◇シリューside◇
魔王降臨。
生徒会室に現れた魔王セラフォルー・レヴィアタン。
…魔王という存在は以前、リアス部長から聞かされていたが、その1人が支取先輩のお姉さんなんて、聞いていなかったが?
そういう事は、かなり大事な事柄であると思うのだが…
兎に角、その魔王は現れる早々に、妹である生徒会長の支取先輩…ソーナ・シトリーとの『姉妹漫才』という名のじゃれ合いを暫くの間 披露すると、漸く満足したのか席に着き、
「それじゃ早速会議、始めよっか!☆」
何事も無かった様に言ってのけた。
「「「「「「「「………………………………………………………。」」」」」」」」
その場の誰もが、「既に早速ぢゃねーよ!」と、目の前の魔王少女にツッコミたい顔をしているが、相手が相手なだけに、何も言えないという顔をしている。
仕方あるまい。
一応、形式の上で、俺は現在オカ研所属、リアス部長の仮眷属という事にはなっているが、基本的に悪魔とは『主従関係』等は無いからと、皆の代わりに声を大にして言おうとしたら、それを敏感に察知した、木場と匙に取り押さえられた。
「それじゃ、赤龍帝ちゃん、昨日の事を、改めて皆に説明して貰えるかな?☆」
せ…赤龍帝ちゃん…だと!?
一言、文句言ってやろうと思ったが、隣の男2人が「頼むから堪えてくれ!こーゆー人なんだ、察してくれ!」と目で必死に訴えかけてきた。
………………………………。
『こーゆー人』とやらは、さっきの漫才で、実は そんな気がしてたのだが…
うむ、支取先輩も大変だなあ…。
「それじゃ…初対面の人も居るので、改めて名乗らせて貰う。
赤龍帝…『人間』、神崎孜劉だ。
悪魔とは縁あって現在、同盟…とも少し違うが、互いに有事には協力しあう関係に位置させて貰っている。」
「「「「…………………………。」」」」
あ、生徒会の女子、何人かの顔付きが、少し変わった。
…と、いうか、睨まれた。
俺が実は、転生悪魔でないと、初めて知ったのだろうか?
その上での「人間」に対する種族差別か?
それとも、いきなり下僕とか、従属や隷属を否定し、悪魔と…例え魔王相手だろうと、『横』の繋がりをアピールしたのが気に入らなかったのか?
支取先輩…こういう大事な事は、きちんと言っておかないと。
報連相は、大切ですよ?
因みに事情をきちんと理解しているオカ研の皆や匙は普通に…いや、木場と匙は苦笑いしている。
▼▼▼
「皆、既に報せは聞いており、御存知なのを前提で話を進めさせて貰うが、昨夜…下校途中で堕天使に襲われ、結果、少しの時間だが戦闘となった。」
「「「「「「………………。」」」」」」
昨夜の堕天使との経緯を説明し始めるシリュー。
「紳士風な身成りをした、人間で云えば、40歳代くらいの男の堕天使だった。
恐らく最初は、俺を何処かに…アジトにでも拉致ろうとしたのだろうが、最終的には その場で戦闘。
だが、俺が発動させた
「ちょ…逃げたって神崎君、追う事は出来なかったの?」
此処で、生徒会の2年生の女子、巡巴柄が、まるで逃したのを咎めるかの様に質問してくた。
「ああ、追うと言うか、その場で仕留める事も出来た。」
「…だったら、何故?!」
「解らないのか?
確かに今の俺は『人間』ではあるが、立ち位置的には一応、『悪魔』サイドに属しているんだ。
その俺が、いくら正当防衛成立しているからと言っても、他勢力の者を軽々しく始末するのは、芳しくないだろう?
三竦みの事は、リアス部長達から聞かされて知っている。
だからこそ、敢えて深追いはしなかったんだが…これじゃ納得、出来ないかい?」
「~~~~~~~~~~~~!!」
三竦み云々故と言うシリューの発言に、巡は それ以上、何も言い返せなくなる。
「…続けさせて貰う。」
巡を黙らせた後、シリューは その やり取りが最初から無かったかの様に、話し続けた。
「奴等は俺の事を、赤龍帝だとは思っていなかった様だ。
俺の
だが逆に言えば、今回の件で向こう側に、俺という存在がバレた事になる。」
「ん?赤龍帝ちゃん?キミは今、『奴等』と言ったけど、以前から声を掛けて来たって云う女の子達も、同じ堕天使だと睨んでいる訳?」
「ええ。この短期間に、そこまで複数の集団が一度に接触してくるなんて、有り得ないでしょう。
何よりも、内側の人外の気配は、同一でしたからね。」
「成る程☆成る程…☆」
「それと、奴等は俺を、自分達の組織に引き入れようとする気は無かったみたいだ。
何しろ、いきなり殺しに来たくらいだからね。
どうやって知ったかは知らないが…恐らくは、俺が奴等や、この場にいる皆を、人間でないと見抜いた感覚と同じだろうが、兎に角、神器持ちである俺を危険視して消そうとしたのだろう。」
「いえ、多分、それだけではないわ。」
「部長?」
ここでリアスが口を開く。
「シリュー…
別の人間だろうと、堕天使だろうと…悪魔でもね。」
「それは、初めて聞いたな。」
「そして、
「成る程ね…」
リアスの説明を聞き、今迄の堕天使の接触に、改めて納得するシリュー。
「だが、俺が赤龍帝だと知った今、この先どう動いて来るかは予測不可能だな。
少なくとも昨日の奴は、俺の正体を知った途端に、怖れて逃げ出す様な雑魚だったからね。
もっと強い新手を送り込んで来るか、それとも不干渉を決め込むか…」
「お姉様、今後、赤龍帝と知っての上で、堕天使が神崎君に攻撃を仕掛けてくると思いますか?」
このシリューの見解に、ソーナがセラフォルーに意見を聞いてみると、
「あ~☆それは流石に無いと思うよ~?
でも、堕天使総督なら、興味を持って、自らコンタクトしてくるかもね?」
「それは勘弁して貰いたいな…」
シリューからすれば、大迷惑な予測をしてくるセラフォルー。
「まあ、赤龍帝ちゃんの報告は、こんなもんかな?じゃ、そろそろ本題☆」
「「「「「「「「!!」」」」」」」」
セラフォルーの言葉に、その部屋の学生達の顔が、一気に引き締まる。
「サーゼクスちゃんが、今回の堕天使の件、堕天使の総督…アザゼルちゃんに確認して貰ったんだけど、アザゼルちゃんが言うには『俺は知らん。下の奴等が勝手に動いてるのだろう。』…らしいよ☆」
「な…?たった、それだけなのか!?」
四大魔王の1人、サーゼクス・ルシファーが得たという情報量に、シリューは不満を露わにする。
「ん~、さっきも言ったけど、アザゼルちゃんにキミ…赤龍帝ちゃんの話をしたら、間違い無く
詳しくは話せないし、何しろ基本的には、種族レベルで殺し合う程仲が悪いからね、込み入って聞き出せなかったらしいの♪」
「やれやれだな…」
「ん~☆でも、裏を返せば、これは『そっちで勝手に始末しろ』って事だから…」
「次は殺っても、問題無いのだな?」
「そうなるね♪」
「……だったら!」
「リアスちゃん?」
「部長?」
ここでリアスが立ち上がる。
「私達が管理している、この駒王町に勝手に入り込んでいるだけでなく、シリューが…大切な仲間が攻撃を受けたのよ!
これは もう、万死に値するわ…
居場所が判っているなら、迷わずに討って出るべきよ!
レヴィアタン様、この地を管理する、グレモリーの名に置いて、此処に宣言させて頂きます。
この町に潜む不埒な堕天使共を、私達が速やかに排除します!!」
「ん☆ん♪リアスちゃんなら、そー言ってくれると思っていたよ☆」
リアスの発言に、満足気な笑みを浮かべるセラフォルー。
「ソーたん、そんな訳で、今回はリアスちゃん達に任せても良いかな?」
「はい、今回の被害者は、一応はグレモリー家に所属な形の神崎君ですし、何より、その神崎君が殺る気満々みたいですので…
…それと、お姉様?ソーたんは止めて下さい。」
「ゔ~、ソーたんの いけず~☆!」
「ああ、殺る気に否定はしない。」
ソーナの言葉に、シリューは肯を示し、セラフォルーは項垂れる。
「それなら、先ずは堕天使の潜伏先を…」
「町外れの廃教会だよ。」
「「「「「「「えぇっ!?」」」」」」」
シリューの その、答えを初めから知っていたかの様な、リアスの言葉を待っていたかの様な発言に、その場の全員が驚きの声を上げた。
「アナタ、何で知ってるの?」
「…何時から…ですか?」
「確認したのは、昨日の夜さ。
「こすも…前にシリュー君が言ってた、独特の魔力と闘気みたいな物でしたわね…」
「ねぇシリュー?その気配とやら、具体的な人数とかは判らないのかしら?」
「あぁ、それも昨日の内に、確認していますよ。
先ずは、堕天使が4人。
昨日の男と、以前から入れ替わりで声を掛けてきた、女が3人。
それと、信者みたいな奴でしょうか、普通の人間の気配が10人。
ただ、内1人の『気』は、かなり高い。」
「…本当に便利な
「あはは…神崎君が味方で、本当に良かったよ。」
シリューの高性能サーチ能力に、匙は呆れると同時に驚き、木場は その頼もしさに、ほっと胸を撫で下ろす。
会議は その後も続き、少し前に駒王町で起きた、少しばかり異質な殺人事件と、堕天使との関連の可能性を話し合ったり…
そして堕天使が潜むという、教会への立ち入りは、今夜、深夜0時と決定。
この時点で、会議は一先ず終了した。
…が、
「それにしても、赤龍帝ちゃん…シリューちゃんって、本当に凄いわね☆!
ねぇ、あたしの眷属にならない?」
「はい?」
ソーナの会議終了の挨拶と同時に、何を思ったか、セラフォルーがシリューをスカウトの声を掛ける。
「な…?れれれ、レヴィアタン様、何を、いきなり…?」
「ちょっ…?お姉様?」
「あたしの駒なら、シリューちゃんでも転生出来ると思うんだ☆!
そうだなあ…
テンパるリアスを後目に、勝手に話を進めようとするセラフォルー。
しかし、シリューは、
「すまないが魔王レヴィアタンよ、以前、リアス部長達にも言った事だが、俺は人間を辞めるつもりは無い。
悪魔とは基本的には上下が無い、
セラフォルーの申し出を、あっさりと一蹴する。
そして、
「そもそも俺は、赤龍帝である前に、
俺が仕えるのは、アテナだけだ。」
「え!?」「はい?」「え゙ぇっ!?」
次のシリューの言葉に、会議室内の、3人の純血悪魔が目を丸くし、
「し…シリューちゃんて、ロ…〇リコンだったの?」
「はぁああああああああああああ~っ!?」
◇シリューside◇
「シリュー先輩、サイテーです。
トーカちゃんと お付き合いしてたのは、ロリ〇ンを誤魔化す為の、カムフラージュだったのですね?」
待て待て待て待て!!
違う!誤解だ!!
おい、匙と木場、お前達も、さり気に距離を空けて遠ざかろうとするな!!
レヴィアタンの誘いを断るのに、アテナの名前を出したのが失敗だった。
世界が変われば、理も変わるか…
リアス部長から説明して貰ったのだが、この世界に於けるアテナが まさか、『白いブラウスの上にクリーム色のベスト、紺色スカートな制服に、猫耳を模した様な青いニット帽を被った銀髪の、見た目が小猫より背が少しだけ高い程度なロリ女神』だったとは…
おかげで突如として沸いた、ロリ疑惑。
「「「「…………………。」」」」
皆の視線が冷たい。
理論上、絶対零度以下の温度は存在しないと云われているが、それは嘘だ。
特に子猫と、先程、何やら言い掛かりを突けてきた巡を筆頭に、支取先輩と新羅先輩を除く、生徒会女子の視線が凄く痛い。
友よ…俺は今、正にお前以上の…絶対零度以下の凍気を体感しているぞ。
幸いにも この世界のアテナは、聖闘士や、それに似たような眷属を持ってはいなかった為、アテナはアテナでも、件のロリ神とは別の神だと、何とか無理矢理に納得して貰ったが…
▼▼▼
「さあ、皆、準備は良いわね?」
「「「「はい!!」」」」
そして深夜0時、オカルト研究部の部室に転開された転移魔法陣の前に部員が集結。
その転移先は、堕天使が潜伏しているとされる、町外れの廃教会…。
※トーカちゃん…小猫のクラスメートで、シリューの彼女。
近い内に登場させる予定だから、詳しくは その時に。
ただ、何気に伏線は出しているから、勘の鋭い人は、察したかも?
≫≫≫≫※次回予告!!※≪≪≪≪≪
「そうです、シリュー先輩は、〇〇〇〇〇〇〇〇ですから。」
「小猫、後で話がある…」
次回:ハイスクール聖x龍
『堕天使(仮)』
乞う御期待!!