クロスアンジュ LIGHTNING EDITION ~天使とドラゴンと五人の巨人使い~   作:ヒビキ7991

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Ep.02/孤島の軍事施設!アルゼナル!

~ミスルギ皇国 皇殿 皇帝の間~

 

 

天馬は皇殿内、皇帝の間を訪れた。だが、皇帝の椅子に座っているのはジュライ皇帝ではなく、ジュリオ皇太子だった。

 

 

天馬

「ジュリオ皇太子様、ご無沙汰しております。」

 

ジュリオ

「ジュリオ皇太子様か… 出来ることなら、私の事は皇帝陛下と呼んでいただきたい。皇帝陛下ジュリオ一世と!」

 

 

ジュリオは不気味な笑みを浮かべそう答えた。天馬はこの間まで皇太子であったジュリオが何故皇帝になったのかが理解出来なかった。

 

 

天馬

「ジュライ皇帝はどうなされたのですか?」

 

ジュリオ

「お父様は、ジュライは皇帝の座から引きずり下ろしました。今は牢獄の中で大人しくしています。」

 

 

ジュリオの発言に、天馬は驚いた。

 

 

ジュリオ

「しかも、彼は我が妹アンジュリーゼがノーマであることを隠し続けていました。」

 

天馬

「アンジュリーゼ様が、ノーマ・・・?ジュリオ皇帝、アンジュリーゼ様は今何処に?」

 

ジュリオ

「2日ほど前に、辺境の軍事基地アルゼナルへと連行されました。一応言っておきますが、自分もアルゼナルへ行こう等と思わない事をオススメしましょう。あそこは言わば地獄も同然ですから。」

 

天馬

「・・・。」

 

 

天馬は静かに皇帝の間を後にした。

 

 

ジュリオ

「松風天馬。彼も次期に、私の障害となるかな・・・」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~皇殿 地下牢~

 

 

天馬は皇殿の地下にある牢獄へとやって来た。牢獄の一つには、囚人服を着たジュライ皇帝の姿があった。

 

 

天馬

「ジュライ皇帝!」

 

ジュライ

「その声・・・まさか、天馬君か?」

 

 

天馬はジュライの牢獄の前で腰を下ろした。

 

 

ジュライ

「すまない… こんな形で再開する事になるとは・・・。」

 

天馬

「いったい、何があったんですか?」

 

ジュライ

「2日ほど前、アンジュリーゼがノーマという事実が国民の前で公になった。アンジュリーゼはアルゼナルへと連行され、ソフィアは銃撃されて他界し、私は皇帝の座から引きずり下ろされた・・・天馬君、君に頼みがある。」

 

天馬

「俺に?」

 

ジュライ

「アルゼナルに行き、娘の側に居てやってほしい。娘はきっと、自分が置かれている状況を理解できず錯乱状態になっているだろう。だが、君が娘の側に居てやってくれれば、娘は少しは安心するだろう。今、国中の人間はジュリオしか信用していない。君しか頼れる人間は居ないんだ・・・」

 

 

ジュライの頼みに、天馬は笑顔で応答した。

 

 

天馬

「・・・わかりました。俺、アンジュリーゼ様を全力でお守りします!」

 

ジュライ

「ありがとう、天馬君・・・。君を娘の友達に選んで正解だったかもしれない・・・。」

 

天馬

「それで、そのアルゼナルへはどうやって行けば良いんですか?」

 

ジュライ

「空港からアルゼナルへ物資を運ぶ輸送機が定期で運航されている。上手くいけば、それに乗ってアルゼナルへ行けるかもしれない。」

 

天馬

「情報、ありがとうございます。それから・・・。」

 

 

天馬は土産袋の中から菓子箱を一つ取り出し、ジュライに渡した。

 

 

ジュライ

「これは?」

 

天馬

「日本のお土産です。本当は、アンジュリーゼ様や皆様と一緒に食べたかったのですが、良かったらどうぞ。それでは・・・。」

 

 

天馬は牢獄を後にした。ジュライは包み紙を剥がし箱を開けると中にはどら焼きや栗饅頭等が入っていた。

 

 

ジュライ

「・・・ありがとう。最後の最後に、大好きなお菓子を口にすることが出来るなんて、私はなんて幸せな男なんだ・・・。

 

 

 

 

アンジュリーゼを頼むぞ、天馬君・・・。」

 

 

ジュライは一人静かに涙を流し、静かに菓子を味わった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

~ミスルギ国際空港 ターミナルビル~

 

 

夕方、空港に戻った天馬はアルゼナルへ物資を運ぶ輸送機を探していた。

 

 

天馬

「とりあえず空港に戻ってきたけど、アルゼナルへの輸送機なんて、何処にあるんだ?」

 

 

天馬は空港の窓から滑走路を見渡した。すると、貨物ターミナルの近くで奇妙な形の飛行機が荷物を積み込んでいた。

 

 

天馬

「何だろう、あれ。」

 

 

天馬は貨物ターミナルへと向かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~ミスルギ国際空港 貨物ターミナル~

 

 

貨物ターミナルに着くと、そこには輸送機が3機並列に並んでいた。

 

 

天馬

「もしかして、これがアルゼナル行きの輸送機?」

 

 

天馬は辺りを見回した。すると、目の前の大きな木箱の側面に《Arsenal》と赤い印がしてあった。

 

 

天馬

「これか、アルゼナル行きの荷物。」

 

 

すると・・・

 

 

警備員

「誰だ!」

 

 

巡回中の警備員に見つかった。

 

 

警備員

「マナの光よ!」

 

 

警備員は天馬の周囲に四角錐の障壁を展開した。

 

 

天馬

「ちょ、ちょっと待ってください!俺は別に怪しい者じゃ・・・。」

 

 

天馬は警備員の元へと近づく。

すると・・・

 

 

バリーン!

 

 

天馬が障壁に触れた途端、障壁が粉々に砕け散った。

 

 

警備員

「なっ!?マナの光を破壊した・・・!?お前、ノーマだったのか・・・!?」

 

天馬

「俺が、ノーマ?」

 

 

警備員も天馬も、突然の事態に驚いていた。

 

 

警備員

「し、しかし、ノーマは女性しか存在しないはずだが、何故男性のハズである君が・・・。」

 

天馬

「俺にも分かりません・・・。ですが、これでコソコソしないで済む。俺はある人に会うために、アルゼナルに行きたいんです。本当は荷物に隠れて密航するつもりでしたが、これで堂々とアルゼナルに行ける。」

 

警備員

「・・・わかった。君の理由はさておき、君をノーマ管理法に基づき、アルゼナルに連行する。次の貨物便と一緒に、君をアルゼナルまで連れていこう。」

 

天馬

「ありがとうございます。」

 

 

こうして、天馬はノーマとしてアルゼナルへと連行されることになった。

 

 

天馬

(アンジュリーゼ様、待っててください!俺、今からアンジュリーゼ様のところに行きます!)

 

 

輸送機のハッチが閉まり、輸送機は離陸。天馬とアルゼナル行きの荷物を載せた輸送機はアルゼナルに向けて飛び立った。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

~アルゼナル デッキ~

 

 

深夜、天馬を乗せた輸送機は孤島に作られた軍事施設アルゼナルに到着した。デッキでは複数の女兵士と黒髪の女性、緑髪のメガネの女性が輸送機を待っていた。

 

 

作業員

「ジル総司令官殿、定刻通り輸送物資のお届けに参りました!」

 

 

黒髪の女性はアルゼナルの総司令官、ジル。

 

 

ジル

「ご苦労です。ところでエマ、そちらの少年は?」

 

 

緑髪のメガネの女性はノーマ管理委員会からアルゼナルに送り込まれた監察官兼アルゼナルの軍務官、エマ・ブロンソン。アルゼナルで唯一のマナ使いである。

 

 

エマ

「1203-78号ノーマ、松風天馬。出身は日本の東京、13歳。情報によると、この少年は世界初の男性のノーマだそうです。」

 

 

エマの発言に、その場にいた全員が驚いた。

 

 

エマ

「あなたには、ここアルゼナルへ入隊。兵士として戦うことを義務付けます。」

 

天馬

「兵士・・・ですか?」

 

エマ

「取り合えず、あなたの所持品は預からせていただきます。」

 

天馬

「わかりました・・・。」

 

 

エマは天馬の荷物を全て預かり、兵士と共に徹底的にチェックを行った。

 

 

エマ

「大量のお菓子と着替えと洗面道具。それ以外に目立った物は全く無いです。」

 

ジル

「取り合えず精密検査に出しておけ。それで問題が無いと分かれば後で返しておけ。」

 

天馬

「ジル総司令官。一つお伺いしたいことが。」

 

ジル

「何だ?」

 

天馬

「ミスルギ皇国第一皇女、アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギ様がここに連行されたとミスルギ皇国の皇帝から聞いたのですが、それは本当ですか?本当でしたら、アンジュリーゼ様に会わせてください。」

 

ジル

「・・・いいだろう。天馬、私について来い。」

 

 

ジルは天馬を連れてその場を離れた。エマはマナの力で天馬の荷物を動かし、ジルを追いかけた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

アンジュの部屋

 

 

ジルは天馬をアンジュリーゼの部屋へと連れてきた。だが、彼女は身体中に包帯を巻かれた状態でベッドに拘束されて眠っていた。

 

 

ジル

「こいつがお前の会いたがっていた女、アンジュだ。」

 

天馬

「アンジュ?アンジュリーゼ様・・・ではないんですか?」

 

ジル

「ここへ連行されたノーマ達は皆、名前を改名されることになっている。だから天馬、お前は今日から松風天馬ではなく、ただの天馬となる。いいな?」

 

天馬

「はい。」

 

 

ガチャッ

 

 

部屋の扉が開き、藍色ツインテールと茶色い瞳の少女《サリア》と、桃色ロングヘアーと緑色の瞳の女性《エルシャ》が入ってきた。サリアの手にはシーツとボロボロの紙幣の束。エルシャの手には天馬の所持品があった。

 

 

サリア

「今日からあなたは、このアンジュと同じ部屋で生活してもらうわ。生活するうえで足りない物があれば、これで調達してちょうだい。」

 

エルシャ

「それから、あなたの所持品は全て御返しすることになったわ。」

 

天馬

「態々ありがとうございます。えーっと・・・。」

 

サリア

「私はパラメイル第一中隊の隊長、サリア。こっちはエルシャ。」

 

エルシャ

「よろしくね~♪」

 

天馬

「松・・・じゃなくて、天馬です。よろしくお願いします。」

 

 

天馬は二人にお辞儀をし、荷物を受け取った。サリアはアンジュを睨み、エルシャは心配そうな表情を見せている。

 

 

天馬

「・・・アンジュリーゼ様、いったい何があったんですか?」

 

サリア

「言いたくないわ。ただ、その女と暮らすのなら一つだけ忠告しておく。そいつは疫病神よ。」

 

 

サリアはそう言うと部屋を後にした。ドアが閉まって直ぐ、エルシャは話し始めた。

 

 

エルシャ

「私達ノーマがここに運ばれてくるのは、兵士としてドラゴンを討伐するためなの。」

 

天馬

「ドラゴン?ドラゴンって、あのドラゴンですか?鋭い爪と牙があって大きな翼があって口から火を吹く。」

 

ジル

「次元を越えて侵攻してくる巨大攻性生物、Dimensional Rift Attuned Gargantuan Organic Neototypesの単語の頭文字を取った通称だ。ま、外見はおとぎ話に登場するドラゴンに酷似しているから難しく考えなくて良い。」

 

エルシャ

「2日前、アンジュちゃんは私達パラメイル第一中隊に入隊して、私達と一緒にドラゴン討伐に向かったわ。でもね、アンジュちゃんは戦闘に参加せず、国に帰るって言って逃亡。その時に新兵二人とその時の第一中隊の隊長を戦死させてしまったの・・・。彼女は辛うじて一命をとりとめたけど、他のみんなは彼女を人殺しって呼んでいたわ・・・。」

 

天馬

「・・・。」

 

ジル

「天馬。早速だが明日、第一中隊のもとで訓練を行う。今日はもうゆっくり休むと良い。」

 

天馬

「わかりました。ありがとうございます。」

 

 

ジルとエルシャは部屋を後にし、天馬はアンジュが眠るベッドの隣のベッドに腰を下ろし、アンジュを見つめた。

 

 

天馬

(アンジュリーゼ様・・・。)

 

 

天馬はそのまま眠りについた。そして次の日の朝、天馬が目覚めた時には既にアンジュは姿を消していた。天馬はユニフォーム姿で部屋を後にした。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~墓地~

 

 

天馬は訓練施設に向かう途中、墓地の近くを通り掛かった。

 

 

天馬

「戦死したノーマ達は、ここに眠るのか・・・。」

 

 

墓地の奥にアンジュとジル、さらに商売人ジャスミンの姿があった。天馬は門の影に隠れ三人の様子を見た。

 

 

アンジュ

「私はこれから、どうすればよいのですか…」

 

ジル

「戦ってドラゴンを倒す、以上だ。」

 

アンジュ

「そもそも、ドラゴンとは何なのですか?何故、私があんなモノと・・・。」

 

ジル

「授業を聞いていただろう?ドラゴンを倒すための兵器。それが我らノーマに許された、たった一つの生き方だ。」

 

ジャスミン

「皇女様としては本望だろう?世界のために戦えるんだからね。」

 

ジル

「ここでノーマ達がドラゴンを倒してくれているお陰で、マナの世界はずっと平和なのさ。平和ボケしたあんたの世界は、ここで死んでいったノーマが守っていた。だからアンジュ、今度はお前が守る番だ。」

 

 

ジルの言葉に、アンジュは納得出来なかった。

 

 

アンジュ

「知りません…そんなこと… 私はノーマではないのに、どうしてこんな場所に…」

 

ジル

「ノーマでないと言うのなら、証拠を見せてみろ。」

 

 

ジルはアンジュに1本のペンを渡した。アンジュはマナの光でペンを動かそうと思っていたが、彼女がマナの光を放つことは無かった。アンジュは膝をつき、絶望した。

 

 

アンジュ

「そんな… 今だけ…少しマナが使えないだけです… それなのに、何でこんな地獄みたいな所…理不尽です…」

 

ジャスミン

「それを決めたのはお前さん達だろ?お前さんは、お前さん達が作ったルールに従ってここに来たんだよ。他のノーマの娘たちも、みんなね。」

 

ジル

「ノーマは人間じゃない…か。

 

 

 

 だったらアンジュ、お前は何だ!皇女でもなく、マナも使えず、敵前逃亡し、年端もいかぬ仲間を死なせたお前は、いったい何なんだ!?」

 

 

ジルはアンジュの服の襟を掴み叫んだ。アンジュは泣いていた。

 

 

ジル

「死んだ仲間の分もドラゴンを殺せ!それが出来ないなら、死ね!」

 

アンジュ

「では、殺してください…」

 

ジル

「駄目だ。この者達と同じくドラゴンと戦って死ぬか、年老いて命が燃え尽きて死ぬかしか許されぬ。」

 

 

天馬(戦って死ぬか、年老いて命が燃え尽きて死ぬかしか許されないか…)

 

 

天馬は静かに墓地を離れた。そして、天馬と入れ違う様にサリアが墓地に現れた。

 

 

サリア

「長官、ドラゴンが・・・。」

 

ジル

「そうか。アンジュ、出撃だ。」

 

アンジュ

「はい…」

 

サリア

「ですが、パラメイルはもう天馬の分しか残っていません。彼女に回せる機体は・・・。」

 

ジル

「あるじゃないか、アイツが。」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~デッキ パラメイル格納庫~

 

 

天馬は途中、パラメイル格納庫を訪れた。格納庫には色とりどりのパラメイルが待機しており、天馬は白いボディに水色の翼のパラメイルを見ていた。

 

 

天馬

「これが、パラメイル。」

 

???

「対ドラゴン様の人型機動兵器で、通称は《ノーマの棺桶》なんて言われてる。全種類が戦闘機形態フライトモードと、人型形態アサルトモードの2形態へ変形できて、飛行形態になることで高速移動することが可能なんだ。」

 

 

天馬にパラメイルの説明をした藍色ツインテールの少女は、第一中隊の整備班長メイ。メイは天馬の隣に立ち止まった。

 

 

メイ

「でもってこいつはお前の機体、グレイブ!新兵に配給される量産機で、こいつみたいに無装備状態の機体は通称ノーメイクって呼ばれてる。 他のパラメイルより機体性能は劣るが、近接戦闘、後方支援など多くのバリエーションがあって、ライダー各自の手で多様なカスタマイズをするのも可能なんだ。」

 

天馬

「よろしくな、グレイブ!」

 

メイ

「じゃ、私やることあっから。」

 

 

メイはその場を後にし、天馬は自分のパートナーとなるグレイブのコックピットに乗った。

 

 

天馬

「コックピットはバイクに似てるな。これが操縦桿で、これがアクセルだな。でもって・・・。」

 

 

すると・・・

 

 

ガコンッ

 

 

突然、天馬のグレイブがゆっくりと動き始めた。

 

 

天馬

「うわっ!な、何だ!?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~デッキ カタパルト~

 

 

ガコンッ

 

 

天馬のグレイブは、他のパラメイルと共にカタパルトへセットされた。さらにその直後、各々のパラメイルにライダーが搭乗し、天馬の斜め右前方の水色のパラメイル、アーキバスサリア・カスタムにはサリアが、右隣のオレンジ色のパラメイル、ハウザーエルシャ・カスタムにはエルシャが、左隣の白い傷だらけのパラメイル、ヴィルキスにはアンジュが乗っていた。

 

 

天馬

「ど、どうなってるの…」

 

エルシャ

『あら?もしかしてその声、天馬君?』

 

 

グレイブの通信機からエルシャの声がした。さらに右ハンドル側の画面にはサリアが映っている。

 

 

サリア

『て、天馬!?あんた、何でパラメイルに乗ってるのよ!?訓練施設にいるんじゃなかったの!?』

 

天馬

「いや・・・その・・・自分の乗る機体を見てみようと思って格納庫に行ったんですけど、試しに乗ってみたらこうなりました・・・。」

 

???

『なるほど、じゃあ訓練も受けずに早速実戦って訳だ。操縦謝って落ちるのがオチだね。』

 

『『ハハハ!!』』

 

 

赤いパラメイル、グレイブヒルダ・カスタムに乗る赤色ツインテールとパープルの瞳の少女《ヒルダ》がキャグ混じりの悪口を言い、黄色いパラメイル、グレイブロザリー・カスタムに乗る橙色のショートヘアーと青色の瞳の少女《ロザリー》と、黄緑のパラメイル、ハウザークリス・カスタムに乗る銀髪の三つ編みポニーテールと桃色の瞳の少女クリスが大笑いした。

 

 

???

『気にしない気にしない!パラメイルの操縦なんて思ったより簡単だから問題無いよ!』

 

 

ピンクのパラメイル、レイザーに乗るヒルダとは違う赤色のショートヘアーとイエローの瞳の少女《ヴィヴィアン》が励ました。

 

 

サリア

『まったく・・・じゃあ天馬、今日は戦闘に参加せず、後方にて待機。私達が日々どんな戦いをしているのか、その目に焼き付けておきなさい。』

 

天馬

「はいっ!」

 

サリア

『それじゃあ行くわよ。サリア隊、発進します!』

 

 

サリアの掛け声と共に、サリアのアーキバスサリア・カスタムは発進。それに続いて、他のメンバーのパラメイルも次々発進した。天馬のグレイブも一同に続いて発進し、アンジュのヴィルキスもグレイブに続いて発進。第一中隊のパラメイルは大空へと飛び立った。

 

 

ロザリー

「まったく、仲間殺しのイタ姫だけじゃなく、訓練もマトモに受けてない少年兵とも一緒に出撃なんて・・・。」

 

クリス

「面倒くさい。」

 

ヒルダ

「でも彼、どうやらやる気みたいよ。」

 

 

天馬はグレイブを上下左右に動かし、機体のコツを掴もうとしていた。

 

 

天馬

「なるほど、大体分かった!」

 

 

天馬はグレイブのエンジン出力を上げ、第一中隊の遥か左側へ移動。そして並走状態でアーキバスサリア・カスタムに猛スピードで突っ込む。

 

 

サリア

「ちょ、ちょっと何!?うわああああああ!?」

 

天馬

「それっ!」

 

 

天馬はグレイブを右に180度旋回させ逆さまになり、アーキバスサリア・カスタムとグレイブヒルダ・カスタムの真上を通過。さらに機体を右に180度旋回させ、グレイブヒルダ・カスタムの右隣で静止した。サリアとヒルダは天馬の飛行を見て唖然とし、アンジュ以外全員は彼に声援を送った。

 

 

サリア・ヒルダ

「お、お見事…」

 

「「「おおー!」」」

 

 

天馬は静かに後方へと移動した。

すると・・・

 

 

エルシャ

「12時の方向、敵影確認!」

 

サリア

「くるぞ!」

 

 

第一中隊の前方の海中から、紫色の巨大なドラゴンが空中に姿を現した。ドラゴンは左胸が凍っている。

 

 

サリア

「天馬機以外全機、駆逐形態!凍結バレット装填!天馬機は後方にて待機!」

 

天馬

「了解!」

 

「イエス、マム!」

 

 

天馬はエンジンの出力を下げスピードを落とした。第一中隊はパラメイルをフライトモードからアサルトモードへ変形させ、左腕に氷結バレットを装填し、ドラゴン目掛けて突っ込む。すると、ドラゴンは自身の真下に巨大な魔方陣を出現させ、海中から無数の光る球を飛ばし第一中隊を攻撃。第一中隊のパラメイル達は腕や足、装備していた武装等を破壊された。

 

 

天馬

(凄い・・・。これが、ドラゴン・・・。くそっ!せめて銃さえ装備していれば遠距離から援護出来るのに、何で俺のグレイブはノーメイクなんだよっ!)

 

 

武器を装備していない天馬は、遠くから戦いを眺めている事しか出来なかった。すると、前方にアンジュの乗るヴィルキスを発見した。ヴィルキスはフライトモードのままドラゴンへと突っ込んでいく。

 

 

天馬

「アンジュリーゼ様のパラメイル。なんでフライトモードのままなんだ?」

 

 

『もうすぐ……もうすぐよ……』

 

 

天馬

『この声・・・アンジュリーゼ様?』

 

 

通信機からアンジュの声が聞こえてきた。

 

 

『もうすぐ、サヨナラ出来る…』

 

 

天馬

「もうすぐサヨナラ出来る・・・まさか!?」

 

 

天馬はグレイブのエンジンを吹かし、最大出力でアンジュの乗るヴィルキスの元へと向かった。

 

 

天馬

「やめるんだ!アンジュリーゼ様!」

 

 

 

To Be Continued…




~次回予告~


サリア
「自殺を図るアンジュと、必死に彼女を追いかける天馬。そんな二人に次回、新たな力が舞い降りる。


次回、《アンジュの改心!解き放たれた力!》。」

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