幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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(あれ、うちの主人公パッシブスキルばっかりでアクティブスキルなくね…?)


第9話 ボス戦に備えて

 ランペイジ・ボア、直訳すると暴れ回る蛇…だけど調べた限りは猪。それが、俺があれから軽く調べた結果判明した、第1のボスだった。どうやら綴りが違った様だ。

 

「《フルカース》」

 

 アナコンダ級の大きさの蛇の突進(の出)を魔法で叩き潰しつつ、回想を続ける。

 

 ボスの攻撃パターンはいたってシンプル。突進、速い突進、牙での岩投げ、範囲攻撃のストンプの4種類。HPはボス相応に高いけれど、それだけの楽なボスというのが大体の攻略サイトでの総評だった。

 

「《吸撃》《フルカース》」

 

 大口を開けて突っ込んできた蛇の口に長杖を突き入れ、内側から大爆発を引き起こす。敵の気配はまだある、油断はせずに自分に強化をかけ直す。

 

 けれど、俺にとってはそれでも十二分な脅威だった。こちらはゴミの様な火力しか持たず、回避力もなく、防御力もない。だからこそ目をつけたのが、ダメージを与えるアイテム類だった。

 

「シャアッ!」

 

 新たに現れた蛇が吐き出した毒液をコートで受ける。毒状態にはならなかった…違う、防御力が下がってる。一瞬にして瀕死になったHPもそのままに、流れる様に長杖で刺突→魔力吸収→手を離す→内から爆ぜろ→クリティカル! の汚ねぇ花火だコンボで蛇を仕留める。名前は今決めた。

 

 流石に始まりの街では種類が少なく、威力もそこまで期待できる物ではなかった。だから俺は結局、失敗前提で自作…もとい改造する事にした。レシピは攻略サイトに載ってたし。

 

「これで、ラスト!」

 

 最後の蛇も汚ねぇ花火だコンボで仕留め、俺は近くの木に寄りかかって休憩する。

 

 というわけで、素材集めや実戦経験を積むなど色々な目的の為に、俺はここ東の森の奥地で1時間程休まず狩りをしていたのだった。移動時間は勿論含めていない。

 

「よし《蛇の毒液》は……集まってるな」

 

 ここで戦っていた第1の理由は《蛇の毒液》という名前のアイテムを集めるため。偶然にも《パラライズマッシュ》とか《スリープマッシュ》とか言うキノコ系アイテムの群生地を発見もしたのは、とてもラッキーだった。流石Luk極振り。

 そしてアイテムを改造する為に、50,000Dという大金を払って【スキル】を購入したのが昨日の深夜のことだった。後回しとか言ってて何故買った俺。

 

 取得したスキルの名前は【サバイバル】

 気配感知・投擲・水泳・料理・クラフト系のスキルの複合スキル。

 それぞれのスキルを最大50%の性能で発揮する事ができる。

 その出力は、5つ全て発動させているとそれぞれ10%、1つなら50%といった様に変動する。

 細かい振り分けが可能かはプレイヤーに依存する。

 

 効果を詳しく説明するなら、自分周囲10mに存在する物を感知できる【気配感知】・様々な物を作れる【クラフト系】・元々持っている【投擲】・上手く泳げる様になる【水泳】・食べ物の詳細を調べられ料理もできる【料理】の5つのスキルを、()()()()()()()()()()()()発揮できるという不人気スキルだ。

 不人気な理由は、同じ値段でケチらないで5種類をゲットした方が性能もつかいやすさも圧倒的に上だかららしい。

 俺がコレを選んだ理由? 別に本腰入れてやる訳じゃないし…という理由で、まだまだあるスキル枠をケチっただけですはい。

 

「こほん」

 

 長々と言い訳が続きそうだったので、咳払いをして気持ちを切り替える。

 そういうわけで一石五鳥くらいの気持ちで森に篭り、必要なアイテムが揃ったのが今というわけだ。何度も死に戻りしてるけど気にしちゃいけない、20からは数えてないから俺も知らないし。因みに今も絶賛デスペナ中である。

 

「帰るか」

 

 俺はそう言って、自分の装備を全て初心者の〜〜に戻す。デスペナでステータスは下がらない。徒歩で街まで帰るには30分は最低でもかかる。死んでもアイテムを落とす心配もない。つまりはそういう事だ。

 

「さあ来い! ゔっ…」

 

 すしざんまいのポーズで敵を待ち構え、無抵抗で頭上から強襲してきたフクロウの攻撃を受けとめる。当然HPが0になり暗転、次の瞬間には俺は始まりの街へと転移していた。流石デスワープだ、(移動時間が)なんともないぜ。

 

「確かフクロウって、幸運を呼ぶ生き物だったような……ちょっと損したかもしれないなぁ」

 

 転移直後、いつもの噴水前で俺は1人そう呟く。

 数日前は感慨深かった街並みも、今では見慣れたリスポーン地点である。それはつまりウンザリするほど死に戻りしてると言うわけで…

 

「あり得ない紙耐久、俺でなきゃキャラメイクし直してるね」

 

 若干ゃ頭がおかしくなってきてる気がしないでもないが、なんだかんだこのゲームは楽しいのだ。

 周りがみんな超人級の身体能力の中、現実とほぼ変わらない能力で冒険ができるのも個人的には気に入ってる。こっち(ゲーム)でできることをあっち(現実)でもできると勘違いして失敗、痛い目で見られるなんて事件もニュースで間々放送されてるし。これは別に負け惜しみではない。ないったらない。

 

 それはさておき。どこか落ち着いて作業ができる場所が欲しい。

 所持数限界の10個まで何故か売ってた()()()()を買ったのはいいけれど、今のままじゃ失敗前提とはいえアイテムの改造ができない。時間はまだ昼、普通に人は多いのだ。流石に衆人環視の中、座り込んで作業して失敗とか恥ずかしい。

 

「となると、やっぱりあそこかな?」

 

 候補として浮かぶのは、ザイルさんと遭遇したあの裏路地。あそこなら人目も少ないし、この5,000Dもした爆弾達をボロクソにしても恥ずかしくない。

 

「イベントまではまだ時間もあるし、まったりやりますか」

 

 そう言って俺は、相変わらず遅すぎる速度で歩いて行くのだった。

 

 

 そんなこんなで到着した裏路地。そこに座り込み、頭の中で例のBGMを流しながら3分クッキング……もとい、3分改造の始まりである。例のBGMで座ったからと言って、テ-レッテ-は出来ないので安心してほしい。

 

「サバイバル : クラフト」

 

 サバイバルのスキルを取得した際、特典としてついてきたサバイバルナイフ(攻撃力は皆無)を手に俺はスキルを発動させる。振り分けるのはクラフト系一択。スキルの説明が不安だったけれど、少し集中すれば特に問題なく能力値を分配することができた。某盧生の破段をイメージすれば誰でも…って思ったけれど、今じゃ相当な古いゲームだから誰も見向きもしないんだろう。

 

 閑話休題

 

 能力値の割り振り以外にも、サバイバルで使えるクラフト系スキルには欠点がある。

 1つ目は、勿論出力。普通のクラフト系スキルと比べて元々のスペックが半分程度なので、普通に物の作成に失敗することが多々ある。

 2つ目は、レシピ。普通の物と違って、レシピがスキルに保存されず手動でしかアイテム作成できない。無論失敗も増えるし、時間もかかる。

 

 他の能力にも欠点は纏わり付いており、正直誰が買うんだこんなのという感じだ。…………買う奴いたよここに。

 

「♪♪♪〜」

 

 鼻唄を歌いながら、実体化させた小型爆弾……見た目・大きさは花火の4号球?くらい……にザックリとナイフを突き入れ半分に切断する。本当の職人プレイヤーはもっとマトモなんだろうけど、俺みたいな半端者には多分これが1番早いと思います(ソースはwiki)

 

「でもこれ、絶対失敗するよな……」

 

 そんな事を呟きながら、一口大まで切り刻んだ《パラライズマッシュ》を爆弾の黒い断面にぶちまける。街の外でやったら自分が麻痺になる事請け合いである。

 そのままかき混ぜ、小型爆弾の片割れを元の形になる様に乗せ、上手くいってれば成功らしい。失敗したらゴミになるらしい。

 

「よしっ、成功!」

 

 出来上がったアイテムを収納すると、そこには《パラライズボム》との表記があった。どうやら1個目は成功したらしい。次の物も、躊躇なく同じ方法で製作を試みる。

 

「…ちっ、今度は失敗か」

 

 今度完成したのは《危険なゴミ》というアイテム。99個まで持てるから良い弾になる。アイテムを変えて試したその次は《スリープボム》その次は《危険なゴミ》といった様に、俺の幸運値があっても中々製作が安定しない。

 

「お金ないし、また狩りかなぁ」

 

 そうやって、10個あった小型爆弾は全て適当な改造の素材になった。内訳は《パラライズボム》に化けたものが4つ、《スリープボム》に化けたものが3つ、そして《危険なゴミ》に変化したのが3つ。それぞれ小型爆弾とは別に10個・10個・99個まで持てるので、ボス戦で頼れる物になってくれる事間違いなしだ。

 

「とりあえず、お昼食べなきゃな」

 

 メニューの示す時刻は15:34。

 良い加減お昼を食わねばなるまい…いや、軽い間食でいいか。そしたら掃除もしなくてはいけないし、冷蔵庫の中身を補充もしておかねばいけないだろう。何だろう、リアルのことを思い出したら急にそっちが気になってきた。

 

「再ログインは…多分夜か」

 

 そんな計算を頭の中でザックリ済ませ、俺はリアル世界へと帰還した。…ボスの攻略動画とかあるかな、ガッチガチに縛ったやつ。

 

 イベント開始まで、あと9日

 




【極振りスレ】第七の使徒襲来

 225.名無し@ニンジャ
 ひでぇ、あんまりだぁ…これが人間のやる事かよぉ…

 226.名無し@武闘家
 おぉ、どうしたのですかリューノsニンジャよ…

 227.名無し@短剣使い
 どうした?

 228.名無し@魔法戦士
 何があった?

 229.名無し@ニンジャ
 極振りしてた時よりマシになったステータスで俺は、いつもの様にレベル上げに出た西のフィールドから帰ってくる途中だったんだ。
 だけど俺はそこで見てしまった、あの悍ましい光景を。

 230.名無し@片手剣使い
 前置きが長い。3行でよろ

 231.名無し@ニンジャ
 幸運極振り君
 引き摺り回されてた
 【銀閃】に

 232.名無し@短剣使い
 !?

 233.名無し@魔法戦士
 !?

 234.名無し@魔法使い(炎)
 !?
 それは、フィールドでですよね?

 235.名無し@ニンジャ
 勿論、手を繋がれて雑巾の様にズルズルと。しかも途中で死んでも、街からまた連れて来られる鬼畜ぶり。そのまま影ワンコと戦闘させられてた。レア泥ランニングに付き合わされたんだろう……可哀想に

 236.名無し@鞭使い
 なんて、酷い扱いなんだ……
 俺、今度あったら優しくするわ。厳しく当たってゴメンな後輩…

 237.名無し@魔法使い(炎)
 未だにAglがほぼないので移動速度は分かりますけど、幾ら何でもそれは……
 まあ本人たちが同意の上なら、私達は関われませんが

 238.名無し@片手剣使い
 なるほど…つまり【銀閃】ちゃんはSという事か

 239.名無し@気持ち的にナイト
 1人だけ目の付け所が違う…
 流石です、先輩!

 240.名無し@魔法使い(炎)
 という事は、後輩君はM…?

 241.名無し@鞭使い
 閃いた!

 242.名無し@短剣使い
 >鞭使い
 通報した

 243.名無し@鞭使い
 なんでや!?

 244.名無し@武闘家
 なんでディア○ルはんを見殺しにしたんや!

 245.名無し@気持ち的にナイト
 あとは頼む、極振りさん。
 みんなに、笑顔を…

 246.名無し@魔法使い(炎)
 なんなんでしょう、この茶番劇……別作品混ざってるし

 ・
 ・
 ・

 301.名無し@鞭使い
 幸運極振り君と遭遇したから、お古の装備を売ってきたった

 302.名無し@魔法使い(炎)
 あー…そういえば鞭使いさんって、ちゃっかり露天売りしてましたよね……誰も来なそうな裏路地で

 303.名無し@片手剣使い
 ふむ…野外プr

 304.名無し@短剣使い
 >片手剣使い
 通報した

 305.名無し@片手剣使い
 対応早すぎィ
 で、売りつけたのはなんの装備なんだ?

 306.名無し@鞭使い
 試作トラベル改二シリーズを一式。ついでに幸運の耳飾りをプレゼントして、うさぎのしっぽを透明化してきた。後フレンドにもなった。

 307.名無し@魔法戦士
 おおぅ、アレか……(鞭使いの自作の…)
 相当搾り取ったんだろうなぁ

 308.名無し@片手剣使い
 搾り取った(意味深)

 309.名無し@鞭使い
 >片手剣使い
 バラバラに刻むぞ
 ところがなんと、一律2万Dで売りつけてきた

 310.名無し@武闘家
 安!?
 大出血サービスじゃないか!!

 311.名無し@魔法使い(炎)
 えっ、でも鞭使いさんって私と同性だったんじゃ…

 312.名無し@鞭使い
 いや、アレは男女指定なしの装備だから。
 それに、70くらい前のレスで、あんな事をされてたって聞くとさ…優しく接してあげたくなるじゃん?

 313.名無し@魔法戦士
 確かに。暴力系とは恐れ入った

 314.名無し@片手剣使い
 つまり、ここのスレ民になら鞭使いは安く装備を卸してくれる…?

 315.名無し@鞭使い
 >片手剣使い
 お前には作らん、売らん、買い取らん

 316.名無し@片手剣使い
 最近の姉御、きついや…

(以下雑談)

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