堕天使編、締めです。
結果からすれば、ドーナシーク、グッジョブだったと(笑)。
あの堕天使との戦いから、4日が過ぎた。
しかし、オカルト研究部、そして生徒会の面々は、未だ緊張を解いていない。
堕天使レイナーレが、リアルに滅される際に、発した言葉…
くそ!あと数日後には、あの女が この町に着いていたのに!
そうすれば、そうすれば、私は至高の堕天使になれたと云うのに…!
あの台詞からするに、そろそろ『あの女』と呼ばれた者が この駒王町に来るかも知れないのだ。
もしかしたら既に、町に潜んでいる可能性もある。
尤も、レイナーレ達の敗北により、町に来る事自体を取り止めたと云う線も、考えられるのだが。
》》》
「…只今、冥界の諜報部にも探って頂いておりますが、堕天使と繋がりがあると思われる者が、駒王町に入ったという報告は有りません。」
生徒会室にて、生徒会執行部とオカルト研究部が集まっている中、生徒会副会長の真羅椿姫が、現状を話す。
「積極的に見回りを…とは言いませんが、日常で もし、怪しいと思われる人物を見つけたら、私か椿姫、またはリアスに報せて下さい。
では、今日は、解散とします。
皆さん、お疲れ様でした。」
生徒会長の支取蒼那…ソーナ・シトリーの締めの言葉により、周囲に張り巡らせていた、人払いの結界が解かれ、この日の会議は終了した。
この後、生徒会役員は それぞれの業務に就き、オカ研の面々も旧校舎の部室へと足を進めた。
》》》
「さて…と…」
部室隣のトレーニング室で、制服からジャージに着替え、軽く上体をストレッチするシリュー。
「部長、ちょっと町内一周してきます。」
「あー、はいはい。何時でも連絡だけは、取れる様にしててね。」
「了~解。」
リアスに一言告げると、シリューはダッシュで校外へ飛び出して行った。
「金メダル、狙えるわね…」
2階の窓から その様子を見たリアスが、ボソッと呟く。
》》》
「ふぅ…少し飛ばし過ぎた…。
俺も、まだまだ未熟だな。」
数分後、学園から数㌔離れた公園のベンチに腰掛け、汗を拭きながら、スポーツドリンクを飲むシリュー。
自身を未熟と言ってはいるが、陸上短距離選手並み…いや、それ以上のスピードを、何㌔も保って走れる時点で、常人からは「人間か!?」…と、ツッコミが飛び交うレベルではある。
「よし、そろそろ行きますか…と。」
立ち上がり、シリューが再び走り始めようとした その時、
「きゃああっ!?」
背後から若い女の叫び声。
「!?」
何事か?…とが振り向いたシリューの目にに写ったのは、
「な、な、な…」
捲れ上がったローブの下に隠されていた、純白のショーツ…
「うぅ…うん…な、何で転んでしまうのでしょうか…?」
…ではなく、
「お…おい、大丈夫か?」
「あ、ありがとうございますぅ…。」
修道衣に身を包んだ、金髪の少女だった。
▼▼▼
「はぁ…シリュー?
ここは、ペットショップでも保健所でもないのよ?」
「いや、この娘は犬猫ですか?」
「はわわわ…あ、悪魔さん…ですか?
…と、いう事は、神崎さんも悪魔さん?
えぇ?もしかして私、悪魔さんの巣窟に連れ込まれt
「落ち着け!」
パシッ
「痛い?!」
部室の机に肘を突き、溜め息を零すリアスの前で、修道衣を着た金髪の美少女…アーシア・アルジェントと名乗る少女の頭上に、ハリセンが落ちた。
「…で、シリュー?アナタ、一体どういう心算で、このシスターを お持ち帰りした訳なn(バシィッ!)あ痛ぁっ!?」
「もう少し、言葉を選んで下さいよ!」
そして、リアスのド頭にもハリセンを落とす、意外にも女性に対しても、割かし容赦の無いシリュー。
まあ、このオカルト研究部の部室は、リアス・グレモリーと その眷属の、悪魔としての活動の拠点であるから、その様な場所に神の遣いであるシスターを、『お持ち帰り』という表現は兎も角、連れて来た事に対してのリアスの対応や、連れて来られたシスター…アーシアのテンパり具合も理解に難しくはないのだが。
「うぅ…ソーナにしても そうだけど、何時も何処から取り出して何処に仕舞い込んでるのよ?そのハリセン!?」
涙目で頭を両手で抑えながら、ボヤくリアス。
…ツッコミ属性の者ならば、何時でも何処でも持ち出し収納可能な不思議武器…それが、ハリセンである!!
「いえ、走ってる最中に、迷子のシスターに逢いましてね、…で、赴任先の住所が書かれたメモを見てみたら…」
そう言って、アーシアが持っていた、メモをシリューはリアスに渡す。
「こ、これはっ…!?」
その紙には、先日、リアス達が堕天使と戦闘を繰り広げた廃教会の住所が、手書きの周辺地図込みで、記されていた。
》》》
「…そういう訳で、あの堕天使が口走っていた『あの女』と言うのは、彼女で間違い無いでしょう。」
「…あ、あの人達が、堕天使…?」
「ん~、成る程ね。
…でも、あの堕天使達は何故、その娘を呼んだのk
「
「「…!!」」
「本当に…?」
「えぇ…本当ですよ。」
リアスの問いに、何かを思い出したのか、急に不機嫌そうな顔になったシリューが答えた。
《《《
あの公園で、小石も何も無い所でスッ転んでしまい、下着丸出しな尻餅状態のアーシアに手を差し伸べて起き上がらせた時、そのシスター然な格好に、『あの教会』との何かしらの関係を予感したシリュー。
どう見ても、日本に不慣れな外国人にしか見えない彼女に、然り気無く その辺りを聞いてみると見事に予感的中。
明日付けで あの廃教会にイタリアより赴任する事になった、シスターだと云う。
既に表向きは、運営放棄されている教会に派遣されたと云う時点で、堕天使に呼ばれている『あの女』というのが彼女であるのは、恐らくは間違い無い。
問題は、このアーシアが どの位迄、その辺りの事情を知っているかと云う事。
本人にすれば無礼な話だが、とても あの堕天使と共に、他の勢力と喧嘩が出来る様な戦闘力を持っているとは思えない。
レイナーレが言っていた、『至高の堕天使』という言葉と繋がる要素が皆無だった。
「(何も知らずに呼び出され、何事かに利用されていたと云う可能性もあるか…
それとも、この娘とは また別に、『あの女』という人物が居るのか…?)」
「あの…神崎さん?」
「あ、すまない、少し考え事していた。」
…と、シリューが その場で あれこれ思案していた時、2人の目の前を、元気そうな小学校低学年位の少年が走り抜け、
バタンッ
「う…うわゎあぁあ~ん!」
派手に転んだかと思えば、その場に座り込み、大声で泣きだした。
「!」
タッ…
アーシアは それを見ると、その少年の前に駆けつけ、
「ほら、大丈夫。
男の子なんだから、泣いたりしないの。」
そう言いながら、擦り剥いて血が出ている膝に両手を翳した。
「え?」
その光景を見て驚いたのは、アーシアより一歩遅れて駆け寄ったシリュー。
アーシアの両手が薄い青の光を発すると、少年の傷口が、見る見る内に塞がれ、全くの無傷となった。
「ありがと~、お姉ちゃ~ん!」
「???」
「
「あぁ…」
「…で、今のは?」
少年が手を振りながら走り去って行った後に、シリューが その不可思議な能力について問うと、
「神様がくださった…素敵な力…です。」
アーシアは両手を合わせて祈る仕草を取り、本の一瞬だが表情を暗くすると、また微笑みながら、答えた。
「
「!!?」
しかし直後、シリューの言葉に驚きの表情を隠せないアーシア。
「俺のは少しばかり派手でね、この場で見せる訳にはいかないが、実は俺も、
あの、『誰も居ない、廃教会』へと赴任になった経緯、聞かせて貰えるかな?」
「え…えぇ?!…は、はい…」
シリューも
《《《
元々アーシアは、生来からの孤児で、教会に拾われ、シスターとして生きていた。
5歳の時、万能の癒やしの能力を持つ
しかし ある日、重傷を負い、倒れていた悪魔をその場から正体ー知らずに癒やした事により、『悪魔すら癒やす異端の魔女』として、教会より神器毎、存在の全てを否定、追放されてしまう。
生来の孤児だった故に行き場が無く、路頭に迷っていた所に、日本に在るとされる件の教会…つまりは堕天使からのオファーがあり、藁をも縋る思いで それを受け、来日したのだと言う。
》》》
「ちっ…今迄 散々と聖女だと持ち上げていて、悪魔を治したら異端?魔女だ?巫山戯るなっ!!」
ガンッ!
「し、シリュー!落ち着いて!」
表情に隠す事無く、教会に対する怒りを顕わにし、座っていたソファーの前に置いてある、応接テーブルを叩きながら、怒鳴り散らすシリュー。
「ならば、そんな魔女とやらを祭り上げていた自分達は どうなんだ!?
まさか、『異端とは知りませんでした』とか抜かして逃げる心算か?!」
バキィッ!!
「ひぃいっ!?」
そう言いながら、再びテーブルを思い切り叩き付けるシリュー。
それなりに手加減はしていただろうが、それでもテーブルは、真っ二つに割れ、砕けてしまう。
「シリュー!本当に少し落ち着きなさい!
その娘も、怖がっているから!!」
余りに熱くなり過ぎているシリューに、リアスも厳しい顔で戒める。
本当は決して安くはない、壊されたテーブルについても追求したいのだが、それ処ではなかった。
「す…すいません、部長…。
アーシアも、すまなかった…。」
「い、いえ…」
「気持ちは、解らなくもないけどね…」
リアスの一喝でクールダウン出来たのか、シリューは目の前の2人に頭を下げる。
「兎に角、この娘にとっても私達にとっても、色んな意味で幸いだったみたいね。」
「ああ、アーシアが来るのが もう少し早かったら…或いは、俺達が行動を起こさなかったら…いや、そもそも、あの堕天使の男が、俺に攻撃を仕掛けて来なかったら…多分、アーシアは死んでいた。」
「えぇっ?!」
シリューの「死んでいた」発言に、目を大きく見開いて驚くアーシア。
堕天使がアーシアを日本に呼ぼうとした理由…それは、彼女の
アーシアの身体から その
そして それが、消える間際に言っていた、『至高の堕天使』の意味であったのも、既に疑う余地が無かった。
「あははは…私に声を掛けてくださった、あの方達が堕天使だったなんて…
しかも、それも私の
私、私、もう…何を信じたら…」
レイナーレ達が既に この世に居らず確認は出来ない為、推定混じりではあるが、厳しい現実を知らされ、自暴自棄に陥りそうになるアーシアだが、
「大丈夫、その為に、この部室に連れて来たんだ。」
「神崎さん?」
シリューが優しく声を掛ける。
「リアス部長、いやリアス・グレモリー。
『赤龍帝』として提案させて貰う。
この
「「え?」」
》》》
「し、シリューさん、似合いますか?」
「ああ、似合う似合う。」
「う~、もっと感情込めて下さいよ~!」
数日後…駒王学園の制服を纏ったアーシアが、くるりと回転しながらシリューに感想を求めるが、その素っ気無い返事に、頬を膨らませる。
結局、アーシアはグレモリー家預かり…ではなく、赤龍帝であるシリューが保護…シリューの部下という形で、『人間』として、悪魔側に席を置く事となった。
一応、リアスが
シリューも本人の意志だと、それを尊重。
リアスの遠縁という『設定』で、1年間はホームステイの枠を使って、2年生として駒王学園に編入。
3年生になったら、駒王町内にある、グレモリー家所有のマンションに移り住む事になった。
》》》
「アーシア・アルジェントさん…
ようこそ、駒王学園、そして、オカルト研究部へ!
私達は、貴女を歓迎するわ!」
正式な編入の前日、オカ研部室で、アーシアを歓迎する、囁かなパーティーが開かれた。
参加者は、シリューを含むオカ研メンバー全員、そして生徒会からソーナ、椿姫、匙が やってきた。
「神崎君、魔王様から言伝です。
『彼女の事は、君に一任するから、我々の事情等を、よく教え込んで置いてくれ賜え。』…だ、そうです。」
「了解。あれだけ我が儘言ったんだ、それ位は やりますよ。
それにしても…はぁ…」
ソーナと話し終えたシリューが、オレンジジュースの入った紙コップを片手に、大きく溜め息を零す。
「アーシア先輩のホームステイ先が、まさかのトーカちゃん家で、今後起こり得る、修羅場の心配をしてr(パシッ)痛いっ!?」
「違うっ!」
シリューのハリセンが、小猫に炸裂した。
「まさか、編入先のクラスが、寄りによってD組とは…」
「おぅ、あのクラスには、兵藤達だけでなく、桐生も居るからな…」
学園内でも『変態3人衆』と呼ばれている3人に加え、その『女版』とも云える、1人の女生徒が在席する2年D組。
親バカか兄バカか、無垢な
「奴等が停学中の内に、クラスの女子に お願いして、包囲網を固めなければ…
木場、お前も協力してくれ!」
「ははは…別に良いけど…。」
更に言えば、シリューは知らない。
件の3人組が明日、停学が解けて、久々に登校して来る事を。
「部長、此処は、俺と同じクラスな流れじゃないのですか?」
「仕方無いでしょ?
私も本当は そうしたかったんだけど、そのクラスだけ、学年全体で人数が1人、少なかったんだから!」
シリューの訴えを、正論?で躱すリアス。
そんな中、歓迎パーティーも闌となり、朱乃に促されて、アーシアが改めて挨拶。
「え…と、み、皆さん、今回は私の為に、こんな立派な歓迎会を開いてくれて、ありがとうございました!
行き場を失った私に、居場所を与えてくれたシリューさんや皆さん、そして、この縁を授けてくださった、主に感謝を…
「「「きゃあっ!?」」」「うわっ?!」
「ぅげっ!?」「「痛いっ?!!」」
「「え?????」」
アーシアが そこまで喋り、手を合わせて祈る仕草を見せた途端、シリューを除いた全員が、頭痛でも起きたかの様に、頭を抑えだした。
「あ…アーシア…お願いだから、
「あ…ご、ごめんなさい~!!」
涙目なリアスの訴えに、事を理解したアーシアが慌てて謝る。
そんな中、悪魔の様な笑みを浮かべる男が約1名。
「はは、なんだか孫悟空みたいだな。
どれ、南無南無南無南無…」
「「「「「「「ヤメロー!!」」」」」」」
ガンッx7!!
「うおぉっ!?」
「し、シリューさん?!」
シリューに、無数のハリセンが直撃するのだった。
※※※※※次回予告!!※※※※※
次回:聖闘士DxD
『三日月が紡ぐ縁(仮)』
乞う御期待!!