デッちゃん回です(笑)
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「ぷっくっくっく…
それにしても おま、何ちゅー格好だ?
その帽子は兎も角、サングラスとマスクって、不審者100㌫だぞ?www」
「やかましいわっ!!
誰のせいだと思っている?!
そもそも俺は まだ、高校生だぞ!
こんな店に呼ぶな!学校にバレたら退学(クビ)だぞ!?クビ!!」
…久し振りに会った早々に、人の格好を見て笑う この男…今は、ベッロ・カンクロと名乗る男に、怒鳴りながら突っ込む俺は、絶対に間違っていないと思う。
「…何年振りだ?
俺からすれば まだ、55年振りだが?」
「…俺は、ン100年になるな。」
「マジか?!永く生きたんだな、お前?
教皇にでもなったか?
それとも老師みたく、心臓を…?」
「一応、教皇の地位に就かせて貰った…」
「おぉ、出世したんだな、お前!
よし、とりあえず再会を祝って乾杯だ!
おいマスター、ウイスキー2杯、ロックでくれ!」
「だから俺は、高校生だと言っているだろうが!!」
すぱかーん!!
「あじゃぱーっ!!」
…(戸籍上)未成年の俺に、いきなり酒を勧めようとする、この不良老人にハリセンかましたとしても、俺は悪くないと思う。
「あ痛たた…相変わらず、容赦無えな、お前。
もう俺も、労わり敬うべき歳だぞ?甚振ってどうする?」
「やかましいわ!言いたい事、聞きたい事は沢山有るが、とりあえずは率直に聞く
ぞ?この俺に一体、何の用だ?」
「いや、一緒に酒を…って、冗談だ!
冗談だから、そのハリセン仕舞えって!!」
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「アテナ…?」
「ああ、俺が彼女の眷属になったのは、5年前だがな。
いきなり目の前に現れて、『貴方から、妾の気配を感じた…何故?』って感じでよ。」
「小宇宙(コスモ)の事か…」
「結論から言えば、それだな。」
俺の前世(すじょう)を知る この男が、自身の近況を語り始めた。
この世界に、俺と同じく、前世の記憶と小宇宙を身に宿した儘、あの世界線から転生してきた人間が居たのに、先ずは驚いた。
しかも それが、まさか この男だったとは…
「直感的に、彼女をこの世界のアテナと確信したからな。
俺は前世(むかし)はアレだったからな、その清算の意味も込めて、直ぐに こちらのアテナとは、主従の契約を交わし、今度こそはとばかり、忠誠を誓ったぜ。」
「アテナ、か…」
「紫龍よ…」
「ん?」
此処迄話すと、目の前の男は、急に真剣な面持ちとなり、話し続けてきた。
「お前も聖闘士なら、俺達の、アテナの処に来い。」
「ん、ごめん、無理。」
「即答っ?!」
そして、今回 俺を呼び出したメインの用件であろう、アテナの眷属の誘いをしてきたが、迷う事無く、断った。
「確かに、悪魔陣営と契約する前の誘いなら、前向きに考えてもいたかも知れん。
…が、その後とならば、例えアテナからの誘いとは云え、ほいほいと節操無く鞍替えする訳には いかん。
俺も聖闘士として、アテナへの忠誠を棄てる心算は無いが、俺の言うアテナとは、あくまでも 彼方のアテナ…沙織お嬢さんであり、この世界のアテナではない。」
「………。」
俺が誘いを蹴る理由を、アテナの眷属である初老の男は、手に持っていたグラスをカウンターテーブルの上に置き、黙って聞いている。
「アンタの言う、清算というヤツも理解は出来るから、アンタの今の選択を否定する心算も無いが、俺は、今の俺の立ち位置を貫かせて貰う。
先に言っておくが、悪魔云々の文句は言わせんぞ?
少なくとも この世界では、神も悪魔も、そして人間も含めて、其れ等は単なる種族違いの存在でしかないんだからな?
…って?おい?」
俺なりの、アテナからの誘いを受け入れる事が出来ない理由を話していると、最初は それを真面目な顔で聞いていた、ベッロ・カンクロは何時の間にか、ぽかんと間の抜けた表情になっており、
「ぷっくっくっく…きっひっひ…
ぎゃーっはっはっはっはっはっは!!」
パンパンパン!
…かと思えば いきなり大爆笑、笑い泣きしながら、俺の肩を叩き出した。
「おぃ、アンタ…」
「ひひ…いや、悪い悪い…全く、予想通りの堅物な返事だったのでな、つぃ…www」
な、殴りてぇっ!!!!
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「痛てて…
いや、アテナも言っておられた。
簡単に鞍替えするヤツは、逆に信用が出来ないってな。
お前を此方側に、味方に取り込もうなんて最初から無理だと判っていたさ。
…だから、我々の方が、お前の味方になってやる。
縦の主従関係ではなく、あくまでも対等な横の繋がり…同盟ってヤツだ。
それを言う為に、お前を呼んだんだ。」
「この俺に、悪魔側と二又をしろと言っているのか?」
「いざとなれば、悪魔側最優先で構わないと、アテナは仰っているが?」
「それでも、信用の問題は変わらんだろうに…
ハァ…分かった…一応は魔王に、こういう誘いが有った事を報告しておく…
まあ、少し前に『アテナ』とい名の女神に仕えていた事は話した事もあるし、オリンポス勢なら、天界や堕天使勢力とは違い、頑なに駄目…とは言わんかも知れんが…どっちみち返事は、その後だ。」
「お前さんも、立場が有るだろうからな、とりあえずは、それで構わんよ。」
クィ…
その台詞と共に俺達は、それぞれグラスの中のウーロン茶とウイスキーを、一気に飲み干した。
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「…でもな、俺は今も、あの時の行動は間違っていたとは、思ってないんだぜ…?」
「…おい、飲み過ぎだろ?」
…一通り、話が終わった後、ついでだからと、色々と話していく内に、かなり酒が回ってきたのか、敵として戦った時の事を語り出してきたベッロ・カンクロ。
「生まれたばかりの、赤ん坊なアテナよりも、教皇…による力の統治の方が、最終的にはポセイドンもハーデスも退け、地上の平和を維持出来ると判断したんだ…
俺も、あの2人も、な……。」
「………。」
「だから、やがて訪れる平和の為ならと、汚れた仕事も、自ら進んで やっていったんだ…俺達自身が信じた、正義の為に…
まさか、サガが教皇を殺害して、成り代わっていたとは思わなかった。
ましてやサガに裏の人格が有り、ソイツが地上支配を目論んでいたなんてな。
…それが分かっていたら、お前達が聖域(サンクチュアリ)に乗り込む前に、黄金聖闘士全員で、アイツをぶっ殺していたさ。
それだけは、信じて欲しい…ぅっぷ…!!」
「わ、分かった、信じる、信じるから!
今夜は もう止めとけ、なっ?」
リバースしそうな酔っ払いの背中をさすりながら、宥め賺す俺。
正直な話、この男に関しては、確かに初めて会った時から暫くは、色々と良くない感情を持っていたのも事実だが、あの時の、『嘆きの壁での一件』以後は、少なくとも俺の方からは確執は無い心算でいる。
「本当に大丈夫かよ?家族には、見せられん姿に なってるぞ?」
ピク…
「…!!家…族…?」
この『家族』という言葉に反応したかの様に、ほんの数秒前迄、「うーうー」言いながら蹲っていた酔っ払いの動きが止まった。
やば…『家族』は地雷だったか?
「紫ぃ龍ぅ~~~~~~~~~~~っ!!」
「は、はいっ?!」
凄い迫力な顔で此方を見る、黄金聖闘士の先輩。
しまった…
考えてみたら、俺同様に、小宇宙(コスモ)や記憶を其の儘に、転生してきたのだ。
幸いにも俺は、少なくとも数ヶ月前迄は、極々普通な、平和な世界の住人として生きてきたが、この男も そうだとは限らなかった。
その能力故、平和な日常とは かけ離れた世界で、家族とは無縁な世界で生きてきたとしても疑問は無い。
ぶっちゃけ、殴られても仕方無い。
…そう思っていると、
「そうだ!家族だ!!
よくぞ言った、紫龍!!」
「へ…?」
そう言いながら、上着のポケットから、スマホを取り出しましたよ?この人。
「これが俺のカミさんでな、これが娘で、そして この子が、孫娘だー!!」
そして次々と…昔は かなりな美人だったんだろうと思わせる初老の女性、その面影のある、20代後半な金髪女性、そして それを受け継ぐ、将来の絶対勝利が約束された顔立ちの、黒髪幼女の画像を次々と見せてきた。
「ふっふっふ…実は日本に来た最大の目的はな、この孫娘に会う事なのだ!」
悪人面を崩し、幸せそうに にやけながら話す男。
しまった…
この男、『家族』は別ベクトルで、地雷だった。
その後も延々、約30分の間、家族自慢を聞かされたり、孫との2ショット写真を見せられたり…
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「ん~、天使や堕天使の勢力でないなら、大丈夫だよ~。
シリュー君の知り合いなんだろ?
悪魔(ぼくたち)の方が優先だったら、問題無いから~。」
……………………………………。
そして漸く店を出る前、結界を取り払うと同時に『人払いによる営業妨害の詫び代込み』だと、カウンターに大勢の諭吉さんを置いていった男と別れた後、早速 魔王ルシファーに事の経緯を報告すると、あっさりと個別の同盟契約OKの返事をくれた。
即答は有り難いのだが、そんなに簡単にOKして良いのか?それで良いのか?魔王?
‡‡‡‡【 次回予告(予定)!! 】‡‡‡‡
「本当に貴様等は天才だな…
この赤龍帝の逆鱗に触れる事に関してはなあ!!」
次回:ハイスクール聖x龍
『暗闇の翼!堕天使コカビエル!!(仮)』
乞う御期待!! コメントよろしくです。