クロスアンジュ LIGHTNING EDITION ~天使とドラゴンと五人の巨人使い~   作:ヒビキ7991

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Ep.25/Stand by Me ~本当に大切なもの~《後編》

~アウローラ 医務室~

 

 

アウローラの医務室には、ベッドで横になるリィザとエマ、そしてマギーがいた。リィザは自分が知り得ているマナとドラゴンの関係をエマとマギーに話し、エマはマナでドラゴンとマナについての資料を調べていた。

 

 

リィザ

「お前達の持つマナの光には、我らアウラの民、つまりドラゴンの声に干渉し人を狂わせるという副作用がある。」

 

マギー

「なるほど、だからマナを持たないノーマしか、ドラゴンと戦えなかったと言う事か。」

 

エマ

「そんな事、何処にも載っていません!」

 

リィザ

「当然だ、この世界は嘘で塗り固められている。だがマナを破壊する事が出来るノーマは、その嘘を全て暴いてしまう。だから人間達に本能的にノーマを憎むようプログラムを与え、ノーマを差別し隔離させる存在にしたんだ。」

 

エマ

「そんな・・・それじゃ、私達は只の操り人形みたいじゃない!!」

 

 

バリーン!

 

 

エマ

「キャッ!?」

 

 

突然、エマが展開していたマナのディスプレイが砕け散った。

 

 

マギー

「どうした!?」

 

エマ

「わ、分かりません!急にマナの光が使えなくなってしまって・・・。」

 

マギー

「何だって!?」

 

リィザ

「・・・ついに始まったか。」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~ミスルギ皇国 ホテル~

 

 

「な、何が起こったんだ!?」

 

 

「分からん!マナの光が急に!」

 

 

「なんでマナが使えないんだよ!!」

 

 

「どうなってるんだ!?」

 

 

ミスルギ皇国を始め、世界各地ではマナを失い国民達が混乱を起こしていた。次々と事故が起き、火災が発生し、マナが消えた事で助けを呼ぶ事も出来ず、人々はただ逃げ惑うしか無かった。

 

 

ミスティ

「これは・・・いったい何が起こっているのですか?」

 

 

偶々ミスルギ皇国を訪れていたミスティは、ホテルの外の状況が上手く飲み込めず戸惑っていた。

 

 

「どうやら始まったみたいだね。世界の破壊と再生が。」

 

 

ミスティ

「っ!?」

 

 

突然、ミスティの背後から男の声がした。振り向くとそこには、黒とシアンのメカメカしい銃を持った青年がいた。

 

 

???

「君がローゼンブルム王国の王女、ミスティだね?」

 

ミスティ

「そ、そうですけど・・・貴方は?」

 

???

「僕は《海東大樹》。世界中のお宝を集める通りすがりの仮面ライダーだ。」

 

ミスティ

「仮面・・・ライダー?」

 

海東

「そ。そしてミスティ、僕は君を頂くためにやって来た。」

 

ミスティ

「わ、私を?」

 

海東

「そうさ、君は二重の意味で凄いお宝だからね。ローゼンブルム王国の王女であり、彼女にとってたった一人の大切な友達だからね。」

 

 

海東は右手に持っていた銃、《ディエンドライバー》に1枚のカードをセットしスライド。

 

 

《KAMEN RIDE》

 

 

そしてディエンドライバーを天井に向け引き金を引いた。

 

 

海東

「変身!」

 

 

《DI-END!》

 

 

音声と同時に銃口から青いカード型のエネルギー体が跳び、周囲に赤・青・緑の三体の残像が現れた。残像は海東に集まり、エネルギー体は頭部と合体。海東はブラックとシアンのボディをした、《仮面ライダーディエンド》に変身した。

 

 

ミスティ

「そ、その姿は!?」

 

ディエンド

「一緒に来てもらうよ?」

 

 

シュン…

 

 

二人の前に不思議な光のカーテンが現れ、ディエンドはミスティを連れてカーテンの向こうに消え、光のカーテンも同時に消えた。

 

 

ガチャ

 

 

光のカーテンが消えて直ぐ、メイド達がミスティの部屋に来た。

 

 

メイド

「ミスティ様!急いで・・・ミスティ様?ミスティ様!?」

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~皇宮 廊下~

 

 

一方、シルヴィアは皇宮内を車椅子に乗って移動していた。

 

 

ガタッ

 

 

シルヴィア

「キャッ!?」

 

 

突然車椅子が動かなくなり、シルヴィアは転倒した。

 

 

シルヴィア

「もう、いったいどうなって・・・。」

 

 

シルヴィアはマナで車椅子を動かそうとするが、車椅子は全く動かない。

 

 

シルヴィア

「えっ?どうして・・・!?誰か!誰か居ませんの!?私は第一皇女・・・いえ、女帝シルヴィア一世ですよ!誰か私を助けなさーい!!」

 

 

シルヴィアは真っ暗な廊下で助けを呼ぶ。すると・・・。

 

 

エンブリヲ

「シルヴィア、どうしたかね?」

 

 

闇の中から火の灯ったランタンを持ったエンブリヲが現れた。

 

 

シルヴィア

「え、エンブリヲ叔父様!」

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~地下牢~

 

 

その頃、地下牢の信助は外が騒がしい事に気付いていた。

 

 

信助

「妙に外が騒がしいなぁ・・・。」

 

 

ガシャン

 

 

突然、通路の扉が開きエルシャが現れた。

 

 

信助

「エルシャさん?」

 

エルシャ

「・・・。」

 

 

信助の呼び声にエルシャは答えない。だがエルシャは今まで見せた事が無い程、悲しい表情を浮かべていた。

 

 

ガチャ ガシャン

 

 

エルシャは信助の牢の鍵を開けると、牢に入り信助の隣に腰を下ろした。

 

 

信助

「どうしたんですか?」

 

エルシャ

「信助君・・・私ね、分からなくなっちゃったの。私は、エンブリヲがあの子達が安心して暮らせる世界を作るって言って、私はそれに協力するって決めて、貴方達と戦うって決めた。でも、エンブリヲさんは言ったわ。新しい世界にあの子達は連れて行けないって・・・。」

 

信助

「ウソ、それって・・・。」

 

エルシャ

「そう、全部嘘だったのよ。平和な世界も、平等な暮らしも全部。私にはあの子達しかいなかったのに・・・あ。」

 

 

この時、エルシャは気付いた。自分はただ、利用されていただけだという事に。

 

 

エルシャ

「だから、利用されたんだ・・・!」

 

信助

「えっ?」

 

エルシャ

「全く、何て馬鹿だったのかしら?何もない、浅くて薄くて、ちょろい女。」

 

 

カチャカチャ

 

 

エルシャは信助の拘束を外した。信助はエルシャの突然の行動に驚いた。

 

 

エルシャ

「帰りましょう、信助君。ヒルダちゃんにロザリーちゃんにヴィヴィちゃん、みんなの居るところに!」

 

信助

「・・・はい!」

 

 

エルシャは信助を連れて牢を出る。すると、階段の近くで子供達が行く手を塞いでいた。

 

 

エルシャ

「みんな・・・!」

 

 

「エルシャママ、行かないで!」

 

 

「ママが居なきゃ、アタシ達・・・!」

 

 

子供達は必死にエルシャに訴えた。エルシャは一瞬驚いたが、笑顔を見せ子供達に語りかけた。

 

 

エルシャ

「大丈夫よ。みんなを置いてきぼりにはしないわ。みんなでお引っ越ししましょう。」

 

 

「お引っ越し?」

 

 

エルシャ

「そう、ここはもう安全じゃない。だから、みんなでお引っ越しするのよ。」

 

 

「・・・でも、どうやって?」

 

 

エルシャ

「大丈夫、ママと信助のお兄ちゃんがいれば問題無いわ。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~裏庭~

 

 

エルシャと信助は子供達を連れて裏庭へやって来た。エルシャは子供達を裏庭の中央に集め、エルシャはレイジア、信助はタイタニアスを近くに配置した。

 

 

エルシャ

「信助君、良いわよ!」

 

信助

「はい!頼むぞタイタニアス!バリア最大展開!」

 

 

信助はタイタニアスを操作し、周囲にドーム状のバリアを展開。

 

 

信助

「よし、行きます!」

 

 

ゴゴゴゴゴ・・・!

 

 

バリアを境に内側の地面が宙に浮き始める。そして、巨大な球体が姿を現した。球体は塀を越え、空に暗雲が立ち込める市街地の上空を飛行し海へと向かう。

 

 

「スゴーい!」

 

 

信助

「よし、このまま!」

 

 

『ちょっとエルシャ!!』

 

 

突然、レイジアの通信機から聞き慣れた声が聞こえてきた。辺りを見ると、球体の直ぐ横をテオドーラが飛行していた。

 

 

エルシャ

「クリスちゃん・・・。」

 

クリス

「エルシャ、いったい何やってるのさ!」

 

エルシャ

「帰るのよ。私達の本当の居場所に。」

 

クリス

「帰るだって?もしかして、そこに居る信助に感化されたの?」

 

エルシャ

「違うわ!これは私の意思よ!」

 

 

エルシャはクリスに真剣な眼差しを向けて訴える。それを見てクリスは驚いた。

 

 

エルシャ

「ねえ、クリスちゃんはいいの?このまま友達を・・・ヒルダちゃんとロザリーちゃんをころすことになっても。」

 

クリス

「友達ぃ?ああ、もちろんさ!あんな奴ら、もう友達じゃない!!」

 

エルシャ

「・・・そう、分かった。」

 

 

エルシャはそう言うと、クリスに背を向けた。クリスはこれ以上何を言っても無駄だと思ったのか、皇宮へと引き返して行った。そして海に出て一時間後、前方にアウローラを発見した。

 

 

信助

「見えた、アウローラだ!」

 

エルシャ

「みんな、お願い!」

 

 

エルシャは子供達に伝えると、子供達は何故か手に持っていた白い下着を振り回し始めた。

 

 

信助

「・・・今聞くのもアレなんですけど、何で下着なんです?」

 

エルシャ

「それが、白い布系のモノを探してたらコレしか無かったのよ。ハンカチやタオルは全部燃えちゃったみたいだったし・・・。」

 

信助

「あぁ、なるほど・・・」

 

 

エルシャは苦笑いで説明し、信助は苦笑いで納得した。信助はアウローラと回線を繋ぎ、通信を始める。

 

 

信助

「さてと・・・こちら信助。アウローラ、聞こえますか?」

 

 

オリビエ

『こちらアウローラ。信助君、貴方なの!?』

 

信助

「はい、エルシャさんと子供達も一緒です!」

 

オリビエ

『今映像で確認したわ!・・・て言うか、何で子供達は白ブラとパンツ振り回してるの?』

 

エルシャ

「違うわ、白旗よ。」

 

オリビエ

『白旗?じゃあもしかして・・・。』

 

エルシャ

「ええ・・・ダイヤモンド・ローズ騎士団エルシャ、現時刻をもって投降致します。」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~無人島 住処~

 

 

一方、タスクの住処にたどり着いたアンジュは、住処にあったタスクのYシャツに着替えベッドで横になり身体を休めていた。

 

 

アンジュ

「水・・・。」

 

 

アンジュはベッドを降り立ち上がる。

 

 

ガンッ!

 

 

だが上手く立つ事が出来ずフラつき転倒した。

 

 

パタッ

 

 

アンジュ

「いったぁ・・・ん?」

 

 

転倒した衝撃で、机の上の本棚から1冊のノートが落ちてきた。ノートの表紙には《DIARY》と書かれていた。

 

 

アンジュ

「タスクの・・・日記?」

 

 

アンジュは日記を開き、読み始めた。

 

 

ーー○月✕日

今日、モーガンさんが死んだ。これで俺は一人になった。

無理だったんだ、エンブリオに戦いを挑むなんて・・・世界を壊そうだなんて・・・。

何をしても独り。孤独に気が狂いそうになる。人は、一人では生きていけない・・・。

 

 

ペラッ

 

 

アンジュ

「っ!!」

 

 

アンジュは次のページを見て、驚いた。

 

 

ーー○月✕日

今日、浜に女の子が流れ着いた。ヴィルキスともう一機のパラメイルと共に。

かなり凶暴で、人の話をまるで聞かない女の子だけど・・・アンジュは光だ。

外の世界から差し込んだ光。

父さん、母さん、やっと見つけたよ。

彼女を守る。それが俺の・・・俺だけの使命だ。行ってきます。

 

 

 

日記はここで終わっていた。

 

 

 

アンジュ

「タスク・・・。」

 

 

アンジュは握り締めていたタスクのペンダントを見つめ、そして涙を流し泣き出しだ。

 

 

アンジュ

「ずっと守ってくれてた・・・なのに私、傍に居てあげれなかった・・・。

 

 

お願い、タスク・・・モモカ・・・天馬・・・私を一人にしないで・・・うぅぅ・・・。」

 

 

アンジュはふと、床に脱ぎ捨ててあったダイヤモンド・ローズ騎士団の制服から拳銃を抜き取った。マガジンには銃弾が一発だけ残っていた。

 

 

アンジュ

「みんな・・・。」

 

 

カチャ

 

 

アンジュは拳銃の撃鉄を起こし、銃口を自分の顎へ近づけ眼を閉じ、震えながら引き金にゆっくりと指をかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あんた、本気で死にたいと思ってるのか!?あんたも人間だろ!?人間なら、命ある限り生き続けろよ!!』

 

 

『君は生きるんだ、アンジュ。』

 

 

『生きるのです…アンジュリーゼ…』

 

 

『人間いつ死ぬかは分からない!だからこそ、最後の時を迎えるその時まで全力で生きるんだ!自分よりも先に死んでいった人達の分も!志半ばで倒れた仲間の分も!』

 

 

 

アンジュ

「っ!!」

 

 

突如、アンジュの脳裏に嘗ての思い出と、天馬、タスク、そしてソフィアの言葉が過った。

 

 

アンジュ

「うぅ・・・うぅ・・・。」

 

 

アンジュは銃を下ろし、その場で泣き崩れた。

 

 

 

 

ガサガサガサ・・・

 

 

アンジュ

「っ!?」

 

 

突然、茂みから物音がした。音は徐々にアンジュの居る住処へと近づいて来る。

 

 

アンジュ

「何か・・・来る!」

 

 

アンジュは恐怖で震えながら茂みに銃口を向ける。そして、人影が見えた途端・・・。

 

 

アンジュ

「ヒィッ!!」

 

 

バシューン!

 

 

アンジュは人影に向けて発砲。

 

 

ザシュッ!

 

 

「うわっ!?」

 

 

ドサッ!

 

 

銃弾は人影の頬を掠め、人影は驚いて声を発し後ろに倒れた。だが、アンジュは人影が発した声に聞き覚えがあった。

 

 

アンジュ

「今の声・・・。」

 

 

すると、今度は上空の雨雲が晴れ、太陽が無人島を照らし出す。そして人影の姿が露になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンジュ

「天・・・馬?」

 

 

天馬

「イッテェ・・・ん?」

 

 

人影の正体は、爆発したペガサスと共に海に落ちた天馬だった。天馬は身体中煤と傷と痣だらけで、ユニフォームは一部が煤で汚れボロボロ。左の頬には先程アンジュの放った銃弾による切り傷があり、血を流していた。

 

 

天馬

「アンジュさん!!」

 

 

天馬はアンジュを見るなり喜び、立ち上がり駆け寄った。

 

 

天馬

「良かった、無事だったんですね?」

 

アンジュ

「天馬・・・うぅ、うわあああああああ!!」

 

天馬

「どわあ!?」

 

 

アンジュは大泣きし、天馬に抱き付いた。天馬は抱き付かれた拍子に後ろに倒れた。

 

 

天馬

「アンジュさん!?どうしたんですか!?アンジュさん!!」

 

 

天馬はアンジュに呼び掛けるが、アンジュには自身の泣き声のせいで聞こえていなかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~桟橋~

 

 

夕方、天馬とアンジュは桟橋で海に沈む夕日を眺めていた。近くの砂浜には左腕と右脚を失ったペガサスが打ち上げられていた。

 

 

天馬

「落ち着きました?」

 

アンジュ

「うん。ゴメンね、急に撃つわ抱き付くわ大泣きするわで・・・。」

 

 

アンジュは天馬の頬の傷に手を沿えた。

 

 

天馬

「これくらい大丈夫です。それより、アンジュさんが無事で良かった。」

 

 

二人は互いに微笑み、共に海に眼を向けた。

 

 

天馬

「綺麗ですね。」

 

アンジュ

「うん・・・。」

 

 

『・・・君の方が、綺麗さ。』

 

 

アンジュの脳裏に、タスクの姿が過った。

 

 

アンジュ

「バカ!何で私なんか・・・。」

 

 

『俺はもうヴィルキスの騎士じゃない。アンジュの騎士だ!』

 

 

アンジュ

「タスク、貴方はそれで良かったの?使命のために全てを失っても・・・それで望んだのは、どんな世界?」

 

 

『穏やかな日々が来ればいい・・・そう思ってるだけさ。

 

 

 

 

大丈夫、必ず戻るから、君のところに・・・。』

 

 

アンジュ

「貴方が居なくなったら、何も意味無いじゃない!」

 

天馬

「アンジュさん・・・。」

 

アンジュ

「タスク・・・貴方が好きよ・・・。」

 

天馬

「・・・。」

 

 

ガシッ

 

 

天馬はアンジュを優しく抱き寄せた。

 

 

アンジュ

「天馬・・・?」

 

天馬

「アンジュさんは俺が守ります。この先、何があっても・・・。」

 

アンジュ

「・・・ありがとう・・・うぅ!」

 

 

アンジュは泣き出した。

 

 

アンジュ

「こんなことなら、彼に最後までさせてあげればよかった・・・!」

 

 

「ホントに?」

 

 

アンジュ

「うん・・・えっ?」

 

 

突然、後ろから聞き覚えのある声がした。二人が恐る恐る振り向くと、二人は目を疑った。

 

 

天馬

「た、タスクさん!?」

 

 

二人が目にしたのは、爆発に巻き込まれ死んだ筈のタスクの姿だった。アンジュと天馬は立ち上がり、タスクに駆け寄った。

 

 

タスク

「よかった、二人とも無事で。」

 

アンジュ

「タスク・・・何で?」

 

タスク

「アンジュの騎士は、不死身なのさ。」

 

天馬

「本当に・・・本当にタスクさんなんですか!?」

 

タスク

「ああ、俺だよ。」

 

 

パシン!

 

 

天馬

「ええっ!?」

 

 

突然、アンジュはタスクの左頬を勢いよく引っ叩いた。

 

 

タスク

「痛ッ!えっ?」

 

 

タスクは何故引っ叩かれたのか分からず戸惑う。

 

 

アンジュ

「タスクは・・・死んだわ!」

 

 

パシン!

 

 

タスク

「アタッ!」

 

 

さらに右頬に往復ビンタ。

 

 

アンジュ

「これは、エンブリヲが見せてる幻!絶対そうよ!」

 

タスク

「ち、違うよ!!」

 

アンジュ

「だって・・・天馬はボロボロになって戻ってきたのに、タスク・・・貴方には爆発の痕も、斬られた傷も無いもの・・・。」

 

タスク

「俺は生きてる!こうやって、君のところに帰ってきたじゃないか!」

 

天馬

「そ、そうですよアンジュさん!」

 

アンジュ

「信じない!タスクは・・・タスクは死んだの!!」

 

 

ガシッ

 

 

突然、アンジュはタスクの襟元を掴みタスクを押し倒した。

 

 

アンジュ

「確かめるわ、自分で!」

 

 

アンジュはタスクの上に乗り、Yシャツのボタンを外し、Yシャツを脱ぎ捨てた。

 

 

天馬

「あ・・・。」

 

 

タスクと天馬は頬を赤く染め、天馬はアンジュに背を向け静かに桟橋の下へ移動した。

 

 

タスク

「あ、アンジュ?」

 

 

チュッ

 

 

タスク

「っ!?」

 

 

アンジュはタスクに優しく唇を重ねた。

 

 

アンジュ

「少し黙ってて!」

 

タスク

「えっ?」

 

アンジュ

「お願いだから!」

 

タスク

「・・・アンジュ。」

 

 

タスクはアンジュの背中に手を伸ばし、アンジュを優しく抱きしめた。

 

 

 

そして夜、三人は桟橋で仰向けになり星空を見上げていた。

 

 

アンジュ

「綺麗ね・・・。」

 

天馬

「はい・・・。」

 

タスク

「ああ、あの日と同じだ・・・。」

 

アンジュ

「実はね、天馬が来る前に私、死のうとしてたの。」

 

タスク・天馬

「えっ?」

 

アンジュ

「でも無理だった。人は、独りじゃ生きていけない。罵り合う事も抱き合う事も、何も出来ない。」

 

タスク

「日記、読んだんだね?」

 

アンジュ

「ホントに、生き返らされたんじゃないのよね?」

 

タスク

「もちろん、俺は生きてるよ。」

 

天馬

「・・・あ!」

 

 

突然、天馬が立ち上がり後ろを向いた。

 

 

アンジュ

「どうしたの?」

 

天馬

「見てください!」

 

 

アンジュとタスクは天馬の示す方向に目を向ける。示す先には、山裾から上る太陽があった。

 

 

タスク

「夜明けだ。」

 

アンジュ

「不思議・・・何もかもが、新しく輝いて見えるわ。」

 

天馬

「ええ。」

 

アンジュ

「・・・私ね、アイツに言われたの。世界を壊して、新しく作り直そうって。でもね、私はこの世界が好きみたい。どれだけ不完全で愚かでも、この世界が。」

 

天馬

「俺も、この世界が好きです。沢山の友達や仲間達との沢山の思い出が詰まった、この世界が・・・。」

 

タスク

「俺もアンジュと一緒だ。いつまでも・・・。」

 

アンジュ

「私の騎士だから?」

 

タスク

「違う。君が好きだからだ。」

 

 

タスクはアンジュと静かに手を重ねた。

 

 

天馬

「・・・守りましょう、この世界を。そして生きましょう、モモカさんの分も。」

 

アンジュ

「うん、そうね!」

 

タスク

「あっ・・・実はその事なんだけど・・・。」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~住処~

 

 

モモカ

「皆様お待ちしておりました!」

 

 

住処に戻ってみると、そこには朝食を作り終えたモモカの姿があった。

 

 

モモカ

「本日のメニューは・・・

 

川魚の燻製

 

木の実と茸のポタージュ

 

猪のジビエ ~山葡萄のソースを添えて~

 

になります!オススメはコチラのポタージュで、12時間程コトコト煮込んで・・・。」

 

タスク

「12時間・・・。」

 

 

タスクは目線をそらしながら苦笑いし、アンジュと天馬は又しても目を疑った。

 

 

アンジュ

「も、モモカ!?」

 

天馬

「ええっ!?で、でででも、どうして・・・!?」

 

 

ゴソゴソ・・・。

 

 

と、モモカは服の中からある物を取り出した。銃弾がめり込んだフライパンだ。

 

 

モモカ

「このフライパンのお陰です!いつでもお料理出来るようにと思い、携帯しておいて良かったです。」

 

アンジュ・天馬

「・・・プッ、アハハハハ!」

 

 

モモカの話を聞いて、アンジュと天馬は笑った。

 

 

アンジュ

「流石、私の筆頭侍女ね!」

 

モモカ

「はい!・・・あ、大変です姫様!私、マナが使えなくなってしまったんです!」

 

アンジュ・タスク・天馬

「えっ?」

 

 

ドーン!

 

 

突然、海の方向から轟音が聞こえてきた。一同が海に向かうと、遥か彼方に見える陸に、不気味な色の暗雲が立ち込め、あちこちで落雷が起きていた。

 

 

天馬

「ついに始まったんだ。世界の破壊と再生が・・・!」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~倉庫~

 

 

朝食を終え、タスクは黒いフライトスーツ、アンジュは住処にあった古いライダースーツに着替え、一同は島の外れにある古い倉庫へと来た。

 

 

ギギギギギ・・・!

 

 

扉を開けると、中には桃色のパラメイルが眠っていた。

 

 

アンジュ

「これって・・・!」

 

天馬

「パラメイル・・・しかもアーキバスじゃないですか!」

 

タスク

「《アーキバスバネッサ・カスタム》。10年前、アルゼナルのメイルライダーだった母さんが使ってた機体だ。先ずはミスルギ皇国に戻って、ヴィルキスを回収しないと。」

 

アンジュ

「大丈夫、その必要は無いわ。」

 

 

と、アンジュは左手を天に掲げる。

 

 

アンジュ

「おいで、ヴィルキス!」

 

 

キイィィィィィィンッ!

 

 

アンジュの呼び声に反応するかのように左手の指輪が光だし、そしてアンジュの目の前にヴィルキスが現れた。

 

 

タスク

「ヴィルキスだ!」

 

天馬

「凄い!」

 

アンジュ

「さあ、みんな行くわよ!」

 

モモカ・天馬

「はい!」

 

タスク

「オッケー!」

 

 

アンジュはヴィルキス、タスクはアーキバス、天馬はペガサス、モモカはタスクのエアバイクに乗り、そして一同は飛び立ち無人島を離れた。

 

 

アンジュ

「みんな、今行くからね!」

 

 

To Be Continued…




~次回予告~



「海東、お前ついに誘拐にまで手を染める気か?」

海東
「失礼だね。僕は単に彼女、ミスティ・ローゼンブルムという名のお宝を消滅の危機から救ってあげただけさ。逆に感謝してもらいたいねぇ?」


「泥棒に感謝も何もねぇよ!・・・まあいい、ここに出てきた以上は、次回からキッチリ働いてもらうからな?」

海東
「ハイハイ、分かったよ。
・・・てな訳で、次回からの僕の活躍、楽しみにしててね。」


「はぁ・・・次回、《発動!ラストリベルタス》だ!楽しみにしとけよ?」

海東
「何?司、もしかして怒ってるのかい?」


「別に!お前と一緒に予告をするのが面倒なだけだ!」

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