【完結】聖闘士DxD   作:挫梛道

37 / 88
 
エクスカリバー編、締めです。
 



天使長ミカエルの受難

長い階段を登ると、巨大な鳥居が。

神社である。

一直線に敷かれた石畳の先には、本殿が。

 

「此処か…」

「………………。」

コカビエルを退けた6日後の土曜日の昼過ぎ、シリューとアーシアは、駒王町の神社を訪れていた。

サッサッサッ…

そして その前庭にて、紅白の巫女服に身を包んだ1人の女性が、箒を手に取り、掃除をしていた。

 

「あ、シリュー君、アーシアちゃん。」

「どうも、朱乃先輩。」

「お、お邪魔しますぅ~。」

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇朱乃先輩(あくま)が神を祀る神社に居る(しかも掃除してる)というのは、本来は有り得ない事だが、この神社は少し例外である。

元々は『姫島家』の管理下だったのだが、とある事件が きっかけで、朱乃先輩以外の『姫島』は既に絶えており、本殿に祀ってあった御神体も既に、余所の地に取り払われている。

謂わば、なんちゃって神社。

既に、文字通りの『神』不在(聖書の神とは別物)な建物となった この場所は、グレモリーの管轄となっており、裏手には、朱乃先輩の自宅も有る。

神不在だからこそ、悪魔な朱乃先輩でも、普通に住める訳だ。

そして何故、俺とアーシアが、この場を訪ねたかと言えば…

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「…初めてまして…ですね。

赤龍帝、神崎孜劉殿。

そして、アーシア・アルジェント。」

「は…ははは、はい!」

「………………。」

あらあらあらあら…

アーシアちゃん、凄く緊張していますね。

そしてシリュー君は、能面の様な無表情。

本当は苦虫噛み潰した863屋さんみたいな顔をしたいのを、一生懸命我慢しているのが、ヒシヒシと伝わって来ていますわ。

そして、この2人に話し掛けているのは、天界に於けるトップ中のトップ、天使長のミカエル…チッ…殿。

 

一連の騒ぎの際、学園を訪れた2人の聖剣使いによって、赤龍帝(しりゅーくん)を怒らせ、赤龍帝と天界が敵対関係と成りかねない事態になった件で、天界のトップが謝罪に来たと、云う訳です。

それが何故、私の家かと言いますと、その辺りが話された報告会の時点で、時と場所についてはシリュー君は「明日の放課後、部室で良いですよ」と言ったのですが、それにリアス、そしてソーナ様が難色。

近い内に会議を開く為、3大勢力が集まる際は、魔王様公認だから、しぶしぶと了承してましたが、それでも、その他の事で他勢力、しかもトップを学園、それも部室に呼ぶのは…と、種族感情丸出しな、凄く嫌そうな顔。

…かと言って まさか、其処等辺の喫茶店やファミレスなんかを対談させる訳にも往かず、仕方無いので、私の神社(いえ)を、対談場所として提供したのです。

当然、対価は戴きましたわ。

翌日の火曜日から金曜日まで、学食のスィーツを毎日、リアスに奢って貰いました。

小猫ちゃんにアーシアちゃん、ギャスパー君やレイヴェルさんが何時も、「学食のマンゴープリンは最強!」と揃って言っていた理由が解りました。

でも、少しばかり大変 美味しく戴き過ぎて、体重計に乗るのが怖いです。

あ…話が逸れましたね…。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

はうぅ…

みみみ、ミカエル様です!

私の目の前に、生ミカエル様が立っておられます!!

朱乃先輩に連れられて、3人で本堂に入った瞬間、部屋の奥の祭壇が眩く光ったかと思えば、其処には優しい顔をした男の人が立っていました。

背中から見える6対12枚の白い翼、頭の上には、正しくTHE・天使の環!…な輪冠が浮いています。

一目見て、この御方がミカエル様だと分かりました。

 

「………………………。」

そして、そのミカエル様を見たシリューさんは…この前、小猫ちゃんから借りたマンガに出てきた、『主役の男の子が らっきーすけべで彼女さんの お友達のスカートの中に頭を突っ込んだ場面を目撃した時の彼女(ヒロイン)』の様に、或いは『主役の男の子が知り合いの女の子にロッカールームで押し倒され、「さあ、子作りしよう!」って おっぱい丸出しで迫られてる場面に遭遇した恋人(ヒロイン)』の様に、瞳から光が消えて、冷めた表情になっています!

こ、この後、『しゅらば』が始まってしまうのですか!? (」゚O゚L)

何だか背中から、『ごごごごご…』って文字が見えてる私は、眼科さんに行かないといけないのでしょうか!?

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「…まずは、この度、教会から派遣した者が、貴方方に非礼な発言や不遜な態度を執り、不快な思いをさせてしまった事につきましてて、我々上層部の指示指導が行き届いていなかった事を、お詫びします。」

ペコリ…

天界の天使長が、赤龍帝に頭を下げて謝罪するが、

「……………………。」

シリューは無言無表情の姿勢を崩さない。

そんなシリューに対し、ミカエルは続けて低姿勢で、今回の騒動を発端とした、教会内部の処分内容を話し出した。

 

曰わく、

※ 紫藤イリナとゼノヴィア・クァルタは、戦闘能力を完全封印した上で、それぞれ、日本の東北地方と四国の寺院へ尼僧として派遣済み。

もう死ぬまで一生、寺院の外に、足を踏み出す事は無い。

※ バルパー以降、聖剣計画に携わった研究者や指導者は、その計画内の立ち位置、実績に関係無く、全員が その地位を最降格、今後、昇格は一切無い。

※『計画によって生まれた聖剣使い』は、それによって得た能力を完全封印。

※ 更にはアーシアを『魔女』と見抜けず、長年、聖女として祭り上げていた教会関係者も、降格処分済み。

 

※ 尚、今回の処分者で出奔者がでた場合、理由、経緯を問わず、『はぐれ』として、迅速に処分とする。

等々等々…

                  

「それと、これは お詫びの印として…」

「…!!」

そう言って、ミカエルが煌びやかな造りの長剣をシリューに差し出した瞬間、能面男の眼付きが鋭くなり、そして その眼に光が宿ったかと思えば、

斬!

その剣の刀身を、素手の…生身の手刀で根元から断ち斬った。

                  

「な…ななな…?」

「ミカエルよ…貴様は不山戯ているのか?

それとも、俺を舐めているのか?

この俺の機嫌を そんな物で、鈍(ナマクラ)なガラクタで釣れるとでも思っていたのか?

その心算ならば、せめて この孜劉のエクスカリバーよりも、切れ味の有る武具を持ち出して来い!

どの道、俺は物では釣れないがな!」

そして戦慄くミカエルに、893顔男が怒鳴り散らす。

悪手。

ミカエルとしては、天界が所持している最高峰の武具の1つ、竜討の聖剣・アスカロンを謙譲する事で誠意を見せる心算だったのだが、言い方は悪いがこの堅物に、物で釣って機嫌を採ろうとする行為…それは正しく悪手以外の何物でもなかった。

                  

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

あらあらあら…

正直、一通りの説明報告を終えた時点で、もう1回、頭を下げて切り上げたら、それでシリュー君も、一応は納得…は、しないでしょうが、とりあえず矛は納めたかもしれませんでしたのに…

最後のアレは、流石にアウトでしたわ。

このミカエル殿(笑)、流石は天界トップらしく、先日の2人以上にシリュー君を怒らせる事に関しては、本当に天才的ですね。

これって、天界勢の固有スキルですか?

 

 

「そもそも処分と言っても、結局それは計画に係わった『人間』だけで、貴様等『上』は、何の責任も取らない心算か!?」

「いえ…それは…」

焼け木杭にガソリン投入な、シリュー君の怒号は終わりません。

…でもシリュー君?

アーシアちゃんが また、はわわゎな困り顔になっているから、ほどほどに しておきましょうね?

私個人としては、鬼怒の顔で、ミカエル(もう こんなの、呼び捨てで おけーですよね?)を責め立てるシリュー君を、もっと見ていたいのですが♪

 

 

「ふん…所詮は貴様等、その程度の存在だろう?

何しろバルパー追放後も、計画その物は『使える』として、研究続行を、犠牲者の因子の使用を容認しているのだからな!!

表は聖人ぶっていて、その裏では、悪魔と変わらん!…いや、その悪魔でさえも、『悪魔以上の所業』と謂わしめる行為を平然と行っている!」

「う…そr!…」

シリュー君の言葉に対して、何か言おうとして、慌てた様に、途中で その言葉を飲み込んだミカエル。

恐らくは『それも人間達が勝手に…』みたいな、何処かの政治家の様な発言をしようとしたのでしょうが、それは尚更、赤龍帝の逆鱗と直ぐに気付いたのでしょう。

チィッ、惜しかったですわ。

それでもシリュー君の言っている事は、かなり正論と云うか事実ですので、ミカエルは何も言い返せません。

 

「アーシアにしても、そうだ!!」

「?」「!?」

そして話は、アーシアちゃんの事に迄 及んでいきます。

いいぞ、もっと やれですわ。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「アーシアの神器の【聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)】。

それも貴様なら最初から、悪魔すら癒せる…貴様等天界の基準から云えば、異端の神器だと判っていた筈!

ならば何故、直ぐに異端と断し、追放なりの処理をしなかった?

結局は聖剣計画同様に、『使える』として、異端発覚迄は、利用するだけ利用する心算だったのだろう?」

「…………………」

「……………。」

何も…下手に言い訳すると、更なる追及をされると判断したか、何も言い返さず、黙り込むミカエルと、事前にシリューから、余程間違った事では無い限り、多少言い過ぎであろうと、口出し無用と言われており、黙っているアーシア。

 

ミカエルからしたら、異端の神器云々の打算でなく、純粋にアーシアの信心深さ故に、天界…教会から追放させる心算は無く、まさか、本当に悪魔を癒してしまうと云う、その様なシチュエーションに目撃者付きで居合わす事になるのは想定外。

彼女自身、その者が悪魔だったと知らなかったのも有るが…いや、アーシアなら、傷付いている者なら、それが例え悪魔だろうが、普通に癒しかねないだろう。

仮に、教会が神器を持っているのを確認した時点で、ある程度の『戦士』としての教育を施し、ゼノヴィアの様な…いや、あそこ迄 私様でなくとも、少し位は「天界EREEEEEE!!」な意識を植え付けていれば…全ては既に「たられば」である。                  

「…神器に関係無く、アーシアの様な信仰心ある献身な信徒は、出来る事なら手放したくはなかった…と、云うのだけでも、信じては貰えないでしょうか?」

「…ならば!」

ミカエルの、止むを得ず…と言う主張も、シリューには通用しない。

 

「ならば何故、追放した後 直ぐに、教会とは関係無く、救いの手を差し伸べようと、しなかった?

貴様なら、教会の人間には知られない様、住む場所や生活費用の援助等、容易かったろうに!

結果、アーシアは路頭に迷い、堕天使に利用されて命を落とす事になっていたかも知れなかったのだぞ?

偶々 俺達が そうなる前に、その堕天使を始末したから!

偶々 俺が、迷子のシスターを拾ったから!

…だから今、アーシア・アルジェントは、この場所に居るんだ!」

「……。」

またも、黙り込むミカエル。

成す事言う事が、悉く赤龍帝の逆鱗に触れる行為となり、完全に手詰まりとなる。

天使長が、魔王でも堕天使総督でもない、只の…偶々 神器を持っており、偶々 過酷な鍛錬の末に、超人的な能力を持っているだけの、只の『人間』に、話術で屈してしまう。

では仮に その『人間』に、この場で『力』を行使、『力』で無理矢理に解決しようとしたら、どうなるか?

…この話し合いの場を設ける際、ミカエルはサーゼクスから、このシリューこそ、堕天使幹部のコカビエルを圧倒的実力で打倒したのは知らされていた。

そして これはサーゼクスも知らぬ事、即ちミカエルも知る筈の無い事だが、紫龍は前世にて、主神の加護を授かり、そして数人掛かりとは云え、ギリシア系列の3大神の1柱、冥王の側近の『眠りの神』を打倒している。

如何に『長』の肩書きを持つとは云え、『神』の僕である『天使』如きが、敵と成る筈が無い。

…尤も これは、前世と今生の、『神』の実力が同等であるならの、話ではあるが…

更に言えば、今この場で赤龍帝を討てたとしても、それは多少、言葉は荒いが、赤龍帝の『正論』に、天使長が逆ギレを起こしたと、この場の立会人となっている朱乃が魔王に報告する事になる。

ならば今度は、3大勢力が集う会議の前に、天界と悪魔陣営の衝突が待った無し、しかも その経緯を知れば、堕天使陣営も悪魔側に味方する事になるだろう。

だからこそ、ミカエルは迂闊な行動が出来ずにいたのだ。

 

結局アーシアの件は、この場の話し合いの主題では無いとし、それ以上語られる事は無く、今回の発端となった、最初にオカルト研究部を訪ねてきた、2人の聖剣使いの非礼な言動についても、機嫌取りの為に取り出した聖剣とは別件で、その前に述べた処罰で、シリューは1000歩譲って一応の納得をする。

そして最後、心底 気まずそうな、そして罰が悪そうな顔をして去ろうとする天使長に、一言。

 

「まさか、アーシアの他にも、教会基準で異端認定の神器所有者を、『利用出来る』という理由で飼い殺しの末に、異端発覚と同時に、蜥蜴の尻尾の如く切り棄てる様な真似は、現在進行形込みで、していないだろうな?」

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ぷっくぅ~…

                  

…………………………。

おや、アーシアさんや、そんなに頬を膨らませて、涙顔で睨み付けるのは、止めてくれんかね?

ちょっと可愛いよ?

そうだな…トーカの78㌫くらい。

                  

「う~!何で こんな顔してるか、理解出来てないんですか!!?」

「…ついでに然気に惚気るの、止めましょうか。」

「はいはい!解っています!

本の少しだけ、キツく言い過ぎた感は、自覚しています!」

「「少しだけ?」」

「あー!兎に角もう、あーゆー奴には、あれ位 言わないと、分からないんだから!」

何だか必死な俺。

 

「ううぅう~~~~!」

それでも、理解は出来ているが、納得は往かないと言いた気な顔のアーシア。

 

「あらあらあらあら…」

そして そんな やり取りを、凄く楽しそうに見ている朱乃先輩が、

チョイチョイ…

「アーシアちゃん?ちょっとちょっと♪」

…と、激おこ金髪娘を手招きからの…

「…………………。………。」「…!!」

…何やら耳打ち。

 

「…シ・リューさ・ん?♪」

直後、打って変わってな、凄く にこやかな顔で話し掛けてくるアーシア。…&、凄く にこやかな顔な朱乃先輩。

凄く、嫌な予感がするのですが…

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「「いっただっきま~す♪」」

「………………………………。」

俺は今、とある甘味処に来ている。

そしてテーブルの上には、コーヒーが1つ、そして、GIGAプリンパフェが2つ…。

その超巨大プリンを、ポニーテールな黒髪さんと、ストレートの金髪さんが美味しそうに食しております。

はい、アーシアさんは、物(スィーツ)で機嫌が釣れました。

まあ、これで機嫌を直してくれるなら、安い物だけどね。

…って、一番美味しいのは、朱乃先輩だよな…

 

 

「あら?孜劉先輩…と、アーシアさん?」

「劉兄さん?」

「あ、トーカの彼氏サン兼、神崎ちゃんの従兄サンだ!」

「えー?そうなのー?矢田さん、凄いイケメンじゃないの!」

「あ…」「あ、トーカさん!」

其処に現れたのは、トーカとユキコと、その お友達?2人。

1人は、この前にトーカん家で、会ったコだな。

もう1人も、やはり中学時代の友達かな?

 

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

「…まあ、アーシアさんと姫島先輩なら、部活の付き合いなんでしょうけど…」

いやいや、彼女以外の女の子侍らして…な場面で出くわした日には、普通は浮気な現場と思われても仕方無いだろうが、物解りの良い彼女で助かったぜ。

 

「…でも、この2人に ご馳走するって言う事は…ね?♪」

「え゙!?」

「「「いっただっきま~す!♪」」」

…結局この4人にも、スィーツを奢る羽目になってしまった…(T_T)

 

 

しかも、この初対面の…何だか小猫と似たような身長と体型なトーカの友達が、遠慮無く、コッチのテーブルと同じ、GIGAプリンパフェを注文しやがった!!

 

 




 
因みにですが、シリューはライザーとのレーティングゲームのファイトマネーやら、その後の誘拐未遂事件の慰謝料やらで、誠に遺憾ですが、高校生としては、かなりな金持ちとなっています。
 
‡‡‡‡【 次回予告(予定)!! 】‡‡‡‡
 
次回:ハイスクール聖x龍
『ギャスパー・ヴラディ(仮)』
乞う御期待!! コメントよろしくです。
 

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。