クロスアンジュ LIGHTNING EDITION ~天使とドラゴンと五人の巨人使い~ 作:ヒビキ7991
『もうすぐ、サヨナラ出来る…』
天馬
「もうすぐサヨナラ出来る・・・まさか!?」
天馬はグレイブのエンジンを吹かし、最大出力でアンジュの乗るヴィルキスの元へと向かった。
天馬
「やめるんだ!アンジュリーゼ様!」
サリア
『ちょっと天馬、何してるのよ!?命令よ!戻りなさい!!』
サリアの命令を聞かず、天馬は猛スピードでヴィルキスを追いかける。そしてヴィルキスに追い着き並走。
アンジュ
「ちゃんと、ちゃんと死ななきゃ…」
ドラゴンはヴィルキスに向かってゆっくりと手を伸ばす。
天馬
「まずい!」
ガツンッ!
天馬のグレイブはサイドからヴィルキスにアタックし進路を変えた。だがアタックの拍子に二機はバランスを失い、二機は海へと墜落した。
ザバーン!
サリア
「アンジュ!天馬!」
ロザリー
「まさかアイツ、自殺しようとしたイタ姫を助けるためにあんなことを・・・?」
ヒルダ
「そんな事はどうだっていい。それより今は早いとこドラゴンを殺して、賞金を頂くわよ。」
一同はドラゴン殺しに専念した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~無人島 砂浜~
その数分後、天馬のグレイブとアンジュのヴィルキスは戦場から少し離れた無人島の砂浜に漂流していた。
天馬
「はぁ…はぁ…た、助かった…」
天馬はグレイブを降り、アンジュのヴィルキスの元へと向かった。アンジュは自分の両肩を押さえ、震えていた。
天馬
「大丈夫ですか?アンジュリーゼ様。」
アンジュは自分の旧名を呼ばれ驚いた。そしてアルゼナルに来て初めて、二人は顔を合わせた。
アンジュ
「天馬・・・君?何故、あなたがパラメイルと共にここにいるのです・・・?ここはノーマが来る場所。あなたの様な人間が来る場所では…」
天馬
「俺もノーマだったんです。だからアルゼナルに来ました。ですが本当はジュライ皇帝の願いで、アンジュリーゼ様を御守りするために来たんです。」
アンジュ
「お父様の、願い?」
天馬
「皇女からいきなりノーマ扱いされて錯乱してるんじゃないかって、心配していましたよ。でも、元気そうで良かったです。」
天馬はアンジュに笑顔を見せた。だが、アンジュの表情は暗かった。
アンジュ
「私に、守られる価値などありません… むしろ私は、死ななければならないというのに…」
天馬
「っ!?」
アンジュの発言に、天馬は動揺した。
天馬
「どうしたんだよ、アンジュリーゼ様… どうして、あなたがそんなことを口にするんだ…」
アンジュ
「今の私は、皇女でもなければ人間でもない… おまけに命令に背き、兵士を3人も殺してしまった… 私に残された選択肢はドラゴンと戦い、そして死ぬこと… そうすれば、こんな地獄のような世界からサヨナラ出来ますし、元のアンジュリーゼの名前を返してもらえる… こんなに嬉しいことは無いでしょう…」
アンジュは涙を流しながら静かに笑った。天馬は拳を握り、歯を食い縛り怒りを抑えていた。
天馬
「・・・アンジュリーゼ様。いや、皇女アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギ。」
アンジュは天馬に旧名を呼ばれたが、振り向く気力すら残っていなかった。
アンジュ
「・・・嬉しいですね… 最後に私の名前を覚えてくれている方に名前を言ってもらえるなんて…」
天馬
「っ!!」
アンジュのこの一言が、天馬の怒りを爆発させた。
パシンッ!
天馬はアンジュの頬をひっぱたき、襟元を掴み引き寄せた。
天馬
「いい加減にしろ、アンジュリーゼ!!あんた、本気で死にたいと思ってるのか!?自分が死ねば、自分が殺した人たちへの償いになるとでも思ってるのか!?あんたも人間だろ!?人間なら、命ある限り生き続けろよ!!」
アンジュ
「人間ではありません… マナの使えない私はノーマ、化け物です…」
天馬
「ノーマは化け物、か・・・。」
ドサッ
天馬はアンジュの襟元を放し、近くに落ちていた金属片を拾い・・・。
天馬「だったら・・・。」
グサッ!
天馬
「くっ!くっ・・・。」
金属片を自身の左手に突き刺した。そして、血塗れになった左手をアンジュに突き出した。
天馬
「これを見ろ!俺もアンタもノーマだが、身体の中にはこの赤い血が流れてる!これが人間の証だ!この証は、マナを持っていようがいなかろうが関係無い!」
アンジュ
「人間の…証…」
天馬
「人間いつ死ぬかは分からない!だからこそ、最後の時を迎えるその時まで全力で生きるんだ!自分よりも先に死んでいった人達の分も!志半ばで倒れた仲間の分も!」
『生きるのです…アンジュリーゼ…』
『アンジュリーゼ様!私も連れてってください!私も、魔法の国に!』
アンジュの頭を、亡き母ソフィアと戦死した新兵ココの言葉が過った。
アンジュ
「お母様…ココ…」
天馬
「それに、俺があなたを守るためにここに来た理由は、皇帝からの要望でというだけじゃない!俺はあなたの友達だから、友達を守りたいという自分の意思でここへ来たんです!」
アンジュ
「っ!!」
天馬
「・・・俺の言いたい事は全て言いました。俺はサリア隊のところに戻り戦います。アンジュリーゼ様、後はあなたが決めてください。自殺か、それとも最後まで生き続けるか。」
天馬はアンジュに背を向け、その場を離れようとした。
アンジュ
「死にたくない…」
天馬
「っ!!」
天馬は足を止め、アンジュの方に目を向けた。アンジュの目は以前のアンジュリーゼの目に戻り、力強いオーラが伝わってくる。
アンジュ
「天馬君、あなたの言葉で目が覚めました。私は生きたい・・・死にたくありません。」
天馬
「アンジュリーゼ様…」
アンジュ
「私は生きる…生きるために戦います!そしてもう、誰も死なせません!」
天馬
「それなら、最後に俺からひとこと言わせてください。
・・・命落とすな!敵落とせ!!」
アンジュ
「はいっ!」
アンジュのヴィルキスは飛び立った。天馬もグレイブに乗り込み飛び立ち、二人は第一中隊が戦っているエリアへと急いだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃、第一中隊はドラゴンとの戦闘に悪戦苦闘していた。銃弾は撃ち尽くし、ほとんどのパラメイルはドラゴンの攻撃により損傷。まともに戦える機体は残っていなかった。
サリア
「このままじゃ殺られる。どうすればいいの・・・。」
その時だった。
天馬
『隊長!あとは俺達に任せてくれ!』
ドラゴンの後方から、ヴィルキスとグレイブが接近してきていた。
アンジュ
「私は戦う。だからヴィルキス、お願い。私に力を貸して!」
キイィィィィィィンッ!
アンジュ
「っ!?」
アンジュの左手の指輪が光だし、それと共にヴィルキスのボディがひび割れ、光が漏れだした。
ガシャーン!
傷だらけのボディが剥がれ、内側から新たに白いボディが姿を現した。アンジュはヴィルキスをアサルトモードに変形。フレームは黄金に輝き、純白のアーマーと巨大な青い翼を装備し、赤いバイザーと白い目。額に女神のオブジェをあしらっていた。
天馬
「俺はアンジュリーゼ様を・・・大切な友達を守りたい!だからグレイブ、俺と一緒に戦ってくれ!」
アンジュに続いて天馬もグレイブをアサルトモードに変形させた。すると・・・。
キイィィィィィィンッ!
天馬
「っ!?」
突然、グレイブのボディが光だした。
ガシャーン!
翼が砕け、そこから新たに鳥の様な白い巨大な翼が現れた。バイザーは黒に変わり、目は黄色に変化。さらに頭部はペガサスを模した兜の様な形状に変化。フェイスマスクとフレームは赤褐色に変わり、白いアーマーの水色部分は全て金色に変わり、そして後頭部から赤く長い髪が現れた。
エルシャ
「グレイブの姿が変わった!?」
ヴィヴィアン
「カッコいいー!!ペガサスだー!!」
天馬
「アンジュリーゼ様、いきますよ!」
アンジュ
「ええ!」
アンジュのヴィルキスと天馬のグレイブはドラゴン目掛けて突っ込んだ。ドラゴンは自身の身体から光の球を無数に出現させ、ヴィルキスとグレイブに向かって放った。
天馬
「やらせるか!」
ビュー!
グレイブは翼を羽ばたかせ突風を起こす。突風により光る球は全て返され、ドラゴンの腹部に命中した。
ドラゴン
「ギャアアアアアア!」
天馬
「今だ!」
アンジュ
「氷結バレット、装填!」
ヴィルキスは左腕に氷結バレットを装填し、ドラゴン目掛けて突っ込む。そしてドラゴンの胸部に氷結バレットを打ち込んだ。氷結バレットを打ち込んだ途端、ドラゴンの胸部から無数の氷柱が生え、ドラゴンは動きを止め海に落下。落下した場所を中心に辺りの水面が瞬時に凍りついた。
アンジュ
「はぁ…はぁ…」
天馬
「やりましたね、アンジュリーゼ様!」
アンジュ
「・・・天馬、これからは私のことはアンジュと呼んで。それが、今の私の名前。」
天馬
「・・・わかりました、アンジュさん!」
アンジュと天馬はお互い笑顔になり、グレイブとヴィルキスでハイタッチをした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~アルゼナル 墓地~
夕方、アンジュと天馬はアルゼナルの墓地を訪れた。
アンジュ
「さようなら、我が故郷ミスルギ皇国・・・。さようなら、お父様、お母様、お兄様、シルヴィア・・・。」
ジャキンッ!
アンジュはナイフを手にし、自ら髪を切り落とした。
アンジュ
(私にはもう、過去も名前も、何もいらない。でも、私は生き続ける。地面を這いつくばってでも、泥水を啜ってでも、私は生きる。たった一人の友と共に・・・。)
天馬
(ごめん、秋姉・・・。俺、旅行のつもりでこっちに来たけど、もう日本には帰れそうにない・・・。でも、心配しないで。俺は死なない。俺はこのアルゼナルで、命が尽きるまで戦う。大切な友達、アンジュさんを守るために・・・。)
天馬とアンジュは決意を新たにし、互いに顔を合わせた。
アンジュ
「これからもよろしく、天馬!」
天馬
「はい、アンジュさん!」
天馬とアンジュは、互いに力強く握手を交わした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~雷門中学校 サッカー棟 部室~
その頃、雷門中学校のサッカー棟にあるサッカー部の部室では、神童・剣城・信助・霧野がいた。
剣城
「ニュース見ましたか?」
神童
「ああ、天馬がミスルギ皇国でノーマとして連行されたと、今朝のニュースで報道してたな。」
霧野
「まさか天馬がノーマだったなんてな・・・。これからどうする?」
信助
「天馬が居ないとサッカー部って感じがしないし、他のみんなも天馬がノーマだったって情報を知ってるはずだから・・・。」
剣城
「このままだと、サッカー部は上手く機能しないかも知れませんね・・・。」
バーン!
突然、部室に大勢の警官が押し寄せてきた。警官達は四人に銃を向け四人の動きを封じた。
神童「な、何だ!?」
霧野「警察?」
すると、今度はコートを着た刑事とおぼしき男性が現れた。
刑事
「雷門中学校一年生、剣城京介君、西園信助君。及び二年生、神童拓人君、霧野蘭丸君だね?」
剣城「そうですけど・・・?」
信助「あの・・・僕達、何か悪いことしました・・・?」
刑事「ノーマ管理法第一条第三項に基づき、君達を各々、1203-79号ノーマ、1203-80号ノーマ、1203-81号ノーマ、1203-82号ノーマと認定し、拘束する。」
「っ!?」
To Be Continued…
~次回予告~
アンジュ
「最近の日本のサッカー男子ってカッコいいわよねぇ。」
エルシャ
「美形で可愛くて。」
サリア
「ピアノまで弾けて。」
ヒルダ
「オマケに強くて優しいし!」
ヴィヴィアン
「こりゃもう言うことなしっしょ!」
ロザリー
「あー、アタシも日本に生まれたかったなぁ!」
クリス
「無理だよ。私達ノーマだからどっちにしろアルゼナルに送られるんだし・・・。
次回、《雷門サッカー部四人集、現る!》。」