クロスアンジュ LIGHTNING EDITION ~天使とドラゴンと五人の巨人使い~   作:ヒビキ7991

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Ep.07/密航侍女モモカ・荻野目

~アルゼナル 司令室~

 

 

アンジュと天馬がアルゼナルに帰還して数日後、ジルとジャスミンとマギーはサリアが入手した5枚の写真を見ていた。写真に写っているのは、一本の指揮棒と四本の腕を持つ水色のウェーブがかかった髪の指揮者の巨人、《奏者マエストロ》。剣と盾を携え真紅のマントを翻す甲冑の騎士、《剣聖ランスロット》。大木のような剛腕を持つ青を強調した剣闘士のような鎧を着けた巨人、《護星神タイタニアス》。巨大な旗と盾を携え水色のアーマードレスを身に纏う桃色の長い髪の女の巨人、《戦旗士ブリュンヒルデ》。そして魔神ペガサスアーク。

 

 

マギー

「化身、人の心の強さが気の塊として形になったもの・・・。噂で聞いたことはあったが、まさか実在したとはねぇ。」

 

ジル

「なるほど。となるとアイツらのパラメイルが突然姿を変えた原因は、その化身にあると考えていいだろう。」

 

サリア

「どういうこと?」

 

ジル

「アイツらの化身がアイツらの心と共鳴し、パラメイルに新たな力を与えたんだろう。」

 

ジャスミン

「フフフッ、面白い連中が転がり込んで来たもんだね。」

 

ジル

「ああ、上手くやればリベルタスの大きな戦力になる。フッ。」

 

 

薄暗い司令室の中、ジルとジャスミンは怪しく微笑んだ。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

~アルゼナル グラウンド~

 

 

同じ日の午後、アンジュ・ヴィヴィアン・エルシャはグラウンドで天馬とサッカーの練習をしていた。

 

 

天馬

「最初は手を使えなくて不便に思うかもしれませんけど、慣れれば案外簡単にコントロール出来ると思いますよ。」

 

アンジュ

「わかったわ。」

 

ヴィヴィアン

「よっし、やるぞー!」

 

 

3人はまずリフティングから始めた。

 

 

アンジュ

「よっ、ほっ、ほっ、ほっ・・・」

 

ヴィヴィアン

「よっ、それっ、ほいっ・・・」

 

天馬

「そうそう!二人とも上手!」

 

 

アンジュとヴィヴィアンは飲み込みが早く直ぐにコツを掴んだ。

 

 

エルシャ

「それっ!あらら・・・。」

 

 

だが、エルシャは中々上手くいかず・・・。

 

 

天馬

「ドンマイドンマイ!まだ最初ですから、ゆっくり上手くなっていきましょう!」

 

エルシャ

「は~い。」

 

 

エルシャは笑顔で返答した。すると・・・。

 

 

ビー!ビー!ビー!ビー!

 

 

アルゼナル全体に警報が鳴り響いた。

 

 

天馬

「遭遇警報?」

 

アンジュ

「いや、違う。」

 

 

『総員に告ぐ!アルゼナル内部に侵入者あり!目標は現在、グラウンドへ向け逃走中!付近の者は確保に協力せよ!』

 

 

ヴィヴィアン

「侵入者!?」

 

エルシャ

「ここに来るわ!」

 

 

一同は銃を構え、遭遇に備えた。すると、入り口から一人のメイド姿の少女が現れた。

 

 

ヴィヴィアン

「いた!」

 

 

ヴィヴィアンが存在に気付き、四人は少女に銃を向けた。

 

 

???

「マナの光よ!」

 

 

ピカーン!

 

 

少女は両手に障壁を展開し、身を屈めた。

 

 

アンジュ

「マナの光!?」

 

???

「やめてください!私は、アンジュリーゼ様に会いに来ただけです!」

 

天馬

「っ!?あなた・・・。」

 

アンジュ

「モモカ!?」

 

 

天馬とアンジュは聞き覚えのある声に驚き、アンジュはモモカの名前を呼んだ。少女は名前を呼ばれ、アンジュの方に顔を向けた。

 

 

モモカ

「もしかして、アンジュリーゼ様・・・?」

 

アンジュ

「どうして・・・。」

 

モモカ

「アンジュリーゼ様ぁぁぁ!!」

 

 

モモカは泣きながらアンジュに抱きついた。エルシャとヴィヴィアンと天馬は呆然としている。

 

 

天馬

「どうなってるの・・・?」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

~指令部~

 

 

その後、、モモカの情報が指令部に送られ、エマが電話で委員会と会談していた。

 

 

エマ

「モモカ・荻野目。元皇女アンジュリーゼの筆頭侍女です。・・・はい・・・えっ!?わ、分かりました・・・はい。」

 

 

エマは電話を切り、椅子に寄りかかった。

 

 

ジル

「ひょっとして、監察官殿の予想通りですか?」

 

エマ

「あの娘を国に帰せば、ドラゴンやそれと戦うノーマ・・・最高機密情報が世界中に公になると・・・。何とかならないのでしょうか?」

 

ジル

「ノーマである私に、人間の決めたルールを変える力はありません。ですがせめて、一緒に居させてあげようじゃありませんか。今だけは・・・。」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

~居住区~

 

 

一方、アンジュと天馬とモモカは居住区にいた。

 

 

モモカ

「あの・・・えっと・・・。」

 

 

モモカは何を話せばいいのか分からず、言葉を詰まらせる。

 

 

モモカ

「・・・おぐし、短くされたのですね?良いと思います!大人の雰囲気と言うか、これまでの姫様から脱皮されたような・・・。」

 

 

アンジュは口を閉ざしたままである。

 

 

天馬

「そういえば、アンジュさん髪切るとき思いきってナイフでバッサリ切ってました!あれはもう大胆って言うか何と言うか・・・。」

 

モモカ

「そうなんですか?凄いですね!」

 

 

天馬も話題に加わるが、アンジュは黙ったままだった。

 

 

天馬

(会話が進まないなぁ・・・。)

 

 

天馬は気まずい表情を浮かべた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~アンジュの部屋~

 

 

3人はアンジュの部屋に到着した。

 

 

モモカ

「ここが、アンジュリーゼ様の部屋なのですね?」

 

アンジュ

「天馬、悪いけどあっち向いといてくれる?」

 

天馬

「はい。」

 

 

天馬はアンジュに背を向け、アンジュは制服を脱ぎ捨てスポーツブラを身に着けた。

 

 

モモカ

「お召し替えですね?畳みます。」

 

 

モモカはマナの光で制服を畳み始めた。

 

 

アンジュ

「へー、マナってそうやって使うんだ。」

 

モモカ

「あっ。」

 

 

モモカは慌ててマナを使うのを止めた。

 

 

モモカ

「申し訳ありません…」

 

 

モモカは頭を下げ謝った。

 

 

アンジュ

「・・・天馬、もういいわよ。」

 

 

アンジュは自分のベッドに腰を下ろし、天馬も自分のベッドに腰を下ろした。

 

 

天馬

「モモカさんも座ってください。」

 

モモカ

「はい…」

 

 

モモカは天馬の隣に腰を下ろした。

 

 

アンジュ

「それで、どうして来たの?」

 

モモカ

「もちろん、アンジュリーゼ様のお世話をするためです!」

 

アンジュ

「・・・悪いけど、私はもう皇女アンジュリーゼじゃないわ。今の私はノーマのアンジュよ。一応命令だから、明後日まで私達があなたのお世話をするわ。だから、私には構わないで。」

 

 

アンジュはそう言うと、自分の制服を畳み始めた。だが、モモカはアンジュの制服を取り上げた。

 

 

モモカ

「やめてください!アンジュリーゼ様はアンジュリーゼ様です!私、帰りません!離れません!これからは、私がお世話致します!」

 

アンジュ

「帰る場所、ないもんね…」

 

モモカ

「えっ?」

 

アンジュ

「ミスルギ皇国、もう無いんでしょ?」

 

天馬

「えっ!?」

 

 

天馬は突然の発言に驚き立ち上がった。

 

 

天馬

「ウソでしょ!?ミスルギ皇国が、もう無いって…」

 

 

アンジュは表情を暗くし、語り始めた。

 

 

アンジュ

「・・・ここに来て直ぐだったんだけど、私はミスルギ皇国と関わりがあった各国に嘆願書を送ったの。ローゼンブルム王国、マーメリア共和国、ヴェルダ王朝、エンデラント連合、ガリア帝国。でも、どの国からもミスルギ皇国も皇女アンジュリーゼも知らないって受け取りを拒否されて、その時にミスルギ皇国はもう存在しないって告げられたの。」

 

天馬

「そんな…」

 

アンジュ

「私がノーマだったから、お母様は死に、国は滅んだ…」

 

モモカ

「そんな、違います!」

 

アンジュ

「ねえ、いつから知ってたの?私がノーマだって。」

 

 

アンジュはモモカを見て言った。

 

 

アンジュ

「・・・最初からに決まってるわよね。私にマナを使わせないために、お父様が連れてきたのがアナタ。でしょ?

 

どうでもいっか、今となっては…」

 

 

アンジュはベッドで横になり、天馬は近くにあった椅子に腰掛けた。

 

 

天馬

「モモカさんは明後日まで俺のベッドを使ってください。寝心地は悪いかもしれませんが、無いより良いかと・・・。」

 

モモカ

「私の居場所はアンジュリーゼ様の御傍だけです。追いかけて追いかけて、やっと御会いできたんです。どうか、このままアンジュリーゼ様の御傍においてください…」

 

 

モモカはアンジュに向かって土下座をした。

 

 

アンジュ

「ここは、アナタみたいな人間の住む場所じゃない…」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

~食堂~

 

 

次の日の朝、モモカはアンジュと天馬と共に食堂で配給の列に並んでいた。遠くの席からはサリア・ヴィヴィアン・エルシャ・神童・信助・霧野が食事をしながら見ていた。

 

 

エルシャ

「やっぱり私達とは住んでた世界が違うのね、アンジュちゃん。」

 

ヴィヴィアン

「侍女って何ぞ?」

 

サリア

「高貴な身分の方のお世話をする人の事よ。」

 

信助

「メイドさんとは違うのかな?」

 

神童

「呼び方が違うだけで基本的には同じらしい。」

 

霧野

「しかも彼女はアンジュさん専属の筆頭侍女。侮れないな。」

 

ヴィヴィアン

「専属ってことは、アンジュだけのモノって事!?スゴい!」

 

 

一同を尻目に、アンジュは配給が終わると空いている席を探しに行った。モモカと天馬は互いに1列ずつ詰めた。

 

 

配給係

「あんた、ノーマじゃないんだろ?だったらあんたの分は無いよ。食いたきゃ金出しな。」

 

モモカ

「か、かね?」

 

天馬

「お金が必要なら、彼女の分は俺が払いましょう。」

 

 

天馬はポケットから1万キャッシュ分の札束を取り出し、配給係に渡した。配給係は札束の枚数を確認した。

 

 

天馬

「足りなければもう少し出しますけど?」

 

配給係

「これだけあれば十分だよ。・・・あれ?」

 

 

気が付けば、モモカはトレーを置いてその場から居なくなっていた。辺りを見回すと、モモカはヒルダ・ロザリー・クリス・剣城が座っているテーブルの側で立っているアンジュの隣にいた。

 

 

モモカ

「アンジュリーゼ様に席を譲りなさい!」

 

 

モモカはヒルダ達に席を譲るよう訴えていた。

 

 

天馬

「まったくもう・・・。」

 

 

天馬はトレーを置き、急いでアンジュとモモカの元へと駆け寄った。

 

 

天馬

「モモカさん、落ち着いてください。」

 

モモカ

「落ち着いていられませんよ!アンジュリーゼ様を御待たせするなんて!」

 

天馬

「アンジュさんはノーマとしてここにいいます。ここにいる以上は、皇女の身分なんて役に立ちません。以前まで皇女であっても、ここでは身分は皆同じなんです。」

 

モモカ

「ですが、アンジュリーゼ様はアンジュリーゼ様です!」

 

ヒルダ

「席を譲れだって?ふざけんなよゴミ女!」

 

ロザリー

「調子乗ってんじゃねぇぞ!」

 

クリス

「ホンっと目障り。」

 

 

ヒルダ達が続けて悪口を言う中、剣城は食事を済ませ席を立った。

 

 

剣城

「よかったら、ここ使ってください。」

 

 

ガシッ! ドンッ!

 

 

だが、ヒルダに腕を掴まれ席に戻された。

 

 

ヒルダ

「あんな奴に席を譲る必要無いって。」

 

剣城

「ですが、アンジュさんに席を譲れば収まる話では?」

 

ヒルダ

「ほっときな。いつかの何処かの誰かさんみたいに、何にも分かってないイタ侍女に従う必要なんて無いさ。」

 

アンジュ

「低俗ね、相変わらず。」

 

ヒルダ

「ノーマなもんでね。」

 

 

アンジュとヒルダは互いを睨み合った。

 

 

モモカ

「これ以上の姫様への無礼は私が…私が…」

 

 

バタッ

 

 

ヒルダ・ロザリー・クリス

「えっ?」

 

アンジュ・剣城

「っ?」

 

 

突然、モモカは目を回して倒れた。

 

 

天馬

「ちょっと、モモカさん!?」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~ジャスミン・モール~

 

 

その後3人は食堂での食事を諦め、ジャスミン・モールに設置されている自動販売機でハンバーガーとジュースを購入した。

 

 

天馬

「3日も飲まず食わずだったなんて、知りませんでした…」

 

モモカ

「申し訳ありません。アンジュリーゼ様に御会いすることで頭がいっぱいでして…」

 

 

すると、アンジュはモモカに100キャッシュ札を数十枚程渡した。

 

 

アンジュ

「これからはそれで何とかしなさい。」

 

モモカ

「これが、お金というものなんですね。ありがとうございます!貨幣経済なんて不完全なシステムと思ってましたけど、これはこれで何だか楽しいですね!」

 

アンジュ

「そう?」

 

 

「ぐああああああああ!」

 

 

突然、デッキの方から血塗れのメイルライダーがマギーを含む複数のドクターに搬送される光景が見えた。メイルライダーは3人の前を通り過ぎただけだったが、その光景を見たモモカにはかなり応えた様だ。

 

 

モモカ

「うぇ…何なのですか… ここは、何をする場所なのですか?」

 

アンジュ

「狩りよ。私もいつああなることか・・・。」

 

 

アンジュは静かにジャスミン・モールを離れた。取り残されたモモカと天馬は、暗い表情を浮かべていた。

 

 

モモカ

「あんなの、私の知っているアンジュリーゼ様じゃありません… 私の知っているアンジュリーゼ様は、何処へ行ってしまったのですか…」

 

天馬

「アンジュさんは色々あって、少し傷付いてるんですよ。心の傷は日にち薬で治る時もあります。しばらくすればきっと・・・。」

 

モモカ

「はい…」

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

~射撃場~

 

 

その日の午後、第一中隊はライフルでの射撃練習を行っていた。的のベニアボードにはドラゴンが描かれており、頭・胴・左右腕の計4ヶ所にターゲットマークが描かれている。

 

 

霧野

「よーく狙って・・・。」

 

 

バーン!

 

 

霧野の放った弾丸は右腕のターゲットの右側へ。

 

 

バーン!

 

 

神童の放った弾丸は胴のターゲットの真ん中より左寄り。

 

 

バーン!

 

 

エルシャの弾丸は的から大きく外れ。

 

 

エルシャ

「あら・・・。」

 

 

バーン!

 

 

サリアの放った弾丸は頭のターゲットのど真ん中に命中。

 

 

エルシャ

「ど真ん中!お見事~♪」

 

 

エルシャは胸の谷間からハンカチを取り出しヒラヒラと振った。

 

 

エルシャ

「いつまで経ってもサリアちゃんみたいに上手く撃てないわねぇ。何がいけないのかしら?」

 

 

サリア・神童・霧野は、どうやら原因が分かったらしい。

 

 

サリア

「四次元バストが…」

 

神童

「大きければ良いと言うわけでも無さそうだな。」

 

霧野

「だな。」

 

 

一方、別の射撃場ではアンジュ・天馬・剣城が射撃練習を行い、ヒルダ・ロザリー・クリスは立ち話をしていた。

 

 

ロザリー

「えぇっ!?あの侍女がころされるって!?」

 

天馬・アンジュ

「っ!?」

 

クリス

「どういうこと?ヒルダ。」

 

ヒルダ

「アルゼナルとドラゴンの存在は、一部の人間しか知らない極秘事項なんだ。こんなとこにやってきて、アルゼナルとドラゴンの秘密を知っちゃった人間を・・・。」

 

クリス

「素直に帰すわけない・・・か。」

 

ロザリー

「ハッハー、酷いもんだねぇ!あの女を慕った奴はみーんな死ぬんだから!ココもミランダも、そしてあの侍女も・・・。」

 

 

バーン! バシュッ!

 

 

ロザリー

「うわあ!?」

 

 

突然、ロザリーの足元に銃弾が突き刺さった。発砲者したのは剣城だった。

 

 

ロザリー

「ちょ、てめぇ何しやがる!」

 

 

バーン! バーン! バーン! バーン!

 

 

剣城はライフルをロザリーの足元に乱射。ロザリーはジャンプやステップで銃弾を避け・・・。

 

 

カチッ カチッ

 

 

ついにライフルの銃弾が尽きた。すると、ライフルを投げ捨て今度は腰のホルスターからハンドガンを取り出した。

 

 

ロザリー

「待てよ剣城!何の真似だ!?」

 

剣城

「軽々しく死ぬって言うのが気に食わないんですよ。特に、他人であれ誰かのせいにされるのがね!」

 

 

剣城はハンドガンをロザリーに向けた。

 

 

ロザリー

「・・・何なんだよもうっ!」

 

クリス

「ちょっと、ロザリー!」

 

 

ロザリーは射撃場から走って逃げ、クリスはロザリーを追いかけた。剣城はハンドガンをしまいライフルを拾った。

 

 

ヒルダ

「お前、タマにえげつない事するねぇ。嫌いじゃないよ。」

 

 

ヒルダは静かに射撃場を離れ、それに続く様に剣城も射撃場を後にした。天馬とアンジュはライフルを構えた体勢から全く動かなかったが、モモカが殺されることを知り動揺していた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

~グラウンド~

 

 

その日の夜、天馬はグラウンドの端のベンチで空を眺めていた。

 

 

天馬

「やっぱり、無人島で見たときの空と随分違うなぁ…」

 

 

すると・・・。

 

 

アンジュ

「ここに居たんだ。」

 

 

アンジュとモモカがやって来た。

 

 

天馬

「アンジュさん、モモカさん。」

 

 

アンジュとモモカは天馬の座るベンチに腰掛けた。

 

 

モモカ

「久しぶりですね、こうやって外で一緒に空を眺めるのは。」

 

アンジュ

「・・・ん?」

 

 

アンジュがモモカの右腕に切り傷の跡があることに気づいた。

 

 

アンジュ

「その傷跡。」

 

モモカ

「あ、これですか?マナを使えば元通りになると言われたのですが、これはアンジュリーゼ様との思い出の傷なので・・・。」

 

天馬

「思い出の傷?」

 

モモカ

「7年前、私とアンジュリーゼ様がまだ幼かった頃、私はアンジュリーゼ様の大切なお人形を壊してしまい、右腕を怪我してしまったんです。その時アンジュリーゼ様が、大切なドレスの裾を破って治療してくれて・・・。」

 

天馬

「そうだったんですか・・・。」

 

アンジュ

「そんな昔のこと・・・。」

 

モモカ

「私は、決して忘れません。今の私は、アンジュリーゼ様で出来ていますから。これからも・・・。」

 

 

モモカはアンジュに身を寄せ、アンジュの手を握った。

 

 

モモカ

「これからもずっと、御慕いしております。アンジュリーゼ様…」

 

アンジュ

「・・・出ていきなさい。」

 

モモカ

「えっ?」

 

アンジュ

「今すぐ出ていくのよ!マナの光があれば、空を飛んだり海を潜ったりできるんでしょ!?逃げなさい、モモカ!!」

 

モモカ

「あ・・・やっと呼んでくれました、モモカって・・・。ですが、時間の許す限りアンジュリーゼ様の御傍に居させてください。」

 

アンジュ

「どうして!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モモカ

「・・・モモカ・荻野目は、アンジュリーゼ様の筆頭侍女ですから。」

 

アンジュ

「・・・バカ…」

 

 

ビー!ビー!ビー!ビー!

 

 

『第一種遭遇警報発令!パラメイル第一中隊、出撃準備!』

 

 

天馬

「こんな時間にか。行きましょう!」

 

アンジュ

「ええっ!」

 

 

天馬とアンジュはベンチから立ち上がった。

 

 

モモカ

「アンジュリーゼ様、どうかご無事で。」

 

アンジュ

「・・・。」

 

モモカ

「天馬さん、アンジュリーゼ様をお願い致します。」

 

天馬

「・・・はい。」

 

 

二人はベンチにモモカを残し、カタパルトへと急いだ。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~太平洋 上空~

 

 

第一中隊はパラメイルに乗り込み、シンギュラー発生ポイントに向かっていた。

 

 

アンジュ

「・・・何が筆頭侍女よ。ずっと騙してきたくせに。」

 

天馬

『アンジュさん。』

 

 

飛行中、天馬から通信が入った。

 

 

天馬

「モモカさんのこと、どう思ってるんですか?」

 

アンジュ

「救い用の無いバカ。逃げろって言ったのに逃げようとしない。明日になれば、殺されるのに・・・。」

 

天馬

「アンジュさんは、モモカさんを失うのが怖いんですよね?だから、今すぐアルゼナルから出るようモモカさんに言った。でも、内心はモモカさんといつまでも一緒に居たいと思ってる。違いますか?」

 

アンジュ

「・・・何もかもお見通しって訳ね・・・天馬、今回限りで良いから、私のワガママに付き合ってくれない?」

 

天馬

「いいですよ。俺は、アンジュさんの友達ですから!」

 

アンジュ

「・・・ありがとう!じゃあ、行くわよ!」

 

天馬

「はいっ!」

 

 

アンジュと天馬はお互いエンジンの出力を上げる。そしてヴィルキスとペガサスはシンギュラー発生ポイントへと突っ込んで行った。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

~デッキ カタパルト~

 

 

次の日の夜明け前、第一中隊はドラゴン退治から戻ってきた。だが、ロザリー・クリス・サリアはカンカンに怒っていた。ロザリーのグレイブのボディには大きな傷が見える。

 

 

ロザリー

「あのクソアマっ!戦闘中にアタシの機体を蹴り飛ばしやがって!!」

 

クリス

「私のこと、邪魔って!!」

 

ヴィヴィアン

「いやー、今日のアンジュと天馬超キレッキレだったにゃー!」

 

サリア

「何言ってるの!?二人だけでドラゴンを全部狩るなんて、とんでもない命令違反よ!!アンジュはともかく、あの天馬まで!!」

 

エルシャ

「・・・ねえ、天馬君って今まで命令違反とかしたことあった?」

 

 

エルシャは神童に質問をした。

 

 

神童

「いや、あんな天馬は今まで見たことありませんでした。」

 

信助

「何かあったのかな?」

 

 

一方、デッキの方では輸送機が待機していた。輸送機の側には、ジル・エマ・モモカ、さらに野次馬ノーマと警備兵がいた。

 

 

モモカ

「では、お世話になりました。僅かな間でしたがとっても幸せでしたと、アンジュリーゼ様に御伝えいただけますでしょうか?」

 

エマ

「分かったわ・・・。」

 

 

モモカは警備兵に連れられ、輸送機に向かって歩き始めた。その時・・・。

 

 

「待ってください!」

 

「待ちなさい!」

 

モモカ

「っ!?」

 

 

アンジュと天馬が両手に紙袋を持って野次馬の中から現れた。

 

 

アンジュ

「その子、私達が買います!」

 

 

ドサッ!

 

 

天馬とアンジュはジルとエマの前に紙袋を置いた。紙袋の中には大量の紙幣が詰め込まれていた。

 

 

エマ

「は?はぁ!?」

 

 

エマを始め、野次馬達や偶然遭遇した第一中隊は驚いた。

 

 

天馬

「お願いします!その方を譲ってください!」

 

エマ

「ノーマが人間を買う!?こんなボロボロの紙くずで!?」

 

ジル

「いいだろう。」

 

エマ

「えっ?」

 

 

ジルは即答で答えた。

 

 

ジル

「移送は中止。その者はコイツらのモノだ。」

 

エマ

「ですが司令!」

 

ジル

「金さえ注ぎ込めば何でも手に入る。それがこの、アルゼナルのルールですから。」

 

天馬

「司令官・・・ありがとうございます!」

 

 

ジルは笑顔で答え、静かにその場から歩き出した。天馬は頭を下げ、エマはマナの光で紙袋を操りジルを追いかけた。そして輸送機が飛び立ち、アンジュと天馬はモモカと対面した。モモカは目から大粒の涙を流し笑っていた。

 

 

モモカ

「ここに・・・アンジュリーゼ様の御傍に、居ても良いのですか?」

 

アンジュ

「・・・私はアンジュよ。それから、私は天馬と看破してアナタを買ったの。だから、今後は天馬の言うことも聞いてもらうわよ。」

 

モモカ

「はい、アンジュリーゼ様!」

 

 

モモカはアンジュに抱き着き、アンジュはモモカを優しく抱きしめた。彼女はアンジュリーゼと呼ばれるのにうんざりしていたが、それ以上にモモカと共に居られることが嬉しかった。

 

 

アンジュ

(・・・別にいっか、アンジュリーゼでも。)

 

 

アンジュは優しく微笑み、天馬も二人の笑顔につられ微笑んだ。

 

 

天馬

(守らなきゃ。アンジュさんと、アンジュさんの大切な存在を・・・。)

 

 

 

To Be Continued…




~次回予告~


ココ
「始めまして、もしくはお久し振りです、ココです!次回は私とミランダとゾーラ隊長が登場するとのことなので御挨拶に参りました!」

ゾーラ
「どういう成り行きで登場するのかは分からないけど、本編の第2・第3話以来の登場だ。楽しみだねぇ♪」

ミランダ
「でも幽霊とかお化けで登場ってのは勘弁ね・・・。それでココ、次回のタイトルは?」

ココ
「これから言うよー!


次回、《不思議な夢の出来事》!」

ゾーラ
「ほー、中々ロマンチックじゃないか♪」

ミランダ
「・・・まさか、夢の中の存在ってのも勘弁ね!」

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