クロスアンジュ LIGHTNING EDITION ~天使とドラゴンと五人の巨人使い~ 作:ヒビキ7991
~太平洋 上空~
第一中隊は夜の海を飛行し、シンギュラーの発生ポイントに向かっていた。
クリス
「ねえナオミ。」
ナオミ
「何ですか?クリスさん。」
クリス
「さっきはごめん、アンタのこと不気味だなんて言って…」
クリスは気まずい表情を浮かべた。だが、ナオミは笑顔で答えた。
ナオミ
「気にしないでください。私、もう大丈夫ですから。」
ロザリー
「・・・なんか少し雰囲気変わったなぁ。何かあったのか?」
ゾーラ
「コラ、もう隊長じゃないから言える口じゃないかもしれないけど、私語はその辺にしときなよ。」
『シンギュラーまでの距離、約20000。』
サリア
「全機、セーフティー解除。ドアが開くぞ!」
第一中隊の前に紫色の雷が光り、シンギュラーが開いた。シンギュラーの中からガレオン級大型ドラゴン3体と、スクゥナー級ドラゴンが大勢出現した。
ヒルダ
「ウジャウジャ出てきやがった!」
ゾーラ
「今まで幾度となくドラゴンと戦ってきたけど、一度にこれだけ多くのドラゴンと遭遇したことは無いぞ!」
『ドラゴン補足。ガレオン級3、スクゥナー級77。』
エルシャ
「ガレオン級3にスクゥナー級77!?」
神童
「物凄い数だな…」
サリア
「まずは小さいドラゴンから落としていくわよ!」
第一中隊はライフルを装備し発砲。
ダダダダダダダダダ!
ミランダ
「行きなさい、シールドビット!」
ミランダはシールドビットを飛ばしオールレンジ攻撃。スクゥナー級ドラゴン数体を落とした。
「ギャアアアアア!」
ガレオン級ドラゴン3体は口から光線や電撃を放ち第一中隊を攻撃。第一中隊は攻撃をかわし、天馬のペガサスはアブソーブシールドを展開し攻撃を吸収した。
《ENERGY FULL-CHARGE》
天馬
「よし、ディスチャージだ!」
ガシャン!
アブソーブシールドとソニックバレットを連結し、吸収したエネルギーをソニックバレットへと送り込んだ。
天馬
「いっけえええええええええ!」
バッシュウウウウウウゥゥゥ!!
ソニックバレットから高出力のビームが放たれた。ビームはスクゥナー級ドラゴン数体を凪ぎ払い、ガレオン級ドラゴンの胸部を貫通。ガレオン級ドラゴンは大量の血を吹き出し海へと沈んだ。
天馬
「よっしゃ!」
ヴィヴィアン
「すっごい威力…」
「ギャアアアアア!」
天馬
「っ!?」
仲間を倒されたことに怒り、スクゥナー級ドラゴン数体がペガサスに照準を絞り襲いかかってきた。ペガサスは機敏に動きドラゴン達を避けるが・・・。
ガンッ! バンッ!
天馬
「どわぁ!?」
ドラゴンからのタックルを食らい、ペガサスはバランスを崩した。
天馬
「くそっ!」
ゴオオオオオオオオオッ!!
天馬は直ぐペガサスの体制を立て直し、空中で静止した。
天馬
「ふぅ…危なかった…」
だが安心したのも束の間だった。
「ギャアアアアア!」
後方からガレオン級ドラゴンが襲い掛かってきた。
天馬
「っ!?」
ナオミ
「天馬君!」
ガツンッ!
ナオミのグレイブはサイドからペガサスにアタックし進路を変えた。アタックの拍子にペガサスはバランスを失ったが、天馬がペガサスのエンジンを操作し体制を立て直した。
ガシャン!
ナオミ
「きゃああああ!」
だが、ナオミのグレイブがガレオン級ドラゴンに捕まった。
天馬
「ナオミ!」
天馬はペガサスをフライトモードに変形させガレオン級ドラゴンを追いかける。ガレオン級ドラゴンは自身の身体から光の球を無数に出現させ、ペガサスに向かって放った。
天馬
「このっ!」
ペガサスは光の球を避けながらガレオン級ドラゴンを追いかける。
ナオミ
「天馬君!私のことは気にしないで、ドラゴンを倒すことに専念して!」
天馬
「そんなわけにいかないよ!」
ダダダダダダダダダ!
天馬はペガサスをアサルトモードに変形させ、マシンガンを乱射しガレオン級ドラゴンを攻撃。だが・・・。
ガシャン!
天馬
「なにっ!?」
「ギャアアアアア!」
ペガサスはもう一体のガレオン級ドラゴンに捕まった。
信助
「天馬とナオミさんがドラゴンに捕まった!」
神童
「何だとっ!?」
ココ
「隊長、今すぐ天馬さん達を助けに!」
サリア
「わかったわ。全機、天馬とナオミの救出に向かうわよ!」
『イエス・マム!』
第一中隊は天馬とナオミの救出へと向かう。
「ギャアアアアア!」
だが、前方にスクゥナー級ドラゴンが壁を作り行く手を塞いだ。
アンジュ
「アンタ達に構ってられないのよ!」
ダダダダダダダダダ!
天馬
「みんな…」
ドカーン!
突撃、ペガサスの頭上で爆発音が響き、ペガサスがドラゴンの手を離れ落下。天馬はペガサスのエンジンを操作し、海面ギリギリで静止した。
天馬
「な、何だ!?」
天馬は上空に目を向ける。すると、ナオミのグレイブが天馬の捕まっていたガレオン級ドラゴンにライフルを向けていた。
天馬
「ナオミ。」
ナオミ
「天馬君!今のうちにドラゴンを!」
ガンッ!
ナオミ
「キャッ!」
「ギャアアアアア!」
ガレオン級ドラゴンはグレイブを握り潰そうとしていた。
天馬
「ナオミ!?」
ナオミ
「天馬君・・・後は、頼んだわよ!」
ガシャーン!
天馬
「っ!?」
ナオミのグレイブは握り潰されバラバラになり、海へと落ちていった。
天馬
「ナオミ・・・うわああああああああああ!!」
キイィィィィィィンッ!
突然、ペガサスの目が黄色から赤に変わり、ボディと翼が徐々に白から赤へと変色した。
アンジュ
「・・・っ!?ちょっと、みんなあれ!」
アンジュはペガサスの異変に気付き、第一中隊一同はペガサスの姿を見て仰天した。
霧野
「ペガサスが・・・。」
ヴィヴィアン
「赤くなった!」
ダダダダダダダダダダダッ!
ペガサスは頭上のガレオン級ドラゴンにソニックバレットを向け発砲。弾は全てドラゴンに命中し、ドラゴンは身体から大量の血を吹き出し海へと沈んだ。
天馬
「・・・!」
すると今度は第一中隊の交戦する高度まで上昇し、翼を羽ばたかせスクゥナー級ドラゴン達に向けて突風を起こす。
ビュー!
ズパッ!ドピュッ!
突風を受けたスクゥナー級ドラゴンの身体中に無数の切り傷が現れ、スクゥナー級ドラゴンは大量の血を吹き出しながら次々と海へと落ちていった。
ヒルダ
「何だ!?何が起きやがった!?」
ゾーラ
「こりゃきっとカマイタチだ。」
ココ
「カマイタチ?」
ゾーラ
「風が作り出す真空の刃。何も触れていないのに突然、刃物で切られたような傷がつくっていう現象だ。おそらくペガサスが翼を羽ばたかせたときに、突風と一緒にカマイタチを発生させたんだ。」
「ギャアアアアア!」
ペガサスに恐怖したのか、生き残ったスクゥナー級ドラゴン数体とガレオン級ドラゴンは急いでシンギュラーへと引き返す。だが、ペガサスがガレオン級の前に立ち塞がった。
天馬
「お前だけは・・・絶対に許さない!!」
「ギャアアアアア!」
ガレオン級ドラゴンは口から電撃を放ちペガサスを攻撃。ペガサスは電撃を避けながらドラゴンの懐へと突っ込む。
天馬
「はああああああああっ!」
グサッ!
天馬はペガサスの右腕をドラゴンの胸の中心に突き刺した。
「ギャアアアアア!」
天馬
「でやあああああ!」
グシャッ!
ペガサスはドラゴンから心臓を抉り取った。ドラゴンは動きを止め海へと沈んだ。
天馬
「ハァ…ハァ…」
ペガサスのボディは徐々に白へ戻り、目も赤から黄色へと戻った。第一中隊は未だ仰天している。
ロザリー
「すっげぇ…」
クリス
「何だか、怖い…」
サリア
「天馬、大丈夫?」
天馬
「サリア隊長、俺、ナオミを…」
『ザザザザザザザザザ・・・もしも~し、誰か応答願います。』
突然、何処かから通信が入った。
天馬
「ナオミの声に似てる…」
『誰か応答してくださ~い。こちらナオミで~す。』
天馬
「っ!?」
天馬はふと下を見た。すると、海に浮かぶグレイブの残骸の上から手を振る、桃色の髪の人影を見つけた。
天馬
「ナオミ!無事だったんだ!」
ナオミ
『うん。グレイブは完全にバラバラになっちゃったけど、運良く助かったみたい。誰か、救助をお願いします。』
サリア
『了解!』
天馬
「良かった…ナオミが無事で…」
天馬はホッと笑顔になり、第一中隊はナオミとグレイブの残骸を回収しアルゼナルへと戻った。帰還後、ナオミはマギーに治療を受けたが、機体をバラバラに破壊されたわりに傷は軽症で、少しの治療で済んだという。
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~デッキ カタパルト~
次の日の夕方、第一中隊はジルとマギーを呼びデッキに集まった。一同の前にはペガサスがガレオン級ドラゴンから抉り取った巨大な心臓がある。
天馬
「よし、じゃあ始めますよ?」
ジル
「ああ、頼む。」
シャキン!
天馬はナイフを片手に心臓の解剖を始めた。
マギー
「しっかし、いったいどうやって心臓を抉り取ったんだ?」
サリア
「私達にも分からないの。ガレオン級にナオミのグレイブを落とされて、その後天馬が叫んだと思ったら、ペガサスが急に赤色に変わって、マシンガンでガレオン級を落とすわカマイタチを起こしてスクゥナー級を一度に大量に殺すわ、最後にはナオミのグレイブを破壊したガレオン級から心臓を抉り取るわで、もう何が何だかさっぱり…」
ジル
「そうか。」
ジャララララララッ!
突然、心臓の中から赤い結晶が大量に出てきた。
天馬
「なんだこれ?」
解剖をしていた天馬と第一中隊一同、さらにジルとマギーは各々欠片を手に取った。
アンジュ
「なにこれ?宝石?」
ココ
「きれい…」
ヴィヴィアン
(なんだろう、この石を持ってると不思議な気分になってきた。)
エルシャ
「ドラゴンの心臓からこんなものが出てくるなんて、知らなかったわ。」
神童
「触った感じは特に害は無さそうだな。」
モモカ
「ですが、何だかマナに近いような力を感じます。」
天馬
「マナに近い力・・・。」
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~グラウンド~
その後、ドラゴンの心臓と謎の赤い結晶は研究サンプルとして保管されることとなった。その日の夜、天馬はアンジュと共にグラウンドのベンチに腰かけていた。
天馬
「ドラゴンを氷付けにして、遺体を回収する理由・・・。そしてドラゴンの心臓から出てきた、マナに近い力を放つ赤い結晶・・・。俺たち、ドラゴンについて何一つ知らないんですね・・・。」
アンジュ
「ドラゴンを倒すことだけ命じられて、他は何も教えてもらえなかった。きっと、司令は何か隠してるに違いないわ。私たちに知られたくない秘密を・・・。」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~司令室~
同じ頃、司令室ではジルが1人考え事をしていた。
ジル
(まさか、あいつらのパラメイルがラグナメイルと同等か、それ以上の力を秘めていると言うのか?・・・まさかな。いくらパラメイルを強化しても、ラグナメイルの性能に敵うまでには至らない。だがサリアの情報と私の勘が確かなら、リベルタスの大きな戦力になるのは間違いない。もう少し、様子を見てみるとしよう。)
ジルは席を立ち、部屋の灯りを消し司令室を後にした。
バタンッ
To Be Continued…
~次回予告~
ロザリー
「ついに来た!待ちに待ったフェスタだあ!」
神童
「フェスタって何ですか?」
クリス
「アルゼナルで年に1度だけ行われるお祭りみたいなものだよ。」
ロザリー
「屋台に映画館にメリーゴーランドに、それから優勝賞金100万キャッシュの大運動会!楽しいことが目白押しだあ!」
ヒルダ
「賑わってるとこ悪いけど、アタシは席を外すぜ。」
剣城
「俺も失礼します。」
天馬
「俺も。」
アンジュ
「私も。」
ナオミ
「私も失礼します。」
ミランダ
「アンジュ?天馬?ナオミ?」
ゾーラ
「何かあったのか?」
アンジュ
「次回、《アルゼナル脱走計画》だペロ!お楽しみに!」
サリア
「最後のやつ、何?」