クロスアンジュ LIGHTNING EDITION ~天使とドラゴンと五人の巨人使い~   作:ヒビキ7991

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Ep.23/時空融合《後編》

~アウローラ 格納庫~

 

 

艦内が騒ぎになっている中、パラメイル格納庫には黒と赤紫のライダースーツに身を包んだジルの姿があった。

 

 

ジル

「・・・。」

 

 

ジルは少々ふらつきながら、一緒に格納されたエルシャのハウザーに向かう。

 

 

 

「気合い入れておめかしして、何処に行くんだい?司令。」

 

 

ジル

「っ!?」

 

 

ジルは自分しか居ない筈の格納庫で誰かの声を聞いた。慌てて辺りを見ると、タスク・ヒルダ・ロザリー・ヴィヴィアン・ゾーラ・ココ・ミランダ・剣城・神童・信助・霧野がハウザーの周囲を取り囲んでいた。

 

 

ジル

「お前達・・・。」

 

ヒルダ

「エンブリオ様のとこでも行くつもり?」

 

ジル

「っ!?」

 

 

ジルはヒルダの発言に驚いた。

 

 

ヒルダ

「聞いちゃったんだよ、司令が寝言で魘されてるとこ。」

 

ジル

「そうか、なら・・・。」

 

 

カチッ

 

 

「おっと、動くなよ?」

 

 

ジルがホルスターに手を伸ばそうとした途端、後頭部に冷たい鉄の感触、後方から聞き慣れない男の声がした。

 

 

ジル

「っ!?」

 

 

ジルは恐る恐る後ろを向く。そこではガンモードに変形させたライドブッカーを右手に構えるディケイドの姿があった。

 

 

ジル

「お前は・・・?」

 

ディケイド

「それ以上動けば、お前さんの頭の上半分が無くなるぞ?」

 

 

プシュー

 

 

メイ

「よし、開いた!」

 

 

隔壁が開き、メイ達整備班とマギー達医療班、さらにジャスミン・バルカン・パメラ・ヒカル・オリビエが格納庫にやって来た。

 

 

ジャスミン

「何だいこりゃ?」

 

 

ジャスミン達はディケイドと格納庫の現状を見て驚いた。

 

 

マギー

「あんた、何者だい?」

 

 

マギーはディケイドに問う。

 

 

ディケイド

「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておきな。」

 

マギー

「仮面・・・?」

 

メイ

「ライダー?」

 

 

聞き慣れない言葉に混乱するマギーとメイ。すると、ディケイドは右手に構えていたライドブッカーを左腰に戻し、ディケイドライバーを転回し変身を解いた。

 

 

「さ、役者は揃ったことだし、大人しく観念して吐いてもらうぜ?アンタの知ってる事全部な。」

 

ジル

「・・・くっ!」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~皇宮 地下牢~

 

 

その頃、モモカはアンジュと天馬の行方を追って地下牢へと来ていた。

 

 

モモカ

「アンジュリーゼ様ー!天馬さーん!どちらですかー!」

 

 

モモカは更に奥へと進む。すると・・・。

 

 

モモカ

「・・・あれ?」

 

 

真っ暗な牢の中で一ヶ所だけ、奥にある牢の灯りが灯っているのに気づいた。

 

 

モモカ

「誰か居るのでしょうか?」

 

 

モモカは灯りのある牢へと向かう。

 

 

モモカ

「・・・っ!?」

 

 

牢の中では、リィザが天井から鎖で吊るされ気を失っていた。身体中には鞭で打たれたかの様な無数の傷がある。モモカは急いで牢の扉を開け、リィザを下ろし拘束を解く。そして近くにあった杯に水を注ぎ、リィザに与えた。

 

 

リィザ

「・・・ん。」

 

 

リィザは直ぐに目を覚まし、モモカは安心した。

 

 

モモカ

「気が付きましたか?」

 

リィザ

「・・・何故だ?何故助けた?」

 

モモカ

「・・・ジュリオ様とアンジュリーゼ様とを貶めた事は、決して忘れません。ですから、アンジュリーゼ様に謝ってください。それまでは絶対に死んではダメです。」

 

リィザ

「・・・皇宮西側の地下、皇族専用シェルター。恐らく、二人はそこに居る。」

 

モモカ

「えっ?」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~アウローラ 司令室~

 

 

その頃、アウローラではジルへの尋問が行われようとしていた。ジルは手錠で左腕とベッドの手すりを繋がれ拘束されている。

 

 

ジル

「私はエンブリヲの人形だった。奴に心を支配され、全てを奪われたんだ。誇りも使命も純潔も・・・。」

 

タスク

「・・・。」

 

ジル

「怖かったよ。リベルタスの大義、ノーマ解放の使命、仲間との絆・・・それが全て奴への愛情、理想、快楽に飲み込まれてしまったんだ・・・。」

 

剣城

「その事を、話さなかったのか?」

 

ジル

「フッ・・・エンブリヲを殺しに行ったが、逆に身も心も奪われましたなんて、話せると思うか?

 

 

全部私のせいさ。リベルタスの失敗も、仲間の死も・・・こんな汚れた女を助けるために、みんな死んだんだ!だから私に出来る弔いは一つ、この手でエンブリオを殺すだけ。」

 

タスク

「だから、一人で行こうとしたのか?」

 

ジル

「ああ、今頃奴は新しい玩具に御執心だろう。奴を殺すのは今しか無いと思ったんだ。まぁ、それもお前達のせいで無駄になったがな。」

 

 

ジルは静かに笑いながらヒルダ達を見た。だがその笑顔はヒルダ達には寂しそうにも、悲しそうにも見えた。

 

 

マギー

「・・・ジル、いやアレクトラ。」

 

ジル

「?」

 

 

ジルはマギーに呼ばれ振り向く。

 

 

パシンッ!

 

 

一同

「っ!?」

 

 

次の瞬間、マギーはジルの左頬をひっぱたいた。

 

 

マギー

「アタシは、アンタだから・・・アンタのダチだから、何時までも一緒に戦ってきたんだ。なのに、ずっと利用されていただなんて・・・。」

 

ジャスミン

「ジル、悪いが真実を知っちまった以上、アンタをボスにしちゃおけない。」

 

ジル

「分かっている・・・。」

 

 

ジルは静かに呟くと、ヒルダに目を向けた。

 

 

ジル

「ヒルダ、指揮権をお前に預ける。今後はお前が司令官だ。お前なら、間違える事は無いだろう・・・。」

 

ヒルダ

「イエス・マム!」

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~皇宮 皇族専用シェルター~

 

 

その頃、エンブリヲと共に消えたアンジュと天馬は、皇族専用シェルターにいた。だが、アンジュはエンブリヲから幾度となく感覚変換の拷問を受け続け、心身共に既にボロボロだった。

 

 

エンブリヲ

「美しい者が苦しみ、強いたげられ、絶望する姿を見るのは実に楽しい。」

 

 

エンブリヲは床に倒れるアンジュに近づき、優しく問いかけた。

 

 

エンブリヲ

「そろそろ、素直になれたかな?」

 

アンジュ

「ハァ・・・はい・・・エンブリヲ・・・さ・・・。」

 

天馬

「ダメだアンジュさん!!」

 

アンジュ

「っ!?」

 

 

天馬の声で正気を取り戻した。天馬は柱に鎖でぐるぐる巻きに拘束されている。

 

 

天馬

「エンブリヲの言いなりになっちゃダメだ!」

 

アンジュ

「そ、そうよ!誰がアンタみたいなクズ野郎なんかに・・・!」

 

エンブリヲ

「全く・・・。」

 

 

パチンッ

 

 

エンブリヲは呆れた顔で指を鳴らす。すると、アンジュの身体を激しい暑さが、天馬の身体を激しい痛みが襲った。

 

 

アンジュ

「いやあああああ!!」

 

天馬

「ぐあああああああ!!」

 

 

アンジュは暑さに耐えきれず、身に纏っていたドレスと下着全てを脱ぎ捨てた。

 

 

エンブリヲ

「君も中々しぶといな。今の君の痛覚は通常の百倍。君を拘束するその鎖も、今の君にとっては身体中に突き刺さる刃そのものだ。並みの人間が耐えれるレベルではない。」

 

天馬

「俺は、アンジュさんを守るために戦うって決めたんだ!アンジュさんを守るためなら、この程度の痛み、どうってこと無い!」

 

エンブリヲ

「ほう、ではこれでどうかな?」

 

 

パチンッ!

 

 

エンブリヲは更に指を鳴らす。

 

 

天馬

「っ!?ぐあああああああ!!」

 

 

その直後、天馬の身体を更に激しい痛みが襲った。

 

 

エンブリヲ

「痛覚を更に百倍に上げた。これ程の痛み、耐えられるかな?」

 

 

エンブリヲはそう言うと、再びアンジュに目を向けた。だが・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天馬

「放セ・・・!」

 

 

エンブリヲ

「ん?」

 

 

突然、エンブリヲは天馬から今まで感じたことの無い力を感じ取った。天馬の瞳は赤く染まり、身体中から赤いオーラが出ていた。

 

 

エンブリヲ

「これは・・・!?」

 

天馬

「アンジュさんを放せ、エンブリヲ!!」

 

 

バキーン!!

 

 

天馬は自身を拘束していた鎖を意図も簡単に引きちぎり、引きちぎったと同時に部屋一帯に衝撃波を放った。

 

 

ドーン!

 

 

エンブリヲ

「なにっ!?」

 

 

バンッ!

 

 

エンブリヲは衝撃波で吹き飛ばされて倒れ、アンジュは身体中の感覚が全て元に戻った。

 

 

アンジュ

「天・・・馬?」

 

エンブリヲ

「くっ・・・!」

 

 

ガチャ! バタン!

 

 

エンブリヲは立ち上がり、逃げるように部屋から脱出した。

 

 

天馬

「待てっグッ!?」

 

 

天馬がエンブリヲを追おうとした途端、天馬はアンジュの目の前に倒れた。目は元の青に戻り、赤いオーラも消えた。

 

 

アンジュ

「天馬!?」

 

天馬

「大丈夫です・・・それより、急いでここから出ないと・・・。」

 

 

天馬はゆっくりと立ち上がり、エンブリヲが出ていった扉を目指す。

 

 

ガチャ

 

 

だがドアノブに触れようとした途端、ドアが開き、見慣れた藍色の髪の少女が現れた。

 

 

天馬

「サリア・・・さん?」

 

サリア

「退いて。」

 

 

サリアは天馬を押し退け、アンジュを見下ろした。その顔は険しかったが、少し悲しんでいる様にも見えた。

 

 

サリア

「・・・無様ね。エンブリヲ様に歯向かうからよ、バカ。」

 

アンジュ

「バカは・・・そっちでしょ?あんなゲス野郎に心酔しちゃって・・・。」

 

サリア

「私にはもう、あの人しか居ない。でもアンジュ、アンタは違う。ヴィルキスも、仲間も、自分の居場所も、何だってある。変身なんてする必要も無い。」

 

アンジュ

「サリア?」

 

サリア

「出ていきなさい、エンブリヲ様が戻ってくる前に。このまま抵抗を続ければ、そのうち心を壊されるわ。」

 

天馬

「サリアさん、貴女・・・!」

 

サリア

「勘違いしないで。私はただ、これ以上アンジュに何かを奪われるのと、アンタ達の無様な姿を見るのが嫌なだけだから。」

 

 

サリアはそう言うと、小さなピンク色のカプセルと、折り畳まれた黒い布を投げ捨て静かに部屋から去っていった。

 

 

アンジュ

「これは・・・?」

 

 

アンジュはカプセルを拾い、カプセルを開けた。

 

 

アンジュ

「っ!!」

 

 

カプセルの中には、アンジュが大切にしていた指輪が入っていた。そして黒い布の正体は、ダイヤモンド・ローズ騎士団の予備の制服だった。

 

 

天馬

「・・・ありがとうございます、サリア隊長。」

 

 

アンジュは制服を身に纏い指輪を左手中指に通し、天馬の肩を貸り共に部屋を出た。

 

 

天馬

「大丈夫ですか?」

 

アンジュ

「ええ、ちょっと胸がキツいけど、大丈夫・・・。」

 

 

そして通路を少し進んだところで・・・。

 

 

モモカ

「アンジュリーゼ様!」

 

アンジュ

「モモカ!」

 

天馬

「モモカさん!」

 

 

二人はモモカと合流した。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~暁ノ御柱 最深部~

 

 

一方、エンブリヲはヴィルキスを含めたラグナメイル7機とアウラを使い、時空融合の準備を進めていた。

 

 

エンブリヲ

「・・・準備が整った。総員ラグナメイルに騎乗!暁ノ御柱を守れ!」

 

 

ダイヤモンド・ローズ騎士団

「イエス・マスター!」

 

 

サリアを除くダイヤモンド・ローズ騎士団四人は各々のラグナメイルに向かった。

 

 

エンブリヲ

「・・・ん?」

 

 

エンブリヲはふと監視カメラの映像を見る。そこには先程アンジュと天馬が居た部屋の様子が映っていたが、既にもぬけの殻と化していた。

 

 

エンブリヲ

「逃げたか。だが逃がさんぞ、アンジュ。」

 

 

 

To Be Continued…




~次回予告~



「ようやく会えたぜ、エンブリヲ。」

エンブリヲ
「ほぅ。貴様が噂の世界の破壊者、仮面ライダーディケイドか?」


「悪いが俺はこの世界を破壊する。それが俺の、この世界での成すべき事みたいだからな!」

エンブリヲ
「面白い、ならばやってみるがいい!」


「次回、《対決!創造主vs破壊者》。」

エンブリヲ
「・・・変身!」

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