推理)合体しなきゃ(使命感)
「3つ目が簡易ポーチの追加だ。10スタックの物をサイドカーに3つ、本体に2つ増設した。だがまあ、最後の1つが本命だ」
そう言い溜めを作るシドさんの言葉を待ち、ゴクリと唾を飲む。今までのですら十分おかしな性能だったというのに、それを置き去りにする本命とはいったいなんなのだろうか?
「最後のギミックの名は、加速装置。サイドカー無しの状態でしか使用できないが、要するにニトロチャージャーみたいな物だ。使用すれば、10秒だけ速度が200%に上昇する。1時間に1回しか使えないがな」
「ファッ!?」
時間限定だが900の2倍だから1800。純正極振りである俺の今のLukの値が1800。これだけでもう、どれだけ頭のおかしい数値かというのは言うまでも無いだろう。かねのちからってすげー。
「まあ口で説明するより、実際に動かした方が理解しやすいだろう。燃料は限界まで積んである、存分に乗ってくると良い」
「ありがとうございました」
「なら、今後ともうちを贔屓にしてくれ」
バイクを受け取り、笑みを浮かべながら返事をする。店の外までバイクを押し、跨ったと同時にエンジンが入った。サイドカーがついたままだからかバランスも取れるし、腹に響くこの音は何だかとても好きだ。
「それじゃあ一丁、走らせてみますか!」
調子に乗ってアクセルを回した途端殺人的な加速が俺を襲った。しかし、確かに吹き飛ばされることはない。これは良いものだ……風もすごいが目は何故か開けてられるし、処理能力さえ追いつけば後10年は戦える(?)
そんなことを考えながら更に加速したせいか、あっという間に街から飛び出してしまった。そして目の前には機械で作られた蟹っぽいモンスター。
「やっば!?」
そう呟いた俺に蟹から発射された銃弾が直撃し、直後蟹は撥ね飛ばされ空中でスクラップと化した。徐々に減速し、停車。轢くダメージは高かったようだが、一撃で仕留めることはできていなかった。HPが数ドット残っていた蟹に《奪撃》でトドメを刺し、一度バイクをアイテム欄に仕舞い状態を確認する。
耐久値の減少は10。俺のHPも減ってないし、成る程キチガイスペックだ。
「今度はサイドカーを外してっと」
単車状態で取り出したバイクに騎乗する。サイドカー付きのときと比べて、若干取り回しが違うけれど感覚的にどうすればいいのか分かる。スキルの恩恵って本当に凄い。
アクセルを全開にしてぶん回してみるけれど、今度はモンスターもプレイヤーも轢くことなく快適に運転することができた。嗚呼、本当にバイクに嵌りそうだ。大体セナの全速力と同じ速さだけど、サイドカーがあるし一緒に……駄目だ。昨日から偶に思考がのぼせてる。
「こういうときは、何かに集中するに限るな。うん」
アクセル全開で発進し、左のハンドル部分にあからさまに設置してある小さなカバーを指で開く。どうみても加速ボタンですありがとうございました。
今から突入するのは極振りの領域。今まで15%ほど割り振ってた《気配感知》への数値を5%まで低下させる。目印は……うん、ギリギリ見えるくらいの場所にある木でいいだろう。そしてさあ今だとボタンを押した瞬間、世界が加速した。
「へ?」
異常な高音を発するエンジンに気を取られた2秒で、目印にしていた木がすぐ目の前に来ていた。
身体を倒して全力で曲がろうとするけれど間に合わない。そして激突しかけの木が万が一、不壊オブジェクトであった場合確実に全てが壊れる。
「《障壁》!」
それは流石に遠慮願いたいので、即興の道を作り出す。木を避けるように配置した《障壁》を砕きながら進路を強引に変えられ、俺はバイクごと回転しながら空中に放り出された。
どうにか空中でアイテム欄に仕舞い、ぐるんぐるん大回転する視界にこれはリスポンだと確信する。そんな中、再度65%まで引き上げた《気配感知》に敵影が1つ映った。
「飛鳥、文化、アタァァァック!!」
どうせリスポンならばと、《障壁》と《カース》を駆使して俺の回転と軌道を微修正。こちらに気づいていない大型ロボットに着弾する。
当然のごとく消し飛ぶ自分のHP。そしてそれの代わりに、大型ロボットもリスポン直前の俺の前で爆発を起こした。やったぜ。
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・
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「ふぅ…」
そしてリスポンしたギルド内、誰もいないかれーちゃんがいるかの二択だと思っていたその場所には、なんとも間の悪いことにセナがいた。気まずい。明日会うことになるのは分かってても気まずい。
「ん? どしたのユキくん?」
そんな俺の心情を知ってか知らずか、今までと一切変わらない様子でセナが話しかけてきてくれた。
「ちょっとバイクに乗ってたらお星様になりかけて、マズイと思ったから飛鳥文化アタックでロボを粉砕しながらリスポンした」
「ごめん、ユキくんが何言ってるのか分からない」
困りきった顔でセナがそう告げた。おかしい、俺は真実を言っただけなのに。そうか、爆弾使ってなかったしそりゃそうか。いやそうじゃない、本題に移らないと。
「俺が言うのもなんだけど、こんなに普段通りでいいのか? 昨日、まあ、あんなに色々とあったわけだけど」
「あー…そだね」
困ったような表情のまま、セナは続ける。
「私としてはもうちょっとって思うけど、とーくんだもん。例え誰かに入れ知恵されてても、すぐにどうこうならないって知ってる。だって、私はとーくんの幼馴染だから」
ある意味酷い言われようだが、事実なので何も否定できない。そしてそんな、綺麗な笑顔を向けられたら何も言えなくなってしまうじゃないか。
「そっか……そうだよな……」
でもここまで言ってもらえて何もしないんじゃヘタレを通り越してもう別の何かだ。流石にそこまで落ちぶれる気は無い。
「よし。これからセナはどっかにレベリングにでも行くのか?」
「え、うん。あんまり張り付いてやらないから、ギアーズのダンジョンだけど」
「なら俺も付いていっていいか? ついでに送る、折角バイクも手に入れたことだし」
そんな俺の提案に、キョトンとした顔でセナは答える。
「別に私は大丈夫だけど……ユキくんってマトモに戦えたっけ? それにバイクって、多分私が走るより遅いと思うんだけど…?」
「最近は爆弾祭りしてるけど、あくまで俺のベースは支援役だし……あとバイクはAgl換算900まで速度出るから大丈夫だ。しかも最高速度は、俺の今のLukと同じくらいだぞ!」
俺はぐっとサムズアップして答える。匠こだわりの速度に耐久性だ、ガチ勢と比べても何ら遜色ないはず。だからそんな引いた目をしないでくださいお願いします。
「……ちなみに何Dかかったの?」
「カジノで5,000万稼いだうちの1,000万かな。しかもバイク艦隊のギルドの人とサブマスさんとフレンドにもなってきた」
「ユキくん頭おかしいよ……」
セナがそのままガックリと項垂れる。
いやそうじゃなくて。大分本題から外れてきてるけど、なんの考えもなくバイクの話題を振った訳じゃない。
「話を戻すけど……乗るならサイドカーか二人乗りか、どっちがいい?」
「じゃ、じゃ二人乗りがいいかな!」
「OK!」
ズドンなんて幻聴は聞こえない。
一先ず今回のことを気に、少しは俺からも距離を縮めてみよう……そう思った故の行動だ。下手にギクシャクしたりするより、やっぱりこっちの方が良いよね。
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