幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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投稿場所間違えたので再投稿
103話以降を想定してます

※本編には全く関係がありません


番外編 ハロウィン

 ハロウィーンの話をするとしよう。

 

 今の日本では仮装を楽しんだり、お菓子をもらったりする日となったこの行事。Trick or Treat(いたずらか、ごちそうか)の言葉で有名なこの日の起源を辿ると、アメリカではなく古代ケルトにたどり着く。

 

 古代ケルトという括りも非常に大雑把なものなのだが、まあそれは置いておいて。

 ハロウィーンの起源は、古代ケルトで行われていた収穫祭及びその際に現れるとされる悪霊を追い出す行事である。ケルト人の1年の終わりは10月31日とされており、この日の夜は秋の終わりであり、冬の始まりでもあり、更には死者の霊が家族を訪ねてくると信じられていた。

 

 古代ケルトにおけるドルイドと呼ばれた、社会における重要な役割を果たしていた人物達。彼らが主体となって、10月31日の夜にハロウィーンの収穫祭は始まる。

 日が没し、この世とあの世の間を自由に行き交うことのできる見えない門が出現すると信じられている時間。ドルイドの司祭たちは、作物と動物の犠牲を捧げ、焚いた篝火の周りで踊る。この火を用いて住民たちは家の暖炉に新たな火を灯し、家に悪い妖精が入らないようにするのだ。

 現在のハロウィーンにも受け継がれている仮装は、この際現れるとされる有害な妖精や魔女から身を守るためのものだ。ジャック・オー・ランタンもこの当時はカボチャではなく、カブをくり抜いて作られていたとされている。

 

 ここまでが、伝統的なハロウィーン

 そしてここからが、現在日本で普及しているハロウィーンに繋がる話である

 

 日本にハロウィンの文化が広まった源流である、アメリカにおけるハロウィン。それが正式にアメリカの年鑑に祝祭日として記録されたのは、意外にも19世紀初頭頃であるとされている。原因は、その時期にあったアイルランド及びスコットランドからの大量移民。しかし文化としてハロウィンが受け入れられるのは、もっと後の20世紀初頭頃である。

 

 19世紀半ばまで、特定の移民共同体の中でのみ行われていたハロウィン。それは徐々に、アメリカの主流社会に受け入れられるようにして広がっていった。定着したと言えるであろう20世紀初頭では、驚くことに社会的、人種的、宗教的背景に関係なく、アメリカのほとんどの人々に受け入れられていたらしい。

 この時代に生まれたのが「トリック・オア・トリート」の言葉である。テレビや製薬会社、映画会社などの仕掛けもあり爆発的に広まった。これは古い英語から来ているとされていたはずだけど、詳しい部分は忘れた。

 

 そして、世界各国で活躍するアメリカ人が増えるにつれ、様々な国にハロウィンは広まったとされている。

 

 

 ハロウィンの扱いも、国によって千差万別である。

 

 多神教故かオールオッケー、唯一神ですら「それは別のディメンジョン」として納得出来てしまえる変態国家日本。そこでは純粋に、仮装を楽しんだり、お菓子をねだったりする日となっているのは周知の事実だ。東京の、どこだっけ? 交差点では、毎年毎年尋常じゃない人混みが出来ている。

 

 主な英語圏でもにたようなものであるらしい。実際に見たことはないけれど、差異はあれど基本的にアメリカのハロウィンがベースとなっている。

 

 源流であるケルト人の国であったアイルランド。そこでは10月最後の月曜は祝日となっており、所謂ハロウィン祭りとやらが残っているらしい。

 

 逆に一部のキリスト教の色が強い国では、「キリスト教由来の行事ではない」として実施を禁止している国もあるとか。

 

 

 さで、ここまで長くなってしまったが。変態国家(褒め言葉)である日本の国民が製作したUPOでも、当然のようにハロウィンイベントは行われている。やはり商業戦略か、私も同行しよう……

 

 で は な く !

 

 誰もが折角のイベントなのだし、広く浸透しているアメリカ式ハロウィンがベースとなると思っていた。いや、源流のケルト式ハロウィンを知らない人は、当然そのハロウィンのために準備を重ねていた。

 

 だが、運営(やつ)は弾けた

 

 その日、プレイヤーは思い出した。極振りをボスにする運営の凶行を。バレンタインにもやらかしてくれやがった前科を。そう、プレイヤーの予想を盛大にルラギリ、UPO運営はイベントのベースとしてケルト式を選んだのだ!

 

 イベント名は『怒鬼☆怒鬼☆覇露勝利!〜ポロリもあるよ!』

 

 その内容も、実に弾けたものだ。何せ、街が安全圏ではなくなったのだから。『篝火を焚いているとされ、ジャック・オー・ランタンを入り口に設置した建物』『復活地点のポータルの半径20m』以外の場所で全て、モンスターがPoPするようになったのだ。

 街中に出現するのは、主に幽霊や小鬼、偶にバンシーのような精霊が殆ど。市外にはジャック・オ・ランタンや死神、デュラハンなど恐ろしげなモンスターはなんでも出てくる。余談だが、俺が街を出歩くと、出現しないはずのそいつらが街中に現れる。

 

 そしてその全員が、倒すと特別なアイテムをドロップする。武器、防具、衣装、お菓子、お菓子の材料を始めとして、装備扱いされない所謂スキンなども含まれる。

 例の如く森1つを伐採&デイリービル爆破で素材をコンプし、大量に確保した結果。我らがギルド【すてら☆あーく】は大盛況となったのだった。

 

「あ、ユキさんそろそろ休憩どうぞ。ずっと働き詰めでしょ」

「ありがとうございます、つららさん」

 

 一時避難場所兼バフをかける場所兼回復場所となった結果、とんでもなく盛況となった【すてら☆あーく】のギルド。NPCだけでは手が足りず交代で接客していたのだが、客足も落ち着き始め抜ける余裕ができたらしい。

 

「それじゃあ、遠慮なく」

 

 そう言い残して、俺はバックヤードに引っ込んだ。因みにうちのギルドの仮装は、見事に誰も重ならなかった。

 

 つららさんは、無難に吸血鬼。

 れーちゃんは、どこぞのフォウフォウ鳴きそうな小動物のコスプレ。

 ランさんは、元々RPしてる人だから変化なし。吊ってる武器に、パンプキンのストラップが追加されてはいたけれど。

 俺は頭装備に帽子なしのカボチャスキンを装備し、他は死界装備で身を固めたジャック・オ・ランタン風。

 

 そして──

 

「ユキくん、トリック・オア・トリート!」

 

 がおー!といった感じのポーズで登場したセナの仮装は人狼。ルウガルウではない。フサフサの狼耳に尻尾が生えていて、いつもの狐耳狐尻尾とは違った印象を感じる。いつも通り、千切れそうなくらい尻尾は振られているけど。

 

「セナもお疲れ。イベントがイベントだけに、すごい人数だったよね」

「そだね、流石に私も疲れちゃった」

 

 因みにセナと藜さんに不埒な真似をしようとした奴は、ちょっと魔導書から《萎縮》と《破壊》を使って痛い目を見てもらった。れーちゃんとつららさんに不埒な真似をしようとした奴は、ランさんにコンマ数秒以内に撃ち抜かれていた。セクハラなんて許さないのである。

 

「そうじゃなくて!」

 

 そう誤魔化そうとしていたところ、失敗して話を引き戻されてしまった。

 

「お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞ!」

「……持ってないです」

 

 さっきまで接客対応に追われていたせいで、手持ちのお菓子は尽きている。つまり、イタズラルート確定である。爛々と目を光らせ、手をワキワキとさせているセナを見れば、逃亡が不可能であることも容易に理解できる。

 

「私、れーちゃん経由の翡翠ちゃん情報からね、ユキくんがカキ氷味ってこと知ってるんだ。でもって、ずっとお菓子作りを続けていたユキくんの手には、きっと味が染み込んでいる……」

「ちょっ、まっ」

「問答無用!」

 

 飛び上がり天井を蹴ったセナが、目にも留まらぬ速度で飛んできた。腕をクロスしたものの、その速度に耐えきれず俺は倒れ込んでしまう。

 

「ふぇへへ、おいひぃ……」

 

 リアルならこうはいかないのだけれど、このゲーム内での俺はクソ貧弱なわけであって。馬乗りになってなんか指をアムアムしてくるセナに抗う方法はないのだった。100倍以上筋力差がある相手に抗うなんて到底不可能である。

 

「ねぇ、ユキくん(ゆひふん)ユキくんの手(ゆひふんのへ)、おいひぃへ」

「いやあの、セナさん? 喋られるとくすぐったいし、なんか慣れてるとはいえ恥ずかしいんですけど。それと、確か交代ってセナじゃなかったっけ?」

 

 さっきお疲れといった身ではあるけれど、確か交代はセナと聞いていた。だから、ちょっと時間が心配だった。

 

「うん。これでユキくん成分補給できたし、頑張ってくるね!」

「いってらっしゃい……」

 

 まるで今思い出したかのように、セナは慌てて表のお店部分に出て行った。何故かお店で接客すると、経験値が入るし売上が上がるんだよね。

 

「休憩したいし、ちょっと外で爆破してこようかな……」

 

 そんな事を言いながら立ち上がり、腰のカラビナに接続された爆弾を触っている時のことだった。

 

「トリック・オア・トリック、です」

 

 外に繋がる扉から入ってきたのは藜さんだった。その仮装は魔女。魔女帽に箒のスキンが貼られた槍、ローブと完璧な魔女スタイルだった。

 

「イタズラされるしか選択肢がない、だと!?」

「ユキさんって、お菓子、持ってないん、です、よね?」

「くっ」

 

 セナとの会話を聞かれていたらしい。物資の補給前に攻めてくるとは策士である。これはもう、戦略的撤退しかありえない。そう思って紋章を展開したところで──ビットで俺は壁に縫い付けられた。

 

「逃げられない、だと」

「遠慮なくやる、です」

 

 そして、ふわりと良い匂いがした。いつのまにか壁から降ろされていた俺のすぐ隣に、藜さんの顔があった。

 

「えへへ、相合帽子、です」

 

 現状を簡単に説明すると、今俺は巨大化した魔女帽を藜さんと一緒に被っていた。息が触れ合う距離で密着しているので、なんかこうドギマギしてくる。

 

「このまま一緒に、外、行きません、か?」

「拒否権ないですよね……」

 

 ガッシリと掴まれいつのまにか抱き込まれたその腕は、俺に拒否権がない事をハッキリと示していた。まあ、腕なんて使わないでも戦闘は出来るから良いけどさぁ。

 

「これで、今日は、独り占め、です」

「なんか言いました?」

「なんでもない、です、よ?」

 

 聞こえた気がした不穏な一言は胸にしまって、俺はしばらく藜さんと街の中で敵を倒していたのだった。

 

 その日の夜、例の如く噂を聞きつけたセナがリアルで我が家に訪問。なんやかんやで泊まりになったのは、また別の話。

 

 

 そういえば、先輩方の中で仮装をしていたのは、ナース姿の翡翠さんだけだったらしい。

 




2時間クオリティだから、ヤンデレエンドはないの……許して

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