クロスアンジュ LIGHTNING EDITION ~天使とドラゴンと五人の巨人使い~ 作:ヒビキ7991
~アウローラ 格納庫~
艦内が騒ぎになっている中、パラメイル格納庫には黒と赤紫のライダースーツに身を包んだジルの姿があった。
ジル
「・・・。」
ジルは少々ふらつきながら、一緒に格納されたエルシャのハウザーに向かう。
「気合い入れておめかしして、何処に行くんだい?司令。」
ジル
「っ!?」
ジルは自分しか居ない筈の格納庫で誰かの声を聞いた。慌てて辺りを見ると、タスク・ヒルダ・ロザリー・ヴィヴィアン・ゾーラ・ココ・ミランダ・剣城・神童・信助・霧野がハウザーの周囲を取り囲んでいた。
ジル
「お前達・・・。」
ヒルダ
「エンブリオ様のとこでも行くつもり?」
ジル
「っ!?」
ジルはヒルダの発言に驚いた。
ヒルダ
「聞いちゃったんだよ、司令が寝言で魘されてるとこ。」
ジル
「そうか、なら・・・。」
カチッ
「おっと、動くなよ?」
ジルがホルスターに手を伸ばそうとした途端、後頭部に冷たい鉄の感触、後方から聞き慣れない男の声がした。
ジル
「っ!?」
ジルは恐る恐る後ろを向く。そこではガンモードに変形させたライドブッカーを右手に構えるディケイドの姿があった。
ジル
「お前は・・・?」
ディケイド
「それ以上動けば、お前さんの頭の上半分が無くなるぞ?」
プシュー
メイ
「よし、開いた!」
隔壁が開き、メイ達整備班とマギー達医療班、さらにジャスミン・バルカン・パメラ・ヒカル・オリビエが格納庫にやって来た。
ジャスミン
「何だいこりゃ?」
ジャスミン達はディケイドと格納庫の現状を見て驚いた。
マギー
「あんた、何者だい?」
マギーはディケイドに問う。
ディケイド
「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておきな。」
マギー
「仮面・・・?」
メイ
「ライダー?」
聞き慣れない言葉に混乱するマギーとメイ。すると、ディケイドは右手に構えていたライドブッカーを左腰に戻し、ディケイドライバーを転回し変身を解いた。
司
「さ、役者は揃ったことだし、大人しく観念して吐いてもらうぜ?アンタの知ってる事全部な。」
ジル
「・・・くっ!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~皇宮 地下牢~
その頃、モモカはアンジュと天馬の行方を追って地下牢へと来ていた。
モモカ
「アンジュリーゼ様ー!天馬さーん!どちらですかー!」
モモカは更に奥へと進む。すると・・・。
モモカ
「・・・あれ?」
真っ暗な牢の中で一ヶ所だけ、奥にある牢の灯りが灯っているのに気づいた。
モモカ
「誰か居るのでしょうか?」
モモカは灯りのある牢へと向かう。
モモカ
「・・・っ!?」
牢の中では、リィザが天井から鎖で吊るされ気を失っていた。身体中には鞭で打たれたかの様な無数の傷がある。モモカは急いで牢の扉を開け、リィザを下ろし拘束を解く。そして近くにあった杯に水を注ぎ、リィザに与えた。
リィザ
「・・・ん。」
リィザは直ぐに目を覚まし、モモカは安心した。
モモカ
「気が付きましたか?」
リィザ
「・・・何故だ?何故助けた?」
モモカ
「・・・ジュリオ様とアンジュリーゼ様とを貶めた事は、決して忘れません。ですから、アンジュリーゼ様に謝ってください。それまでは絶対に死んではダメです。」
リィザ
「・・・皇宮西側の地下、皇族専用シェルター。恐らく、二人はそこに居る。」
モモカ
「えっ?」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~アウローラ 司令室~
その頃、アウローラではジルへの尋問が行われようとしていた。ジルは手錠で左腕とベッドの手すりを繋がれ拘束されている。
ジル
「私はエンブリヲの人形だった。奴に心を支配され、全てを奪われたんだ。誇りも使命も純潔も・・・。」
タスク
「・・・。」
ジル
「怖かったよ。リベルタスの大義、ノーマ解放の使命、仲間との絆・・・それが全て奴への愛情、理想、快楽に飲み込まれてしまったんだ・・・。」
剣城
「その事を、話さなかったのか?」
ジル
「フッ・・・エンブリヲを殺しに行ったが、逆に身も心も奪われましたなんて、話せると思うか?
全部私のせいさ。リベルタスの失敗も、仲間の死も・・・こんな汚れた女を助けるために、みんな死んだんだ!だから私に出来る弔いは一つ、この手でエンブリオを殺すだけ。」
タスク
「だから、一人で行こうとしたのか?」
ジル
「ああ、今頃奴は新しい玩具に御執心だろう。奴を殺すのは今しか無いと思ったんだ。まぁ、それもお前達のせいで無駄になったがな。」
ジルは静かに笑いながらヒルダ達を見た。だがその笑顔はヒルダ達には寂しそうにも、悲しそうにも見えた。
マギー
「・・・ジル、いやアレクトラ。」
ジル
「?」
ジルはマギーに呼ばれ振り向く。
パシンッ!
一同
「っ!?」
次の瞬間、マギーはジルの左頬をひっぱたいた。
マギー
「アタシは、アンタだから・・・アンタのダチだから、何時までも一緒に戦ってきたんだ。なのに、ずっと利用されていただなんて・・・。」
ジャスミン
「ジル、悪いが真実を知っちまった以上、アンタをボスにしちゃおけない。」
ジル
「分かっている・・・。」
ジルは静かに呟くと、ヒルダに目を向けた。
ジル
「ヒルダ、指揮権をお前に預ける。今後はお前が司令官だ。お前なら、間違える事は無いだろう・・・。」
ヒルダ
「イエス・マム!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~皇宮 皇族専用シェルター~
その頃、エンブリヲと共に消えたアンジュと天馬は、皇族専用シェルターにいた。だが、アンジュはエンブリヲから幾度となく感覚変換の拷問を受け続け、心身共に既にボロボロだった。
エンブリヲ
「美しい者が苦しみ、強いたげられ、絶望する姿を見るのは実に楽しい。」
エンブリヲは床に倒れるアンジュに近づき、優しく問いかけた。
エンブリヲ
「そろそろ、素直になれたかな?」
アンジュ
「ハァ・・・はい・・・エンブリヲ・・・さ・・・。」
天馬
「ダメだアンジュさん!!」
アンジュ
「っ!?」
天馬の声で正気を取り戻した。天馬は柱に鎖でぐるぐる巻きに拘束されている。
天馬
「エンブリヲの言いなりになっちゃダメだ!」
アンジュ
「そ、そうよ!誰がアンタみたいなクズ野郎なんかに・・・!」
エンブリヲ
「全く・・・。」
パチンッ
エンブリヲは呆れた顔で指を鳴らす。すると、アンジュの身体を激しい暑さが、天馬の身体を激しい痛みが襲った。
アンジュ
「いやあああああ!!」
天馬
「ぐあああああああ!!」
アンジュは暑さに耐えきれず、身に纏っていたドレスと下着全てを脱ぎ捨てた。
エンブリヲ
「君も中々しぶといな。今の君の痛覚は通常の百倍。君を拘束するその鎖も、今の君にとっては身体中に突き刺さる刃そのものだ。並みの人間が耐えれるレベルではない。」
天馬
「俺は、アンジュさんを守るために戦うって決めたんだ!アンジュさんを守るためなら、この程度の痛み、どうってこと無い!」
エンブリヲ
「ほう、ではこれでどうかな?」
パチンッ!
エンブリヲは更に指を鳴らす。
天馬
「っ!?ぐあああああああ!!」
その直後、天馬の身体を更に激しい痛みが襲った。
エンブリヲ
「痛覚を更に百倍に上げた。これ程の痛み、耐えられるかな?」
エンブリヲはそう言うと、再びアンジュに目を向けた。だが・・・。
天馬
「放セ・・・!」
エンブリヲ
「ん?」
突然、エンブリヲは天馬から今まで感じたことの無い力を感じ取った。天馬の瞳は赤く染まり、身体中から赤いオーラが出ていた。
エンブリヲ
「これは・・・!?」
天馬
「アンジュさんを放せ、エンブリヲ!!」
バキーン!!
天馬は自身を拘束していた鎖を意図も簡単に引きちぎり、引きちぎったと同時に部屋一帯に衝撃波を放った。
ドーン!
エンブリヲ
「なにっ!?」
バンッ!
エンブリヲは衝撃波で吹き飛ばされて倒れ、アンジュは身体中の感覚が全て元に戻った。
アンジュ
「天・・・馬?」
エンブリヲ
「くっ・・・!」
ガチャ! バタン!
エンブリヲは立ち上がり、逃げるように部屋から脱出した。
天馬
「待てっグッ!?」
天馬がエンブリヲを追おうとした途端、天馬はアンジュの目の前に倒れた。目は元の青に戻り、赤いオーラも消えた。
アンジュ
「天馬!?」
天馬
「大丈夫です・・・それより、急いでここから出ないと・・・。」
天馬はゆっくりと立ち上がり、エンブリヲが出ていった扉を目指す。
ガチャ
だがドアノブに触れようとした途端、ドアが開き、見慣れた藍色の髪の少女が現れた。
天馬
「サリア・・・さん?」
サリア
「退いて。」
サリアは天馬を押し退け、アンジュを見下ろした。その顔は険しかったが、少し悲しんでいる様にも見えた。
サリア
「・・・無様ね。エンブリヲ様に歯向かうからよ、バカ。」
アンジュ
「バカは・・・そっちでしょ?あんなゲス野郎に心酔しちゃって・・・。」
サリア
「私にはもう、あの人しか居ない。でもアンジュ、アンタは違う。ヴィルキスも、仲間も、自分の居場所も、何だってある。変身なんてする必要も無い。」
アンジュ
「サリア?」
サリア
「出ていきなさい、エンブリヲ様が戻ってくる前に。このまま抵抗を続ければ、そのうち心を壊されるわ。」
天馬
「サリアさん、貴女・・・!」
サリア
「勘違いしないで。私はただ、これ以上アンジュに何かを奪われるのと、アンタ達の無様な姿を見るのが嫌なだけだから。」
サリアはそう言うと、小さなピンク色のカプセルと、折り畳まれた黒い布を投げ捨て静かに部屋から去っていった。
アンジュ
「これは・・・?」
アンジュはカプセルを拾い、カプセルを開けた。
アンジュ
「っ!!」
カプセルの中には、アンジュが大切にしていた指輪が入っていた。そして黒い布の正体は、ダイヤモンド・ローズ騎士団の予備の制服だった。
天馬
「・・・ありがとうございます、サリア隊長。」
アンジュは制服を身に纏い指輪を左手中指に通し、天馬の肩を貸り共に部屋を出た。
天馬
「大丈夫ですか?」
アンジュ
「ええ、ちょっと胸がキツいけど、大丈夫・・・。」
そして通路を少し進んだところで・・・。
モモカ
「アンジュリーゼ様!」
アンジュ
「モモカ!」
天馬
「モモカさん!」
二人はモモカと合流した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~暁ノ御柱 最深部~
一方、エンブリヲはヴィルキスを含めたラグナメイル7機とアウラを使い、時空融合の準備を進めていた。
エンブリヲ
「・・・準備が整った。総員ラグナメイルに騎乗!暁ノ御柱を守れ!」
ダイヤモンド・ローズ騎士団
「イエス・マスター!」
サリアを除くダイヤモンド・ローズ騎士団四人は各々のラグナメイルに向かった。
エンブリヲ
「・・・ん?」
エンブリヲはふと監視カメラの映像を見る。そこには先程アンジュと天馬が居た部屋の様子が映っていたが、既にもぬけの殻と化していた。
エンブリヲ
「逃げたか。だが逃がさんぞ、アンジュ。」
To Be Continued…
~次回予告~
司
「ようやく会えたぜ、エンブリヲ。」
エンブリヲ
「ほぅ。貴様が噂の世界の破壊者、仮面ライダーディケイドか?」
司
「悪いが俺はこの世界を破壊する。それが俺の、この世界での成すべき事みたいだからな!」
エンブリヲ
「面白い、ならばやってみるがいい!」
司
「次回、《対決!創造主vs破壊者》。」
エンブリヲ
「・・・変身!」