何だかシリューも、チンピラ化してきた…
「その剣…まさか…聖剣か?」
「いぃぐざくとぅりぃ~ぃ!
そうでぇ~す!
ボスと一緒に教会からパクっちゃった、聖剣・エぇっクスクゎあリブヮ~ぁ!様にて御座いま~すでっすぅ!!」
フリードの持つ、白銀の剣から発する【氣】に、本能的に不快を感じた木場が質問すると、それに勿体振る事無く、且つ、人を虚仮にしているとしか思えない口調で、聖剣だと答えるフリード。
「あひゃひゃひゃひゃひゃ!
廃教会(ここ)に居りゃ、その内に糞教会の奴等か糞悪魔が釣れるとは思って張ってたが、まっさかソレが、この前のテメー等…しっかーも!糞赤龍帝も一緒とわなあ!
俺っちツイてるぅ!!
一部、知らないヤツも、混ざってまっすけっどお?」
「っ…!!」
キィン…
絶叫しながらのフリードの白銀の刃と木場の漆黒の刃が、再び交差する。
「木場、気を付けろ!
その聖剣、悪魔(オマエ)達は掠っただけで、大ダメージだぞ!!」
「木場!」「木場さん!」
「木場君!!」「「祐斗先輩!」」
「皆、手助けは無用!下がっていて!」
加勢しようとする一同に、それは不要だと制する木場。
尤も、加勢をしようにも、場は狭い通路。
多人数での太刀回りが出来る広さは無い。
「ライン!」
…故に、助太刀の方法は、限られていた。
匙が左手に発動、具現化させた黒い蜥蜴を象るかの様な手甲型の神器の先端から、やはり蜥蜴の舌を連想させるパーツが鞭の様に伸び、
シュル…
「な、何ですかぁ?これわぁあ!??」
それがフリードの、剣を持っていた右手に巻き付き、動きを封じる。
直ぐ様に剣を左手に持ち替え、この『舌』を切断しようとするフリードだが、
カシッ
「…って、斬れないし?」
「残念!ソイツは ちょっとやそっとじゃ斬れないぜ!
木場!お前も正々堂々とか拘ってんな!
良ーから早く、殺っちまえ!!」
「仕方無い…そして、有り難い!」
予想以上に硬かったのか、それは適わず、苦笑する木場に絶好の隙を与えてしまう。
しかし、
「遅っせぇ!!」
キィン…
「な…?」
木場の、【騎士(ナイト)】の駒の特性を活かした高速の斬撃を、フリードは容易く受け止める。
「くきゃきゃきゃ!“速さ”で勝てるとでも思ったってか?糞悪魔ぁっ!!
この【天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)】になぁ!!」
斬!
「うっく…!?」
「木場ぁっ!!」「祐斗先輩!」
遂に その聖なる刃が、木場の胸元を横一文字に掠め、膝を着かせ、
「邪あ魔っ!!」
スパッ…
「あっ?!」
匙の左手から伸びていた、神器の舌も、精神を集中させ、剣に宿る【聖氣】を解放する事により斬り裂いた。
「トっドメ~ぇいぇい!!」
「…!!」
そして聖剣を両手持ちで頭上高く構えたフリードは、目の前に倒れている木場の脳天目掛け、一気に振り降ろすが、
ガン!
「…でっすよね~?
そうじゃないかと、思ってましたぁ~!」
「そりゃ…どーも!!」
(Boost!!)
シュッ!
「おゎっとぉう!!?」
間髪入れずに両者の間に入り込んだシリューが、左腕の赤い籠手で、その刃をブロック、続け様にサイドキックを放つが、これはバックステップで躱されてしまう。
「しゃっああぉう!!」
ダッ!
だが、その次の瞬間には、狂気に歪んだ嗤い顔で、フリードはシリューを新たな獲物と認識したかの様に、突撃を仕掛ける。
「ひゃはは~い!
俺っちの剣の才能と、この【天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)】による加速!
それ即ち!MU・TE・KI・なんだよ!!
おぅら赤龍帝ぇい!腸ぶち蒔けて、死ねさらせやぁ!!」
そう言いながらフリードはシリューに対し、右からの斬り上げを狙う。
斬!! カラーン…
「な…何ですとぉ~っ?!」
「あ…うん…だ、よね…」
「…はい。」
「そんな風になる予感は、してました。」「僕もですぅ。」
「おぉ~ぅ!!(パチパチパチパチ)」
「す…凄い!」
…が、【天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)】の一撃は、カウンター気味に放たれた、シリューの右の手刀で、呆気無く斬り落とされた。
残された柄を見ながら、信じられない顔のフリード。
それを驚く事無く、想定内として平然なオカ研部員。
そして、事前に予備知識として聞いてはいた為、改めて それをリアルに見て、感嘆と喝采な生徒会メンバー。
「おっ前ぇ~、オカシクねーか?
お前っ今、聖剣を叩き折ったでなくて、斬っただろ?
左手の籠手でってなら まだ納得出来るが、普っ通ーの生身の素手チョップでコレって、ちょっと有り得ねーぞ?!」
ビシィッ!
柄だけとなった聖剣を向けながら、シリューに問い詰めるフリードだが、
「単に その玩具の斬れ味よりも、俺の手刀が勝っていた。只、それだけだ!!」
バキッ!
「ぐぺぺー!」
ダッシュで間合いを詰められたシリューに、その返答と共に右の拳を顔面に浴び、その場にダウンしてしまう。
それに追い打ちを仕掛けるシリューだが、
プッシュヮーーっ!!
「うぉ?!」
「「えっ!?」」
「汚っ!!」
「おぉっ?!」
「「な…?」」
どうやらフリードは、先程の右拳で口の中を切っていたらしく、立ち上がり様に、口内に溜まった血をシリュー目掛けて毒霧の如く噴射、その予想外の攻撃により、怯んだ一瞬の隙に距離を取り、
「…ならば お次は、この【夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)】で、今度っこそ首ちょんぱしてやっからよ~!!」
スチャ…
脇に携えていた、もう1本の聖剣を構え、戦闘続行の意思を見せた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「あの時の、はぐれ悪魔祓い…ねぇ…」
「すいません。せっかくのの手掛かりだったのに、逃がしてしまいました。」
「いいえ、皆が無事で良かったわ。」
…あの後、フリードの2本目の聖剣も俺が速攻で斬り落とし、更に取り出した3本目の聖剣の登場と共に、バトルは仕切り直しになるかと思えば、あの狂神父、距離を開けた睨み合いの中、懐から取り出した煙玉を炸裂。
自身の真横の位置にあった隠し通路…即ち抜け道から撤退、あの戦闘中毒者(バトルジャンキー)も、流石に不利だと判断したのだろう、俺達からすれば、まんまと逃げられた形となってしまった。
木場の負傷をアーシアが治癒した後に、廃教会の外に出た俺達は、リアス部長に成り行きを報告、直後に部室に戻る事に。
「…その前に、これも偶々ですが、あの教会の2人組とも会いましたが、教会本部にはシリュー先輩との やり取りの報告もせずに、任務放棄している感が有りました。」
「ん~、お兄…魔王様からも、その件について、天界サイドからは何も言ってこないって言ってるし…どうする気かしら?
もしかして、本当にシリュー…赤龍帝を敵として見る心算なのかしら?」
「まあ、報されてないなら仕方無い。
教会の…特に戦闘要員は知らない儘に、敵として死んで貰うとするかな?」
「ちょ…シリュー?」
「…冗談ですよ。」
「本当に…?(¬_¬)」
何ですか?その目は?信用して下さいよ。
…理由、経緯をきちんと説明した上で再起不能手前迄に痛めつけて、改めて あの2人の代わりに、『天界は赤龍帝の敵になった』とメッセンジャーに なって貰うさ。
一番最初の奴だけはね。
…と云うのは、部長に言うと、また話が ややこしくなるから、黙っておく。
…その後の話し合いで、あの廃教会も放置するのは芳しくないとして、グレモリー家が不動産業者を介して買い取り、建物の外から地下から、一度、全てを完全に取り壊す事に決定。
その後に、来年の3月には高等部を卒業する部長や朱乃先輩の為の、オカ研…というか、リアス・グレモリー眷属の第2拠点的な建物を建てる運びとなった。
教会跡地に悪魔の拠点…ですか…
この日は、他の戻ってきたメンバーからの一通りの報告の後、明日も今日と同じ時間に この場所に集合と決定した後、解散となった。
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その日の夜。
「この店…か…」
シリューはロングコートにシルクハット、あの堕天使ドーナシークの様な格好に、更にマスクとサングラスな、結構 胡散臭さ満載な出で立ちで、駒王町の駅前にある、1軒のバーの前に立っていた。
「全く…高校生を、こんな店に呼び出すなよ…」
6月下旬にしては、やや季節外れな格好でボヤキつつ、店内に入っていくシリュー。
前日の夜、シリュー宛てとして森沢を介して受け取った、悪魔契約者からと思われる手紙。
それには、この時間帯、この店で待つという内容が書かれていた。
日付が書かれてなかったのは恐らく、この手紙の主は、毎日この店に通っているのだろう。
「ベッロ・カンクロ…何者だ?」
手紙本文の最後に記されてあった、差出人の名前…Bello・Cancroという名前には、まるで心当たりが無い。
しかし、間違い無く自分を知っている人物という確信だけは有る。
何故なら この手紙の文章は、ギリシア語で書かれていたからだ。
「俺を、聖闘士だと知っているとしか思えん…一体、何者なのだ?」
ギィ…
扉を開けてみると、それなりに小綺麗な店の作り、場所的にも時間帯からも、それなりに客で賑わっていてもおかしくないのだが、店内には扉正面のカウンター席に1人、背の高い、白髪混じりの金髪の男が座っているだけだった。
「ふぅ…漸く来たか…」
「…………………。」
扉を開ける前から、店内には誰も居ないのは、実は予測出来ていたシリュー。
常人ならば、無意識に足を遠ざける、人払いの結界が張られていたから。
最初から店内に居たでのあろう、カウンターの内側の店員は、まるで催眠状態の様な虚ろな眼をしている。
クィ…
そしてカウンター席の男は、手にしていたグラスの酒を飲み干すと、椅子をクルリと回転させ、シリューに顔を向ける。
この、鋭い目をした初老の男は、シリューの顔を見るとニヤリと笑い、話し掛ける。
「久し振りだな紫龍…いや、今は、孜劉…だったかな?」
「な…お前は…まさか…??!」
‡‡‡‡‡‡【次回予告!!】‡‡‡‡‡‡
「私は戦争が大好きだ!!」
次回『勧誘(仮)』
乞う御期待!!