【完結】聖闘士DxD   作:挫梛道

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平和な?世界で生まれ育ち、それなりに俗世間に染まっているシリュー君。




堕天使

深夜0時過ぎ、駒王町の町外れにある、廃れた教会。

オカルト研究部部室より、転移魔法陣を用いて、その正面門に推参したオカ研メンバー。

 

「ゔぉおお…」

「か、神崎君、本当に大丈夫かい?」

「あらあらあら、シリュー君が悪魔でないからか、それとも、シリュー君自身の体質なのかしら?」

門の前で地面に蹲り、項垂れるシリューの背中を、木場がさすっている。

 

「う~ん、まさかの転移酔いとはね…」

 

◇シリューside◇

「ちちリュー先輩、大丈夫ですか?

目がクラクラですか?

頭がグラグラですか?orzですか?」

「うぅ…小猫、貴様、後で覚えてろ…!」

クッ!あの『アテナの聖闘士(セイント)発言で降って沸いたロリコン疑惑を、何とか払拭出来た代償に俺は、現在付き合っている彼女の容姿とも相成り、今度は少なくとも、オカ研と生徒会では、『きょぬー属性』と認定されてしまった。

いや、此方は あながち否定出来ないと言えば出来ないが、これだけは言っておく。

 

俺はトーカとは別に、胸が大きいからと言う理由()()で、付き合っている訳では、断じてない!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ま、まぁ、要因の1つである事は、間違いないが…

 

▼▼▼

シリューにとっては初めての魔法陣転移。

悪魔ではないせいか…転移空間の中、如何に聖闘士(セイント)と云っても、その肉体自体は生身の人間と変わらないシリューは思う様に身動きが取れず、木場に肩を借りる形で移動していた。

そして、視覚的にも体感的にも、上下左右の認識が出来ない歪んだ空間を進む中、その空間を抜け、現世に出た瞬間に、まるで乗り物酔いでも起こした様に、体調を崩してしまったのだった。

 

シリュー自身、正直に言って、少しばかり舐めていたのは否めない。

嘗て『嘆きの壁』から『エリシオン』を目指した時と同じ様な感覚だと思っていたシリュー。

しかし、その実は全くの別物だった。

 

「…さあ、皆、改めて行くわよ!」

少しの時間が経ち、漸く快復。

このロスにより、オカルト研究部メンバーは、予定より約10分の遅れで、教会に突入する事になる。

 

≫≫≫

「…で、部長、どうやって中に入るつもりですの?」

「そうねぇ…とりあえず、ドアには鍵が掛かっているから…」

「正面突破!!」

 

ばきぃっ!!

 

「「「「!!!?」」」」

朱乃の「どうやって入る?」…の問に、リアスが思案している中、シリューは惑う事無く施錠されている玄関の扉を蹴破り、突入。

 

「「「ななな…!??」」」

「あらあらあらあら?」

呆気に取られながらも、リアス達が それに続いた。

 

「し…シリューの お馬鹿ーっ!!

あんなに派手に入ったりしたら、皆、起きちゃうじゃないの!!」

「…夜襲の意味が、ありません。」

「何を言っている!

不意打ちなど、卑怯者のする事だ!!」

「お願いだから、卑怯者になって!」

堕天使の部屋を探し走りながら、シリューに文句たらったらのリアス達。                      

バキッ

 

「…っ!?」

そんな廊下を走っている中、あの派手な侵入の際の大音に、何事だと驚き起きてきた、寝間着を着た儘の男に対して、小猫が左ストレートを顎にお見舞いし、その場で再び眠らせる。

                  

「なかなかのパワーだな…」

小柄な彼女からは、想像し難い場面を見せられ、思わず感心するシリュー。

 

「小猫に使った駒は戦車(ルーク)

その駒の特性で、あの娘は驚異的なパワーと防御力を得てるの。」

「へぇ…?」

 

どたどたどたどた…

 

そして、この騒ぎを聞きつけ、

「部長、新手です!」

廃教会に、人知れず身を潜めていた、堕天使に従う信徒達が集団で押し寄せ、

「せぇい!」

 

シュタ…

 

「かはっ…っ!?」

侵入者に対し、銀の棍鎚で殴り掛かってきた1人の男に、木場が一歩前に歩み寄ると、次の瞬間、脇に携えていた剣で一閃、床に平伏させる。

 

「木場、殺ったのか?」

「いや、峰打ちさ。」

「成る程、戦車(ルーク)の小猫がパワーなら、騎士(ナイト)の お前はスピード特化という訳だ。」

「はは…よく言うよ、視えていた癖に。」

この攻防が引き金となり、教会の狭い廊下での、堕天使眷属とオカルト研究部との、戦闘が始まった。

…が、

「でやっ!」

「…えぃっ!!」

「せぃ!」

それはシリュー、子猫、木場により、瞬時に収束。

 

「あらあらあら?私の出番は、無かったみたいですわね?」

 

バチ…

 

右手に帯びていた雷を消した朱乃が、少しだけ残念そうに呟いた。

 

「いや先輩、怖ぇーよ?!」

 

》》》

「この先かしら…」

恐らくは教会の責任者…神父の部屋と思われる。

その異様に天井が高い部屋で、地下へと降りる、隠し階段を見つけたリアス。

 

「さあ、行きましょう。」

リアスを先頭に、その階段を降りようとした その時、

「死ねっ!!」

「「「「「!!?」」」」」

天井から、黒い翼を広げた1人の男が、光る槍を構えて襲い掛かってきた。

 

「危ない、部長!ブーステッド・ギア!!」

『Boost!!』

 

ガキィッ!

 

急降下しながら振りかざす、堕天使の光の槍を、シリューが自身の神器(セイクリッド・ギア)赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を発動させて受け止める。

 

「くっ…貴様、神崎孜劉?」

「また遭ったな…!」

その男は前日、シリューを襲った堕天使。

 

「くくく…この寂れた教会に殴り込みを掛けた輩が来たかと思えば、まさか貴様だったとはな…!

そして、その貴様が悪魔…しかも、グレモリーの者と、共に行動しているとは!

くっくく…面白い!」

「ふ…今日は逃げないのか?」

殺気を込めた不気味な…自信に溢れた笑い顔で語る堕天使に対し、シリューは不敵な顔で話し掛け、

 

ぽん…

 

「この おチビちゃんは、かなり強いぜ?」

「むぅ…?」

小猫の頭に手を置いて、シリューは更に言葉を続ける。

 

「昨夜は俺の正体を知った途端、ビビって逃げ出した奴が、今日は余裕だな?」

"おチビちゃん"呼ばわりで少し頬を膨らませている子猫をスルーして、挑発じみた発言をするシリューに対し、堕天使の男は

「え~い、黙れ黙れ!昨日は少しだけ、驚いただけだ!!」

その不気味な笑顔を怒りの表情に一変、手に持った槍で襲い掛かってきた。

 

ガシィッ!

 

その攻撃を受け止めたのは木場。

その両手で持っているのは、先程の日本刀ではなく、黒い刀身から妖しい黒き光を放つ西洋剣。

 

シュウゥ…

 

「な…これは…!?」

互いの武器が交わった瞬間、堕天使の光の槍は、木場の持つ剣の黒い闇に喰われる様に、小さくなる。

 

「…光喰剣(ホーリー・イレイザー)

僕の剣は、光を喰らう!」

「ちいぃっ!転生悪魔が!

貴様も神器遣い(セイクリッド・ギア・ホルダー)か!!」

 

怒りを露わにする堕天使の槍を受け止めながら木場は、

「部長、皆、この堕天使は、僕が引き受ける!

皆は先に、下に降りて!」

この場は任せろと、他のメンバーは先に進む様に促す。

 

「…分かったわ、祐斗。」

「お任せしますわ。」

「信じています…。」

「じゃ、後でな。」

木場に それぞれが声を掛けると、リアス達は、階段を駆け降りていった。

                  

》》》

「まさか、大人しく皆を進ませてくれるとは、思ってもみなかったよ。」

「フン!貴様を殺した後、挟み撃ちにした方が、効率的だと思った迄よ!!」

 

ブゥン…

 

そう言うと堕天使は、光の槍を もう1本作り出し、木場に斬り掛かる。

 

タッ…

 

それをバックステップで躱し、改めて構えを取る木場。

 

「成る程、やっぱり あの下に、他の仲間が居る訳だ。」

「な…!?」

「神崎君も言ってたけど、君って かなりチョロい堕天使(ひと)みたいだね?」

「ななな…!?」

恥ずかしさからか、一気に顔を赤くする堕天使。

 

「名乗らせて貰うよ。

リアス・グレモリーが騎士(ナイト)、木場祐斗!

いざ、参る!!」

「ふっ、面白い、グレモリーの騎士(ナイト)よ!

ならば俺も名乗ろう!

我が名はドーナシーク!

至高の堕天使にして、貴様を殺し、貴様の仲間を屠る者だ!!」

先程の気恥ずかしさを誤魔化す為か、木場の名乗りに便乗し、普段では絶対に張らない様な大見栄を張った堕天使…ドーナシークが、両手に光の槍を携え、目の前の敵に向かい、飛び掛かった。

 

》》》

 

タッタッタッタッ…

 

リアス達が階段を降りた先は、建物の正面玄関を開けた先にある礼拝堂よりは小振りだが、それでも それなりの広さを持った地下礼拝堂だった。

 

「ようこそ…グレモリーの皆さん。

そして…赤龍帝!」

 

そこに待ち構えていたのは4つの人影。

ボディコンスーツを身に着けた蒼い髪の女。

ゴスロリファッションの金髪の女。

ボンテージ姿の黒髪の女。

皆、隠す事無く、堕天使の証である、黒い翼を曝し出している。

そして もう1人、白い礼服の上に黒い法衣を纏った、白髪の若い男。

どうやら この男は、人間の様だ。

 

「あらあらあらあら、皆さん、真夜中の訪問ですのに、揃って出迎え御苦労様。」

皮肉を込めた朱乃の言葉に、

「馬っ鹿か!馬鹿なのか?

つーか馬鹿だろ、オマエラ!

真夜中だっつーのに、あれだけ派手な音を立てて侵入された日にゃ、誰だって気付くっての!

俺ちんの安眠、返しやがれ!!」

神父の格好をした、白髪の男が噛み付いてきた。

 

「大体、こんな時間帯に攻めてくるってオマエラ、いくら糞悪魔だからって、その辺りの常識も無いのかよ?

特に、そこの2人!

その無駄に成長した、おぉ~っぷあ~ぁい!…ばっかりに栄養が行っちゃって往っちゃって逝っちゃって、肝心な脳味噌の方は すっからか~ん…ですかぁ?

あ、そっちの おチビちゃんは…ん、何かゴメンね…って、おわっとぉ!?」

 

ガシャアン!

 

神父らしからぬ、下品な言葉を投げる白髪の男に、子猫がベンチを投げつける。

                  

「あ…アっブねーなぁ、いきなり何しやがるんだ、このチビ!

テメーも一応 学生なら『人の話は最後まで聞け』って習ってるだろーがあ!?」

ベンチを躱した神父が、子猫に怒鳴りつけた時、

「フリード、少し、黙れ。」

「へ…へい、カラ姐さん。」

ボディコンの堕天使が、これを諫めた。

                   

「…どうでも良いが、互いに殺る気は満々なんだ。

御託は良いから、さっさと始めようぜ?」

そして口煩い神父に呆れ顔のシリューが、話を前に進めようと、切り出した。

 

「うふ…そうね、赤龍帝。

せっかく、此処まで来たんだから、もてなてあげないとね?」

 

ザッ…

 

以前 会った時は、他校の女学生の姿をしていた、今はボンテージを着込んでいる堕天使。

立ち位置からリーダー格と思われる、その女の堕天使が それに応え、その場の全員が、それぞれ戦闘の姿勢を構える。

 

「…あのウザイ男は、俺が戦ります。

リアス部長は あのボンテージ、姫島先輩はボディコン、そして小猫は、あの ちんちくりんを「ちょっと待て!ちんちくりんって何っすか!

ひょっとして、ウチの事っすか!?」

このシリューの台詞に、金髪の堕天使が、顔を真っ赤にして怒り出す。

しかしシリューは、

「喧しい!貴様の他に、一体 誰が居ると…言う…のだ!!」

「…シリュー先輩、何故、言い躊躇ったんですか?誰か、想像しましたか?」

これを逆に怒鳴り散らす。

…小猫にジト目で睨まれながら。

 

「大体、レイナーレ姉様がボンテージでカラワーナがボディコンなら、ウチはゴスロリって表現するのが流れじゃないッスか!

ウチが嫌いなんスか!?」

「あー、そうだよ!」

「なっ…!?何スか、それ?

ウチがアンタに、何かしたっスか!?」

「しただろ!」

「はぁっ!?」

2人の言い争いは続く。

 

「そっちの2人は兎も角、貴様は よりによってデートしてる最中に、『好きッス。ウチと付き合って欲しいッス。』とか言ってきやがって!

あの後、凄く修羅場(たいへん)だったんだからな!!」

「「「「「「………………。」」」」」」

このシリューの言葉に、空間が まるで時が止まったかの様に、静寂に包まれた。

 

「あぁー、無いわー、ミッテルトちん。

流石に、そ・れ・わ・無いわー。」

 

コクコクコクコク…

 

白髪の神父、フリードの台詞に、リアス、朱乃、小猫、そして残る堕天使の2人も、無言で何度も首を縦に振る。

 

「な、何スか、皆の その反応わ!?

3人共、どっちの味方ッスか?」

「いや、敵味方関係無く、正しい・正しくないのケジメは付けておくべきだ。」

「か…カラワーナ~?!」

四面楚歌に陥り、半泣き顔となった ちんちくr…小柄なゴスロリ堕天使ミッテルトを諭そうとしてるのは、リアスや朱乃にも決して劣らない体躯をボディコンに身を包んだ堕天使、カラワーナ。

 

「赤龍帝よ…その件に対してだけは、何か部下の者が何と言うか、その…すまなかった。」

「レイナーレ姉様まで~?!」

カラワーナには劣るが、それでも世の健全な男を堕とすには、十分な肉体をボンテージで纏ったレイナーレも、この事だけはと謝罪する。

               

「おい、そこのイカレ神父、貴様さっき、深夜の襲撃に対して常識云々といっていたが、そういう発言は、身内の常識を正してから謂うべきではないのか?」

「うぅ…しぃまちぇ~ん…」

「フリ~ドォ~?!」

そしてシリューの指摘に、敵ながら それは正論だと、フリードも素直に頭を下げる。

 

「そもそも俺は、お前みたいな女は好みじゃないから、あの時のアレは、無駄に修羅場っただけな行動だったがな。」

 

ピク…

 

「な、何スか それは?胸ッスか?

あの時の女みたいに、ぼいーんぼいんじゃないと駄目とでも言いたいんスか?

アンタはアレっスか?

おっぱい星人っスか!?」

シリューの台詞に、孤立化で凹んでいる、涙目なミッテルトが また顔を紅潮させて怒り出した。

 

「いえ、違います。

シリュー先輩は、おっぱいドラゴンです。」

「…小猫、後で話がある。」

…どうやら小猫のフォローは、シリューの お気には召さなかった様だ。              

 




 
注:シリューと小猫たんは、決して仲が悪い訳ではありません。
寧ろ、『喧嘩するほど仲が良い兄妹』みたいな感じですね。
 
※※※※※次回予告!!※※※※※
 
「行くぞドライグ!」
(おっ、相棒!『アレ』をやる気か!)
「ああ、ぶちかますぜ!!」
 
次回:聖闘士DxD
『解き放て!燃える龍の波動!!(仮)』
乞う御期待!!
 


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