クロスアンジュ LIGHTNING EDITION ~天使とドラゴンと五人の巨人使い~   作:ヒビキ7991

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Ep.17/遭遇!アウラの民!

~コンテナ~

 

 

ホテルで謎の女と遭遇したアンジュ達は、コンテナに乗せられある場所へと連れていかれていた。

 

 

タスク

「何処へ連れて行く気だろう?」

 

天馬

「分からないですけど、あの人達は前にアルゼナルがドラゴンの襲撃を受けたときに戦った人達です。」

 

信助

「言葉は問題なく通じるみたいですから、もしかしたらこの世界の事とか分かるかもしれませんよ?」

 

アンジュ

「そうね。偽りの民だとか本当の地球だとか言ってたけど、どういう意味なのかしら?」

 

 

ドシーン!

 

 

突如、地面に落ちたような音が響いた。

 

 

天馬

「着いたのかな?」

 

 

ガコン!

 

 

扉が開き、例の二人が姿を見せた。

 

 

???

「着いたわ。出なさい。」

 

 

五人は恐る恐る外へ出る。目の前には以前天馬と信助が戦った機体。その向こうには巨大な滝の上にそびえ立つ塔と、神殿とおぼしき和風な巨大建造物。そして、赤い翼と尻尾を生やした大勢の女性の姿があった。

 

 

天馬

「うひゃー、凄いなこれ。」

 

 

五人は思わず目を奪われた。すると・・・。

 

 

プスッ

 

 

ヴィヴィアン

「ウ~…」

 

 

突然ヴィヴィアンの背中に吹き矢が刺さり、ヴィヴィアンは眠ってしまった。

 

 

アンジュ

「ちょっと、ヴィヴィアンに何するの!?」

 

???

「安心しろ、手荒にはせん。それよりも、奥で大巫女様がお待ちだ。コチラヘ。」

 

 

ヴィヴィアンを残し、二人の女はアンジュ達を神殿へと案内した。

 

 

天馬

「・・・ところで、名前聞いてもいいですか?」

 

???

「私は《ナーガ》。そちらは《カナメ》。」

 

信助

「みんな翼と尻尾が生えてますけど、何でなんですか?それに、ここが本当の地球って・・・。」

 

カナメ

「いずれ分かります。近いうちに。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~神殿 大巫女の間~

 

 

ナーガとカナメはアンジュ達を大巫女様のところへと連れてきた。大巫女様は雛壇の最上部で自身の姿を簾で隠し、下の段には同じく簾で姿を隠した幹部とおぼしき人影が八人見える。

 

 

大巫女

「異界の女と・・・男か。名は何と申す?」

 

アンジュ

「人に名前を聞く前に、まず自分から名乗りなさいよ!」

 

ナーガ

「なっ!大巫女様に何たる無礼!」

 

 

ナーガは腰に身に付けた二本の刀を鞘から抜き、カナメは背中に背負っていた薙刀を手に取った。

 

 

タスク

「ちょっとアンジュ!」

 

大巫女

「特異点は開いておらぬはず。どうやってここまで来た?」

 

アンジュ

「・・・。」

 

 

大巫女様の問いにアンジュは答えなかった。

 

 

「大巫女様の御前ぞ!答えよ!」

 

 

「あの機体、あれはお主が乗ってきたのか?」

 

 

「そこにいるのは本物の男?」

 

 

「あのシルフィスの娘、どうしてお主らと共にいる?」

 

 

アンジュは幹部達から質問攻めにされ、ついにストレスが限界に達した。

 

 

アンジュ

「うるさい!!こっちだって分からない事だらけなんだから、聞くなら一つずつにして!ここはどこ!?今はいつ!?アンタ達は何者!?」

 

???

「フフッ、威勢の良いことで。」

 

 

突如、大巫女様の左下の人影が立ち上がり、アンジュ達の前に姿を現した。

 

 

アンジュ・天馬・信助

「っ!!」

 

 

アンジュと天馬と信助はその人を見て驚愕した。現れたのは桃色の衣装を纏った長い黒髪と青い瞳の女。以前アンジュが戦った赤い機体のパイロットだった。

 

 

???

「真祖アウラが末裔にして、 フレイアの一族が姫、近衛中将《サラマンディーネ》。」

 

天馬

「サラマンディーネ・・・。」

 

サラマンディーネ

「ようこそ、真なる地球へ。偽りの星の者達よ。」

 

大巫女

「知っておるのか?」

 

サラマンディーネ

「この者ですわ。先の戦闘で我が機体と互角に戦った、ヴィルキスの乗り手は。」

 

 

「この者は危険です!生かしておいてはいけません!」

 

 

「処分しなさい!今すぐに!」

 

 

アンジュ

「やりたきゃやれば?死刑には馴れてるから。」

 

ナーガ

「言わせておけば・・・!」

 

 

ナーガは両手の刀を振り上げ、アンジュに向けて勢いよく振り下ろした。

 

 

アンジュ

「でも・・・。」

 

 

キーン!

 

 

ナーガ

「なにっ!?」

 

 

天馬が右手にナイフを装備し、ナーガの刀を弾いた。

 

 

アンジュ

「私を殺せば、彼が黙ってないわよ?」

 

ナーガ

「カナメの薙刀でも受け止められなかった私の攻撃を、あんな刃物一本で弾いたと言うのか!?」

 

 

天馬はナイフをホルスターに収納し、ナーガも刀を鞘に納めた。アンジュの自信と天馬の戦闘力に幹部達は動揺した。

 

 

サラマンディーネ

「お待ち下さい、皆様!」

 

大巫女

「サラマンディーネ?」

 

 

サラマンディーネは雛壇を下り、アンジュ達へと近づいた。

 

 

サラマンディーネ

「この者はヴィルキスを動かせる特別な存在。あの機体の秘密を聞きだすまで、生かしておく方が得策かと。

 

 

 

この者達の命、私にお預け下さいませんか?」

 

大巫女

「・・・いいだろう、任せよう。」

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~寝室~

 

 

サラマンディーネはその後、ナーガとカナメを連れてアンジュ達を寝室へと案内した。寝室には布団が人数分用意され、茶道用の畳と釜等の茶道道具一式用意されていた。

 

 

サラマンディーネ

「二人は御下がりなさい。」

 

ナーガ・カナメ

「はい。」

 

 

ナーガとカナメは静かに寝室を離れた。

 

 

アンジュ

「随分と洒落た監獄ね。」

 

サラマンディーネ

「あなた方を、捕虜扱いする気はありません。」

 

 

サラマンディーネの発言に四人は驚いた。

 

 

サラマンディーネ

「シルフィスのあの娘とも、治療が終われば会えます。皆様の機体も、責任をもって修理いたしますので。」

 

 

五人は畳の上に移り、サラマンディーネは腰の刀を下ろし、茶碗に茶を点て、アンジュ達に茶を振る舞った。

 

 

サラマンディーネ

「長旅でお疲れでしょう?」

 

信助

「ありがとうございます!」

 

 

信助はたまらず茶碗の茶を真っ先に飲み干した。

 

 

信助

「は~、おいしぃ~。」

 

 

信助は幸せそうな表情を浮かべ、サラマンディーネは微笑んだ。

 

 

タスク

「俺はタスク。アンジュの騎士だ。」

 

信助

「僕は信助。タイタニアスのメイルライダーです。」

 

天馬

「俺は天馬。ペガサスのメイルライダーで、アンジュさんの友人です。あの、質問してもいいですか?」

 

サラマンディーネ

「何なりと。」

 

天馬

「ここは、本当に地球なんですか?」

 

サラマンディーネ

「はい。そして我々も、あなた方と同じ地球の民、人間です。」

 

タスク

「だが、地球は俺達の星で人間は俺達だ。だとしたら、ここは・・・?」

 

 

頭を悩ませるタスク。すると・・・。

 

 

天馬

「・・・平行世界にある、もうひとつの地球。」

 

 

天馬の発言に、サラマンディーネ以外全員が驚いた。

 

 

サラマンディーネ

「いい掴みです。ここは平行宇宙に存在する、もうひとつの地球。一部の人間がこの星を捨てて移り住んだのが、別宇宙にあるあなた方の地球なのです。」

 

信助

「地球を捨てた!?どうして!?」

 

天馬

「過去の人間達によって引き起こされた戦争と汚染。住めなくなったこの地球を捨てて、俺達の地球へ移り住み繁栄して、今に至る。そうですよね?」

 

サラマンディーネ

「はい。」

 

アンジュ

「・・・つまり、こう言うことでしょ?」

 

 

バリーン!

 

 

アンジュは茶碗を壁に投げて割り、大きい破片をサラマンディーネの背後から首に近づけた。

 

 

アンジュ

「あなたがここに居て地球が二つあるって事は、帰る方法もあるって事でしょ!?」

 

タスク

「アンジュ!!」

 

ナーガ

「姫様!」

 

カナメ

「サラマンディーネ様!」

 

 

危険を察知し、ナーガとカナメが武器を持って入ってきた。

 

 

アンジュ

「近づいたら命は無いわよ?」

 

ナーガ

「野蛮人め!早々に処刑すべきだった!」

 

 

ナーガは天馬と信助の首に刀を近づけ、カナメはタスクの首に薙刀の刃を近づけた。

 

 

カナメ

「姫様を離せ!さもなくばこの男達の命はないぞ!」

 

タスク・信助

「えええっ!?」

 

 

タスクと信助は恐怖し怯えたが、天馬は恐怖も怯えもしなかった。

 

 

天馬

「いいですよ?少なくとも、俺はいつでも死ぬ覚悟は出来てる。」

 

ナーガ・カナメ

「えっ!?」

 

 

天馬の発言に、ナーガとカナメは驚いた。

 

 

天馬

「俺は、アンジュさんを守るためな命も惜しくない!アンジュさんのためなら、喜んで死んでやる!」

 

 

覚悟を決めた天馬を見て、カナメは驚愕しナーガは動揺した。

 

 

ナーガ

(何たる気迫。コイツ、こんなにも若いというのに死を恐れないのか?)

 

 

サラマンディーネ

「・・・帰ってどうするのです?機械に乗って我が同胞を殺す日々が、そんなに恋しいのですか?」

 

アンジュ

「黙ってて!」

 

サラマンディーネ

「偽りの地球、偽りの人間、そして偽りの戦い。あなたは何も知らなさすぎる。」

 

 

サラマンディーネは刀を手に取り、その場から立ち上がる。

 

 

サラマンディーネ

「参りましょう、真実を見せて差し上げますわ。ナーガ、カナメ、留守をお願いしますわ。」

 

ナーガ・カナメ

「姫様!」

 

 

サラマンディーネは部屋の入り口へと歩き、アンジュは慌てて追いかけた。

 

 

サラマンディーネ

「天馬殿、あなたも御一緒に。」

 

天馬

「えっ?俺も?」

 

サラマンディーネ

「あなたの、誰かを守るためなら死を恐れないという覚悟に尊敬いたしました。よって、あなたにも真実を見せて差し上げます。」

 

アンジュ

「ちょっと、主導権は私よ!」

 

 

サラマンディーネとアンジュは部屋を後にし、天馬は慌てて二人を追いかけた。

 

 

信助

「行っちゃった・・・。」

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~竜の里 外れ~

 

 

サラマンディーネはアンジュと天馬をある場所へと連れてきた。三人の目の前には見覚えのある巨大な塔がそびえ立っている。

 

 

天馬

「暁ノ御柱だ。」

 

サラマンディーネ

「《アウラの塔》、私達はそう呼んでいます。かつての、ドラグニウムの制御施設ですわ。」

 

アンジュ

「ドラグニウム?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~アウラの塔 内部~

 

 

三人は塔の中へと入り、エレベーターで地下へと向かった。

 

 

サラマンディーネ

「ドラグニウムとは、22世紀末に発見された、強大なエネルギーを持つ超対称性粒子の一種。世界を照らすはずだったそのエネルギーは、すぐに戦争に投入されました。そして、環境汚染、民族対立、貧困、格差・・・何一つ解決しないまま、人類社会は滅んだのです・・・。」

 

アンジュ・天馬

「・・・。」

 

サラマンディーネ

「一部の人間たちは新天地を求めて旅立ち、残された人類は、汚染された地球で生きていくために一つの決断を下します。」

 

天馬

「その決断とは?」

 

サラマンディーネ

「遺伝子操作によって自らの体を作り変え、生態系ごと環境に適応すること。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~アウラの塔 最深部~

 

 

エレベーターは最深部に到着した。最深部は巨大な球状の空間が広がり、中央には巨大な穴が開いている。

 

 

アンジュ

「何ここ?」

 

サラマンディーネ

「ここに、アウラがいたのです。」

 

天馬

「アウラ?」

 

サラマンディーネ

「汚染された世界に適応するため、自らの肉体を改造した偉大なる始祖。あなた達の言葉で言うなら、最初のドラゴンです。」

 

アンジュ・天馬

「最初のドラゴン・・・。」

 

サラマンディーネ

「私達は罪深き人類の歴史を受け入れ、アウラと共に贖罪と浄化のために生きることを決めたのです。男たちは巨大なドラゴンに姿を変え、世界の浄化のためにその身を捧げ・・・。」

 

アンジュ

「浄化?」

 

サラマンディーネ

「ドラグニウムを取り込み、体内で安定化した結晶にするのです。女達は時に姿を変えて男達と共に働き、時が来れば子を宿し産み育てる。私達はアウラと共に、世界の浄化と再生のために歩み始めたのです。

 

 

ですが、アウラはもう居ません・・・。」

 

アンジュ

「どうして?」

 

サラマンディーネ

「連れていかれたのです。ドラグニウムを発見し、ラグナメイルを生み出し、全てを破壊した元凶、エンブリオによって。」

 

天馬

「エンブリヲ!?」

 

サラマンディーネ

「あなた達の世界は、どんな力で動いているか知っていますか?」

 

アンジュ

「マナの光よ?」

 

サラマンディーネ

「では、そのエネルギーは?」

 

アンジュ

「マナの光は無限に産み出されているって聞いてるけど?」

 

天馬

「・・・ん?」

 

 

天馬は疑問に思い、これまで聞いてきた内容を整理してみた。

 

 

 

『神様は繰り返される戦争とボロボロになった地球に、うんざりしていました。

 

 

平和、友愛、平等。口先では美辞麗句を歌いながらも、人間の歴史は戦争と憎悪と差別の繰り返しです・・・。

 

 

それが人間の本質。このままでは、世界は滅んでしまいます。そこで神様は、新しく作ることにしたのです。新しい人類を。争いを好まない穏やかな人間。あらゆる物を思考で自在にコントロール出来る高度情報化テクノロジー、マナ。

 

 

あらゆる争いが消え、あらゆる望みが叶い、あらゆる物を手にすることのできる理想郷が完成したのです。』

 

 

『文明のすべてを陰から掌握し、世界を束ねる最高指導者。俺たちが打倒すべき最大の敵だった。』

 

 

(今まで聞いてきた話を纏めると、アウラを奪い俺達の世界を作った神様はエンブリヲで間違いない。でも、アウラを奪った理由が分からない。それに、いくら無限にマナの光を生み出すにしても、そのエネルギー源は何処から?)

 

 

『ドラグニウムを取り込み、体内で安定化した結晶にするのです。』

 

 

天馬

(大きいドラゴンは体内でドラグニウムを結晶化させる役目を持っていた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結晶・・・?)

 

 

『ドラゴンの心臓からこんなものが出てくるなんて、知らなかったわ。』

 

 

『触った感じは特に害は無さそうだな。』

 

 

『ですが、何だかマナに近いような力を感じます。』

 

 

天馬

「・・・サラマンディーネさん、少し話を戻しますけど、その安定化したドラグニウムの結晶って、何色なんですか?それで、結晶は何処へ行くんですか?」

 

サラマンディーネ

「安定化したドラグニウムは赤い結晶へと姿を変え、大部分は心臓へと送られます。」

 

天馬

「っ!!」

 

 

サラマンディーネのこの言葉で、天馬の予想は確信となった。

 

 

天馬

「そういうことだったのか!」

 

アンジュ

「えっ?どういうこと?」

 

天馬

「エンブリヲがアウラを奪った理由は、俺達の地球を発展させるため。俺達の世界で発展しているマナの光の源は、アウラの放つドラグニウムのエネルギー。でも、エネルギー源となるドラグニウムは補充する必要がある。そのドラグニウムを採取するために、俺達ノーマがドラゴンを狩るハンターとしてパラメイルに乗り、ドラゴンから世界を守るという偽の理由で、俺達の世界に侵攻してきたドラゴン達を殺し、心臓からドラグニウムを取り出しアウラに与える。

 

 

 

俺達の命懸けの戦いは、マナの世界を維持するために必要な、ドラグニウム集めの一貫に過ぎなかったんだ!」

 

 

天馬は拳を握り激情した。

 

 

アンジュ

「そんな・・・。」

 

 

サラマンディーネ

「・・・分かっていただけましたか?偽りの地球、偽りの人間、偽りの戦いと言った意味が。それでも偽りの世界に帰りますか?」

 

アンジュ

「当然でしょ?私の世界はあっちよ!」

 

サラマンディーネ

「では、あなた達を拘束します。これ以上私達の仲間を殺されるわけにはいきませんから!」

 

 

サラマンディーネは翼を広げた。

 

 

アンジュ

「やるの?」

 

サラマンディーネ

「殺しはしません。私達は残虐で暴力的な、あなた達とは違います。」

 

アンジュ

「アルゼナルをぶっ壊しておいて、何を言うの!?」

 

サラマンディーネ

「あれは龍神器の起動実験です。あなた方はアウラ奪還の妨げになる恐れがありましたから。」

 

アンジュ

「それで何人死んだと思ってるの!?」

 

サラマンディーネ

「許しは請います。私達の世界を守るためです。皇女アンジュリーゼ、あなたも私と同じ立場なら、同じ選択をしたはずです。」

 

アンジュ

「えっ?」

 

サラマンディーネ

「あなたの事はリザーディアから聞いていました。近衛長官リィザ・ランドックと言えば分かりますか?」

 

アンジュ

「あいつ、あなた達の仲間だったの!?・・・バカにしてえ!!」

 

 

アンジュは拳を握り、サラマンディーネに殴りかかる。

 

 

サラマンディーネ

「あなたは、知らなすぎだだけですわ。」

 

 

ドカッ!

 

 

アンジュ・サラマンディーネ

「えっ!?」

 

 

だが、アンジュの拳はサラマンディーネには当たらず、いつの間にかアンジュの前に立ちはだかった天馬の腹に命中した。

 

 

天馬

「グハッ!」

 

 

天馬は腹をおさえ、地面に膝を着きうずくまった。

 

 

天馬

「アンジュさん・・・やめてください・・・腹が立つ気持ちは分かりますけど・・・今は争ってる場合じゃ・・・。」

 

 

ドサッ

 

 

天馬は気を失い倒れた。

 

 

アンジュ

「天馬!」

 

サラマンディーネ

「天馬殿!」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~神殿 寝室~

 

 

天馬

「う・・・う~ん……」

 

 

目が覚めると、天馬は寝室の布団の中で眠っていた。

 

 

天馬

「ここは・・・?」

 

 

「お?起きた?」

 

 

隣から聞き覚えのある声が聞こえてきた。身体を起こし隣に目を向けると、そこにはアンジュと人間姿のヴィヴィアンがいた。

 

 

天馬

「ヴィヴィアンさん!?ど、どうして人間に!?」

 

ヴィヴィアン

「実はね、えっと~・・・何だっけ?」

 

 

「彼女のD型遺伝子を調整しました。これで外部からの投薬無しで人間の姿を維持できます。」

 

 

ヴィヴィアンの後ろから、オレンジ色のおかっぱ頭でゴーグルと黒と薄緑の縞々のストッキングを着用した女性が説明をした。

 

 

天馬

「あなたは?」

 

ゲッコー

「私は《ドクター・ゲッコー》。天才御殿医にして、遺伝子工学の権威です。以後お見知りおきを。」

 

天馬

「は、はぁ…」

 

アンジュ

「天馬、さっきはゴメン!私、ついカッとなっちゃって…」

 

天馬

「だ、大丈夫ですよ大丈夫!」

 

 

「「助けてーーー!!」」

 

 

突然、部屋の外からタスクと信助の悲鳴が聞こえてきた。

 

 

天馬

「タスクさんと信助の悲鳴?何があったんだ?」

 

 

天馬はベッドを下り、四人は廊下へと出た。すると、前方からタスクと信助がこちらに向かって走っていた。

 

 

天馬

「タスクさん!信助!」

 

信助・タスク

「天馬(君)!」

 

 

タスクと信助は大急ぎで天馬の背後に隠れた。

 

 

天馬

「え?ど、どうしたんですか?」

 

 

「キャー!!」

 

 

天馬

「え?キャーって・・・。」

 

 

今度は前方から大勢の女達が押し寄せてきた。

 

 

天馬

「でええええええ!?」

 

ナーガ・カナメ

「者共待たれい!」

 

 

丁度そこへ武器を持ったナーガとカナメが現れ、女達を寸前で止めた。

 

 

天馬

「あの、いったい何が?」

 

ナーガ

「・・・実は、サラマンディーネ様とお前達が留守の間、ゲッコーが自分の研究所の研究員達に二人を紹介したらしいのだが・・・。」

 

カナメ

「どうもその目的は、勉強用のデータを録るためだったらしくて・・・。」

 

天馬

「勉強?」

 

ゲッコー

「性教育についてです。」

 

アンジュ・天馬

「えっ!?」

 

 

性教育と聞いた途端、アンジュと天馬の顔は真っ赤になった。

 

 

ゲッコー

「なんせ人形の男性なんて珍しいですから。」

 

信助

「で、僕達はナーガさんとカナメさんのおかげで研究所を抜け出したんだけど・・・。」

 

タスク

「抜け出したのがバレてこのありさま・・・。」

 

アンジュ

「へぇ~・・・。じゃあ随分と楽しんだんじゃない?タスク。」

 

 

バキッ!ボキッ!

 

 

アンジュは指を鳴らし、タスクを殴る準備をする。

 

 

タスク

「ヒイッ!?」

 

信助

「おおお落ち着いて下さい!僕もタスクさんも何もされてません!」

 

ゲッコー

「という訳で・・・。」

 

 

トンッ

 

 

ゲッコーは急に天馬の右肩に手を置いた。

 

 

天馬

「ゲッコーさん?」

 

ゲッコー

「天馬さんには、タスクさんと信助さんの代わりになっていただきます。」

 

天馬

「え?」

 

 

ドンッ!

 

 

天馬

「うわあああ!?」

 

 

ゲッコーは天馬を前へと押し飛ばした。天馬はナーガとカナメの間を抜け、女達が見事に受け止めた。

 

 

「うわぁ、可愛い♥」

 

「髪型面白~い!」

 

 

ゲッコー

「皆さん、行きますよ。」

 

 

「はーい♪」

 

 

天馬

「えええええっ!?ちょちょっと!ちょっと待ってください!誰か助けて!ちょっと!?ちょっとーーーー!!」

 

 

天馬はそのままゲッコー達に連れ去られてしまった。

 

 

アンジュ・ヴィヴィアン

「あー…」

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~神殿 中庭~

 

 

天馬はその後無事に解放され、夕方にはアンジュ・ヴィヴィアン・タスク・信助と共に中庭にいた。が、物凄くぐったりしていた。

 

 

アンジュ

「ねえ、大丈夫?」

 

天馬

「一足先に地獄見てきました・・・。」

 

タスク

「いったい何されたの・・・?」

 

 

すると・・・。

 

 

サラマンディーネ

「申し訳ありません。ドクター・ゲッコーは医師としての腕は確かなのですが、少しマッドサイエンティストな性格でして・・・。」

 

 

サラマンディーネとナーガとカナメ、さらにヴィヴィアンと同じ色の赤髪と黄色い瞳をした優しそうな女性が現れた。

 

 

天馬

「サラマンディーネさん。」

 

アンジュ

「ムッ・・・。」

 

 

アンジュはサラマンディーネを睨み、サラマンディーネはアンジュではなくヴィヴィアンに目を向けた。

 

 

サラマンディーネ

「ラミア、彼女です。遺伝子照合で確認しました。あなたの娘に間違いありません。」

 

アンジュ・天馬・タスク・信助

「えっ!?」

 

ヴィヴィアン

「ほえ?」

 

 

アンジュと天馬とタスクと信助は驚いて一斉にヴィヴィアンに目を向け、ヴィヴィアンは自分を指差した。

 

 

サラマンディーネ

「行方不明になったシルフィスの一族。あなたの娘、ミィよ。」

 

ラミア

「ミィ・・・本当にミィなの!?」

 

 

ラミアは嬉しくてヴィヴィアンに抱きしめるが、ヴィヴィアンは混乱していた。

 

 

ヴィヴィアン

「いや、アタシはヴィヴィア・・・ん?」

 

 

ヴィヴィアンは何かを感じたのか、ラミアの匂いを嗅いだ。

 

 

ヴィヴィアン

「この匂い知ってる。エルシャの匂いみたい。あんた誰?」

 

ラミア

「あなたの、お母さんよ。」

 

ヴィヴィアン

「お母さん・・さん?」

 

サラマンディーネ

「あなたを産んでくれた人ですよ。」

 

 

サラマンディーネはヴィヴィアンに説明をし、ナーガとカナメは涙を流していた。

 

 

信助

「ヴィヴィアンさんのお母さん?」

 

サラマンディーネ

「ええ、彼女はお母さんを追って、あちらの世界に迷い込んでしまったのでしょう。」

 

信助

「そうだったんだ…」

 

サラマンディーネ

「祝いましょう、仲間が10年ぶりに帰ってきたのですから。」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~アウラの塔 正面~

 

 

夜、アウラの塔の前に竜の里の人々が集まった。皆直方体の灯篭を手に持ち、中には小さな火が灯っている。

 

 

「サラマンディーネ様!」

 

「サラマンディーネ様ですわ!」

 

 

サラマンディーネが塔の前に姿を見せ、人々は歓声を挙げる。

 

 

ヴィヴィアン

「何するのこれから?」

 

ラミア

「サラマンディーネ様の真似をすればいいの。」

 

サラマンディーネ

「殺戮と試練の中、この娘を彼岸より連れ戻してくれたこと、感謝します。」

 

 

サラマンディーネは灯篭を空へ飛ばし、ラミア、ヴィヴィアン、里の人々も一斉に飛ばした。

 

 

サラマンディーネ

「アウラよ!」

 

 

「アウラよ!」

 

 

灯篭はゆっくりと空高く上り、星に紛れていった。

 

 

天馬

「綺麗ですね…」

 

信助

「不思議な光景だなぁ…」

 

タスク

「もうひとつの地球・・・か。」

 

アンジュ

「夢なのか現実なのか、分からない。私達、これからどうなるの?こんなもの見せて、どうしろって言うわけ?」

 

カナメ

「知ってほしかったそうですです、私達の事を。そして、あなた達の事を知りたい。それが、サラマンディーネ様の願いです。」

 

 

いつの間にかアンジュ達の後ろにはナーガとカナメがいた。

 

 

アンジュ

「知ってどうするの?私達はあなた達の仲間を殺し、あなた達も私達の仲間を殺した。それが全てでしょ?」

 

カナメ

「怒り、悲しみ、報復。その先にあるのは滅びだけです。でも人間は受け入れ、許すことが出来る。そして、その先に進むことも。・・・全て姫様の受け売りですが。

 

 

どうぞごゆるりと御滞在下さい。と、姫様より伝言です。」

 

 

そう伝えると、ナーガとカナメは頭を下げその場を後にした。

 

 

タスク

「ごゆるりと・・・だってさ。」

 

アンジュ

「信じるの?」

 

タスク

「分からない。けど・・・。」

 

 

四人は楽しそうにしているラミアとヴィヴィアンを見た。

 

 

信助

「楽しそうですね、ヴィヴィアンさん。」

 

天馬

・・・俺達、帰るべきなのか?アルゼナル、リベルタス、そしてエンブリヲ。もし、もう戦わなくていいのだとしたら・・・。」

 

 

天馬は一人、空に輝く月を見つめながら一人呟いた。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~妖魔界~

 

 

その頃、妖魔界のエンマ大王は手鏡でアンジュ達の様子を見ていた。

 

 

エンマ大王

「ここまでは大方予定通りだが、問題はあいつが何処で手を出してくるかだな。」

 

 

『エンマ大王、稲妻町にて最初の少女の搭乗が完了しました。』

 

 

エンマ大王

「よし、では次にエンデラント連合のロボット工学研究所跡地に向かってくれ。二人目の少女はそこにいる。」

 

 

『了解。』

 

 

 

To Be Continued…




~次回予告~


アンジュ
「サラマンダー?」

サラマンディーネ
「サラマンディーネです。」

ヴィヴィアン
「サラサラさん?」

サラマンディーネ
「サラマンディーネです!」

信助
「サザンドラ?」

サラマンディーネ
「サラマンディーネです!!皆さん、ちゃんと言ってください!」

アンジュ
「そうは言うけど、アンタの名前って長いから言いにくいのよ。・・・もう、余計な事で時間削っちゃった。早く次回のタイトル言わないと。


次回、《対決!アンジュvsサラマンディーネ!》。」

サラマンディーネ
「ちゃんと言えたではありませんか・・・。」

アンジュ
「タマタマよ、タマタマ。」

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