前回の お温習い的な…
「な…何なのよ、今の?
私の滅びの力とも、違うみたいだけど?」
シリューが放ったエネルギー波は、リアス達が斃した堕天使同様に、スライムを死骸すら残らずに消し去った。
その技の事を問い質すリアスに対し、
「「ドラゴン波です。」」
「え?今、何t
「「ドラゴン波です。」」
シリューと小猫が、声を揃えて答える。
今から約30年前、少年漫画誌で連載され、アニメ化にもなった『ドラグ・ソボール』というコミック作品がある。
その迫力あるバトル描写とドラマ性に、連載が終了しても、未だに人気が衰える様子は無く、数多くのスピンオフ作品が描かれ、アニメも幾度となく、再放送やリメイク版が放映されていた。
シリューや子猫は、所謂この再放送世代ではあるが、かなり この作品を気に入っていた。
そしてドラゴン波とは、この作品の代名詞とも云える、主人公の必殺技である。
作中にて、主人公・空孫悟が体内の精神エネルギーを放ち、敵を倒していたのをシリューは模倣、
「…因みに私は、ツルリンとブッコロが大好きです。」
「いえ、そんなのは聞いてないから…」
シリューを差し置いて、技の説明と共に、作品について少しばかり熱く語る小猫に、少しばかり呆れるリアス。
「とりあえず部長、此処を出ましょう。
祐斗君も心配ですし…」
そんなリアスに、朱乃が話し掛ける。
「そうね…シリュー、さっきは直接、家へ帰っても良いって言ったけど、やっぱり悪いけど…」
「了解。その制服、返して貰わないといけないですしね。」
「そ、そうね、そうよね…」
スライムの粘液によって服を溶かされ、ショーツ1枚だけの姿になったリアスはシリューのブレザーを、そして巫女服の下には何も身に着けていなかった朱乃は、ワイシャツを羽織っているだけの状態だった。
「よいしょ…」
毒に侵され、未だ倒れている木場を小猫が お姫様抱っこし、リアス達は魔法陣で部室に向かって転移する。
そしてシリューも1人、テレポートで部室へと向かって行った。
》》》
「部長、一先ず祐斗君は大丈夫ですわ。」
「ありがとう朱乃、御苦労様。」
「…………………………。」
部室のソファーに横になり、静かに寝息を立てる木場。
戦闘の後、部室に戻ったオカ研メンバー。
女子部員は部室に常備してある、リアスの予備の制服に着替えた後、朱乃はソファーに寝かせていた木場の手を取り、指先に唇を添えると、直接に体内に侵されている毒を吸い出していた。
朱乃の言葉に、一安心という表情を見せるリアス。
「シリュー先輩、羨ましいとか思っていませんか?」
「馬鹿者、別に何とも思ってはいない。」
朱乃が木場に施していた『治療』を、初めの一瞬、やや引いた感じで見た後は、それから視線を逸らしていたシリュー。
そんなシリューに、リアスの…全然サイズが合ってない、ダボダボ感全開な制服を着た子猫が話し掛ける。
「あ、トーカちゃんに何時もして貰ってるんですよね、シリュー先輩、不潔です。」
「大馬鹿者!トーカとは まだ、そこまでな関係には なってない!!」
この小猫の台詞に、顔を赤くして、必死に否定するシリュー。
「へ~?そうなんだ~?へ~?」
「あらあらあらあら?」
此処に木場の容態の無事を確認し、余裕が出てきたリアスと朱乃が、会話に混ざってくるのだった。
…凄く
「じゃ、ドコまで進んでるのかしら?」
「興味ありますわ~。」
「絶対に〇゚ふぱふ位は、させて貰っている筈です。
何しろ ちちリュー先輩は、おっぱいドラゴンですから。」
「ま゙っ!?」
「し、シリュー君、そうなんですの?」
「い…いい加減にしろ、貴様等ーっ!!」
》》》
「原子を破壊する?」
「あぁ、それが
一通り、シリューの弄りを終えたリアス達は、先のスライムとの闘いについて話していた。
リアスの滅びの魔力でさえ、殆どダメージを受けなかったスライムに対して、有効打を与えていたシリュー。
あくまでも仮説だと前置きして、シリューが説明する。
「部長の滅びの力というのを、俺は完全に理解している訳ではないが、所詮は強烈な破壊力を外からぶつけ、削っていくだけの物なのだろう。」
「「「んんん。」」」
「しかし、聖闘士の技は、そんな表面的な物でなく、その物質を形成している原子を破壊する所にある。その違いだな。」
「…よく解りません。」
「実際、一番最初に放った普通の一撃は、俺も殆ど手応えを感じなかった。」
シリュー曰わく、只単に拳を撃つのではなく、
その概念に基づく一撃が、今回の様な、半液状な肉体を持つスライムに対しても、物理的ダメージを与え、倒す事も可能である…と。
尤も、今回の決まり手は、魔力込みのエネルギー系の攻撃だったが。
「
敵の身体が、個体な場合は勿論、液体だろうが気体だろうが関係ないんだ。
原子その物を破壊するんだからね。」
「つまり、シリューって、例えば
「ああ、所謂『
「「「…………………………。」」」
ぴゅ~~~~~~~~~~~~~…
部室内に、絶対零度の寒風が吹き荒んだ…様な錯覚に陥るリアス、朱乃、小猫。
「…先輩、滑りましたね。」
「喧しい!!」
▼▼▼
「ちょっと小猫ちゃん、起きなさいよ、もう直ぐ先生来るよ?」
「塔城さん、起きて?」
「ふみゃ…トーカちゃん、カンちゃん、あと30時間…」
「「…ダメだ、こりゃ。」」
結局は殆ど夜が明ける迄、部室で話していたオカ研メンバー。
リアスは木場の様子を見るという事で、その儘 部室に残り、残る3人は、一時帰宅して、殆ど その直後に改めて学校へ…と云った形になった。
教室に入り、自分の席に着いた途端にバタンキュー、眠りこける小猫。
ホームルームが始まる前、前後の席のクラスメートが起こそうとするも、子猫に起きる気配はない。
「むにゃ…しりゅーせんぱいわ、ろしつきょー…」
「「はぃ!?」」
そんな中、何気に とんでもない事を寝言で言い出す小猫。
「「…………………。」」
それを聞き、一瞬固まってしまう、2人のクラスメート。
「劉兄さんて…」「孜劉先輩って…」
「「やっぱり部室でも脱いでるんだ!?」」
しかし それは、シリューの従姉妹と彼女からすれば、既知な事柄だった様だ。
》》》
ΖΖΖΖΖΖΖΖΖΖΖ…
ガンッ!!
「ぁ痛ぁっ!?」
「ほぉ~う、神崎ぃ?
私の授業で熟睡とは、貴様、なかなか良い度胸してるな?」
「え゙…?!」
場所は変わって、2-Cの教室。
1時間目の授業中、席に着き、倒れてる様に爆睡していたシリューの頭頂部に、出席簿の"角"が、勢い良く落ちてきた。
「私の授業は そんなに退屈か?
眠気を誘うか?催眠術か?ん?」
「すいません…ってか先生、近い近い近いです…」
顳に血管を浮かべ、全然笑ってない目で嗤いながら顔を近付ける、20代半ばの担任女性教師(独身)の迫力の前に、圧されるシリュー。
「お前、後で職員室に来い。」
「は…はひ…」
顔を引き攣らせ、項垂れるシリュー。
「くくく…腹筋割らせるなし…」
その2つ後ろの席で、腹を抱えて笑うのを我慢しているのは匙である。
▼▼▼
コンコン…
「シリュー、入って良い?」
放課後、オカルト研究部の部室の隣、既にシリューのトレーニングルームと化している部屋の扉を、リアスがノックする。
「部長?大丈夫ですけど?」
シリューは特に入室を拒否する理由もなく、リアスを入れようとするが、
「…シリュー?アナタ、きちんと上に、シャツが何か着てるでしょうね?」
「着ています!!」
やはり『前科持ち』は、信用が無い様だ。
≫≫≫
「アシスタント…ですか?」
「ええ。小猫の お得意様なんだけど、貴方の事を話したら、貴方とも一度、話してみたいと言われたって今、メールが届いたの。
この住所なんだけど、今すぐに飛べないかしら?」
そう言いながら、リアスが差し出すメモ紙を受け取るシリュー。
「この住所は…分かりますね。
大丈夫、飛べますよ。」
そう言うとシリューは、部屋の窓を開けると、体を一筋の光に変えて、外に飛び出して行った。
》》》
駒王町内にある、とある2階立てアパートの駐車場に張られた、認識阻害の結界の中に立つ、3つの人影。
「ド~ラ~ゴ~ン~…波ぁっ!!」
どごぉっ!
掛け声と共に、赤い籠手を纏った少年の左拳から放たれた光弾が、夜空に浮かぶ三日月に吸い込まれた。
パチパチパチパチ…
「おぉ~…ブラボーーーーっ!!」
それを見て、髪の長い細身の男が、感動しながら拍手をする。
「凄いよ、神崎君!
小猫ちゃんから話は聞いていたけど、期待以上だったよ!」
◇シリューside◇
「いや、本当に素晴らしい物を見せて貰ったよ!
流石は、小猫ちゃんの先輩だ!」
「ははは…」
…この人は森沢さんと云って、子猫の契約者の1人である公務員だ。
この前は、ナントカってアニメキャラの制服を子猫に着せて、お姫様抱っこを
小猫が昨夜、廃教会から転移する際の、木場を抱きかかえた時の手慣れた感は、コレだったのか…。
そして今回、召喚に応じた子猫が、彼と今夜の依頼…格闘ゲーム【ドラグ・ソボールV~覚醒の
俺や子猫みたいな再放送組と違い、リアル世代ド真ん中な森沢さん。
俺の、"生"ドラゴン波を見て、凄く感動していたよ。
因みに俺の事は、赤龍帝とか聖闘士とか言えば ややこしくなりそうなので、『諸事情で個人契約が所得出来ない悪魔』と云う風に、子猫が説明していた。
森沢さんも、「悪魔の社会も、大変なんだねぇ」と、それで深くは聞く事無く、納得してくれた。
≫≫≫
「皇帝様、マジにカッコ良過ぎだよね。」
「うで先生、マジ神ですよね。」
「神崎君、キミは あの『神殺の処刑台』とかは出来ないのかい?」
「あれはリアルじゃ、無理過ぎですよ。」
その後は俺も、対戦ゲームの相手をしたり、ドラグ・ソボールを始め、『コン蒻マン』等、様々なゲームやコミック談議で盛り上がった。
因みに コレ等は全て、小猫の評価に繋がるらしい。
▼▼▼
「シリュー先輩、今日は いきなりで、すいませんでした。」
「いや、俺も楽しめたから。」
依頼人の森沢と別れた後、小猫はシリューに対して、突然の呼び掛けを謝るが、シリューは それを全く気にしてない様子。
ЯЯЯЯЯЯЯЯЯЯЯЯЯЯЯ♪
「!!」
そんな時、小猫のガラケーが鳴る。
Pi…
「しもし…あ、部長…………………
……………はい、先輩も、一緒にいます。
……………………はい、分かりました。」
「…何かあったのか?」
どうやらリアスからの連絡らしく、何事かとシリューが聞いてみると、
「隣町の倉庫街に、はぐれ悪魔が逃げ込んだらしく、朱乃先輩と祐斗先輩も、現場に向かうそうです。」
「…で、俺達も出向くと云う事か!」
「…はい。」
…と、云う事らしい。
「よし、それなら、一気に飛ぶぞ!」
がば…
「きゃぅ?!」
そう言うと、いきなり子猫を お姫様抱っこするシリュー。
「……急時なのは理解しますが、凄く慣れてる感じがするのですが?
何時も誰かサンに、やっているとしか思えません。」
「…敢えて否定はしない!!」
そう言うとシリューは、ジト目の小猫を抱えた儘、隣町を目指し飛び立った。
》》》
それから約1時間後、全長約3㍍の紫色がベースの斑模様をした、五芒星を象った様な本体に、老人の顔を張り付けた様な異形の悪魔に、シリューのドラゴン波が炸裂するのだった。
ドラゴン波…
別名:廬山漆星龍珠(シリュー命名)