幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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デュアル戦(中身入り)はあまりに見応えがない(延々と攻撃を弾きつつ1人1人潰していくだけ)のと、最初に脱落した罰でカットされました


閑話 それぞれの極振り戦(vsレン)

 極振りの1人、Agl極振りであるレンが創造したダンジョンは、朽ちた古塔とでも言うべき様相を呈していた。それ故にギミックは多いがトラップは少なめの構成となっており、敵の強さもそれほどではない為、十分なAglを持っているプレイヤーにとっては比較的攻略しやすいダンジョンとなっていた。ただし、バイクなどの乗り物は実質使用不可能なため、生身で高Aglを持っているプレイヤーに限るが。

 

 1Fは至って普通な、遺跡風ダンジョン

 敵のレベルは35程で、Agl150程の脚が速くアイテム強奪や状態異常を発生させる敵がメインの階層。

 

 2Fも1Fと同じ遺跡風ダンジョン

 敵のレベルは40程度、敵のAglが200になってる以外、大体1Fと同じような構成だ。しかし、床が崩れやすくなっているため、そこを踏みぬいたら1Fに落下する。

 

 3Fも遺跡風ダンジョン

 但し、1、2Fとは趣が少々異なる。床は所々が崩れ落ち、突風などの罠によって落下しやすくなっている。敵のレベルは40と変わらないが、Aglは250まで上げられている。

 

 4Fも3Fと同じ形式

 但し、塔の壁にも所々穴が空いており、時折突風が吹き込んでくる。勿論塔の外へ落ちれば1Fからやり直しである。敵の平均レベルは45となり、Aglも300まで上昇している。

 

 5Fはボス部屋

 柱以外壁のない拓けた空間で、Agl500のコンドル型ボスが待ち構えている。想像以上に速く攻撃力は高いが、その分装甲は薄くHPは低めとなっている。

 

 6Fからは古塔形式

 下がボス部屋故ここには床がちゃんと存在しているが、それ以外は凄惨の一言に尽きる。壁は崩れ、上層への階段も壊れ飛び乗っていかなければならない。敵の平均レベルは50、Aglも500となり、罠もプレイヤーを吹き飛ばすもののみになる。

 

 7Fも同様

 至る所が崩れ、植物が侵食し、上層が見えてしまっている。まあ、正規のルートでなければ上がれはしないのだが。敵の平均レベルは60、Aglも600の大台に乗り上げていく。

 

 8Fはさらに酷い

 壁はなく、床は足場としか呼べない大きさで点在するのみで、それでいて遮蔽物がない為敵と風に襲われやすい。大体の敵が飛行を始め、平均レベルは65となり、Aglは650となる。とても辛い。

 

 9Fは実質ボス部屋となっている

 壁はなく、天井は遥か高くに見えるコロッセオの様な階層。出現するモブは、レベル70の【タワーロックドラゴン】一体のみ。緑色を基本色に、黄色の紋章と黒のラインが入ったその姿は、一部のプレイヤーにとって懐かしいナニカを想起させる。Agl700とかいう数値のせいで、無駄に強くて嫌気がさしてくる。

 

 そこまでの敵を討伐し、辿り着くことのできる10F。そこで待つレンは、それなりに早く戦闘を開始したが当然の如く無敗。しかも同類2人が負けたことで気を引き締めた結果、最初の名乗り以降姿が見えないなんてこともザラになっていた。

 

 

 レン塔9F、そこには今複数のエンジン音が鳴り響いていた。右を見ても左を見ても、今この層にはバイクが溢れていた。【タワーロックドラゴン】は討伐されその姿を次層への階段へと変じ、挑戦者たちを最上階へと誘っている。

 

「ふむ……随分と、減ってしまいましたね」

「すみません、僕が不甲斐ないばかりに……」

 

 最初に残存メンバーを数えていたのはZF、次に頭を下げていたのはイオ。2人のギルドマスターがいることから察せる通り、今レン塔を攻略しているのは【モトラッド艦隊UPO支部】と【空色の雨】の合同部隊だった。

 

「無理を言ったのはこちらなんだ、気にしないでいい」

「これで前よりも、被害は少なくなっとるしのう」

 

 この2つのギルドからレン塔を攻略していた理由は簡単。前者は全ギルドメンバーが、ボス手前までは追いつけることが出来たから。後者は、レイドバトルで助けられた縁があったから。更に前者のギルドでは回復役を求めていて、後者のギルドでは火力を求めていた。この2つの理由によって、一時的な同盟関係は成立していた。

 

 因みに至って普通に会話しているが、Dホイールの究極の姿となっているシド、走り出して合体したハセ、どう見てもアンモナイトなZFが男の娘メイドのイオを囲むという情報量の多い絵面となっている。

 

「それで、これから挑むレンさんなんですけど……ぶっちゃけ、勝算はあるんですか?」

「0ではないと、言いたいですね」

 

 イオの問い掛けに、ZFが落ち着いた声音で答えた。

 元々フルレイド揃っていた連合だったのだが、ここまでの行軍でその大部分がいなくなってしまっていた。現状残っているのは数名。

 

 UPO支部側は6名

 ギルドマスターのZF

 サブマスターのシド

 同じくサブマスターのハセ

 モトラッド艦隊のバイクに乗ったプレイヤーが2名

 どう見てもマキシマムドライブしている、『俺自身がバイクになることだ』と悟った赤いバイクのプレイヤー。

 

 空色の雨側は1名

 ギルドマスターのイオ

 

 その合計7名が、現状残っている戦力であった。それを貧弱と見るか少数精鋭と見るかは人それぞれだろう。だが少なくとも、そこらのボスであれば圧倒できる面子であることは確かだった。

 

「少なくとも、1分は保つんだ。だが今までは、ヒーラー役がいなくてな……結局削り負けていた」

「それが理由で僕を呼んだんですね。一応、大天使なんて称号貰ってますから」

「ええ。次の戦いこそ本命です。極振り戦で消費したものは全て戻ってくるので、気兼ねなくお使い頂きたい」

 

 そう言ってZFは、器用に魔法を使ってイオをシドの背中……背中? 接続されてるバイクに乗せた。

 

「それでは、総員出撃です」

「「「「「おおォォォォォ!!」」」」」

 

 エンジン音と雄叫びが木霊し、巨大な音となってフロアを揺るがした。そしてその勢いのまま、ボスが変化した階段を駆け上がっていく。

 そうして辿り着いた場所は、単純に綺麗な空間だった。塔の天辺なだけあって、障害物が一切存在しない平らで広い空間。時間的に夜な為空には満天の星が輝いており、十分な明かりは確保しつつも幻想的な雰囲気を醸し出している。

 

「また来てくれたのか。諦めず挑戦してくれるのは、私は嬉しいぞ」

 

 そしてそこでは、1人のプレイヤーが腕を組んで待ち構えていた。橙の長髪にサイドテール、黒いサングラスにアイスブルーの眼の女の子。特徴で分かりやすいのは、まずサングラス。その次に、燕の装飾が飾るターコイズブルーの、外側に1枚羽の様な飾りのある膝から下を覆う冷たい風を纏うブーツ。

 ペットとのユニオンも果たし、全力のレンは不敵に微笑んでいた。

 

「ん、新顔が1人いるのか。なら、改めて名乗らないとな。

 私が極振りの1人、Agl担当のレンだ。以後お見知り置きを頼むぞ」

「ええ、これで会うのは2回目ですけどね」

「そうだな。レイドボス戦以来だが、楽しみにしているぞ」

 

 笑顔でサムズアップするレンを見て、イオは内心気分が上がっていた。覚えていてもらえたことと、敵として見てもらえていること。そして久しぶりのPvPの気分に心を踊らせ──

 

「それじゃあ行くぜ。追いつけよ?」

 

 そう言ってレンが、腕時計のようなアイテムを装着した瞬間、そんな気持ちはどこかへ消え去った。訪れたのは、どうしようもない戦闘の緊迫感。

 

「来るぞ、備えろ!」

 

 そんなシドの号令と共に、レンが動き出す前にバイク艦隊が動き出した。アクセルは全開、限界を超えた速度での爆走が始まる中、イオの耳は1つの小さな電子的な合成音を捉えた。

 

 start-up

 

 瞬間、レンの姿が何処かへと消え去った。そして遠くの方から、バイクの爆発音が轟く。パーティメンバーの欄を見れば、驚くことに既に1名が脱落していた。そして、この場にいる全員が確信する。今までと違い、張り切って確実に殺しに来てると。

 

 この場ではレン以外知る由も無いが、腕時計型のアイテムは『自身の時間を加速することでスキルのチャージを終わらせる』課金アイテム(100円)だ。容赦なくそれを使った今、レンの速度は最初からクライマックスであり、攻撃力も最高潮だった。

 

「ありったけの攻撃を!」

 

 ZFが自身も最大限の攻撃を全方位に放ちながら指示を飛ばし、全員がそれに応じて空間が破壊に染まる。どれか1つでも触れた場合、極振りなら即死し兼ねない殺意のフィールド。

 

「【沈黙の日曜日】」

 

 普通なら躱しきれないダメージの雨を、レンは更に速度を上げることで無理矢理に回避することに成功していた。

 【沈黙の日曜日】という、発動57.4秒後に自身のHPを0にする代わりにAglを2.5倍にするスキル。パッシブスキルとしてAgl20%増加の役割も担うスキルが、レンのAgl値を36万オーバーという意味の分からない数値まで跳ね上げていた。

 

 疾風一陣

 気がつけば、ZFが嵐のような風と雷に飲まれ消えていた。

 

 雷光一条

 気がつけば、ハセが半身を捥がれ赤いバイクが消し飛んでた。

 

 疾風迅雷

 ハセが完全に消し飛び、呼び出した外装は嵐に呑まれスクラップと化した

 

「クソッ!」

 

 背のイオを投げ出すように、シドが攻撃を繰り出した。呼び出された機皇帝も相まって、それは十分に強力な攻撃となるはずだった。

 

 紫電一閃

 けれど、結果は無情にも訪れる。僅かにダメージを減少させたからか、シドの上半身がバイクから剥がされ千切れ飛んだ。手に持っていた剣もカラカラと音を鳴らし、回転しながら何処かへ飛んで行く。

 

「滅」

 

 投げ捨てられ、未だ空中を漂うイオもそれに続いた。振り下ろされる、ニーソに包まれた脚。そしてその奥に一瞬だけ見えた白いもの。余りに速すぎる速度が、システムの補正を追い越した瞬間。それが、イオがこのボス戦で見た最後の光景となった。

 

 3、2、1

 Time-out

 

「REFORMATION、なんちゃって」

 

 そして、誰もいなくなったボス部屋にレンが姿を現した。爆発する風に髪をたなびかせ、スーパーヒーロー着地で止まる様はまさにヒーローのそれだった。行った所業はともかく。

 

「やっぱり、私をまともに相手できるのってアキくらいなんだよなー……ザイードは遅いし、あと1人くらい増えないもんかね」

 

 電光石火の勢いでボス戦が終わった部屋で、夜空にそんな声が吸い込まれていった。

 

 




レンの必殺技
【衝撃のファーストブリット】(未使用)
 HP30%以下で発動可能。
 1秒間エネルギーをチャージし、蹴り込んだ相手に向けて解放する。同時に、この際の反動ダメージを無効化する。
【フォトンブリッツ】(未使用)
 HP10%以下で発動可能。
 戦闘終了時まで、自身のAglを倍加する。同時に、自身の思考を加速する。

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