幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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フブキchを見つつ、魔女の旅々を読んだり、古戦場を走ってたら遅れました。だが私は謝らない。


閑話 それぞれの極振り戦(vsセンタ)

 極振りの1人、もう1人のStr極振りであるセンタが創造したダンジョンは、自身がRPするキャラクター……その元となった神話に準えた物だった。アキと違い1〜9層まで全てをRPに捧げている。その為、ボス・ギミック・形状全てに平等にポイントは使われているバランスの良いダンジョンとなったのだった。

 

 1層の敵平均レベルは40

 影の国への道、その最初を再現するように作られた草原。草木は枯れ果てたここでは、白骨化した骸骨系モンスターが襲いかかってくる。

 

 2層の敵平均レベルは42

 かつての戦士が残したような武器が突き刺さり、闇の深い森のような様相を呈している平原。1層の敵に加え、幽霊やプレイヤーを行動不能にするギミックが追加されている。

 

 3層の敵平均レベルは42

 一切の光がない沼地で、足を止めれば食われてしまうステージ。この層を進むのであれば、暗視系のスキルやアイテム、又は光源を発生させることが必須となる。だが、基本的に光源には敵が怒濤の勢いで寄ってくる仕様となっている。

 

 4層の敵平均レベルは45

 フィールド全てが大時化の海となっている、初見殺しのステージ。空中、水上、水中の何れかのルートを辿る必要があるが、どのルートでも絶え間無くモンスターが襲いかかってくる。

 

 5層はボス部屋

 ボスのレベルは56。テント以外特に障害物もない、薄暗い崖に面した平地。ボスは筋骨隆々の戦士が10人。まあ、4層までを突破したプレイヤーなら工夫すればどうとでもなる相手だ。

 

 6層は一本橋

 ボスやモンスター、トラップなどは基本的に一切ない。が、普通に渡ろうとすると中心が船のマストのように立ち上がり、跳ね返される。無論、橋から落ちたら即死である。正攻法で突破するのなら、Aglが500は必要という無駄に高難易度のギミックだ。

 

 7層の敵平均レベルは60

 怪物の首が括られた9つの柵と、1つの城壁があるステージ。【ダン・スカー・サーペント】というモンスターのみが出現する。ただし、その出現速度は並のモンスターハウスを遥かに凌駕している。

 

 8層の敵平均レベルは70

 城壁と城壁の間のステージ。基本的な仕様は7層と同じとなっている。

 

 9層はコロシアム

 ダンジョンの全体的な軽量化によって実現したもう1つのボス部屋。そこで待っているボスのレベルは90。その正体は、紫タイツで紅の呪槍を2つ構えたあの人である。

 

 同じStr極振りであるアキとは、似ているが非なる構成のダンジョン。場合によっては個人での突破も不可能ではなく、逆にフルレイドでの参戦も不可能ではない。しかし、徹底的にプレイヤーを篩にかける仕様から、センタがプレイヤーとの戦闘を始めたのは速くはないが遅くもない時期だった。

 アキのダンジョンよりは難易度がまだマシなだけあって、当然10層のセンタへたどり着くプレイヤーは少なくない。同時に、センタは極振りの中で見るならステータスが1番低い。つまり、1度くらい撃破されてもおかしくはない筈なのだ。

 

 しかし、未だ不敗。

 

 その原因は、センタを極振り足らしめているプレイヤースキルだった。

 

 

 センタ塔10F

 極振りが待ち受けるボス部屋となっているそこでは今、2種類の爆音が轟いていた。

 片や、灰と黒の2頭が牽く鎌戦車(チャリオット)が掻き鳴らす轟音。例の青タイツを纏うセンタが地面を削るように駆るその戦車は、防御が低いプレイヤーなら轢き潰せる破壊力と、高速プレイヤーに追いつくことのできる速度を持っていた。

 片や、その戦車に食らいつき時折追い越しすらしているケッテンクラートの鳴らす爆音。たった1人の挑戦者が駆るその戦車は、数度の交錯を経て尚破壊されず唸りを上げていた。鹿撃ち帽にインバネスコートを纏い、マスケット銃を担ぎパイプを咥える挑戦者。その名はシルカシェンと表示されていた。

 

「へっ、相変わらずやるじゃねぇか!」

「何度もこうして打ち合っているからね。自ずと癖も読めてくるさ」

 

 双方が駆る愛車の交錯に合わせ、センタの朱槍と挑戦者の持つマスケット銃が交差する。通常であれば、負けるのは間違いなく通常プレイヤーである。しかし、弾き飛ばされたのは()()()()だった。

 

「それに、貴方たちに憧れて組んだこのビルド。そう易々と負けてやるものか!」

 

 挑戦者がセンタに拮抗することができているのは、偏にそれが理由だった。

 極振りに憧れ、極振りを参考にし、最終的に薬でもキメてるんじゃないかという変人の領域に辿り着いた。StrとLuk以外を捨て、空間認識能力という最大の関門を突破した気狂い。バイクという補助装置、ペットというブースターによって極振りと拮抗し得る領域まで辿り着いたプレイヤー。それは、準極振りとでも言うべきだろう。

 

 鎌戦車が弾き飛ばされ2頭の馬がたたらを踏み、ケッテンクラートは回転しながら大きく弾き飛ばされていく。地面との間に火花を散らしながら、あり得ないことに2人の駆り手の視線が交錯する。

 

「《パワーショット》」

 

 直後、ケッテンクラートの駆り手が発砲した。努力の果てに実現した、Str値8640という本家に迫る数値。数秒しか実現不可能な理論値ではあるが、武器スキルによる強化も乗ったそれは必殺の一撃となる。

 

「舐めんな!」

 

 しかし、手が届くことと、手にかけることは別物だ。況してや、その相手が培った技術1つで極振りに食いつく化物であれば尚更である。

 一直線に飛翔した魔弾は、ルーン文字で綴られた障壁に激突する。当然それは破られるが、一回の着弾を介した為に威力と速度が僅かに殺されていた。そうなってしまえば、センタにとって対応は容易だった。

 飛来した銃弾に朱槍を合わせ、掬い上げるように跳ね上げる。なんでもないことのように行われた絶技で、必殺の一撃は見当違いの方向に逸らされた。

 

「お返しだ!」

 

 直後、センタが反撃を放った。極振りとしてのStrで放たれた投げ矢は、同じく必殺。しかしそれを、必殺の銃弾が相殺する。こうして、必殺が連続する奇妙な戦闘が幕を開けた。

 

 戦車とケッテンクラート

 朱槍とマスケット銃

 投げ矢と銃弾

 魔法と散弾

 

 連続する必殺の攻撃は、互いの愛車とステージを加速度的に崩壊させていく。

 

「そらぁ!」

「吹き飛べ……!」

 

 何度目かの愛車同士の衝突の時、漸くそれは訪れた。耐久値の限界によって、2つの愛車が崩壊する。砕ける愛車を見送って、2人の変人が大地に降り立つ。

 

「行くぞカプノス、全開だ」

「全呪解放、加減は無しだ」

 

 シルカシェンが己のペットであるパイプを思い切り吸い、センタはペットを召喚しつつ自身にバフをかける。一触即発の空気が漂う中、先に動いたのはシルカシェンの方だった。

 無言での散弾発射。1発でも当たれば即死の極振りにとって、これ以上ない攻撃。ユキやザイルなら、恐らくこの一撃のみで倒すことが出来ていた攻撃。けれどそれは、センタに限っては大きなチャンスだった。

 

「うりぼう!」

 

 センタの声に応じて、ペットのうり坊が巨大化。その一定時間に1度遠距離攻撃を無効化するスキルによって、センタを完全に庇い盾となった。その隙に足下を抜け、低い姿勢でセンタが疾走する。

 

「ゲイ・ボルク!」

 

 そして、朱槍が跳ね上がりシルカシェンの胸を貫いた。が、そのHPの減少は残り1の時点で停止する。【偽りの不死身】という、簡単に言えば食いしばりスキルのお陰だ。

 

「フッ!」

 

 胸に槍を突き刺されたまま、シルカシェンがそのマスケット銃を跳ね上げる。無論掠っただけでHPが消し飛ぶその一撃は、スウェーして避けられてしまう。だがそれこそが、狙いでもあるのだった。

 

「《バーストショット》」

 

 センタの顔前を銃口が通過する直前、その銃口が爆発した。当然、直撃したセンタのHPは0に向け急速に落ちていき……同じく1で耐えた。同じ【偽りの不死身】スキルを持つ以上、それは当然の帰結だった。

 

「チッ」

 

 舌打ちしながら、センタの吹き飛ばされるままに槍が引き抜かれる。その瞬間、シルカシェンの咥えていたパイプが身代わりとして砕け散った。そして、スキル発動後で隙だらけのシルカシェンにうりぼうが突進した。

 

「デカブツが……!」

 

 巨体×十分な速度=殺傷力の計算によって繰り出された突進は、Strゴリ押しの加速によって回避され、銃を叩きつけられたことによって終幕した。カシャンと音を立てて崩れたうりぼうの欠片が舞う中、視界を戻したシルカシェンの目にセンタの姿が映ることはなかった。左右を見渡しても姿はなく、背後に移動するには時間が足りていない。そこから導き出される結果は──

 

「上か!」

「ゲイ・ボルク=アイフェ!」

 

 空を見上げた直後、朱色の流星が降ってきた。それも、30の鏃として分裂して。槍一本なら迎撃の手段はあった。その為に、1発しか装填出来ない銃には弾も込めてある。

 

「クッ!」

 

 苦し紛れに放たれた弾は、数個の鏃を蹴散らしはしたが見当違いの方向に弾かれる。そして、破滅が訪れる。無数の鏃が直撃し、外れたそれらが起こす衝撃で食い縛りスキルが連続して発動する。残り10数秒しか残ってないとは言え、2850というLuk値が無理やりに生存させる。

 

「とっておきをくれてやる。焼き尽くせ木々の巨人、『灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)』! 」

 

 終わったと、思った直後のことだった。床を突き破るような演出と共に、燃え盛る木々で作られた腕がシルカシェンを掴んだ。同時に点灯する『拘束』と『燃焼』の状態異常アイコン。

 

「悪りぃな、今回も俺の勝ちだ」

 

 そんな風に不敵に笑うセンタの姿を最後に、MPが切れたことによるバフ切れでシルカシェンのHPは0に落ちた。

 




センタの必殺技
『蹴りボルグ(分裂)』
『ウィッカーマン』

今回登場した、読者様と話してて生まれた準極振りさん
==============================
 Name : シルカシェン
 称号 : リスペクター▽(Str・Luk+10%)
 Lv 60
 HP 3050/3960
 MP 3000/3000
 Str : 700(2400) Dex : 0(50)
 Vit : 0(40) Agl : 0(0)
 Int : 0(0) Luk : 100(315)
 Min : 0(0)

《スキル》
【ガンマスター】【筋力強化(大)】
【幸運強化(大)】【金剛力】
【豪運】【偽りの不死身】
【空間認識能力】【肉斬骨達】20%
【レンジャー】
【月ノ兎】
 Luk上昇20%
 アイテムドロップ確率+10%
【銃弾製作(大)】

《武器》
【マスケティーア】
 Str +300 Dex +50
 属性 : 無
 装弾数 1/1
 クリティカルヒット確率上昇(大)
 射程延長
 装弾遅延(小)
 弾種制限解除

《防具》Vit +40 Str+10% Luk +10%
 頭 鹿撃ち帽子
 体 インバネスコート
 手 幸運の指貫グローブ
 足 剛健のスラックス
 靴 幸運のブーツ
 アクセサリ Luk +50%
==============================
愛車
==============================
【ケッテンクラート】
 攻撃力(低)スピード(極高)Agl 1000
 燃費(最悪)ハンドリング(悪)
 防御力(極高)オフロード(高)
 操縦者保護  自動防御
 道路作製(MP消費)
==============================
ペット
==============================
 Name : カプノス
 Race : 付喪神・真
 Lv : 40/40
 HP 1000/1000
 MP 2500/2500(2875)
 Str : 150 Dex : 50
 Vit : 50 Agl : 100
 Int : 80 Luk : 600
 Min : 50
《ペットスキル》
【完全憑依 : 器物】
【スキル共有】
【パイピング】
 5秒ごとにMPを10消費して発動。自身のステータスをどれか1つ、ランダムに主人に加算する
【ドーピング】
 5秒ごとにMPを10消費して発動。自身のステータスをどれか1つ、ランダムに30%上昇する
【変化物】
 対霊性を獲得する
【ガンギマリタイム】
 HPが80%以上の時自動発動
 正気度が10減少し、全ステータスを20%上昇する
《スキル》
【自暴自棄】
【忠誠ノ誓イ】【魔力核】
【オーバードーズ】
 自身の最大HPを30%減少させて発動
 自身の全ステータスを60秒間1.5倍にする
==============================
理論最大値
Str 8640
Luk 2850
==============================
クリティカル・レア泥・廃火力・高機動・高防御を(多大な金を代償に時間限定で)実現した人。凡人がやるには、最初期のクソ期間と空間認識能力に適応できるかの高すぎる壁があって、それ以降もユキでもないと破産するレベルで金がかかるのでやっていけないビルド。ついでにコネも必要。
因みにペットスキルを見るとヤバイもの吸ってるようにしか見えないけれど、実際は紅茶のいい香りがする。つまり紅茶ガンギマリ。=パンジャンドラム。体験したみんなには空を見上げたパイとウナギのゼリー寄せをプレゼント。今なら早期特典としてマーマイトも付いてるぞ

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