5月■日(日)。
ついに、ライザー・フェニックスとシリューとの間で行われる、レーティングゲームの日が やって来た。
ガラ…
「やあ。」
「シリュー、遅いわよ!」
「な…!?まだ、30分前ではないか?」
時刻はAM9:30。
シリューがオカ研部室に顔を出した時、既にアーシアを含む部員が勢揃い、
「シリューたん、遅いにょ。」
駒王の生徒ではないので部員ではないが、数日前にリアスの眷属となったミルたんも、きっちりと部室に来ている。
そして、
「お待ちしておりました、神崎様。」
「グレイフィアさん…」
今日のゲームの進行責任を、魔王から任されている、グレイフィア・ルキフグスの他にも、
「よっ、応援に来てやったぜ!」
「神崎君、今日は赤龍帝の お手並み、拝見させて貰いますね。」
駒王学園高等部生徒会長の支取蒼那…ソーナ・シトリーが、自身の
◇シリューside◇
「…では、私達は、これで失礼します。
時間が来たら、転移魔法陣が現れますので、それに入って下さい。
ゲームのスタート地点…赤龍帝チームの本陣にジャンプしますので。」
オカ研の皆や匙、支取先輩に新羅先輩と、色々と話してると、やがてグレイフィアさんが それを締める様に話し掛けてきた。
…ていうか、また魔法陣で転移か…
「安心して下さい、転移酔いはしない仕様に調整しています。」
おぉ、俺の不安を見事に払拭してくれる。
この辺りは流石はメイドさん、至れり尽くせりとは、この事を云うのだろうな。
「…多分。」
…をゐっ!?俺の感心、返せ!
「それじゃ、シリュー、頑張ってね。
ミルたんとアーシアも。
…てゆーか、絶対に勝ちなさいよ!
信用してるからね!!」
「任せろ!」
リアス部長が退室前に激励。
彼女からしたら自分の縁談破談が賭かっているだけあり、多少なり目が血走っている物の、凄く顔が、真面目になっている。
あんな真面目な顔の部長、初めて見たかもしれないな。
「相手は不死身のフェニックス。
油断は禁物だよ。」
「大丈夫。シリュー君達なら、きっと勝てますわ。」
木場や姫島先輩も、笑顔で声を掛けてくれる。
「シリュー先輩、勝てたら御褒美に、トーカちゃんには内緒でスィーツ食べ歩きデートしてあげまs(すぱーん!)あ痛ぁっ!?」
「ははは…ありがとな。
でも悪ぃ、俺、トーカ一筋なんだ。」
まあ、気持ちだけは有り難く受け取っておくよ。
そう思いながら俺は、場を和ませようとボケてくれた このチビッ娘に、笑いながら感謝の気持ちを込め、軽く
…って、そのスィーツとやらの代金は、誰の財布から出る予定だったのだ?
「神崎君、今回のゲーム、椿姫や匙は兎も角、他の生徒会の皆に、貴方の実力を示すチャンスです。
見事な戦いを、期待しています。」
そして支取先輩の、この言葉。
確かに俺は、先輩方や匙を除く、生徒会の面々からには信用されてないと云うか、認められてないと云うか、嫌われてると云うか…
先輩曰わく、連中は、如何に赤龍帝と言っても、所詮は悪魔ではなく『人間』と思っているらしい。
全く…自分達も少し前迄は、その『人間』だっただろうに、人を棄て、力を得た途端、優越感からの種族差別か…
尤も それは、以前の会議の時から感じてはいた事だが、
「「「「「…………………。」」」」」
何か言いた気な顔で残りの連中…先輩の眷属で、大学生である人狼サン以外の奴等が、俺の顔を見てると云うか、睨んでいると云うか…
まあ、俺としては、派手に暴れさせて貰うとするさ。
精々、ドン引かない様に、注意しとくんだね。
「最後に神崎様…いえ、赤龍帝殿。
此の度のゲーム、グレモリーとフェニックス。
両家の家族の皆様は勿論、魔王様や元老院の皆様も、観戦される予定になっております。
皆様方、伝説の赤龍帝の名に相応しい戦いを、期待している…との事です。
それでは…御武運を…」
グレイフィアさんの この言葉と共に、リアス部長達も部屋を出て行き、部室には俺、アーシア、ミルたんの3人だけとなった。
≫≫≫
「来たみたいにょ…」
それから少しして、部室に転移用の魔法陣が、
「よし、行くぞ!!」
「は、はい!」「にょ!」
俺達は、その魔法陣の上に立ち、戦場へと転移するのだった。
≫≫≫
「ここは…」
「部室…にょ?」
「もしかして、転移に失敗したのでしょうか?」
転移した…と思えば、その先は また部室だった。
「いや2人共、窓の外、空を見ろよ。」
「…にょ!?」「こ、これは…?」
俺達が見た窓の外の景色、それは何時もの旧校舎から見る、何時もの学園の風景。
しかし 空だけが、今日の朝からの快晴の空でなく、何も無い…雲も、星も、太陽も無い真っ白な空…
何の ざわめきも聞こえない、まるで時が止まったかの様な静寂の空間だった。
『…ライザー・フェニックス様、神崎孜劉様、聞こえていますね?』
「「「!!?」」」
この時、グレイフィアさんの
▼▼▼
『本日のレーティング・ゲームの
ライザー様の本陣は本校舎の生徒会役員室、神崎様の本陣は旧校舎、オカルト研究部部室とします。
此より約1時間、戦略の打ち合わせや自陣にトラップを仕掛ける準備時間とします。
各部屋のテーブルに、学園の地図が置かれている筈ですが、ゲームスタート迄は、その地図内でライン分けされている、相手陣営の侵入は禁じます。
AM11:00に、ゲームスタートとします。
尚、その開始時刻前には、両チームは それぞれの本陣で待機していて下さい。
ゲームスタート時に、本陣にフルメンバーでない場合、即座に失格となりますので、注意して下さい。』
グレイフィアのアナウンスが終わった後のオカ研部室(仮)では、
「…だ、そうだ。」
「はぁ…」
「それじゃ早速、作戦タイムにょ。」
「いや、この人数で向こうのフルメンバー相手に今更、作戦も何も無いだろ?」
「はあ?」「にょ!?」
アーシアとミルたんが やや驚きの声を上げた先には、明ら様に何やら企んでますと言わんばかりな、凄く
》》》
一方その頃、旧校舎を発ったオカ研と生徒会の面々は、ゲーム進行と審判の役目のあるグレイフィアと分かれた後、ゲームの観戦用モニターが設置されている、生徒会役員室へと足を運んでいた。
カチャ…
役員室の扉を開くと、
「やあ、リアス。久し振りだね。
ソーナさんも、久し振り。」
部屋には先客。
紅色の髪を長くした優男が居た。
「おおお、お兄様?!」
「さ、サーゼクス様?」
「魔王様が、何故?」
その男を見た途端、慌てながらも一礼する、オカ研と生徒会の一同。
魔王サーゼクス・ルシファー。
冥界悪魔陣営、四大魔王の1人。
そして、リアスの実兄である。
因みにグレイフィアの旦那さんでもある。
ついでにシスコン。
「…それで、お兄様?一体どうして?
何をしに、此処迄来られたのですか?」
「はっはっはー…連れないぁリアスは。
今日のゲーム、可愛い妹と一緒に観ようと思ったに決まってるじゃないか。」
「…ま、魔王様方は、冥界で元老院の皆様と御一緒に観戦すると伺いましたが…?」
「ああ、御老人の相手なら、アジュカとファビウムの2人に、押し付k…コホン、任せて来たよ。」
「お義姉さm…グレイフィアは、この事を知ってるのですか?」
「ああ、既にバレてるよ。
先程、『後で、お仕置き』ってメールが届いたよ。ああ、怖い怖い♪」
「お兄様…
はぁ~~~~~~~~~~~~~~~…」
このサーゼクスの、余りにも魔王らしからぬ無責任さに呆れ返り、ガックリと肩を落とし、深い溜め息を吐くリアス。
「ははは…」「あらあら?」「クス…」
その やり取りに、サーゼクスの『リーアたん大好きっぷり』を よく知っているオカ研メンバーが、思わず笑みを零す。
事情を詳しく知らない、生徒会メンバーも、この兄妹の微笑ましい やり取りに顔を綻ばしている。
そう、1人を除いて。
ソーナ・シトリー。
この和やかな雰囲気の中、彼女だけが1人、緊張感漂う表情を崩そうとしない。
◆◆◆
先程、サーゼクス様は、何と仰られた?
確かに 此の御方は謂われた。
『御老人の相手なら、アジュカとファビウムの2人に、押し付けた』…と。
そう、アジュカ様とファビウム様の、
そもそも、このシスk…いえいえ、この妹思いなサーゼクス様が此の場に来られていて、
◆◆◆
そう思考を張り巡らせ、眼鏡をキッラーン☆と妖しく光らせながら、天井を見据えるソーナの頭上に、
「ソ~た~ん☆!会いたかったよ~☆!!」
「…や、やっぱり!?」
アニメの魔法少女のコスチュームを着込んだ、黒髪ツインテールの女性がダイヴしてきた。
すっかぱーん!!
「ああぁぅっ!?」
しかし それは、何処から取り出したのか、ハリセンを手にしたソーナの、カウンターでのフルスイングで迎撃される。
》》》
「痛ひ…(T_T)」
「自業自得です!!いきなり何をしてくれてるんですか、お姉様わ!?」
真っ赤になった鼻を押さえ、うるうると涙を流す魔王の1人、セラフォルー・レヴィアタンに、ハリセンを持ったソーナが、先程のリアス同様に呆れながら話す。
「…で、一応聞いてみますが、何故、此方に?魔王様?」
眼鏡の下の目を、じと~っとした目つきで問い質すソーナ。
「う~、だって、ソーたんに会いたかったんだもん…それに…」
「…それに?」
「どうせ観戦するなら、シリューちゃんの事を、よく知っているリアスちゃん達の解説を聞きながらの方が、より深く観戦出来るかな~?って☆
あ、お爺ちゃん達の お守りなら、アジュカちゃん達に押し付けて来たから大丈夫、問題無いよ!☆」
((((((((((いやいやいや、有り過ぎるだろ!!))))))))))
その場のサーゼクスを除く全員が、心の中で、この魔法少女にツッコむのだった。
◇シリューside◇
「さて、とりあえずは、ゲームのルールや流れの お温習いだ。」
作戦不要…と言ったら、涙目なアーシアと怒氣を孕んだ眼のミルたんに、思いっきり睨まれた。
仕方無く、俺が考えている、粗方の説明をする事に。
皆でソファーに座ると、テーブルの上の学園地図を指差しながら、
「普通、このフィールドなら…ミルたん、どういう戦略を取ると思う?」
「にゅ…?先ずは旧校舎を囲む森に、
「ん。正解だ。…普通ならな。」
「え?シリューさん、駄目なんですか?」
「確かに互いにフルメンバーなら、この体育館を拠点というのが、戦況の要になるのは間違い無い。
しかし俺達は、その戦略を実行するには、余りにも人数が少な過ぎる。
3対16…ミルたんの『駒』の価値で修正しても、8対16だ。」
「「………………………。」」
「それに相手は既に、何度もゲームを経験しているチームだ。
公式の記録は8勝2敗。
だが、リアス部長曰わく、その2敗と云うのは所謂接待プレイだったらしい。」
「「………………。」」
「ゲームの記録映像は見たよな?
各駒の特性を充分に活かし、理詰めな戦術を執るかと思えば、敢えて戦車を囮にして、兵士で討つと云う、
「いきなり、あのライザーさんが飛び出して、無双してたゲームも ありました。」
「ああ、そうだ。
不死身のフェニックスだからこそ、実行出来る戦法だ。
そんな、様々な戦り方を執るチームに、この人数で執れる作戦なんて、限られてる。
だからこそ、考えるんだ。
相手は、どんな作戦で来るかってね…
そして俺達は、その上を行く!!」
≡≡≡
「…~なんて事を、今頃は考えているんだろうねえ、あの赤龍帝君は。」
本校舎のフェニックス本陣で、不敵に笑うライザー。
「それで、ライザー様ぁ?」
「今回、私達は どう動くんですかぁ?」
そんなライザーに、丈の短いスカートなセーラー服を着た、2人の猫耳少女が尋ねた。
「待っていれば良いのさ。
この人数差だ、セオリー通りなら、あの森に小賢しいトラップを仕掛けて、攻めてきた此方の数を削る、少なくとも消耗させた上で仕留めようとするか…」
「…3人揃って
ライザーの台詞に、
「その通りだ。
わざわざ此方から出向いて、トラップの相手をしてやる義理も無い。
あのゴツい新米の
後は…俺がサシで勝負してやるよ。
如何に赤龍帝と云えども、所詮は転生もしていない人間だ。
魔王様達に…そしてリアスに、俺の実力を示してやるさ。
そうすれば、リアスも納得するだろ?」
≡≡≡
「…~って、考えているのだろうな、あのライザー・フェニックスは。」
自分の読みを、アーシアとミルたんに話すシリュー。
「だったら、どうする心算にょ?」
「そうだな、とりあえずは…」
パタ…
そう言うとシリューは部室の窓を開け、遠くに見える、ライザー側の本陣のある本校舎を見据えるのだった。
》》》
AM10:50
『ゲーム開始10分前となりました。
双方、そろそろ準備を終え、各本陣での待機をお願いします。』
レプリカの学園空間に、グレイフィアのアナウンスが渡り響き、そして…
AM11:00
キーンコーンカーンコーン…
『ライザー・フェニックス対赤龍帝、レーティング・ゲーム、スタートします!』
ゲーム開始の
》》》
「さて、赤龍帝は、どう動く?
今回は貴様が学生だからと云う理由で、制限時間が明日の朝、7時迄なんだぜ?」
今回のゲーム、制限時間内に決着が着かなかった場合、判定等は無く、引き分けに終わる。
つまり それは、リアスとライザーの婚約は破棄されない事を意味している。
「ふ…」
余裕と自信を隠す気が無い顔で、携帯式の双眼鏡を手にするライザーが旧校舎オカ研の部室の様子を伺おうと、その双眼鏡を覗き込む。
そして、その眼に写ったのは…
「…な!?」
右手を左手首に添え、赤い籠手に覆われた左拳を自分達に向けて立っている、シリューの姿だった。
「ま、マズい!お前等、この部屋…いや、この建物から出るぞ!」
「「「「「「「えっ!?」」」」」」」
「「「「「「「「はい?」」」」」」」」
しかし、このライザーの指示は少し遅く…
「ドラゴン波!改め…(Boost!!)
…廬山漆星龍珠!!」
旧校舎、オカルト研究部の部室の窓から放たれた、魔力と
『ら、ライザー・フェニックス様の…
因みに…
チアガールでのコスプレ応援の件は、リーアたんが上手い事、有耶無耶にしております。
‡‡‡‡【次回予告!!】‡‡‡‡
「リアス様の
魔法少女ミルたん、参るにょ!!」
次回:ハイスクール聖x龍
『ミルたん無双(仮)』
乞う御期待!!