【完結】聖闘士DxD   作:挫梛道

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過去編、締めます。
 



first contact ③

シリューは所謂 帰宅部である。

学園入学早々、体育の授業にて、その常識外れな運動神経を披露(当人は自重した心算だった)、それは直ぐに学園内に広まる事となった。

数年前に男女共学となったばかりで まだ実績の無い この学園の各運動部からすれば、それは是が非でも欲しい逸材。

 

「一緒に甲子園を目指そう!」

「いや、国立を!」

「いやいや、花園を!」

「…すいません。」

しかし此等の誘いを、シリューは悉く断ってきた。

前世の能力(チカラ)を殆ど引き継いだ儘、今の世に生まれたシリュー。

その前世で培われてきた、聖闘士としての運動能力をフル活用すれば、個人集団問わず、如何な競技でも(自分と同類が居ない限りは)頂点に立つ自信が在る。

…が、それは『自分は生まれた時、既に他者よりも多くの(鍛錬の)時間を過ごしてきた。故に自分には、如何なる競技にも出場する資格は無い』と考える程に、この男は堅物過ぎた。

ならば、その力を多少なり抑えてのプレイをすれば?

それは、チームメイトや対戦相手への不敬不遜へと繋がるという理由で、尚の事アウトという考えに至る程に、この男は超堅物過ぎていた。

…かと云って、文系の部活に所属する心算も無く。

 

「ちょっと神崎~、あんたの彼女、凄いらしいじゃん?

バレー部、入部早々にレギュラー確定だとか。ねぇ、こずえ?」

「うん…全く運動神経の塊だったわ。

チッ…あんな重そうな脂肪の塊 持っていて、何で あんなにも動けるのよ?」

「泣くな泣くな。どうせなら、レギュラー奪われた方で泣け(笑)

それから神崎は あの子のオトコなんだから、当人の前で、脂肪の塊とか言うのも止めときなさい。」

「ぅぅぅ…神崎君、ごめん。

…って、私も一応はレギュラーだからね!

それから笑うな!(怒)」

「…………………。」

例え、つい数日前に付き合い始めた恋人が部活動に勤しんでいたとしても、自身は帰宅部のスタンスを貫いていた。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

『約1年振りだな…』

「あぁ…」

この日の夜、シリューは毎日の日課として、ロードワークに出向いていた。

例え帰宅部だとしても、体を鍛えていない訳では無く、普段から走り込みや筋トレは欠かさず実践しているのだ。

その帰り道、帰路のショートカットの為に路地裏を進む中、シリューは約1年振りに はぐれ悪魔と遭遇。

前回とは違い、最初から人間の姿を成していない、豚の頭をした異形の悪鬼は、餌(シリュー)を確認すると、涎を垂らしながら不気味な唸り声を上げ、牙を剥き出しにして襲い掛かってきた。

それは最初からなのか、それとも はぐれとなったからなのか、知性は欠片も見受けられなかった。

 

『それにしても相棒?

俺の力を使う心算は無いのか?』

「お前の魔力は目立ち過ぎるからな…

わざわざ存在を示す必要は無いだろう?」

しかしシリューは、それを自分の内側に宿す赤い龍の能力を使う事無く、難無く退ける。

 

「さて、と…。またグレモリー先輩達が来る前に、退散するか…」

そしてシリューは、恐らくは間も無く この場に駆けつけて来るであろう、この街を管理する悪魔との接触を避けたいが為、早々に此の場を立ち去った。

しかし…

                  

                  

「へ~?アイツ、神器も使わずに、膝蹴りとチョーップ!だけで、あの悪魔を斃したっすよ?」

「いや、只の人間が、仮にも低級の はぐれ相手だとしても、単なる素手で どうにか出来る訳が無いぞ?」

「でも、魔力は感じられなかったわ?」

「ん…しかし、何かの神器を使ったのは、間違い無いと思うわ。

只の素手の手刀で、それこそ刀を使ったみたいに真っ二つに出来る訳が無い。」

その戦いは、シリューが その気配や視線に気付く事も無い遥か離れた場所から、数人の男女に一部始終を目撃されていた。

 

「あっ、悪魔達が やって来たっす。」

「あの紅い髪…グレモリー家の者ね。」

「きゃははは!見て見て!

アイツ等、『え?自分達が倒しに来た筈の はぐれが、もう死んでるし?』…って顔してるっすよ~!www」

「成る程…つまりは あの人間は、悪魔とは関係を持っていない事になるな。

何らかの繋がりが有るのなら、報せるだろうからな。」

「そうね…。先程も、あの場を何から逃げる様に急いで去って行ったし…

どうやら奴は自分と云う存在を、我々や悪魔共の様な、人に非ずな者に知られたくは無いのでしょう。」

「きゃはは♪ウチ達に もう、バレバレっすけどね。ww」

「何れにしても、あの人間が神器持ちならば、放っては置けないわね。」

「とりあえずは あの人間の身元を割り出して…それからよ。」

「それにしても、これは思わぬ拾い物かも知れませぬな。」

「えぇ…。あの女を招く為に遣って来た この街に、まさか それとは別に、神器持ちが1人、居たなんてね…」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「いや~、神崎君?

どうして君だけ、あんなにもモテモテなんですかね~?」

「モテ期か?モテ期なのか?固羅ぁ!!」

「「「羨ま死ね!このヤロー!(泣)」」」

「いや、俺に言われても、本当に知らんのだが…」

…あれから数日後の金曜日の朝、シリューはクラスメートの男子一同から、あたかも尋問の如く、問い詰められていた。

 

「お前には矢田さんが居るってのに…」

「付き合い始めたばかりで、浮気は どうかと思うぞ?」

「だ・か・ら!丁重に断ったと言っているだろうが!」

3日前、放課後の帰り際の校門にて、他校の制服を着た少女から告白&交際の申し込みを、そして昨日は大学生風な女から所謂 逆ナン的な誘いを受けていたシリュー。

当然だがシリューは孰れも「彼女が居る」の一言で…それと もう1つの、別の要因で断っていたが、其れ等は下校中、多くの一般生徒達が見ている前での出来事。

クラス内に その話が届くのも早く、級友達もシリューの人柄(まじめっぷり)は既に或る程度は理解しているので、初めは半分位は、冗談混じりな問い詰めだった。

…が、流石に其れが連続となると、例え本人に その気が無かったにしても赦せる状況では無いらしく、その瞳に紅蓮に燃える嫉妬の炎を宿した集団に、かなりマジな取り調べを受けていた。

 

「…で神崎?彼女には それ、きちんと言ったりしてるの?」

その途中、会話に参加し、質問してきたのは水沢。

 

「あぁ。言ったら言ったで、面白くない顔をするだろうが、黙っていたら それで知られた時に、もっと面倒な事に なるだろうからな。

その日の夜に、電話で話したよ。

流石に2回目となると、ぶーぶー言われたが…」

「「「「「「ざまあwww」」」」」」

「尤も最後は、『モテるのは分かってるから仕方無いし、信じてる』って言って貰えたがな。」

「「「「「「「「ちっくしょーーっ!!

爆死しやがれ!!(号泣)」」」」」」」」

それに対してシリューは、最終的には然気無い(?)惚気で切り返し、結果、教室内は嫉妬の炎で大炎上するのだった。

                  

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「…そんな訳で水沢。

明日、午後から桃花とデートなのだが…」

「はぁ!?…あんた、私にリア充自慢して、どーすんのよ?」

昼休み、水沢に明日はデートだと、パンを食べながら話し掛けるシリュー。

それに対して弁当を食べながらの水沢は、「何言ってんの?コイツ?」…な顔で、シリューを見ている。

 

「いや、別に そんな心算は無くてな、俺自身、こういうのは初めてだからな…」

「成る程…それで、彼氏持ちの私に、アドバイスを求めると…」

「いぐざくとりい。」

「仕っ方無いわね~。

まぁ、あんたの周りの男に そーゆーの相談出来る奴って、確かに居ないからね~?」

「「「悪かったな!」」」

悪戯っぽい目線を向けられ、匙、草薙、反町がハモらせて突っ込みを入れた。

 

「とりあえず、午後からって…それで、お昼御飯は どうするの?」

「午前中は部活の練習が有るらしくてな、その後に駅前で待ち合わせなのだが…

まさか初めてのデートの食事で、小西屋の うどんトッピング全部盛り…な訳も往かないだろうし…」

「「「「「当ったり前だ!」」」」」

一斉に突っ込みを受けるシリュー。

 

「…かと云って、俺は外での食事は疎くてな…中華料理の店なら、多少は知っているのだが…」

「そ…それも、高校生がデートで食事するには微妙だわね…」

「だから、水沢!(パシィン!)

お前の基準で良いから、食事する店込みな、コースのアドバイス、よろしく頼む!」

両手を合わせて お願いするシリューに、水沢も やれやれと息を吐きながら、

「これで安心!香純ちゃんのぉ、絶っ対にスベらない、デぇート講座ぁ!!」

「「「「おぉ~!(パチパチパチパチ)」」」」

自身のデートの体験を元に、少しだけ嬉しそうに、そしてノリノリでアドバイスを始める。

そして それを何故か、一緒に聞き入る男が数名程。

                  

「…でも、食事も良いけど神崎?

あんたの彼女ちゃん、それまで、バレー部の練習で汗だくなんじゃないの?」

「いや、それは普通に学校のシャワールーム使うだろ?」

「ちっちっち…これだから素人は…

其処は敢えて、『とりあえずは汗、流そうか』って言ってホテルに入り、2人で汗流した後、思いっきり汗を掻くのが王道でしょうに?

その後も、『ついでだから もう少し休んでいこうか?』って言いながら、全然休まないみたいn(スコーン!)にゅゎっ!?」

「えぇい、阿呆か?!

…ってゆーか桐生、貴様は何時の間に、会話に参加していたのだ?!」

何時の間にか、隣の教室から入り込み、会話に参加していた桐生の頭に、丸めたノートによる一撃が炸裂した。

因みに何時の間に…と謂えば、『小西屋の うどん』の件辺りからである。

                  

「あ痛たたたたた…

こ、この男は乙女の頭を躊躇無く…」

「喧しいわ!誰が乙女だ!!?

あ、思い出したぞ桐生!

貴様、俺と木場との、洒落にならない噂をバラ撒いてくれたそうだな!?」

「あ゙…」

両手で頭を抑えて抗議する桐生に、シリューはパンパンと その丸めたノートを手で叩きながら、更なる追撃の構えを見せる。

 

「いや~…でもアレ、皆にも好評だったしぃ~、じゃあ私、そろそろ自分の教室に戻るわ~!」

ぴゅーん…

「あ、待て!!」

この冗談が通じない堅物の結構マジな顔に、貞操的…でなく、生命的な危険を結構マジき感じた桐生は、乾いた笑いを見せながら退散。

そして教室を出る その去り際、扉の前で

「神崎ぃ~、避妊具(ゴム)は ちゃ~んと使えよ~!」

「「「「「「!!!!??」」」」」」

「喧しいわっ!!?」

教室内全体に、特大の爆弾を落としていった。

 

ざわざわざわざわざわざわざわざわ…

「「「「「かかか、神崎君?」」」」」

「「「「「神崎ぃ!?貴様ぁっ!!」」」」」

「ち、違う、誤解だ!

クッソ!桐生ぅ~~~~~~!

覚えてろ~~~~~~~~~~~っ!!」

その後、シリューがクラスメート全員…或る者からは好奇心、また或る者からは道徳的戒め、そして また或る者からは嫉妬、或いは憤怒の眼差しで問い詰められたのは、語る迄も無く。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「神崎先輩、今日は、とても楽しかったです♪」

「あ~、そう言って貰えると、助かるな。

正直、俺も こういうのは初めてだったからな。」

「ふふ♪」

結果から云えば、俺と桃花との初めてのデートは、彼女を家の近くまで送る事で、無事に…多少、トラブったり To loveったりなイレギュラーなハプニングは有ったが…何とか、無事に終了した。

何だかんだで色々とアドバイスしてくれた、水沢にはマジに感謝だな。

今度、学食のデザート…は、色々とアレだから、ジュース位は奢ってやるか。

当然、桐生の台詞は一切参考にしなかったのも、成功の要因の1つだと思っている。

 

「明日は、一日中練習って言ってたな。

頑張れよ。」

「ぅん!また月曜日、学校で!」

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

ЯЯЯЯЯЯЯЯЯЯЯ…pi…

「もしも~し?」

桃花と別れて、また駅前に向かう途中、スマホから着信が。

草薙からだ。

 

『神崎、まだデートは終わらないのかよ?

まさか お前、桐生の台詞を真に受けて、ホテr「んな訳無いだろ!!」

実は今日は、いきなり とんでもない発言を抜かす この男と反町とで、デートの後で遊ぶ予定を入れていた。

男(ヤロー)同士の交流も、それなりに大事だからな。

 

『ま、とりあえずは何時ものマッ〇な。

反町も もう来てるから、早く来いよ。』

「了~解。」pi…

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「すっかり遅くなってしまったな…!?」

『…気付いたか、相棒?』

「ドライグ…!」

草薙、反町と共に、ボーリングやビリヤードに興じた後の帰り道。

時刻は既に日付が変わろうとしていた頃、距離にして約20数㎞先にて、強烈な魔力の ぶつかり合う波動を感じたシリュー。

                  

「これは…何者かが戦っているのか?

…だとしたら、一体 誰が?」

『大方、グレモリーかシトリーの小娘と その眷属共が、はぐれ悪魔とでも戦り合っているのだろう。』

シリューの台詞にドライグが解説するかの様に応える。

 

「…………………。」

『どうするんだ?

今回は いきなり自分が襲われた訳でも無ければ、既に管理者(あくま)が出張っているから無視しておくか?』

またも、はぐれ悪魔が街に現れたかも知れない。

但し今回は、この街の管理者の悪魔が既に、その処理に動いていると云うドライグの言葉に、干渉するかを考え込むシリュー。

 

『…どちらを選択するにしても、俺は相棒、お前の考えや行動を支持するが?』

「…………。」

その遣り取りは、実質には数秒足らずの時間だが、その間に様々な事を思案したシリューは、

「…よし!」

何やら決意をした顔で、周りに自分への視線が無いのを確認すると、その身を一筋の光と変え、先程から感じていた魔力が沸き出てる場所へと飛び立って行くのだった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

其処は、町外れの廃工場の内部。

 

「雷よぉッ!!」

カァッ!!

白襟緋袴の御子服を着た、ポニーテールの黒髪の少女が、掲げた手の先から、雷撃を迸った。

「うげゃぁっ!?」

それが、絡んだ荊が羽を持つ蛇の形を成したかの様な、異形の者に直撃。

この一撃で、荊の蛇は、消し炭となった。

 

 

「せぇぃやぁっ!」

ガキィン!

金髪の少年が振り翳した、燃える刀身の剣を、鉄兜に鉄の鎧、そして左腕を鉄の盾で身を固めた男が、右手に持っていた鉄製の銛で受け止める。

その装備から、中世西洋の戦士を想わせる男。

しかしながら、それは人間に非ず。

背中からは蝙蝠の様な羽を生やし、鉄製で固めた上半身とは裏腹に、下半身は赤い8本の触手が、海洋の軟体動物の如く蠢いている。

「カカカ!」

ドスッ

「う…?!」

燃える斬撃を捌いた鎧の男は、不気味な嗤い声と笑顔を見せると、反撃とばかりに少年の腹に銛を突き衝けた。

 

 

「…ぇぃっ!」

ドスッ!

小柄な白髪の少女が、頭頂の深緑な部位を除けば全身が黄色い肌の、獣顔な鬼と形容すべきな生物の腹部に、小さな掛け声と共に正拳突きを炸裂させた。

「ぐへへ…」

「…!?」

しかし その攻撃は脂肪と云う名の壁に阻まれ、肥満体の鬼の体の芯までは伝わらず

「ぎゃぉらっ!」

バキィッ!

「きゃあっ!」

反撃とばかりに振り払われた、段平と呼ばれる幅広な刀の一撃をまともに受けて、少女は吹き飛ばされる。

 

 

「こっの…滅びなさい!レオネッサ!!」

ボゥワッ!!

長い紅髪の少女が、掌に黒い魔力の弾を生成して撃ち放つ。

「あはは♪流石の私も、それだけは喰う訳には往かないからねぇ!」

「くっ…!」

そう言いながら それを躱すのは、巨大な雌ライオンの身体、その首が在るべき部分から人間の…裸女の上半身を有し、その背中には蝙蝠の羽を生やしている、半獣半人の悪魔レオネッサ。

 

「リアス!」

カァッ!!

其処に4人の内で現状唯一、自身が担当した敵を斃したポニーテールの少女が、援護とばかりに雷撃を放つ。

                  

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

『どうした相棒?参加しないのか?』

………………………。

魔力を辿って着いた先は、町外れの廃工場だった。

そして其処では、リアス・グレモリー先輩と、その眷属達が、はぐれ悪魔と戦闘を繰り広げていた。

その様子を、物陰から気配を消して見ている俺に、ドライグが尋ねてきた。

                  

「しかしドライグ、こんなに一度に何体もの はぐれ悪魔が現れるとは…俺は そっちの方に吃驚なのだが?」

『あぁ、恐らくは同じ『家』からの同時出奔だろう。

余程 横暴だったか将来性皆無だったかな、アホ王(キング)の下僕だったのだろう?

何れにせよ、『はぐれ』を出すってのは、悪魔社会じゃ在る意味『家』の恥だ。

こんな一度に大量の はぐれ悪魔を出したんじゃ、例え奴等の王(キング)が『家』の当主とかで無く、次男三男だったとしても、その『家』は もう お終いだろうよ。』

ドライグが俺の疑問に、補足込みで説明。

                

『…で、俺も もう一度聞くが、相棒は見てるだけなのか?』

「そうだな…」

 

偶々グレモリー先輩達と、はぐれ悪魔の数が同じだったからか、1vs1が4組の形で戦闘が行われていたみたいだが…

木場は…アイツはスピードは まぁ、それなりに大した感が有るが、スピード特化のスタイルのせいか、攻撃が軽い。

ましてや あの鎧蛸とでも呼べば良いのか?

戦士としての資質は、あっちの方が上だ。

次に あの桃花と同じクラスのチビっ娘。

確か、塔城子猫…だったか?

あの子は素手の接近戦を得意としている様だが、アレは あの敵とは、相性が悪い。

単なる殴打主体の戦法では、あの分厚い脂肪の体には、ダメージが通らないだろう。

あの拳に、プラスαの要素が入れば、また話は変わってくるが、基本的に あのタイプに有効なのは斬撃。

アイツは、木場が相手をすべきだった。

姫島先輩は、相手との相性が良かったのだろう、難無く敵を片付けて、既にグレモリー先輩の加勢に入っているか。

そして その、グレモリー先輩。

…………………………………。

何処から突っ込んだら善いのか…

どうやら破壊力は抜群な様だが、只 魔力の弾をぽんぽん放っても、それも当たらなければ意味が無い。

もう少し、足止めするとかして…援護に入った姫島先輩の雷撃も、あの…ケンタウロスのライオン版?には、効果が薄い様だ…

「うゎっ?!」

「「「きゃああああぁっ!!?」」」

…って、何ぃっ!?

                  

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

戦況は突如として動いた。

木場と戦っていた蛸型の悪魔が、口から黒い墨の様な液体を、目眩ましの如く顔面に浴びせ、1本の太い蛸脚を、鞭の様に撓らせて撃ち放つ。

それにより、木場を壁まで吹き飛ばした蛸型悪魔は、手にしていた銛と盾を床に置き捨て、人の形を成していた両腕を無数の蛸脚の様な触手に変形させた。

そしてリアス達に視線を向けると、その無数の触手を鋭く速く延ばし、

「「「きゃああああぁっ!!?」」」

リアス、朱乃、小猫の体を縛り付けと同時に、宙に持ち上げ、身動きを封じたのだった。

                   

うねうねうねうねうねうねうねうね…

「きゃあぁ?!とどと、どこに触手(て)を突っ込んでるのよ?」

「は、はしたないですわぁ…」

「え…えっちぃです…」

そして その触手は、リアス達の体を引き千切ろうと締め付けると同時に、制服の内側に入り込み、身体を弄り始める。

それによって、苦悶に喘ぐリアス達。

 

「きゃはは!良いぞ、スフィーロッド!

其の儘、殺っちゃいな!」

「カカカヵ…承知!」

レオネッサが煽り、スフィーロッドと呼ばれた蛸型の悪魔が、それに応える様に、下卑た嗤い声と共に、更に締める力を強めていく。

 

「きゃああああぁっ!?」

「ああぁあ…」

「く…っぅうぅ…」

「部長!朱乃先輩!小猫ちゃん!」

ダッ…

それを見た木場が体勢を立て直し、救出に向かおうとするが、

「ぐへへ…」

「!!」

先程迄、小猫と戦っていた はぐれ悪魔が立ち塞がった。

                  

「邪魔するなぁ!!」

これに対し、木場が炎の魔剣で斬り掛かるが、獣魔は手に持っていた刀で、それを受け止め、その勢いの儘に吹き飛ばし、

ガン!

「くぁっ!?」

再び壁に、体を痛打する木場。

                  

「きゃは!ギエロ、ソイツは任せたよ!」「レオネッサよ…何時から お前が仕切る様になった?ふん…まぁ良い…。」

ザッ…

「!!?」

ザッ…

「!!?」

腰を抑えながら跪いている木場の前に、レオネッサの指示に従う様に、はぐれ悪魔ギエロが立ちはだかる。

 

「ぐへへ…とりあえず、死ねや。」

「くっ…!此処迄か…?!」

刀を両手持ちにして、頭上に大きく振り上げた構えに、未だ立ち上がれない木場は、無念ながら覚悟を決めた表情を浮かべる。

 

「先ずは、1人目ぇーーえぃ!!」

「ゆ、祐斗ぉ!」

「祐斗君?」

「祐斗先輩!」

ぶぅん…

「…………!!」

拘束された儘のリアス達が叫ぶ中、勢い良く、ギエロの刀は木場の脳天目掛け、一刀両断するが如く振り降ろされた。

ガキィ…

「な…?」

「え…?えぇぇっ?」

しかし その刃は木場に届く事は無く、

「間一髪だったな!」(Boost!!)

「か…神崎…君?」

その場に飛び出した、シリューの左腕の赤い籠手によって止められたのだった。

 

「え…だ、誰?」

「あの人 確か、ウチの2年生の…」

「…トーカちゃんの、彼氏さん?」

その いきなりの乱入者に、仲間が助かったと云う安堵以上に驚くリアス達。

 

「…って、あれ、もしかして【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】じゃないのよ!?

…て事は、あのコ、今代の赤龍帝?」

そしてシリューの左腕の籠手を見て、更に驚くリアス。

 

「神崎君…キミは…?」

「話は後だ!…でぇいっ!」

ドゴッ

そして現状に理解が追い付かない木場の前に立ち、ギエロの どてっ腹に前蹴りを浴びせて吹き飛ばし、

「覇ぁっ!!」

今度は右の手刀で、空を斬る様なアクションを見せると、

斬!

「ひぇっ?」「あら…」「…む」

それによって生じた衝撃波の刃がリアス達を捉えていたスフィーロッドの触手を断ち切り、その呪縛から解放。

 

「グレモリー先輩、こっちへ!」

「え…えぇ!朱乃、小猫!」

タタッ…

シリューの呼び声に応え、その下にリアス達が駆け寄る。

 

「あ、ありがとう…なのよね?

貴方は…一体?」

「木場にも言ったが、その話は後で!

今は、目の前の敵を斃す事が先です!」

そう言ってシリューはリアス達を後ろに下げると、自身は1歩、前に歩み出る。

 

「きゃははは!まさか、まだ お仲間が居たとはねぇ!」

「カカヵ…どうせ皆殺しにするのだから、関係無い。」

「ぐび…小僧、よくも やってくれたな!」

そして はぐれ悪魔達も、シリューを敵として認識。

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「その立ち位置…ボーヤ?

まさか今度はボーヤ1人で、私達を相手にする心算かしら?」

リアス達を制して、1人で戦闘の構えを取るシリューに対し、レオネッサが質問するが、

「…そうだとしたら?」

このシリューの、余程とも受け止められる応えに

ピク…

「「「ならば望み通り、集団で八つ裂きにしてやるよ!!」」」

ダッ!

余程 頭にキたのか、レオネッサ、スフィーロッド、ギエロの3匹の はぐれ悪魔は一気にシリューに襲い掛かる。

 

「「「死ぃねぇえっ!!」」」

シリューに向けられる爪、触手、刃。

それに対してシリューは両手を前に差し出して両掌を その3体の敵に向けると、

「燃え上がれ!我が小宇宙(コスモ)よ!!」

体内に宿る小宇宙(コスモ)を燃焼、そして

(Boost!!)

それを神器の能力で増幅させてからの…

 

「廬山百龍覇ーーーーーーーーーっ!!」

 

両の掌から、無数の龍を象ったオーラを放出させた。

 

「「「ぎゃあぁぁあああぁあーっ!!?」」」

そして その百から成る龍の群は、3体の はぐれ悪魔達を一度に引き裂き、貫き、喰らい尽くしたのだった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「…とりあえず、お礼は言うわよ。

はぐれ悪魔討伐の協力、並びに私達の危機を救ってくれた事に、感謝するわ。

ありがとう、今代の赤龍帝殿。」

ペコリ…

そう言って、シリューに頭を下げ、礼を言うリアス。

 

「それにしても…神崎君が赤龍帝だったなんて…全然、気が付かなかったよ…」

「そういう風に してきたからな。

因みに俺は、木場や先輩達が悪魔だと云う事は最初から…駒王に入学した時から気付いていたぜ。

支取先輩達、生徒会の皆を含めてな。」

「「「嘘っ!?」」」

まさかの『バレてました』発言に、またまた驚くリアス達。

 

「ま…まぁ それは、貴方も自分が赤龍帝って事を知られたくないから、余り触れずにいたのよね…」

額の汗を拭きながら、引き攣った笑顔を誤魔化す様に、リアスが話す。

 

「…ところで少し、それとは別に、貴方に聞きたい事が出来たのだけど…」

「はい?」

その直後、凛とした顔で、リアスがシリューに改めて話し掛けた。

 

「先日の住宅街の路地裏で、はぐれ悪魔を斃したのは貴方ね?」

「…………。」

「そして約1年前、学園の近くの公園で、やはり はぐれを斃したのも…貴方で間違い無いわね?」

「……………………。」

「ハァ…やっぱり そうなのね?

この場合の沈黙は、『肯』と受け取るわよ?

…大丈夫。今更その事について、あれこれ言ったりする心算は無いわ。

寧ろ、これも お礼を言うべき事だもの。

…それよりも、貴方…」

やれやれと溜め息を1つ吐いた後、リアスは微笑みながら、シリューに最後の問い掛けをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、貴方…悪魔に なってみない?」

「…はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    …To be continued『神崎孜劉』

 




 
次回より、新章突入!
 
‡‡‡‡【 次回予告(予定)!! 】‡‡‡‡
 
「ボソ…温泉旅行…」
 
次回:ハイスクール聖x龍
『冥界へ逝こう!!(仮)』
乞う御期待!!
 

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