幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

175 / 243
そういえば、ユキのステータスとかって入りますか?
前文字数稼ぎやめろってクレーム入って以降、出してない気がするんですけど


第140話 新イベの予兆?

 文化祭もなんとか無事に終わり、時間は流れて大体一週間。レイドボス戦で吹き飛んだ第7の街【ミスティニウム】が、プレイヤーの手によって地道に復興しつつある中の出来事だった。

 

 ====================

 【運営からのお知らせ】

 常日頃からUPOをプレイして頂き有難う御座います。

 先のイベント【ミスティニウム解放戦】において収集したプレイヤー、モンスターのデータにより人型以外のアバターを操作可能なシステムが完成致しました。その記念に新規アイテムを100種ほど実装しましたので、是非お探しください。

 

 また11/14(水)〜11/28(水)の期間、人外対応コントローラーを実験的に適応したミニイベントを開催いたします。

 安全性の認可は受けておりますが、細やかなバグの発生が予測されます。発見した場合、速やかに運営にご連絡下さい。

 クエスト参加可能対象者は、ペットを所持している全プレイヤーとなります。

 またこのイベントは、定期開催イベントに設定されています。

 ====================

 【探索!従魔大森林 -β版-】推奨Lv --

 異界より現れたプレイヤーに付き従う諸君。

 新たな力が欲しいか? 新たな力を望むか?

 是であれば連れて行こう、未知なる力を秘めた世界へ

 否であれば連れて行かぬ、力を恐れて怯えているがいい

 

 ※本イベントはプレイヤーが所有するペットorテイミングモンスターを、プレイヤー自身が操作する探索イベントです。

 ※付喪神系ペットの活動の為、全参加プレイヤーは本来のアバターが装備している装備を“1つだけ”装備条件を無視して装備できます。

 また本イベントは、通常サーバーとは別のサーバーで開催されます。

 ====================

 

 その他の細々とした注釈を見る限り、イベント趣旨としてはペットの強化及びテイミングモンスターの調整がメインのイベントらしい。でもって、モンスターの強化用のアイテムがゲットできるとか何とか。

 まあそれはいいとして、またここの運営は相当なことを仕出かしたことは分かった。何せ人外用コントローラーで安全認可を受けてる企業、少なくとも1社しかなかったと記憶してるし。

 

「このイベント、多分付喪神系が有利ですよね。アキさんのエスペラント然り、うちのランさんのヴォルケイン然りで」

「知らん……」

 

 そんなイベントを俺は、久しぶりに訪れた【極天】のギルドホームで見ていた。好意で入れてもらった炬燵(なんと掘りごたつ式)の対岸には、普段の威厳や気迫なんてものが抜け落ちたアキさんの姿。

 魔導書のアップデートの為に来たお陰で、かなり珍しい光景が見れた。某OVAを見たときのようなイメージ崩壊を受けたが。

 

「それにしても、新たな魔法の指輪はどこで手に入れたので?」

「れーちゃんがオークションで落札してきてくれました」

「ああ、なるほどそういう」

 

 右手側に座るデュアルさんの疑問に、特に包み隠すことなく答えた。実際バレても大した内容じゃないし、そもそもザイルさんに加工を任せている以上筒抜けも同然だろうから。

 

「デュアルさんも参加するんですよね、このミニイベント」

「ええ、ウチはいつも通りほぼ全員が参加ですね。ただにゃしいだけは断固として拒否とのことですが」

「爆裂出来ませんからね……」

 

 爆裂出来ないなんてつまらないと駄々をこねて、今日もどこかの森が燃やされる姿が容易に想像出来てしまう。いや、ゲームの楽しみ方は人それぞれだから文句を言うつもりはないけど。俺だってビル爆破の常習犯だし。

 

「草原、浜辺、森林、快晴、墓地、聖堂、大海、深海、宇宙、よくもまあこれだけの指輪に、強化に必要なアイテムを買い漁ったよなお前。ほら、注文の品だ」

「ありがとうございます、ザイルさん。こんなイベントが控えてる時に」

「上客の頼みだからな」

 

 表情自体は見えないけれど、苦笑するように言ってザイルさんは魔導書を受け渡してくれた。そして受け取ったそれを装備した瞬間、本が溢れ出した。

 

 ==============================

【浮遊魔導書 参拾式】

 Int +10 Str +10

 Min +10 Luk +10%

 魔導書数 30冊

 天候変化 : 嵐天・猛吹雪・砂嵐・濃霧・火山・高山・草原・浜辺・森林・快晴・墓地・聖堂・大海・深海・宇宙

 障壁強化 : 固定値上昇

 紋章強化 : 消費MP軽減・展開高速化

 狂気付与

 神話呪文習得

 正気喪失

 耐久値 3000/3000

《魔導書内訳》

 天候変化 : 15冊

 ブランク : 2冊

 ネクロノミコン・エイボンの書・無名祭祀書・カルナマゴスの遺言・黄衣の王・グラーキの黙示録・ルルイエ異本・セラエノ断章・屍食教典儀・ナコト写本

 倉庫の書 ×3 (0/30)

 ==============================

 

 そりゃあ30冊も詰め込んでればそうもなるか。それもこれも、新規発見された大海、深海、宇宙なんて3つの環境変化アイテムが悪いのだ。そうに違いない。そうだよ(断定)

 頭の中で自己弁護を完璧にしながら、3冊ある倉庫の書の内1冊に魔導書を詰め込んでいく。そうすれば爆弾の詰まった残り2冊以外が消えて、スッキリした感じになる。ちゃんと取り出さないと効果は発揮されないけど、戦闘時以外は些細な問題だし。

 

「それじゃあお邪魔しました。軽く試運転して何かあったら、いつもみたいに報告に来ようと思います」

「まあ無いだろうとは思うがな」

「今までも特に何もありませんでしたしね」

 

 そんな軽口を叩きながら、一礼してギルドを出る。沙織も空さんもまだログインはしてないみたいだし、軽く機天・アスト30連くらいして調子でも確かめるか。

 そう思って愛車を飛ばし、辿り着いたボス戦開始地点。普段ならそれなりの行列が出来ていたりするのだが、何故か今日に限っては地面にへたり込んでいるプレイヤーが大多数を占めていた。何かがあったに、違いない……(画像略)

 

「何かあったんですか?」

「ひっ、爆破卿……! 助けてリーダー!」

「えぇ……」

 

 だからこそ原因を聞こうと話しかけたのだけど、全力で後退りして逃げられてしまった。解せぬ。ここではまだ、爆発事件を起こしたことなんて2、3回しかないのに。

 それにつられてか、大多数のプレイヤーに距離を取られてしまった。どうしようかと悩んでいると、あからさまなニンジャ装束のプレイヤーがこちらに近づいてきた。燻んだ緑色のニンジャ装束に身を包み、そのメンポには狂気を煽る字体で「翡」「翠」と描かれている。

 

「ドーモ、ユキ=サン。ジェイドです」

「ドーモ、ジェイド=サン。ユキです。それで、これはどんな状況なので?」

 

 オジギとアイサツを返しつつ、多分この人なら大丈夫だろうと判断して聞いてみた。何せこの人、翡翠さんのところのヤベー人だし。

 

「そうですね、端的に言えばボスが超強化されました」

「ほうほう」

「ボス戦開始時に踏む魔法陣が、どうやら一定周期でドス黒い色に変化するようになったようで。その色の時にボス戦を開始すると、段違いの性能のボスが現れるように」

「それで今がその黒色と」

「はい」

 

 サイレント修正なのか、次イベの布石なのか、それとも別の何かなのか。そこら辺はよくわからないが、そういうことらしい。

 なるほど、大体わかった(世界の破壊者並感)ボスを破壊する。

 

「じゃあ、元から30連戦するつもりで来たので、普通に倒してきますね」

「追加で言っておけば、未だに討伐者は0です」

「説明ありがとうございました」

 

 そんなに危険だというなら、あまり気は進まないけど装備を変えよう。魔導書も外して他も全て呪い装備へ。手持ちの武器は仕込み刀。普段通りならこれでどうとでもなるけど、さて如何に。

 

〈ボスモンスター【機装堕天・アスト】に挑戦しますか? Yes/No〉

 

 というメッセージウィンドウの、Yesボタンを勢いよく押す。普段の名前は【機天・アスト】だから、この時点でボスが別物だとわかる。

 が、しかし転送された場所は、普段通りの馬鹿でかい聖堂の様な場所。ただし、荒れ果てていたはずの教会の中は、この姿が本来の物なのだろう荘厳な姿に変わっていた。

 フィールド効果の名前も変わっている。【かつての聖堂】であったはずの名前は【荘厳なる大聖堂】へ。その効果は、光属性の効果が100%上昇すること、闇属性の効果が100%減少すること。そして敵味方全員のHPが回復不能(蘇生は可)となっている。

 

「蘇生可能ならまあ、何とかなるかな?」

 

 呟きながら見つめる先、いつもの出現場所に何時もの出現光が降りてきた。漆黒の羽を舞い散らせながら。

 そして、その光の中から1人の少女が降りてくる。薄い胸、烏の濡れ羽色の黒髪、変わらぬ真紅の目。その手先から二の腕、足先から太腿辺りまではゴツい機械で武装されている。普段よりも悪魔じみた、鋭利なパーツの多い機械で。胸当てに埋められた宝玉も真紅ではなく漆黒、纏う奥が透けそうな服も白から黒へカラーチェンジしている。背中から生える1対の機械の翼は、神々しさではなく醜悪なキメラじみた印象を与えてくる。

 追加で現れた翼も変わらず、バフが掛けられることも変わらない。簡単に言い表すなら、2Pカラーのようなボスがそこにはいた。

 

「グッバイ!」

 

 そしてそのまま、俺が放った自爆抜刀術で本体が両断された。そして俺自身も爆散し、スキルによる蘇生で復活する。抜刀術のスキル殉教(まるちり)は防御無視を付与する技。アストに関しては本体が倒れれば倒せる都合上、相性は極めて良い必殺技だった。

 

「Congratulations! って、えぇ……」

 

 せめて1発は耐えて欲しかったと思うのは、自爆技を連発できるという慢心からだろうか。そんなことを思いながら戦利品を確認すれば、見慣れているとも見慣れていないとも言える微妙な品々がドロップしていた。

 

「普段のアストのドロップ品とほぼ同じか」

 

 普段は機天の○○という名前のドロップ品が、機装堕天の○○という名前に変わっているのみ。爆破アイテム以外の素材には明るくないけど、多分相応に強力な素材なのだろう。けれど、ドロップ数は普段の大体二倍程度。

 

「光輪は使えそうだけど……ん?」

 

 肩透かしを食らったような感覚の中、1つだけ見慣れぬ名前のアイテムがドロップしていた。

 

 ====================

 アストの神臓

 機天・アストに搭載されている正十二面体の純然たる力の結晶

 純白に輝くそれはその力を解放する刻をただひたすらに待っている

 ※現バージョンでは観賞用アイテムでしかありませんが、後のアップデートで秘められた能力が解放されるかもしれません

 ====================

 

 これは……厄ネタ、ですねぇ。




なお人外用コントローラーの開発には、大いに極振り対策室が関わっていた模様

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。