時系列は、第1話の約1年前。
所謂、第【0】話ですね。
Еxtra Еpisode ②
first contact
私立駒王学園。
都内某市に位置する、幼等部から大学部まで擁するマンモス学園である。
4年前迄は完全な女学園だったが、その翌年からは男女共学となり、そして翌々年、当時 中学3年生だったシリューは その学校の高等部を『近いから』という理由で受験、鬼の様な倍率の中、見事に合格した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
初登校日。
[1-A]の札が掻けられている教室。
教卓に貼ってあった座席表に従い、自分の席に着こうとすると、
「やあ、初めましてだね。僕は…」
俺の後ろの席に座っていた、周囲に女子を侍らせてキャーキャー言わせている…目の錯覚か、周囲にキラキラのエフェクトを蒔き散らしている…端正な顔付きな金髪の男が話し掛けてきた。
名乗ってきた相手に対して無視する訳にも…少なくとも、これから1年間は同じ教室で過ごすであろうクラスメートに、それは無いだろうと、俺も名乗る事に。
「神崎…だ。………!?」
「ん?何か?」
「あ…すまん、何でも無い…」
この男…?!
常人は気付かないだろうが、体の内側に秘めている魔力…
『(気付いたか、相棒?
そうだ…その小僧は以前話していた、人間達が【悪魔】と呼んでいる種族だ。)』
…俺の脳内に直接語りかける声。
幼い時、物心付いたと共に蘇った前世の記憶。
俺が何者であったか、それを思い出すと同時に認識出来た、己の内側に宿る存在。
ウェルシュ・ドラゴン、ドライグ。
『この世界』に於いて『裏』では伝説のドラゴンと謂われている、今は魂だけの存在となった その龍が、俺に教えてくれた。
悪魔…と云っても、この世界で それは、決して人に害為す邪悪な存在と言う訳ではなく、寧ろ人間に対し、『契約』と『対価』と云った形で依存している面の方が やや強いらしい。
生まれ変わって15年、確かに生まれ育った この街で、その類の者の気配を何度か感じた事は有った。
ドライグから そういう『種族』だと教えられていたのも有り、敢えてスルーしていたが、実際に『本物』を目の前にするのは初めてだった。
『(ふっ…相棒よ、この小僧だけでないぞ?
教室全体を霊視して視ろ。
なかなか面白いクラスだぞ?)』
……?
言われた儘にクラス全体を見渡すと…成る程、この木場とやらと同じくな、悪魔が女子に2人、そして木場の2つ後ろの席…何やら此方を睨み付けている(何故だか知らんが この時 既に、教室中の男子が、俺と木場を睨んでいるのだが)、目つきの悪い男…コイツは悪魔では無い様だが…
「(ドライグ、ヤツは…?)」
『(気付いたか?あの小僧は相棒と同じくドラゴンを…黒邪龍ヴリトラを宿しているみたいだな。)』
「(あいつも『神器』持ちか?)」
『(そうだ。尤も奴は、俺達と違って会話が出来る迄には、至ってない様だが…)』
「(俺の正体に、気付いたりした訳では、無いよな?)」
『(それは無いぞ。俺の、いや、相棒の、俺の気配を消す術は完璧だ。
自分からチカラを解放したりするなら兎も角、相手が余程な存在でない限りは、バレる事は無いさ。
少なくとも このクラス…いや、この学校で、気付く者は居ないさ。)』
「(この学校?)」
『(くくく…なかなかに魔窟だぞ?この学び舎は…)』
………………………。
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「おいおい2人共…
入学早々、モテモテだな?惡羅ぁ?!」
「羨ましいんだよ、このヤロー!」
「え?」「はぃ?」
この金髪の悪魔の少年…木場祐斗と、彼に声を掛けられていた、内に宿るドラゴンと脳内で会話していたシリューに、後ろ側の席に座っていた2人の男子生徒が、「リア充死すべし!」…な表情で絡んできた。
1人は極々普通の人間だが、もう1人は、シリューが やはり体内にドラゴンを宿していると見抜いた生徒だ。
「…ちょっと待て。モテモテなのは、こっちの木場クンだ。俺は違うぞ。」
「喧しいわ!お前、嫌味か?天然か?」
「どう見ても、お前も侍らせているぢゃねーか!」
「はぃ?」
シリューの言葉に、キレ気味に突っ込む2人の男子生徒。
気付けば、シリューの周りにも、結構な女子生徒が集っていた。
「何よ!自分がモテないからって、僻むんじゃないわよ!」
「「「「「そーよそーよ!!」」」」」」
「「うぐぐ!!?」」」
そして この因縁?を付けてきた2人に対して、シリューと木場を護るべく、鉄壁のバリアを張る女生徒達。
その余りの迫力に、半泣きで退いてしまう男子2人。
神崎孜劉と木場祐斗…新年度3日後には、校内の女子生徒達から、『学園2大イケメン』と呼ばれて囃される事になるのだが、それは今は別の話である。
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「「一子相伝の暗殺拳の伝承sy「それはケン〇ロウだ!!」
あの後、俺達に意味不明な因縁仕掛けてきた2人の男…草薙護堂とドラゴン持ち・匙元士郎は女子達の圧力に屈しw、強制的に俺達と仲直り?する事になった。
その際、匙が自分の名を名乗った瞬間、恐らくは木場も そうだったのだろう、とあるコミックの主人公を連想、意図せずハモってしまった台詞に対し、言い終わる前に慣れた様に突っ込む匙。
多分、昔から同じ様な事を何度となく言われてるな。
更に その後 この2人と色々と話してみたら、格闘技の話や、好きなアイドルやサブカルチャーの話で意外と馬が合い、普通に仲良くなったりした。
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「おい、神崎、匙!
グレモリー先輩と、姫島先輩だぞ!!
…ついでに木場も居るが。」
「「あー、そーですかー」」
朝から草薙がハイテンションで俺と匙に、校門を潜り、中庭を歩いている女生徒2人…と木場を指差して声を掛けるが、俺達は それに、如何にも興味無さ気に対応。
「何だよ、無感動な奴等だなぁ…」
その反応に、草薙がボヤく。
2年生のリアス・グレモリーと姫島朱乃。
この駒王学園高等部にて、『学園3大お姉様』と呼ばれている3人の内の2人。
その容姿から、男子生徒からは勿論、女子生徒からも、莫大な支持を得ている。
この2人…いや、3人目も含めて、確かにスタイルも抜群で美人ではあるのだが…
「悪魔…だしな…」
「神崎?」
「い、いや、何でもない。
どうも あの2人、好みから少し、ズレてるんだよな?」
「お前、きょぬー好きって言ってたじゃねーか?」
「それだけじゃ、無いんだよ。」
因みに匙は、もう1人の お姉様、2年の支取先輩が、好みなタイプらしい。
尤も本人は口には しないし、自覚も無いのだろうが、あの人が視界に入った時の反応で、皆にはバレバレだ。
支取蒼那。
去年の生徒会長選挙にて、グレモリー先輩の応援も有ったからだろうが、当時1年生にして、全校生徒から圧倒的な支持を得て、生徒会長の座を勝ち穫った先輩だ。
…ただし、あの女(ひと)も、悪魔なんだよな。
…てゆーか、このクラスの巡と花戒を含む、生徒会役員全員が悪魔。
匙は気付いているのか?
それにしても…
2年のグレモリー先輩、姫島先輩、支取先輩、新羅先輩。
3年の…すいません、名前知らない、やっぱり生徒会の先輩。
ウチのクラスに、木場、花戒、巡。
それと他の1年の教室にも、あと数人程…
ドライグが言っていたが、本当に悪魔、多過ぎだな!
それから、木場がグレモリー先輩と一緒に登校してるのは、(本人から確認を取った訳では無いが)どうやら彼女とは、悪魔的に、主従関係に在るらしい。
ついでに言えば生徒会も、生徒会長の支取先輩をトップとして、副会長である新羅先輩が其の儘No.2な、グレモリー先輩とは別の派閥だそうだ。(ドライグ情報)
悪魔の世界ってか社会も、何やら色々と有るみたいだな。
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ガラ…
「おはょ「「「「「木ぃ場あ~!!」」」」」
「え…何、何なの!!?」
「うっせー!自分の胸に聞けー!!」
「羨ましいんじゃ、ボケがぁ!」
「テメーの血わ、何色だぁ~っ!?」
教室に入った瞬間に、草薙他、クラスの男子数人…【グレモリー&姫島先輩のファンクラブ(本人非公式)】の皆さんに、詰め寄らる木場。
「「「ちょっと!止めなさよ!」」」
「「「「「木場きゅんに何かしたら、〇すわよ!!?」」」」」
そして その木場を守るが如く、それに割って入る、【木場きゅん親衛隊(やっぱり本人非公式)】の皆さん。
高校生活が始まって まだ1週間程度しか経っていないのだが、既に この教室では、見慣れた光景、定番の遣り取りだ。
…って、親衛隊の数、何だか増えてね?
よく見ると、ウチのクラス以外の女子も居る様だg…って、新羅先輩?
「くっくっく…
それにしても男子も女子も、毎朝飽きずに よくやるわよねぇ…www
なぁ、匙、神崎?アンタ達も そう思うだろ?」
「「ぁあ?」」
その光景を、呆れながらも嗤いながら見ていた、俺の隣の席に座っている女子が話し掛けてきた。
桐生藍華。
長い髪を三つ編みにした、眼鏡を掻けている女子で、親父系エロトークの達人だ。
「…桐生、お前は混ざらないのか?」
「ん~、木場君て、確かにカッコイイし、ちょっと良いかも?…とは思うけどさ、あんなアイドルの追っ掛けみたいなミーハー行為、何だか違うんだよね~?
アンタ達がグレモリー先輩見て、ひゃはっーしないのと、同じみたいなもんよ。」
「いや、俺は別に、冷静系ファンな心算も無いぞ。
あと、匙はグレモリー先輩でなくて、支取先p「わぁあああ~っ?!」うんがぅうっ!?」
…俺の台詞は、顔を真っ赤にした匙に口を押さえられ、最後迄言えなかった。
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「「「ひぃえ~~~~~~~っ!!」」」
どたどたどたどた…
「ん?」
その日の放課後、校舎を出ようとしたシリューの正面に、3人の男子生徒が何かに脅えながら、必死な顔で走ってきた。
1人は天然な茶髪。
1人は坊主頭。
1人は眼鏡。
「「「待てーっ!この、女の敵!!」」」
どどどどどどど…
そして その後ろからは、数人の女子生徒が、木刀やら竹刀やら…何やら物騒な得物を手にして、かなり お怒りな顔で追い掛けている。
「わわゎっ!其処、どいてくれ!」
一番前を走っていた茶髪な男が、シリューに道を空ける様に声を掛けるが、
「あっ、神崎!そいつ等捕まえて!」
「水沢?」
その直後、話し掛けてきたのは、木刀を振り翳しながら走っている剣道衣を着た女子…クラスメートの水沢香純。
「………………………。」
この男子生徒達と直接の面識は無いが、彼等の悪評は既に色々と…女子に対するセクハラ行為等を聞いているシリュー。
故に「どいてくれ」と「捕まえてくれ」…どちらの言葉に従うかと云えば…
「悪いな。この先は、通行止めだ。」
当然、クラスメートの言葉を優先、両手を大きく広げて立ち塞がる。
「甘い!」
しかし それを、茶髪男は避ける様に身を屈め、腕の下を潜り抜ける様に、校舎内へと逃走を試みるが、
「そっちがな!!」
パタン!
「へぶらっ?!」
最初から その動作を想定、いや その動きを誘導していたシリューが、わざと一歩だけ、自分を越えた男に対して後ろから襟口を掴むと、其の儘 引き倒して床に尻餅を搗かせ、
「わわっ?」「バカッ…イッセ…」
どどん!
後ろの坊主頭とメガネは、この茶髪男に ぶつかり、倒れ込む。
「天誅ーーーーーーーーーーーっ!!」
バキィッ!
「「「うぎゃーーーーーーーーっ?!」」」
そして3人の脳天に、ぶち撒けよとばかりに炸裂する、水沢の木刀。
「「「「死ね!死ね!死ね!」」」」
バギッ!デゴッ!ドガッ…
「うゎらば!」
「ぬわーーっ!」
「うぐぺぺぺーっ!」
その後も他の…恐らくは剣道部員と思われる女子生徒達から、竹刀やら木刀やら刺バットやらで、滅多打ちにされる3人。
「み、水沢…因みにコイツ等の罪状は?」
目の前の惨状に、流石に少し殺り過ぎだと思いながら、若干どん引きした顔でシリューが尋ねると、
「覗きよ!」
「……………。」
…らしい。
「「「……………」」」
そして廊下には、3人の惨殺死体が(注:死んでいません)残った。
更には この3人、数日後に他校の生徒である、水沢の彼氏に〆られるのだが、それは別の話である。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「…と、ゆう訳だ。
水沢は絶対に、怒らせるなよ。」
「「お…応…」」
次の日の朝、匙と草薙に、ありのまま起こった事を話すぜ!…な俺。
俺のリアルな説明に、ガクブルとなって頷く2人。
「ちょ…誤解だから!」
その会話に、顔を真っ赤にして乱入して必死に弁明、昨日の夜叉っぷりを否定しようとする水沢。
しかし、事実だ!
「くくく…まぁ、アイツ等に限っては、仕方無いだろ?
勘弁してやりなよ。」
「桐生~~~~~~~っ!」
ガバッ!
「おぅ、よしよし♪」
其処に桐生が助け船。
水沢が桐生に抱き付き、桐生が水沢の頭をあやす様に撫でる。
…って、何かエロい!!?
「アイツ等とは中学同じだから よく知ってるけど、あの変態っぷりは、筋金入りだからね~!
当時から教室でエロトークしてたり、エロ本見てたり…セクハラな発言や行動は、日常茶飯事だったわよ。」
「それ程なのか?」
「最悪だな…」
「最っ低…。やっぱりトドメ、刺しとくべきだったわ…!!」
どん引き呆れ、そして思い出した様に怒る俺、匙、水沢。
「成る程…変態は変態を知るってかw?」
「あ゙?!」
そして、草薙の一言。
この一言に、桐生の表情が変わる。
「ちょっと待て。
確かに私はエロい自覚は有るが、変態な覚えは無いわよ。」
俺的には「どう違う?」…なのだが、彼女的には、かなり大きな違いらしい。
「少なくとも私はアイツ等と違って、特定個人を直接にハラスメントする様な事は しないぞ?
尤も、望みと有らば…だが?」
「へ~?例えば?
男子の着替えでも、覗くのか?」
この草薙の台詞に桐生は、
「ふっふっふ…
私の眼鏡は、オトコの『アレ』の戦闘力…即ち、通常~MAXのサイズ、硬度、1回時の持久力にトータルのスタミナを測る事が出来るのよ♪」
とんでもない事を、抜かしやがった。
「「「ス〇ウターかよっ!?」」」
眼鏡をクィッとしながら、鋭い眼光で笑う桐生に、戦慄する俺達。
「草薙は…ほぅ…
サイズB、硬度B、持久力B、総合スタミナB…」
「止めれーーーー(」゚O゚L)ーーーーっ?!」
「まぁ、本っ当に普通だね。
可もなく不可も無く。」
そして勝手に『戦闘力』を計測する桐生に、顔がムンクになって、絶叫する草薙。
「次、匙は…」
「をぃっ!?」
「サイズB、硬度A、持久力…E…どんまい…。スタミナC…
…ん、マジ、どんまい。
…てゆーか、ごめん…」
「ノッ…ノォオオオォ~~(」゚O゚L)~~?!」
そして匙も…ん、どんまい…www
あぁ、そうだ俺、急用を思いついたから…
ガシッ…
「…匙?草薙?」
「神崎テっメー!何、逃げようとしてやがる?!」
「お前も晒されやがれ!!」
そして次の餌食になる前に、その場を去ろうとしたら、匙と草薙のヤロー、がっしりと肩と腕をロックしやがった。
「「やれ桐生!やっちまえ!!」」
「らじゃ~♪」
「や、止めろ~っ?!」
気付けば一連の会話を聞きつけたのか、クラスの殆どの女子が赤面しながら集まってる中、桐生の眼鏡がキッラーッン!…と妖しく光り、
「ふっふっふ…じゃ、いくよ~?♪
神崎…サイズ…SSSぅ!? 硬度SSS…って、本当に?…持久力…SSS、スタミナSSぇ(ピシィッ!)うぎゃっ!!?」
計測が完全に終了する前に、そのスカ〇ターは罅が入ると同時に砕け散り、(既に殆ど晒された気もするが)それ以上の計測は不可能となった。
「き、桐生?大丈夫?」
「ぅ…目が、目がぁ…ついでに鼻血が…って、神崎ぃ!あ…アンタは化け物か!!?」
………。
スペアの眼鏡を掻け直し、桐生が俺に問い質すが、そんなの知るかよ…。
周りを見れば、この遣り取りを見ていた匙、草薙をはじめとする男子(ヤロー)共は、何やら両膝両掌を床に着け、がっくりと甲垂れて…所謂orz状態になっており、そして女子達は、先程以上に赤らめた両頬に手を添えて、潤んだ眼で俺をガン見している。
ちょ…凄く怖いんですけどっ?!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
その日の夜、シリューはロードワークにと、学園近くの公園内を走っていた。
既に日は落ちて、街灯が照らす遊歩道を走っていた時、
「???」
周辺の空気の不意の変化、違和を感じ取るシリュー。
「こんばん…は…」
「!??」
同時に、背後から掛けられた声に、驚きながら振り返ると、そこには見た目20代の、若い女が立っていた。
「ジョギングですか?」
「…………………。」
微笑みながら、シリューに話し掛ける女。
「キミ、なかなかカッコいいね?
学校じゃ、かなりモテるでしょ?」
「…………。」
しかし これに対して、シリューは一貫して無言で対応。
「キミ、さっきから黙ってばかりだけd…
「貴様、何者だ?」
「…………っ!!?」
シリューの台詞に、今迄にこやかだった女の顔が、険しく歪む。
「残念だが俺は、お前の様な存在の、内側に隠した気配を読むのは得意なんでな。
もう一度聞こう、貴様は何者だ?」
この台詞に女は、
「ふふふ…さっきから全然眠らないから おかしいとは思っていたけど、只の人間じゃあ、なかった訳だ…」
再び余裕を思わせる笑顔を浮かべながら、喋り出す。
「眠る?そうか…何やら貴様の眼から、不気味な視線を感じたので、咄嗟に小宇宙(コスモ)のバリアを張っていたのだが、催眠効果の魔力か何かを放っていたのか…」
「こすも…?
ふん!大人しく眠っていたら、恐怖を感じる事無く、死んでいた物を!!」
ズバァッ!
そう言うと女は、それまでの笑顔とは別の、歪んだ嗤い顔を見せると、左右の顳から細く鋭い螺旋の角を生やし、着ていた衣服を弾き飛ばすと、両腕は猛禽類を思わせる翼を、下半身も同じく、猛禽類の身体の如く変化させ、更には背中に蝙蝠の様な羽を生やし、シリューに襲い掛かる。
「少しばかり筋肉が固そうだが、我慢して喰ってやるよ!!」
「…!!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「ど…どーゆー事なのよ、これ?」
「「「…………。」」」
静けさが戻った公園の遊歩道で、長い紅髪の少女が呟く。
目の前には、鋭い刃の様な物で縦真っ二つに斬り裂かれた、半鳥半人と形容するが相応しい異形の者の屍。
「ハーピーベースの転生悪魔…」
「討伐指令が為されていた、はぐれ悪魔に間違いないみたいですわね。」
「誰かが先に、始末した…?」
この紅髪の少女と共に居る、金髪の少年、黒髪のポニーテールの少女、小柄な白髪の少女も、何か納得の往かなさそうな顔で呟いた。
「ハァ…どちらにしても、ありのままに報告するしか無いわね…
兎に角 皆、今日は もう、帰りましょ。」
「「「はい…」」」
溜め息を零しながらの紅髪の少女の言葉に、残る3人が返事。
異形の者の屍を、魔力の塊をぶつけて完全に消滅させると、自分達も地面に展開した魔法陣の中に、姿を消して行った。
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
「……………………………。」
その一連の様子を、木陰に身を隠し、気配を消して伺っていたシリュー。
襲ってきた はぐれ悪魔を一刀両断の下に斃したと同時に、新たに近付く魔力の気配を感じ取ったシリューが、遊歩道脇の樹々の中に入ったと同時に現れたのが、駒王学園の2年に席を置くリアス・グレモリーと、その眷属と思われる悪魔達だった。
その中には、シリューのクラスメートの少年の姿も在った。
「……………。」
誰も居なくなったのを確認して、樹の陰から遊歩道に出るシリュー。
「今のは…」
『相棒…。先ず、最初に相棒が斃したのは はぐれ悪魔…簡単に言えば、主を持たない野良悪魔だ。』
シリューの左手が鈍く光り、ドライグが話し掛ける。
『恐らくは冥界から逃げ出して、この街に やってきた はぐれを、あのリアス・グレモリー達が上からの命令で始末しに来た処を…』
「経緯は どうであれ、俺が先に、片付けてしまったって訳か…」
『ま、そういう事だな。』
「…あの はぐれ悪魔とやらは、俺の正体を知って、襲ってきたと思うか?」
『いーや、それは無いと思うぞ。
只単に、逃げ込んだ公園で偶々出会した、通りすがりの餌くらいとしか、思ってなかった筈だ。
あの小娘達も、相棒の存在には、微塵も気付いてない様だしな。』
「そうか…それなら良かったが…」
『ふっ…しかしドラゴンは、騒動を呼ぶ存在だ。
今回は上手く行ったが、何時迄も誤魔化しきれるとは限らんぞ、相棒?』
「巻き込まれるの確定かよ!?」
シリューはドライグの台詞に呆れながら突っ込み、
「どうなるのかねぇ…?」
約1ヶ月前、原因不明の爆発により、文字通りの三日月の形状となった、夜空に浮かぶ月を見上げながら、呟くのだった。
‡‡‡‡【 次回予告(予定)!! 】‡‡‡‡
「さて、一体どーゆー事なのか、説明して貰おうかしら?」
次回:ハイスクール聖x龍
『first contact②(仮)』
乞う御期待!! コメントよろしくです。