「・・・・・・・・・・・・えっとー」
「お父様、どうかなさいましたか?お顔のお加減がよろしくないようですが・・・」
「・・・・・・・ありがとう。気にしないでお茶でも飲んでくれ」
「まぁ♪お父様が注いでくれましたこの緑茶、とても美味しいです♪」
「はは、はははは。そうですか、それは良かったよ。・・・・・・」
なんでっ?!最初は予想してたというか、どうなるんだろうか?とは思ったけど、まさか本当にこんなことになるなんて想定外だ
俺は深紅とかいう人形を作ってるはずだっただろうが!え、どこで間違えたんだ。最初から間違えてたよ、それどころか頭から足のつま先に至るまで、全部俺のオーダーメイドじゃんかよ!!
例の休刊した本を参考書代わりにして、その写真を見る限りで違う部分が、髪の毛は金髪で、ステッキ持ってて(あれ?作ったか?)・・・そこだけじゃない?他に違う部分ないよね?
「少女の作り方」に付属されたパーツをあまり参考にしないで作ったから、若干採寸が違っているかもしれないので、身長は深紅よりも高めだった
心臓部にはめ込むローザミスティカなんて言う謎物質なんて欠片も持ってないからって、適当な宝石で代用したのがいけなかったのか?とか思ったけど、なんちゃら石を変えたところで何か変わるか?外の身体さえ一緒だったら問題ないって進めてさ
洋服の色やデザインなんて全然関係ないでしょ?ねぇそうでしょ?とか言わんばかりに見本を度外視して洋服を作って
・・・・・完成させて今に至ります、はい
なんで要所がいい加減なんだぁ!それで生きてきたけどさぁ。だだ大丈夫だ。きっと何とかなるって!本人に名前を聞けばいいんだよ!
と突然動き出したとかどうでもいいんだよ!ゼンマイどこ行った!?
少女の作り方にも載ってないし・・・・、俺が勝手にやったから載ってるはずがないけれど
「はぁ、おいしいです♪」
俺の内心の焦りを感じてないのは仕方がないとして、この子原型なくね?頭部を作る時も薄々感じていたけど、原型通りの「深紅」?とか言う奴になりそうにないことくらい分かっていたけど、あれ?怒られるんじゃね?でも仕方ないよね?パーツが足りなかったんだもん!俺は悪くない!悪いのは詐欺師だって!
それに本にはゼンマイを回して起動するみたいな説明書きがしてあったけど、この子は勝手に動き出したぞ。本当にゼンマイどこ行ったよ
「それはよかった」
「お父様・・・」
「うん?なんだ?」
その人形は俺に呼びかけると、胡坐を組んでいる太腿に腰を掛けてきた。というよりスッポリと収まった感じ。娘とかいたらきっとこんな感じで甘えてくるんだろうなぁ。・・・・この年でそれはちょっと。
いやでも、この人形を見ていると不思議と父性が芽生えてきそうだ。きっと完全ではないにしろ俺の手が加わったからだと思う。でなければただのロリコンだ。それはそれとして、さっきからこの人形の髪の毛がどういった材質か非常に気になる。俺が作った訳ではなく自然に生えてきた?ためだ。触ってみると、意外にサラサラして驚いた。ナイロンというより明らかに人間の髪質に似ていた
更に驚いたことに、この髪の毛見る角度を変えると様々な色に変色する
赤からオレンジ・青色と虹色に輝いて少し、いやかなり焦った。考えてみればそもそも人間じゃないからそこまで深く考えなくてもいいか「あるがままを受け入れろ」とは誰の言葉だったか
「私の名前をお決めになって頂かなければ、今後の行動に差支えてしまいます」
「名前ねぇ・・・・やっぱり自分の名前とか知らないのか?」
生まれたばかりだから分からないというより、知らないのか
「はい・・・・、ですのでお父様に名前を付けていただければ嬉しいのです」
「何でもいいのか?」
「はい♪お父様がお決めになられた名前でしたらなんでも♪」
ま、まじか。内心パニックでそれどころじゃないけど、名前がないと不便なのは事実だ。深紅、じゃあダメだろうなぁ、きっと
この歳で子供を名付けることになろうとは・・・予想もしてなかったぜ、だって深紅を作ってるつもりだったんだから
周りのみんなと同じようにゲームじゃよく名前を考えるけど、何回もやり直しできるし、セーブ機能があるから幾つも名前を作って与えることが出来る。しかし今回はそれができない。当たり前だけどこれが名付けるという事なのか。一歩大人になったジュンなのであったw
おっとまじめに真面目にやろう。じゃないと見て見ろ、この希望ランランな眼差しをしたこの子を。ランランしすぎて瞳に星が浮かんでやがるぜ、って本当に星が浮いてるじゃねぇか。こんな眼球入れた覚えないんですけどねぇ。自発したのかな?まさかそんなわけ・・・・そもそも俺まだ眼球入れてねぇ・・・・い、いいいいい入れた!きっと入れた絶対入れた!星が浮かぶ眼球入れました!
よ、よし。気を取り直そう。こんなことしてたらいつまでも名前なんて決められないぞ
候補はいくつか思い浮かぶけど、季節は夏に近いからそれに因んだ名前がいいな。向日葵とか桔梗とか撫子とか、夏は有名な物が多いから迷うが・・・・
「紫陽花って名前はどうだ?」
やっぱり風情がある綺麗な名前にしようと思った。なんとなくこの娘にピッタリな名前じゃないかと頭に浮かんだんだ
「まぁ♪・・・・・とても、とても綺麗なお名前・・・・。ありがとうございます、お父様♪」
「気に入ってくれてよかったよ、これからよろしく」
噛み締めるよう繰り返して自分の名前を呟く彼女・・・紫陽花を見ていると、父親になっちゃうのこれ?って思った。決して嫌ではない、と思う。でも結婚してから考えたいよな子供のことは。それまでイチャイチャしたかった・・・するけど
「こちらこそよろしくお願いしますね、お父様♪」
「さて、名前が決まったことだし・・・・・さっきからうるさいメールの確認だ」
「めーる・・・・・?ですか?」
「そうか、紫陽花は初めて見るんだっけ」
俺は膝に座る生まれたばかりの紫陽花でも解りやすく見えるように、前屈みになって携帯の画面を見せる
「これが携帯電話という機械で、この画面で操作する」
「はぁ~、すごいです~。直接触って操るのですね?」
「簡単だろう?」
俺はそう言って、紫陽花に携帯を持たせたが、分からなくてもこういう物が世の中にあるっていうだけ分かればいい
「・・・・あぁ♪」
紫陽花は宝物を眺めるように俺の携帯を眺め、しばらくしてから画面を触りだした
さて、ここで問題です!
人形の身体である彼女は、携帯の画面が反応してくれるでしょうか?
1・反応する
2・反応するそぶりを見せて、俺が紫陽花の後ろで遠隔操作してる
3・反応しなくて、部屋の隅で紫陽花が落ち込んでる
・・・・
答えはっ!
4・の「体は人間だから関係ない」でした~!
・・・・・・・・
いや、可笑しいでしょ。とか言わないでくれ
俺でもこの3日は大変だったんだからな
なんで大変だったのかって?・・・・・死体集めとか
ちょ、引くなよ。仕事柄、伝手が多いだけだから。それでいくつか死体をちょろまかして・・・・
・・・・・・・・嘘だからね?・・・・・・・本気にしちゃだめよ
単純に携帯が反応しただけだから
「お父様♪この機械は面白いです♪」
「気に入ったら今度紫陽花のぶんを買いに行こうか」
「まぁ♪ありがとうございます♪」
生れたてだからこれから知って行けばいいと思う
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