クロスアンジュ LIGHTNING EDITION ~天使とドラゴンと五人の巨人使い~   作:ヒビキ7991

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Ep.09/鋼のガールフレンド《前編》

~アルゼナル グラウンド~

 

 

アンジュが第一中隊と和解した日の翌日、天馬はアンジュ・ゾーラ・ココ・ミランダと共にグラウンドの端でサッカーのパス練習を行っていた。

 

 

天馬

「足の裏を使って、蹴る。」

 

アンジュ

「よっ。」

 

 

トンッ

 

 

アンジュはゾーラに向かってパスし、ゾーラはボールを受け取った。

 

 

天馬

「そうそう!アンジュさんスゴく上手くなりましたよ!」

 

アンジュ

「そう・・・かな?」

 

 

アンジュは天馬に褒められ少し照れた。

 

 

ゾーラ

「アンジュは新兵の中じゃ、基礎体力・運動神経・格闘対応能力・戦術論の理解度共に飛び級だったからなぁ。この程度はお茶の子サイサイってか?」

 

ミランダ

「最初はドラゴンとの遭遇で泣き叫ぶくらいメンタル弱かったけどね…」

 

アンジュ

「アハハ、面目ない…」

 

 

アンジュは苦笑いをしたが、直ぐに表情を暗くした。

 

 

ミランダ

「妹さんのこと、考えてるの?」

 

アンジュ

「えっ?」

 

ココ

「今朝、モモカさんから聞きました。昨日の夜、アンジュリーゼ様の妹のシルヴィア様から助けを求める連絡があったと。」

 

アンジュ

「心配するだけ無駄よ。今の私には、どうすることも出来ないし・・・。」

 

ゾーラ

「そうだけどさ、よっ。」

 

 

ゾーラは天馬に向かってボールを蹴る。だがボールは崖の方へ跳び、フェンスを越え崖から海へと落ちていった。

 

 

ゾーラ

「あ、ごめん…」

 

天馬

「いえ、お気になさらず・・・ん?」

 

 

天馬はふと海の方を見たとき、海の上に浮かぶ何かを発見した。目をこらしてよく見てみると・・・。

 

 

天馬

「人だ!」

 

ゾーラ

「えっ?」

 

 

天馬はフェンスを越え崖から飛び降り、海へと飛び込んだ。

 

 

ザバーン!

 

 

アンジュ

「天馬!」

 

 

天馬は直ぐ海面に姿を現し、泳いで漂流者のもとへと向かう。アンジュ・ゾーラ・ココ・ミランダはグラウンドを離れビーチへと向かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~ビーチ~

 

 

ビーチに到着すると、天馬が漂流者を連れて泳いで向かっていた。アンジュはロープを結んだ浮き輪を持ち、天馬のもとへ泳いで向かった。

 

 

天馬

「アンジュさん!」

 

アンジュ

「これにつかまって!」

 

 

天馬は浮き輪につかまり、アンジュはロープを数回引きゾーラ達に合図を送った。

 

 

ゾーラ

「合図だ!思いっきり引っ張りな!」

 

ココ・ミランダ

「はいっ!」

 

 

ゾーラ・ココ・ミランダはロープを引っ張り、アンジュと天馬と漂流者を引き上げた。天馬は漂流者を砂浜に寝かせた。漂流者は少女で、エルシャとは少し異なる桃色の髪を両耳の上でお団子状にした後、髪留めから細く垂らし、後ろはポニーテール状に結わえトリプルテールをしていた。

 

 

ゾーラ

「脈がある。死んではいない。」

 

天馬

「アンジュさん。」

 

アンジュ

「わかったわ。」

 

 

アンジュは少女の口に自分の口を当て、人工呼吸を数回行った。

 

 

???

「・・・ゲホッ!ゲホッ!」

 

 

少女は意識を取り戻し、ヒルダとは異なるパープルの瞳が姿を現した。一同は少女が意識を取り戻したことにホッとした。

 

 

???

「・・・ここは、どこ?」

 

アンジュ

「よかった、意識が戻ったみたいね。」

 

???

「・・・あなたは?」

 

アンジュ

「私はアンジュ。あなたは?」

 

???

「私はナオミ。《ナオミ・東雲》・・・。」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

~指令部~

 

 

ナオミはその後病室に搬送され、エマがナオミの情報を調べていた。

 

 

エマ

「ナオミ・東雲、14歳。先日エンデラント連合で発見された、1203-83号ノーマです。」

 

ジル

「何故漂流していたんだ?」

 

エマ

「委員会からの情報ですと、彼女を運んでいた輸送機は昨夜、ハリケーンに巻き込まれて消息不明となったらしいんです。」

 

ジル

「なるほど。」

 

エマ

「それで、どうされますか?」

 

ジル

「まあ彼女がノーマである以上、ルールに基づきアルゼナルで保護します。」

 

エマ

「分かりました。でも、ちょっと変なんです。」

 

ジル

「変?」

 

エマ

「委員会から送られてきた情報によれば、彼女は・・・。」

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

~ミーティングルーム~

 

 

それからナオミの体力は無事に回復し、約1週間後に退院。同時にパラメイル第一中隊への配属が決定した。サリアは第一中隊メンバーをミーティングルームに集め、ナオミの紹介を行った。

 

 

ナオミ

「今日からこの第一中隊に配属になりました、ナオミです!よろしくお願いします!」

 

サリア

「パラメイル第一中隊隊長のサリアよ。で、副隊長のヒルダ、突撃兵のヴィヴィアン、軽砲兵のロザリー、重砲兵のエルシャとクリス、それからゾーラ元隊長、新兵のココとミランダ、アンジュ、天馬、剣城、神童君、信助、霧野君よ。」

 

ヴィヴィアン

「ふ~ん、随分と可愛い新兵さんだね。」

 

信助

「スタイルはアンジュさんに近いですかね。」

 

ナオミ

「一応お伺いしますが、天馬君達は男性ですよね?」

 

サリア

「ええ。ただどういう訳か男のノーマと断定されて、最近ここに放り込まれたの。実質、5人がノーマっていう事実は確定しているわ。」

 

ナオミ

「そうなんですか・・・。」

 

 

ナオミは天馬に目を向けると、天馬の隣に駆け寄った。

 

 

ナオミ

「天馬君、この間は助けてくれてありがとう!」

 

天馬

「こちらこそ、無事でなによりです。」

 

サリア

「それから言い忘れてたけど、ナオミはアンジュと天馬と共に同居してもらいます。」

 

天馬

「えっ?」

 

アンジュ

「なんで?」

 

サリア

「彼女の希望よ。天馬に助けられた事を知ってから、どうも天馬に惚れてるらしいの。ベッドはジャスミンにお願いしてあるから、後で受け取ってちょうだい。」

 

天馬・アンジュ

「は、はぁ…」

 

 

ギュッ

 

 

ナオミは天馬の右腕にしがみついた。

 

 

ナオミ

「これからよろしくお願いしま~す!」

 

天馬

「よ、よろしくお願いします…」

 

 

天馬は苦笑いし、一同は微笑んだが・・・。

 

 

ココ

「ウウウウウウウ・・・。」

 

 

ココは後ろからナオミを睨み付け、赤黒いオーラを放っていた。

 

 

ミランダ

「ちょっと、ココ…?」

 

 

ガタンッ ギュッ

 

 

ココは席を立ち、天馬の左腕にしがみついた。

 

 

天馬

「ええっ、ココさん?」

 

ココ

「・・・天馬さんは渡さない。」

 

ナオミ

「・・・その言葉、そのままお返しいたします。」

 

 

天馬は二人からプレッシャーを感じ冷や汗を流す。

 

 

霧野

「ココさん、どうしたんだ?」

 

神童

「ココさんも天馬に助けられた事を知ってから、身を寄せるようになったらしいんだ。」

 

アンジュ

「なるほど、これが若さか・・・。」

 

ロザリー

「いやアンタいくつだよ…」

 

 

アンジュのコメントにロザリーが突っ込んだ。すると・・・。

 

 

ゾーラ

「あぁぁぁ何だか痒い痒い!背中を通り越して尻が痒くなってきた!」

 

 

ゾーラが席を立ち尻をかきはじめた。

 

 

エルシャ

「大丈夫ですか?」

 

クリス

「もしかして痔なんじゃ・・・。」

 

ゾーラ

「それは断じて違う!」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~ジャスミン・モール~

 

 

その後、天馬はベッドを受け取るためジャスミン・モールを訪れた。モールでは買い物客に混じってエルシャと霧野が後日開かれるフェスタの準備をしていた。

 

 

天馬

「こんにちは。」

 

ジャスミン

「おお、お前さんか。ベッドなら倉庫に用意してあるから好きに持っていくといいよ。」

 

天馬

「分かりました。それから、前に頼んでたヤツ届いてます?」

 

ジャスミン

「ああ、メイに依頼してパラメイルに装着済みさ。」

 

天馬

「分かりました。ありがとうございます。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~ジャスミン・モール 倉庫~

 

 

倉庫に来てみると、以前2段ベッドが置いてあった場所に同じタイプの2段ベッドが置いてあった。

 

 

天馬

「え~っと、台車何処にあったっけ?」

 

 

天馬は台車探しに向かった。すると・・・。

 

 

 

「えっと…恥ずかしくないですか、これ?」

 

「何言ってるの?二人とも超可愛いわよ!」

 

「そうですけど、これは…」

 

 

倉庫の何処かから3人の女の人の声がした。声を辿っていくと、魔法少女のコスプレをしたサリア。さらに桃色の猫(?)の着ぐるみをしたナオミと、水色の猫(?)の着ぐるみをしたココを発見した。

 

 

天馬

「サリアさん、何やってるんですか?」

 

 

天馬が声をかけると、サリアは声に気付き振り向いた。ナオミとココは顔を赤くしてモジモジしている。

 

 

サリア

「天馬、ちょうど良かったわ!これ見てくれる?」

 

天馬

「これって、着ぐるみ?猫・・・ですか?」

 

サリア

「魔法少女と謎の生き物は、いつだってセットなの!常識でしょ?」

 

 

確かに謎の生き物が出てくる魔法少女作品は多いが…

 

 

サリア

「それで、どっちが似合ってると思う?」

 

天馬

「そうですねぇ、二人とも可愛いですし、よく似合ってます。」

 

ナオミ

「そ、そう・・・?」

 

ココ

「あ、ありがとう・・・。」

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~食堂~

 

 

それから数分後、天馬は食堂で食事をしていたが・・・。

 

 

ナオミ

「どっちが1番可愛いかったの?」

 

ココ

「ハッキリしてください!」

 

天馬

「え~っと・・・どっちもじゃダメ?」

 

ナオミ・ココ

「ダメです!」

 

 

ナオミとココから迫られ食が進んでいなかった。近くの席からアンジュ・モモカ・ヒルダ・ゾーラ・剣城が様子を見ていた。

 

 

モモカ

「天馬さん、モテモテですね。」

 

アンジュ

「大変ね、モテる男って。」

 

ゾーラ

「あぁぁぁ!また尻が痒くなってきた!」

 

 

ゾーラは下半身をモジモジさせている。

 

 

ヒルダ

「大変だなぁ…」

 

剣城

「やっぱり痔なんじゃ…」

 

ゾーラ

「だから違う!」

 

 

 

それからナオミとココが天馬の側を離れる事は無く・・・。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~露天風呂~

 

 

ある時は天馬が風呂に入っているとき。

 

 

天馬

「あの・・・二人ともちょっと近すぎじゃ…」

 

ココ・ナオミ

「そんなことありませ~ん♪」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~アンジュの部屋~

 

 

モモカ

「・・・あの、御二人とも自分のベッドで寝られては?」

 

ナオミ

「ここがいいです。」

 

ココ

「私も。」

 

 

そして挙げ句の果てには二人で天馬のベッドにまで押し掛けていた。

 

 

アンジュ

「そんなにベッタリ引っ付いてちゃ天馬が寝にくいでしょ?上のベッドが空いてるんだから、せめて二人が上で寝たら?」

 

ナオミ・ココ

「・・・は~い。」

 

 

二人は仕方なく上のベッドに移動した。そして明かりを落とし、5人は眠りについた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

~パラメイル格納庫~

 

 

次の日、天馬・アンジュ・モモカ・ココ・ミランダ・ナオミはパラメイル格納庫を訪れた。目の前にはアンジュのヴィルキスと、新しくアブソーブシールドを装備した天馬のペガサス。さらにナオミの乗るノーマルグレイブと、完全に修復され元通りになったゾーラのアーキバスゾーラ・カスタム。そして二人乗りに改造され機体のあちこちに10個のシールドビットを装備し、全体的に白と緑で塗装されたグレイブのカスタム機、グレイブココ・カスタムが置いてあった。

 

 

天馬

「ココさんのグレイブ、二人乗りに改修されたんだ。」

 

ミランダ

「ココがパラメイルの操縦を担当して、私が後部座席でレーダーと燃料と銃弾の監視及びビットの操作をするの。」

 

ナオミ

「私もいっぱい稼いで、みんなに負けないくらい強いパラメイルにしなくちゃ!」

 

アンジュ

「頑張ってね、ナオミ。」

 

ナオミ

「はいっ!」

 

アンジュ

「でもって、天馬のこの盾は何?」

 

天馬

「アブソーブシールド。ビームや電撃等のエネルギーを吸収して、溜め込むことが出来るシールドです。溜め込んだエネルギーは自身の稼働するためのエネルギーとして使ったり、ソニックバレットにエネルギーを送って強力なビーム攻撃を放ったりと、色々出来ます。」

 

ココ

「何だかハイテクですねぇ。」

 

 

すると・・・。

 

 

ジル

『パラメイル第一中隊のメイルライダー達に通達する。直ちに司令室へ集合せよ。繰り返す、直ちに司令室へ集合せよ。』

 

 

天馬

「司令官からの呼び出し?」

 

アンジュ

「何かあったのかしら?」

 

 

一同はジルの待つ司令室へと向かった。だがこの後、第一中隊は衝撃の真実を知ることになる。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

~司令室~

 

 

数分後、第一中隊のメイルライダー全員が司令室に集まった。司令室にはジルの他に、エマとマギーもいる。

 

 

ジル

「皆集まったようだな。」

 

エマ

「みんな、早速だけどコレを見てくれる?」

 

 

エマはマナの巨大ディスプレイを出現させ、ある記事を写し出した。20XX年7月4日発行の、始祖連合国新聞の記事の一部だ。

 

 

アンジュ

「なになに・・・7月3日、エンデラント連合郊外にあるロボット工学研究所にて原因不明の爆発事故が発生。当時研究所で勤めていた職員は全員無事であったが、所長の《アキレス・東雲》33歳が爆発に巻き込まれ右腕を折る重傷。また所長と共にいた娘のナオミ・東雲ちゃん14歳が内蔵を損傷し意識不明の重体?」

 

ジル

「ああ。しかもこの1週間後、このナオミという少女は無くなっているらしい。」

 

 

ジルの発言に、第一中隊全員は驚いた。

 

 

ロザリー

「じゃ、じゃあナオミは?ここにいるナオミはいったい何者なんだ!?」

 

マギー

「正真正銘の、ナオミ・東雲さんだよ。だが、彼女はもう人間とは呼べない存在になってるんだよ。」

 

クリス

「人間じゃないから、アルゼナルに送られたんじゃないの?」

 

マギー

「いや、それ以上に面倒なのさ。」

 

 

マギーは1枚のレントゲン写真を見せた。

 

 

第一中隊

「・・・っ!?」

 

エマ

「・・・っ!?」

 

ナオミ

「うそ・・・。」

 

 

レントゲン写真を見た一同は驚愕した。レントゲン写真に写っていたのはナオミの身体だったが、いくつかの臓器が機械で構成されていた。

 

 

マギー

「こいつはいくつかの臓器が機械で作られた、言わば"サイボーグ"なんだよ。」

 

サリア

「サイボーグ?」

 

ヴィヴィアン

「サイボーグって何ぞ?」

 

神童

「体の一部を人工的な機器に置き換えた人間のことです。」

 

ナオミ

「私が、サイボーグ・・・。」

 

マギー

「恐らく娘を失うのが怖かったお前の親父さんが、お前さんの身体のダメージを受けた臓器を人工臓器に置き換え、蘇生させたんだろう。」

 

ナオミ

「わ、私は・・・。確かに私はお父さんの研究所で事故に巻き込まれて、それから約1年間意識不明だったとお母さんから聞きました。」

 

エマ

「自分がサイボーグだと、今まで知らなかったのね?」

 

ナオミ

「はい・・・。」

 

 

ナオミと第一中隊は動揺していた。

 

 

ロザリー

「まさか、ナオミがサイボーグだったなんて…」

 

エルシャ

「不気味…」

 

ナオミ

「・・・。」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

~ビーチ~

 

 

その後、ナオミは一人夕日の照らすビーチにいた。

 

 

ナオミ

「私は、サイボーグじゃない。私はノーマ。サイボーグなんかじゃない!」

 

 

ナオミは頭をおさえながら自分に訴えていた。そこへ・・・。

 

 

天馬

「ナオミさん・・・。」

 

 

天馬とココ、アンジュとモモカがやって来た。

 

 

ナオミ

「天馬君、ココさん、アンジュさん、モモカさん・・・。」

 

 

四人はナオミを中心に座り込んだ。

 

 

モモカ

「信じられないんですか?自分がサイボーグだって。」

 

ナオミ

「信じられないんじゃなくて、そう思いたくないの。今まで人間と思って生きてきたのに、急にあんな事を聞かされて、信じられると思う?」

 

アンジュ

「無理ね・・・。私も少し前まで人間の皇女として生きてたけど、急にノーマ扱いされてここに放り込まれたから・・・。」

 

天馬

「・・・ナオミさんは立派な人間ですよ。」

 

ナオミ

「えっ?」

 

天馬

「俺の友達に、以前突然変異で特殊な力を持って生まれてきた人達がいて、周りから怪物扱いされていました。彼は自分達が未来のために生み出された優れた存在だと世界に認めさせるため、俺と俺の仲間達と戦って、その時彼に言ったことがあるんです。どこが違うの?優れていてもいなくてもみんな同じ人間でしょ?一人一人違ってて当然だよって。」

 

ココ

「言われてみれば・・・。」

 

天馬

「マナが使えないノーマであっても、身体の臓器を機械にされても、こうやって人としてこの世に生まれ、こうやって対話ができて、相手のことを思い、身体の中には赤い血が流れている。人間じゃなきゃあり得ないことです。だからナオミさん、あなたは列記とした一人の人間です。」

 

ナオミ

「人間・・・。」

 

天馬

「外の世界の人たちは皆、俺たちノーマを人間じゃないって言いますけど、本当に人間じゃないなら俺たちと同じ、泣いたり笑いあう事だって出来ない。悩んだり苦しんだりすることも、感情がある人間の証です。ナオミさんがどんなだろうと、ナオミさんはナオミさんです。パラメイル第一中隊のメイルライダーで、俺とアンジュさんとモモカさんのルームメートで、俺たちと同じ人間で、俺たちの仲間であるナオミさんです!」

 

ナオミ

「天馬君・・・。」

 

モモカ

「天馬さんの言うとおりですよ、ナオミさん。」

 

アンジュ

「そういうことだから、元気出しなさい。あんたがどんなだろうが、私たちは仲間でしょ?」

 

ナオミ

「仲間・・・。」

 

 

天馬・アンジュ・モモカ・ココはナオミに笑顔を見せ、ナオミも少し微笑みかけた。すると・・・。

 

 

 

ビー!ビー!ビー!ビー!

 

 

『第一種遭遇警報発令!パラメイル第一中隊、出撃準備!』

 

 

アンジュ

「まったく、タイミング悪いわねぇ…」

 

ココ

「行きましょう。」

 

 

アンジュ・モモカ・ココは立ち上がり、ビーチを後にした。

 

 

天馬

「ナオミさん、俺たちも行きましょう。」

 

 

天馬もその場で立ち上がった。

 

 

ナオミ

「待って。」

 

天馬

「はい?」

 

 

ナオミは立ち上がり、天馬の方に顔を向けた。

 

 

ナオミ

「天馬君、ありがとう。私、少し自信が持てた。私は、一人の人間だって!」

 

天馬

「ナオミさん・・・。」

 

ナオミ

「それで、えっと、その・・・。」

 

 

ナオミは言葉を詰まらし・・・。

 

 

ナオミ

「天馬君、私と友達になってください!」

 

 

天馬

「・・・俺たち、もう友達ですよ。」

 

ナオミ

「えっ?」

 

天馬

「友達っていうのは、なろうと言ってなるものじゃありません。こうやって言葉を交わし、思いをぶつけ合ううちに、いつの間にかなるものなんです。だから、俺たちはもう友達です!」

 

ナオミ

「・・・うん!それから、私のことは"ナオミさん"じゃなくて、"ナオミ"って呼んで。それから、今後はタメ口でかまわないから。」

 

天馬「・・・じゃあ、今後ともよろしく、ナオミ!」

 

ナオミ

「うん!」

 

 

ナオミと天馬は笑顔を見せ、二人は急いで格納庫へと向かった。

 

 


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