クロスアンジュ LIGHTNING EDITION ~天使とドラゴンと五人の巨人使い~   作:ヒビキ7991

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Ep.08/不思議な夢の出来事

~墓地~

 

 

ある日の夜、アンジュは天馬とモモカと共に墓地を訪れた。二人の前には、アンジュと同じ第一中隊のメンバーだった3人の墓がある。

 

 

アンジュ

「《ココ・リーヴ》、《ミランダ・キャンベル》、そして第一中隊隊長だった《ゾーラ・アクスバリ》・・・。みんな、私が死なせてしまった兵士達・・・。」

 

天馬

「・・・どんな人達だったんですか?」

 

アンジュ

「ゾーラ隊長は面倒見が良くて、サリアやヒルダ達第一中隊のみんなに慕われてたけど、彼女すっごいレズビアンだったの。」

 

モモカ

「・・・詳しくは聞かないでおきます…」

 

アンジュ

「ココとミランダは私の同期で、ミランダは面倒見のいいしっかり者。ココはミランダの友人で、12歳になったばかりだった。私が絵本に出てくる強く賢く美しいおとぎ話のお姫様に見えたみたいで、私にベタ惚れだったらしいわ。」

 

天馬

「・・・聞かせてくれませんか?亡くなるまでの経緯。」

 

アンジュ

「・・・私の初出撃の日、私は命令を無視して逃亡し国へ帰ろうとした。でもその時ココが、自分も魔法の国に連れてってほしいって言ってついてきたの。でもその直ぐ後、私達の真上にシンギュラーが開いて、ココがシンギュラーから出てきた大型ドラゴンの攻撃を受けて亡くなった。ミランダもその後、機体から放り出されてドラゴンの餌食になった・・・。」

 

モモカ

「そんな・・・。」

 

アンジュ

「私は恐怖のあまり錯乱して、ゾーラ隊長の機体にしがみついた。でもそれが命取りとなって、私とゾーラ隊長は大型ドラゴンの攻撃を受けて墜落。ゾーラ隊長は戦死して、辛うじて生きてたのは私だけだった・・・。」

 

天馬

「アンジュさん・・・。」

 

アンジュ

「最初は、3人が死んだのは自分のせいじゃないって思い込んでた。でも、やっと分かったの。悪いのは現実を受け入れようとせず、元の世界に戻りたいと思っていた自分だって。そしてあの時、天馬に言われて改心した。もう誰も死なせないって。でも、出来ることならもう一度、3人の笑顔を見たいって思うときがあるの。いっそのこと、過去の自分と入れ替わって3人を助けてあげたいって。」

 

天馬

「過去を振り返ってばかりじゃなく、前を向いて今どうするかを考えるのが重要です。過去に辛い経験をしたのなら、今後同じ経験をしないようにはどうすれば良いのか。それが重要です。司令官も言ってたじゃないですか。死んだ仲間の分もドラゴンを倒せって。」

 

アンジュ

「・・・そうね。」

 

天馬

「でも、正直俺もアンジュさんと同じ気持ちなんです。俺はその3人の事を全く知りませんが、出来ることなら俺も過去へ行って、3人を死の運命から守ってやりたい。」

 

アンジュ

「天馬・・・。」

 

 

 

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~アンジュの部屋~

 

 

アンジュ

「じゃあ、おやすみ。」

 

天馬

「おやすみなさい。」

 

モモカ

「おやすみなさい、アンジュリーゼ様。」

 

 

その後、3人は部屋に戻り、アンジュとモモカはベッドで眠りについた。

 

 

天馬

(もしも、過去へ行くことが出来たら・・・。)

 

 

天馬も椅子に腰掛け静かに眠りについた。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

~デッキ カタパルト~

 

 

眠りについた天馬は夢を見ていた。夢の中で、彼はアルゼナルのデッキにいた。時刻は夜なのか、外は暗い。

 

 

天馬

(ここは、アルゼナル?)

 

 

天馬の周りには第一中隊のパラメイルがスタンバイしており、中には見慣れない紫色のアーキバスベースのパラメイルとグレイブを2機発見した。紫色のパラメイルには金髪の女性、グレイブ2機にはロングヘアーのアンジュと黒いライダースーツを着た緑色のショートヘアーの少女が乗っていた。さらに辺りには天馬達雷門メンバーのパラメイルの姿が見当たらない。

 

 

天馬

(どうなってるんだ?俺達のパラメイルどころか、アンジュさんのヴィルキスの姿も見えない。)

 

 

天馬はふと後に目を向ける。すると、白いライダースーツを着た藍色ツインテールで薄紫色の瞳の少女がいた。天馬は初めて今の自分を認識した。

 

 

天馬

(もしかして俺、この子のパラメイルになってるの!?)

 

 

天馬は少女の乗るグレイブになっていたのだ。

 

 

???

『ゾーラ隊、出撃!』

 

 

謎の誰かの掛け声と共に、第一中隊は出撃。グレイブとなった天馬も少女と共に出撃した。

 

 

???

『モノホンのパラメイルはどうだ?振り落とされるんじゃないよ!』

 

???

「は、はいっ!」

 

 

天馬

(やっぱり俺、この子のパラメイルになってるみたい。)

 

 

第一中隊はゆっくりとフォーメーションを組み始める。すると突然アンジュのグレイブが左後方へ離脱し、サリアのアーキバスが追いかけた。

 

 

天馬

(アンジュさんのパラメイル、何処へ行くんだ?)

 

サリア

『アンジュ、もうすぐ戦闘区域よ!戻って!』

 

アンジュ

『私は、アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギです!私は、私の元居た国へと帰ります!ミスルギ皇国へ!』

 

 

天馬

(敵前逃亡し国へ帰ろうとする・・・。アンジュさんから聞いた話と同じ展開だ。)

 

 

すると突然、天馬のグレイブが機首を反転し、アンジュを追いかけた。

 

 

???

「アンジュリーゼ様!私も連れてってください!私も、魔法の国に!」

 

 

天馬

(魔法の国に憧れアンジュを追う少女。もしかして・・・。)

 

 

???

『何言ってるのココ!戻ってきなさい!』

 

 

もう1機のグレイブが後を追う。

 

 

天馬

(この人が、戦死した新兵の一人、ココ・リーヴ!)

 

 

ココがアンジュとサリアに追い付いた途端、3人の真上にシンギュラーが出現。中から紫色の大型ドラゴンが姿を見せた。

 

 

天馬

(まさか・・・。)

 

 

ドラゴン

「ギャアアアアアアアア!!」

 

 

ドラゴンは真上から青い光を放ち、光はココの腹部とグレイブのボディを貫通。

 

 

ココ

「っ!?」

 

 

ココは身体を真っ二つにされ口から大量の血を吐き、グレイブはコックピットから真っ二つにされた。

 

 

天馬

(あ・・・あ・・・。)

 

 

???

「ココ?ココーっ!」

 

 

ココとグレイブは共に海へと落ち、グレイブは爆発した。

 

 

ドカーン!

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

天馬

「わああああああ!」

 

 

天馬は目を覚まし飛び起きた。窓には日が差し込み、時計は5時丁度。アンジュもモモカも目を覚ましていない。

 

 

天馬

「今の、夢・・・だったのかな?」

 

 

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~食堂~

 

 

その後、天馬は食堂で朝食を食べていたが、先程の夢の事を考えていたので食が進まなかった。

 

 

天馬

(さっきの、本当に夢だったのかな…)

 

 

隣にはアンジュとモモカ、そして機嫌の悪いエマがいた。

 

 

エマ

「あり得ない、あり得ないわ!人間がノーマの使用人になるなんて!ノーマは反社会的で好戦的で無教養で不潔で、マナの使えない文明社会における不良品なのよ!」

 

アンジュ

「ハイハイ・・・。」

 

 

エマがグダグダ言うのを他所に、モモカは空の皿を片付け次の料理を出した。

 

 

エマ

「モモカさん、アナタ自分が何をしているのか分かってるの?」

 

モモカ

「はい!私、とても幸せです!」

 

 

隣のテーブルには、サリア・エルシャ・ヴィヴィアン・神童・霧野・信助がいた。

 

 

信助

「モモカさん、よかったですね。アンジュさんと一緒に居られて。」

 

ヴィヴィアン

「うん!」

 

エルシャ

「はぁ~…」

 

 

エルシャは自分の通帳を見ながらため息をついた。

 

 

霧野

「どうしました?」

 

エルシャ

「もうすぐフェスタの時期でしょ?幼年部の子供達に、色々用意してあげたいって思ってるんだけど・・・。」

 

神童

「いわゆる、予算不足ですか・・・。」

 

サリア

「原因はアンジュね。何とかしなくちゃ・・・。」

 

ヒルダ

「どう何とかしてくれるのさ?」

 

 

一同のもとに、ヒルダ・ロザリー・クリス・剣城がやって来た。

 

 

ヒルダ

「どんな罰でも金で何とかするだろうね、あの成金姫。何より、アンタの言うことなんか聞きやしないさ。」

 

サリア

「何が言いたいの?」

 

ヒルダ

「ナメられてんのよあんた。ゾーラが隊長だったころは、こんなのあり得なかったじゃん。隊長かわってあげようか?」

 

サリア

「・・・。」

 

 

サリアは無言のまま席を立ち、食堂を離れた。

 

 

サリア

(みんな好き勝手言っちゃって。私だって、好きで隊長やってるわけじゃ…)

 

 

ロザリー

「・・・ん?」

 

 

ロザリーはふと天馬の姿が目に入った。

 

 

ロザリー

「天馬のやつ、調子でも悪いのか?」

 

信助

「今朝からあんな感じで、暗い表情を浮かべてるんです。」

 

クリス

「いつもは元気なのに。不気味・・・。」

 

剣城

「天馬・・・。」

 

 

剣城は心配そうな表情を浮かべた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~ジャスミン・モール~

 

 

その後、アンジュ・天馬・モモカはジャスミン・モールへとやって来た。アンジュとモモカの寝間着を買うためだ。

 

 

アンジュ

「いつまでも下着で寝させるわけにいかないでしょ?」

 

モモカ

「私は別に構わないのですが。」

 

アンジュ

「私達が構うのよ。特に天馬は免疫低いんだから。」

 

天馬

「アハハ、申し訳ありません…」

 

 

アンジュは服を何着か選ぶと、モモカを連れて試着室に向かった。天馬はその間、ジャスミンのところに向かった。

 

 

ジャスミン

「何かお探しかい?」

 

天馬

「2段ベッドが欲しいんですけど、ありますか?」

 

ジャスミン

「組み立て前のでいいなら倉庫にあるよ。」

 

天馬

「分かりました。ありがとうございます。」

 

 

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~ジャスミン・モール 倉庫~

 

 

倉庫にやって来た天馬は、組み立て式2段ベッドを探した。

 

 

天馬

「・・・あった!」

 

 

偶然にも、お目当ての品は入り口から近いところに置いてあった。

 

 

天馬

「台車無いかな?」

 

 

天馬は運び出すため台車を探した。すると・・・。

 

 

「愛のパワーを集めてギュッ!恋のパワーでハートをキュン!」

 

 

天馬

「ん?」

 

 

近くで女の人の声がした。声を辿っていくと・・・。

 

 

サリア

「美少女聖騎士、プリティ・サリアン!あなたの隣に突撃よ!」

 

 

そこにいたのは魔法少女のコスプレをしたサリア。衣装の感じからして、桃髪ツインテールのあの人を連想しなくもない・・・。

 

 

サリア

「はぁ~、やっぱりこれ、癒される。よし、次いくわよ!」

 

 

サリアはステッキを振り回し魔法を発動。

 

 

サリア

「シャイニング・ラブエナジーで、私を大好きになぁれ!」

 

 

ガンッ!

 

 

天馬

「あたっ!」

 

サリア

「っ!?」

 

 

突然、近くにいた天馬の頭上から一斗缶が落ち、天馬の頭に当たった。サリアは声に気づき駆け寄った。

 

 

サリア

「て、天馬!?」

 

天馬

「イテテテテ・・・あ、サリアさん・・・何してるんですか?」

 

 

天馬はサリアのコスプレ姿を見て首を傾げた。サリアは赤面しながら腕で体を隠した。

 

 

サリア

「これは、その・・・趣味って言うか、過度のストレスによって傷ついた私の心を癒す、精神的メンテナンスみたいなものよ!」

 

天馬

「まあ、皆には内緒にしときますから。それに丁度よかった。ちょっと頼みがあるんですけど・・・。」

 

サリア

「た、頼み?」

 

天馬

「戦死したゾーラ隊長と新兵のココさんとミランダさんの顔写真、後程見せていただけないでしょうか?」

 

サリア

「いいけど、何で?」

 

天馬

「ちょっと確かめたい事がありまして・・・。」

 

サリア

「わかったわ、夜までには用意するわね。」

 

天馬

「ありがとうございます。では・・・。」

 

 

天馬はその場を離れ、台車探しに戻った。この後アンジュがサリアの秘密を知り、後に風呂場で大乱闘となったのは言うまでもない。

 

 

 

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~アンジュの部屋~

 

 

夜、天馬は2段ベッドを組み立て終え自分のベッドで横になりながら、サリアから受け取ったゾーラ・ココ・ミランダの写真を見ていた。

 

 

天馬

(やっぱり、夢で見た人達と同じだ。どうなってるんだろう・・・。)

 

 

2段ベッドの上の段にはアンジュが毛布を被って眠り、下の段ではモモカがアンジュの反省文を書いていた。

 

 

天馬

「・・・俺、散歩してきます。」

 

 

天馬はベッドから降り、部屋を出た。

 

 

モモカ

「行ってらっしゃいませ。」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~グラウンド~

 

 

天馬はグラウンドを訪れ、ベンチに座り込んだ。

 

 

天馬

「・・・。」

 

 

天馬はいつの間にか眠りについた。

 

 

 

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~太平洋上~

 

 

しばらくして、天馬は再びココのグレイブになった夢を見た。

 

 

ゾーラ

『モノホンのパラメイルはどうだ?振り落とされるんじゃないよ!』

 

ココ

「は、はいっ!」

 

 

第一中隊はゆっくりとフォーメーションを組み始める。

 

 

天馬

「この間と同じ展開だ。」

 

ココ

「誰?」

 

 

ココが突然、目ををキョロキョロさせ何かを探し始めた。

 

 

天馬

「(もしかして・・・。)あーあー、聞こえますか?」

 

 

天馬は試しに喋ってみた。

 

 

ココ

「えっ?ねえ、誰なの?」

 

 

ココはまたもや何かを探し始めた。どうやら天馬の声が聞こえているようだ。

 

 

天馬

「どうやら、俺の声が聞こえてるみたいですね。」

 

ココ

「誰?ねえ、何処にいるの?」

 

天馬

「一言で言うなら、パラメイルからかな?」

 

ココ

「パラメイルから?」

 

天馬

「俺は天馬。どういう成り行きかは知りませんが、俺は今あなたのパラメイルになってるみたいなんです。」

 

ココ

「えっ?ええっ!?」

 

ゾーラ

『ココ、どうした?』

 

 

突然、ゾーラが通信してきた。

 

 

ココ

「い、いえ、何でもありません!」

 

ゾーラ

『まあいい、しくじるんじゃないよ!』

 

 

ゾーラは通信を切断した。すると突然アンジュのグレイブが左後方へ離脱し、サリアのアーキバスが追いかけた。

 

 

サリア

『アンジュ、もうすぐ戦闘区域よ!戻って!』

 

アンジュ

『私は、アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギです!私は、私の元居た国へと帰ります!ミスルギ皇国へ!』

 

 

すると突然、ココがグレイブの機首を反転させアンジュを追いかけた。

 

 

ココ

「アンジュリーゼ様!私も連れてってください!私も、魔法の国に!」

 

 

ミランダ

『何言ってるのココ!戻ってきなさい!』

 

 

ミランダがココの後を追い、ココがアンジュとサリアに追い付いた途端3人の真上にシンギュラーが出現。中から紫色のガレオン級大型ドラゴンが姿を見せた。

 

 

天馬

「左に寄って!」

 

ココ

「えっ?」

 

天馬

「早く!」

 

ココ

「は、はいっ!」

 

 

ココは天馬の指示に従い機体を左に寄せた。すると・・・

 

 

バシューン!

 

 

グレイブの直ぐ右を青い光が通り過ぎ、3機がシンギュラーを通過した途端、ガレオン級大型ドラゴンがシンギュラーから本体を現し、同時にスクゥナー級ドラゴンが多数出現した。

 

 

アンジュ

「なに…これ…」

 

 

『ドラゴン補足。ガレオン級1、スクゥナー級22。』

 

 

ロザリー

「22!?」

 

ヒルダ

「ったく、うじゃうじゃ出てきやがって…」

 

ゾーラ

「総員聞け。新兵教育は現時刻をもって中止。まずはカトンボ共を殲滅し、航空優勢を確保する。全機駆逐形態。」

 

 

第一中隊はパラメイルをアサルトモードに変形させた。

 

 

サリア

「命令違反の処分は?」

 

ゾーラ

「後にしろ!」

 

サリア

「イエス・マム。」

 

 

サリアはアーキバスをアサルトモードに変形させ第一中隊のもとに向かった。

 

 

ミランダ

「隊長、私達は?」

 

ゾーラ

「こっちが片付くまで生き残りな!砲撃開始!」

 

 

ダダダダダダダダダダダッ!

 

 

バーン! バーン!

 

 

第一中隊は一斉に砲撃を開始し、スクゥナー級ドラゴンを次々に撃ち落としていく。すると、またしてもアンジュが進路を変えその場を離れようとした。

 

 

ミランダ

「アンジュ、何処行くの!?」

 

 

ミランダとココは直ちにアンジュを追いかけた。

 

 

アンジュ

「帰ります!ミスルギ皇国に!」

 

ミランダ

「本気で言ってるの!?燃料は戦闘1回分しか積まれてないんだよ!アンタの国が何処だか知らないけど、たどり着けるわけ無いじゃん!」

 

アンジュ

「それでも構いません!戦いに戻らずに済むのなら!」

 

 

アンジュはエンジンを吹かし、その場から離れた。

 

 

ココ

「アンジュリーゼ様、待って!」

 

 

ココとミランダはアンジュを追いかけた。

 

 

 

ミランダ

「ココ!アンタ、何夢見てるんだよ!?何が魔法の国だよ!私達はノーマなんだぞ!」

 

ココ

「でも・・・!」

 

ドラゴン

「ギャアアアアアア!」

 

 

ドンッ!

 

 

突然、ミランダのグレイブの上からドラゴンが突進。ミランダは機体から放り出された。

 

 

ミランダ

「た、助けてえええ!」

 

 

ミランダとグレイブは海へと落ちていく。

 

 

ココ

「ミランダー!」

 

天馬

「エンジン全開で急降下だ!」

 

ココ

「はいっ!」

 

 

ココは急降下開始と共にエンジンを全開にし、落下していくココを追いかけた。ココと並走するように、1体のスクゥナー級ドラゴンが口を開け追っていた。

 

 

ココ

「お願い、間に合って!」

 

 

ココはミランダの下へ回り込み、ドラゴンに捕まる直前でミランダをコックピットに乗せた。ココは直ぐに舵を引き上昇。ミランダのグレイブは海へと墜落し爆発した。

 

 

ココ

「危なかったぁ…」

 

ミランダ

「ありがとう、ココ!」

 

 

すると、今度はアンジュにスクゥナー級ドラゴンが襲いかかってきた。

 

 

アンジュ

「いやあああああ!」

 

 

アンジュはグレイブをアサルトモードに変形させ逃げ回る。ココとミランダはアンジュの後を追いかけた。

 

 

ダダダダダダダダダダダッ!

 

 

一方、第一中隊はスクゥナー級ドラゴンを全て撃ち落とし、ガレオン級ドラゴンと戦っていた。

 

 

ゾーラ

「あとはお前だけだよ、デカブツ!総員、氷結バレット装填!」

 

 

第一中隊のパラメイルは左腕に氷結バレットを装填し、ガレオン級ドラゴンへと突っ込む。

 

 

ドラゴン

「ギャアアアアアア!」

 

 

ドラゴンは自身の身体から光の球を無数に出現させ、第一中隊に向かって放った。第一中隊は光の球を避けながらドラゴンの胸部に次々と氷結バレットを発射していく。

 

 

ゾーラ

「こいつで仕舞いだ!」

 

 

そしてゾーラのアーキバスが止めを刺そうとしたその時・・・。

 

 

アンジュ

「いやあああああ!」

 

 

アンジュのグレイブが助けを求めしがみついてきた。

 

 

アンジュ

「た、助けてええっ!」

 

ゾーラ

「何しやがる、離れろ!」

 

 

アンジュとゾーラがもめている隙に、ドラゴンはゾーラの後方で右翼を大きく振り上げた。

 

 

ゾーラ・アンジュ

「っ!?」

 

ミランダ

「隊長!アンジュ!」

 

天馬

「アサルトモードで二人の横っ腹に突っ込むんだ!」

 

ココ

「はいっ!」

 

 

ココはグレイブをアサルトモードに変形させ、エンジン全開で突っ込んだ。

 

 

ミランダ

「えっ?ちょっとココ!?」

 

 

ドンッ!

 

 

ココのグレイブは2機の横っ腹に突っ込み、3機はドラゴンの正面から退避。その直後ドラゴンは右翼を振り下ろした。

 

 

ビュー!

 

 

アンジュ・ココ・ミランダ・ゾーラ

「うわあああああああ!」

 

 

3機は突風に巻き込まれ、遥か彼方へと消えた。

 

 

ヒルダ

「ゾーラ!!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~無人島~

 

 

気がつくと、4人はパラメイル3機と共に無人島の浜辺に打ち付けられていた。パラメイル3機は大破しコックピットがむき出しになっている。全員重傷だったが、一命はとりとめた。

 

 

アンジュ

「うっ・・・ここは?」

 

ミランダ

「私達、助かったの・・・?」

 

ゾーラ

「どうやら、命だけは落とさずに済んだようだな・・・。」

 

ココ

「みんな・・・。」

 

天馬

「よかった、みんな無事みたいですね。」

 

アンジュ・ゾーラ・ミランダ

「っ!?」

 

 

アンジュ・ゾーラ・ミランダは天馬の声に気付き、辺りを見回した。

 

 

ゾーラ

「おい、誰かいるのか?」

 

天馬

「本当に、本当によかった・・・。」

 

 

ヒュウウゥゥ…

 

 

コックピットのモニターが落ち、ココのグレイブは完全に機能を停止した。

 

 

ミランダ

「今の声、もしかしてパラメイルから・・・?」

 

ココ

「分からない。けど、1つだけ分かったことがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの人が、私達を助けてくれた・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

~グラウンド~

 

 

天馬

「う、う~ん…」

 

 

天馬は眠りから目を覚ました。目の前には何故かマスクとマフラーとどてらを身につけたアンジュとモモカ、そしてヒルダと剣城を除く第一中隊のメンバーが集まっていた。時刻は正午である。

 

 

天馬

「皆さん。」

 

アンジュ

「昨日の夜から帰ってないと思えば、こんなところで寝てたの?」

 

天馬

「すみません…て言うか、何ですかその格好?」

 

モモカ

「実は今朝から風邪をひいてしまわれたのですが、アンジュリーゼ様がどうしても任務に参加すると聞かないものでして、私が着せたんです。」

 

アンジュ

「仕方ないでしょ。あなたの生活を養うにはお金が要るんだから。」

 

天馬

「もしかして、俺が眠ってる間に・・・。」

 

サリア

「とっくに終わってるわよ。」

 

 

アンジュを除く一同の手には大量の札束が握られていた。

 

 

ロザリー

「残念だったなぁ。寝坊さえしてなきゃ、お前も大金ゲット出来てたのに。」

 

クリス

「でも、この大金を手にできたのはアンジュのお陰なんだ。」

 

天馬

「アンジュさんの?」

 

サリア

「実はね・・・。」

 

 

サリアは今回のドラゴンとの戦いについて説明をした。第一中隊は今回、過去に遭遇歴の無いドラゴン、通称《初物》に遭遇した。だがその初物の重力攻撃により絶体絶命のピンチにまで追い込まれるが、アンジュがドラゴンの重力攻撃を無効化してくれたお陰で助かったと言う。

 

 

天馬

「・・・なるほど。」

 

神童

「で、大金を手にする事が出来たお陰でロザリーさんとクリスさんとは和解出来たんだが、ヒルダさんは裏切られたと思い込んで姿を消したんだ。」

 

天馬

「そうだったんですか…」

 

霧野

「まあ、ヒルダさんには剣城が傍に居るから問題無いだろう。」

 

 

「へー、あのヒルダが男と一緒とはねぇ。」

 

 

突然、あまり聞き覚えの無い女性の声が聞こえてきた。一同が声のする方向を見ると、そこに居たのは・・・。

 

 

サリア

「ゾーラ隊長。」

 

 

そこに居たのは、ゾーラ・ココ・ミランダの3人のだった。

 

 

ロザリー

「ゾーラ姉様!身体はもういいんですか?」

 

ゾーラ

「ああ、この通りビンビンだよ!」

 

 

天馬

「えええっ!?」

 

 

天馬はゾーラ達を見て驚き、ベンチから立ち上がった。

 

 

天馬

「ゾーラ隊長にココさんにミランダさん!?」

 

 

ゾーラ・ココ・ミランダは、見ず知らずの人に名前を呼ばれ戸惑っている。

 

 

ロザリー

「そういえば天馬達男軍団は会うの初めてだよな?元パラメイル第一中隊隊長のゾーラお姉様と、新兵のココとミランダ。お前達が来る前、3人はドラゴンとの戦いで重傷を負って入院中だったんだ。」

 

天馬

「で、でも3人って確か…」

 

ココ

「・・・ん?その声、何処かで・・・あっ!」

 

 

ココは何かを思い出したかの様に目を見開いた。

 

 

ココ

「もしかして、私のパラメイルの中にいた天馬さん?」

 

 

ココの突然の発言に、その場にいた全員が驚いた。

 

 

ヴィヴィアン

「天馬がココのパラメイルの中にいたぁ!?」

 

エルシャ

「ねえ天馬君、どういうこと?」

 

天馬

「俺にも何が何だか全く分からないんですけど、実は俺、夢を見ていたんです・・・。」

 

 

天馬は眠っている間に見た夢の中の出来事について話した。

 

 

ゾーラ

「う~ん…」

 

ミランダ

「彼の夢の内容と、私達の経験と一致する点が多いですね。」

 

ゾーラ

「まさかとは思うけど、彼が夢の中でココのパラメイルに乗り移って、私達を助けたと言うのかい?」

 

アンジュ

「信じられないわね。」

 

ココ

「私は信じます!」

 

 

ココは天馬に近寄り、天馬の左腕にしがみついた。

 

 

ココ

「天馬さんが夢の中で、私達を助けてくれた!それ以外にどんな理由があるんですか?」

 

ゾーラ

「ま、まあ確かに他に理由は無いが…」

 

ココ

「・・・私、天馬さんにずっとお礼が言いたかったんです。助けてくれて、ありがとうございます!」

 

天馬

「ココさん・・・。」

 

ロザリー

「・・・まあアレだ。こうして3人が無事に帰って来たんだから、過去はどうあれ結果良ければ全て良しってやつで!」

 

ゾーラ

「それもそうだね。」

 

 

と、ゾーラはアンジュの肩に手を置いた。

 

 

ゾーラ

「アンジュ、せっかくだし後でこの間の続きとでもいこうじゃないか?」

 

アンジュ

「え~っと・・・それだけは勘弁してえええ!」

 

 

アンジュは逃げ出し、ゾーラが追いかけ、さらにモモカが後を追う。3人は第一中隊の周りをぐるぐる走り回った。3人の行動を見て第一中隊は自然に笑顔になり、次第に笑い声が聞こえてきた。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

~アンジュの部屋~

 

 

その日の夕方、アンジュ・天馬・モモカは寝室にいた。アンジュはゾーラに捕まらずに済み、おまけに熱も下がった。

 

 

アンジュ

「まったく、酷い目に会った…」

 

天馬

「でも良かったじゃないですか。走り回ったお陰で熱も下がりましたし。」

 

モモカ

「そうですよ。・・・ん?」

 

 

突然、モモカが何かを感じ取った。

 

 

アンジュ

「どうしたの?」

 

モモカ

「マナの通信です。これ、皇室の極秘回線!?」

 

アンジュ・天馬

「えっ!?」

 

 

モモカは直ちに回線を繋いだ。

 

 

『モモカ、聞こえる!?』

 

モモカ

「シルヴィア様!」

 

アンジュ

「シルヴィア!?」

 

 

アンジュは声を聞いて驚いた。モモカの通信の相手はアンジュの妹、シルヴィアだった。

 

 

天馬

「シルヴィア様って確か、アンジュさんの妹の。」

 

アンジュ

「ええ、ミスルギ皇国の第二皇女よ。」

 

シルヴィア

『アンジュリーゼお姉様には会えた?そこにお姉様は居るの?・・・だ、誰!?』

 

アンジュ・モモカ・天馬

「っ!?」

 

シルヴィア

『助けてお姉様!アンジュリーゼお姉様ぁぁ!!』

 

 

ザザザザザザザザザ・・・

 

 

通信は途中で途切れた。

 

 

アンジュ

「シルヴィア…」

 

 

 

To Be Continued…




~次回予告~


ヴィヴィアン
「ねぇねぇエルシャ、アンジュ、モモカ、聞いた?」

エルシャ
「聞いたって何が?」

ヴィヴィアン
「何でも、次回は天馬に春が来るらしいよ!」

モモカ
「春ってことは、女の子ですか?」

アンジュ
「らしいけど、どうもその女の子が少々訳ありらしいわ。ま、結果は次回が更新されるまで待ちましょうか。"果報は寝て待て"って日本のことわざもあるし。」

ヴィヴィアン
「次回、《鋼のガールフレンド》!」

ココ
「タイトルからして少し嫌な予感が…」

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