殆ど会話…
はぐれ悪魔ドラムロを討伐した後、オカ研部室に戻ったリアス一行。
「……………。」
ぶっちゃけ、リアスは かーなーり、焦っていた。
眷属数人が多少のダメージを受けたとは云え、全体的に見れば、会心の戦闘内容だったと言える程の自信が有る。
…にも拘わらず、わざわざ「反省会」と銘打って今から行われる、シリュー主導のミーティング。
「「「「「……………。」」」」」
シリューの結構マジな顔に、リアスだけでなく、眷属全員が緊張していた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「先ずは皆、今回の勝利その物は、見事だったと思う。
これで少しは、部長に対する悪魔社会(せけん)の目も、良い方向に修正されて行けば…ですよね、部長?」
「そ、そうね…」
…ちょ、いきなり褒め言葉?
『反省会』とか言っておきながら、先に そーゆー風な発言されるって、尚更 何を言われるのか、凄く怖いんですけど?
「「「「「「………………」」」」」」
ほら、他の下僕達(みんな)も、表情(かお)が引く攣いてるわよ?
ついでに何故か、反省会には関係無い筈の、アーシアも!
「…だが、先ずは、リアス部長!」
「ひゃ、ひゃいぃ!!?」
はい、いきなり私、キターーーーーーー!!
「部長は一応は【王(キング)】でしょうに?
いきなり一番前に出て、ぶっ放してんじゃないですよ!
バカですか?バカなんですか?
しかも その一撃も、見事に外してるし!
王なら王らしく、最初は後方で控えて前衛に指示を出していたら どうですか?!
まさか本当に、脳味噌に届くべき養分が、無駄に胸に集中してるんじゃあないでしょうね?
リアルに駄肉ですか?!」
「かはあっ!!!?」
「「「「ぶ、部長ぉ??!」」」」
止~め~て!私のMP(メンタル)は、もう0よ!!
後、駄肉言ーなぁ!
「次は木場!」
「は、はい!」
…で、次は祐斗ね。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「何故、聖魔剣を使わない?
つい この前、禁手(バランス・ブレイカー)に至ってばかりなのに早速、切り札温存を気取っている心算か?
そういう考えは、聖魔剣を十全に使いこなせる様になってからだ!
兎に角 今は、訓練や実戦でガンガン使用して、感覚を掴むのが最優先だ。
それを踏まえれば今回の敵は、最適な練習相手だった筈だぞ?」
「うん…そんな風に言われると、何も言い返せないよ…」
「そして次は、ミルたん!」
「にょにょっ!?」
シリューのマシンガントークな駄目出しは終わらない。
「最後のプロレス技?は特に問題無いが、最初に使い魔と一緒に放った、地震攻撃擬きは、完全にアウトだぞ!
あんな味方も巻き込む様な無差別な攻撃は、封印すべきだ。」
「う~、面目無いにょ…(´・ω・`)」
しょぼーんとなるミルたん。
「レイヴェルは、まぁ…可も無く不可も無くだったが、ギャスパー?」
「(ホッ…)」「は、はいぃ!?」
レイヴェルが、自分には特に駄目出しが無いと、安堵の溜息を小さく零す中、次に名前を呼ばれたギャスパーが、泣きそうな顔で返事をする。
「…今回、お前は自分自身を、どんな風に思った?」
「え…?ど、どう思うも何も、僕は何も出来ずに、シリュー先輩の後ろに ずっと隠れてたから…役立たずでしたぁ…。」
「そうだな、完全に空気だったな。」
「ぅうぅ~…」
「何時迄も、そんな風で居るのか?」
「…ぃ、いえ!早く神器を完全にコントロール出来る様になって、皆さんの足手纏いに ならない様に、力に なれる様に、頑張りたいです!」
「…よし、良い返事だ。」
ギャスパーの決意の籠った顔と返事に、シリューは満足の笑みを浮かべるが、
「…で、最後に朱乃先輩と、小猫!!」
「「は、はいっ!!」」
残る2人の名前を1度に呼ぶと同時に、再び その表情は厳しく…いや、先程以上に厳しい顔となった。
反射的に、驚愕しながら返事をする2人。
どうやら この反省会、シリューの1番の目的は、朱乃と小猫…この2人に色々と言いたいが為に開いた様だった。
「…済まないが、リアス部長以外は席を外して貰えるか?」
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
アーシア達が退室し、部室の応接室には、リアス、シリュー、朱乃、小猫の4人が残った。
「さ・て、リアス部長から決して全部じゃないが、ある程度は話を聞いてるのを前提に話すけどさ…」
「「「……」」」
シリュー自身も正直、出来る事なら この話題には触れたくはないと云う表情をしながら口を開く。
「実は前々から、何時か言おうと思っていた事だが…2人とも、強くなろうという心算は あるのか?」
「「…!!」」
余りにもストレートな問い掛けに、言葉を飲み込む2人。
「小猫は最初、部長を護る為に前に立った時の一撃、駒の特性を活かしただけの、只の馬鹿力なパンチだったな?」
「……!!」
「そして、朱乃先輩の放った雷撃は、本当に只の『雷』だけの攻撃だった。」
「…………。」
この言葉で、シリューが何を言いたいのか察した2人は、俯くと、ますます無口になってしまう。
「小猫が あの時、繰り出す拳に仙術で練った『氣』を纏わせて放っていたら、もっとダメージが通っていたかも知れない。」
「……。」
「朱乃先輩も そう。
あの雷撃が、『光』を織り込んだ『雷光』だったら、今回の戦いは もっと有利に進められていたかも知れない。」
「……っ!?」
確かに、最初にシリューは言った。
『リアス部長から、ある程度は聞いている』…と。
2人が、この『ある程度』が どの程度まで聞いており、逆に自分達の事を何処迄知っているのかを、更にはリアスが何処迄話したのかを問い質したくなるが、シリューの厳しい顔は、それを赦そうとしない。
「小猫、昔は どうだったかは知らないが、ギャスパーは今、自分の神器を怖れず、制御して使いこなそうと努力している。
普段、アイツを『へたれ』扱いしているお前は、自分の中の仙術(チカラ)を畏れて、逃げた儘で終わらせるのか?」
「そ、それは…」
シリューの言葉で、更に黙り込む小猫。
「朱乃先輩も、自分の中に流れる『血筋』故の力を忌みてるのは解る。
…でも、それも結局は小さく下らない、個人の我が侭に過ぎない。」
「な…し、シリュー君に、私の何が解っていると云うの??!」
そして小猫とは逆に、自分にとって それは余程禁忌な事だったのか、朱乃は大声で反発する。
「解るさ…。少なくとも、自分の持っている能力(チカラ)を、単に自分の好き嫌いだけで使わないって事位はね…。」
「なっ…?」
「正直、こういうのは言いたくは無かったが、自分の中に流れる血を怨むのは御門違いですよ。
強いて言うなら、怨みを ぶつけるべきは、母方の血族じゃないのですか?
その対象が一切存在しなくなったからって、残った父親に筋違いな怨みを当てて、その血の繋がり故の力を否定して、それで無理矢理に自分を納得させて、終わらせる心算ですか?」
「そ、それは…!」
しかし本音を…核心を突かれ、小猫同様に、朱乃は何も言い返せなくなってしまう。
「し、シリュー?
もう少し、ソフトに言っても…」
実際には シリューの言っている事そのまんま其の通りなのだが、余りにも遠慮も容赦も無い口っ振りに、今迄ずっと静観していたリアスがフォローしようとするが、
「何を言っているんですか!
そもそも部長?こういうのは本来、俺が言うのではなく、部長が主として、諭して往くべき事でしょう?」
「う…」
「グレモリーは慈悲深いので評判らしいですが、如何にデリケートな問題だからって、部長の様に全く触れずにいるのは、慈悲なんかじゃない、只、過保護で無責任なだけです。」
「うぅ…!?」
それに対して待っていたのは、痛烈なカウンターの口撃だった。
「…聖闘士には、主神であるアテナが その使用を禁じた技がある。」
「シリュー君?」
そして不意に、シリューは聖闘士の事を話し出す。
いきなりの話題の切り替えに、戸惑う朱乃達。
「それは、破壊力も然る事ながら、その技の行使自体が、聖闘士として有るまじき行為に他ならないからだ。
一度使用するだけで、その者達は聖闘士の称号を剥奪されると共に、未来永劫、外道の烙印を押され、蔑まれる事となる。」
「「「………?」」」
「…しかし、死して尚、アテナの為、そして地上の正義と平和の為、敢えて その汚名を被るのを承知で、その技を断行した男達を、俺は知っている。
彼等の覚悟に比べたら、朱乃先輩や小猫の躊躇いなんて、本当に只の我が侭以外の何物でも無いですよ、俺からすればね。」
「「「……………………。」」」
シリューは其処迄話すと、
「…俺が言えるのは、此処迄ですよ。
後は、自分自身が一歩前に踏み出すかどうか…そして そのフォロー、背中を押すのは、部長の仕事ですよ。」
ソファーから立ち上がり、部屋の扉の前迄歩くと、
「折角の勝利ムードを、ぶち壊したという自覚は有ります。
…でも、今日の皆の戦い方を見て、どうしても言っておきたかったのも、理解して欲しい。
今日は もう、お茶って空気じゃないでしょうから、解散で良いでしょう?」
パタン…
「ちょ…シリュー?」
それだけ言うと、応接室を出て行った。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『あぁ、確かに、そんな出来事も有ったよな。』
…あの後は結局、シリューの言う通り解散となり、部室に1人残ったリアスは、スマホを取り出し、シリューの話していた事柄を知っていると思われる人物に連絡を取っていた。
「…ベッロさん、本当の事だったのね?」
「あの堅物が、そんな嘘を言う様に見えるかい?リアス嬢ちゃん?」
「じょ…?!」
その電話の遣り取りの途中、相手の自分の呼び方に、リアスは言葉を詰まらせた。
ベッロ・カンクロ。
この世界線に於ける、ギリシア・オリンポスの1柱である女神アテナの眷属であり、嘗てはシリューと同じ前世にて、最強と謳われた12人の黄金聖闘士(ゴールドセイント)の1人、蟹座(キャンサー)のデスマスクである。
「…そっちで何が有ったかは、俺が立ち入るべきじゃないから、詳しく聴く心算は無いが…あの紫龍が そういう話をするって事は、余程な事じゃないのかい?
…察するに、あの猫っ娘の おチビちゃんや、ポニーテールの お嬢ちゃんが自分の内側(なか)の力を使う事の躊躇に対する、覚悟不足の指摘でも したのかい?」
「なぁ!?あ、貴方もしかして、こっちの現場、覗いてたんじゃあないでしょうね?」
余りにもピンポイント過ぎる予測分析に、リアスは顔を赤くして、デスマスクを問い質す。
「いやいや、その辺りは、俺も この前の堕天使との戦闘で感じていたからね。
何故、自分の持ち得る能力(チカラ)を活用しない?…ってね。
アイツも、同じ考えなんだろうよ。」
「はぁ…分かったわ。
ありがとう、ベッロさん。
こんな夜に、電話して ごめんなさい。
それじゃ…」
そう言って、電話を切ろうとするリアス。
「あぁ~っと、リアス嬢ちゃん、物の序でだ、最後に1つだけ…」
「はい?」
しかし、デスマスクが それを止めて、話し始めた。
「紫龍が話していたって人物な、3人居るんだが…」
「えぇ、具体的には どんな技かは話さなかったけど、その話し方から、複数人で繰り出す技と云うのは、何となくだけど分かっていたわ。
それでも『死して尚』とか、訳解んなくて、聴きたい事は、他にも沢山有るけど…
それと、私の事は呼び捨てで構わないから、嬢ちゃんは止めて。」
「その内の1人は、アイツの右腕にエクスカリバーを託した人物だ。」
「え…?」
「アイツ等の覚悟を知っているから、そっちに どんな事情が有るかは知らないが、力の出し惜しみが許せなかったんだろう。
それが、道ずれ系の自爆技とかなら、また話は違ってくるだろうがな…」
「ん、分かったわ。
シリューにも言われたけど、後は私が何とかするから。」
「ああ。じゃあな、リアスちゃん。」
pi…ツーツーツー…
「…結局『ちゃん』付けかい!!?」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
翌日の放課後。
ガラ…
「…ちわっす。」
「こんにちは~。」
「あら、シリュー君にアーシアちゃん、こんにちは。」
部室に顔を出したシリューとアーシアに、朱乃が笑顔で応える。
「小猫は?」
「小猫ちゃんなら もう、ギャスパー君と仕事に行っていますわ。」
「あぁ、この前話していた、新規の外人サンの所ですね?」
「えぇ、そうですわ。」
それは、普段と変わらぬ会話の遣り取り。
昨日の衝突は、既に最初から無かったかの様だった。
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
『シリュー先輩、助けて下さい。』
「小猫?」
『シリュー先輩~、お願いしますぅ~!』「ギャ、ギャスパー?!」
シリューのスマホに、小猫からの連絡が有ったのは、それから2時間後の事だった。
‡‡‡‡【 次回予告(予定)!! 】‡‡‡‡
「初めまして…かな?赤龍帝?」
「貴様…何者だ!?」
次回:ハイスクール聖x龍
『白と黒(仮)』
乞う御期待!! コメントよろしくです。