ぼっちマスターと捻デレサーヴァントの聖杯戦争   作:大弓

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どもどもー!大弓です!!
初で投稿してみたら思いの他読んでくれる方が多かったり嬉しいコメントが結構あったりとでびっくりでした^^
読んでくれたりコメントをくれたりした方々、ありがとうございます!
今後も頑張って逝くのでよろしくお願いします^^
それでは本編へどぞー


2話 願望器の思惑

期待しては裏切られる、何かを必死に守れば守ったものからも見捨てられる。これは彼の中で常識で、当たり前の摂理だ。

 

だが今回ばかりはそんな彼でも耐えられなかった、彼はもう限界に達してしまった。

 

故に彼の足は必然的にある場所へと向かっていた、フラフラと力無く。まるで幽鬼のように。

 

八幡(期待したら裏切られる、そんな事俺が一番よく分かってた筈なのにな)

 

八幡(あの場所から俺の居場所はとっくの昔に無くなってたって訳だ、あいつらの言う私たちに…俺は……居ないんだ)

 

八幡(俺が守りたかったものなんて、初めから存在していなかったんだ)

 

八幡「本物なんて、何処にも無かった…」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

暫くして彼は、ようやく目的の場所へと到着する。

 

無数の悪意や幾たびもの裏切りにより何もうつさなくなったその双眼で見つめる先は、もう陽も沈み始め夜の帳が下りてゆく総武高の屋上だ。

 

そう彼、比企谷八幡は自分の生を終わらせるため。もっと平たく言うのであれば自殺するためにこの場所まで足を運んだのだ。

 

彼は屋上のフェンスを越えて、あと一歩踏み出せばこの世から強制退場できる位置で立ち止まる。そして彼は何のためらいも無く………飛んだ。

彼の体は自由落下に従い、落ちてゆく。

 

八幡(死ぬ瞬間だからか、時間が遅く感じるな)

 

 

 

『いっそ《消えてくれないかしら》』

 

八幡「分かったよ雪ノ下、お前のお望み通り消えてやるよ」

 

 

『アハハ…でも確かにしばらくは会いたくないかなぁ』

 

八幡「よかったな由比ヶ浜、これでしばらく所か一生会わなくてすむぞ」

 

 

 

 

八幡(小町、ごめんな。喧嘩したまま死んじまうようなごみぃちゃんで…)

 

八幡(でももう大丈夫だ、もう俺の顔を見ることも無いからな。そのまま俺の事なんて忘れてくれ)

 

八幡(お前は俺の事なんて大嫌いだっただろうが、俺は大好きだったぞ。小町)

 

八幡(戸塚もごめんな、いじめの火の粉がお前にまで飛ぶかもしれないと修学旅行以来酷い態度をとって。材木座も俺が死んだらまたぼっちに逆戻りか。すまない…)

 

八幡(平塚先生、スミマセン。あれだけ迷惑かけたってのに結局死んでしまって)

 

八幡(両親には…特に無いな。あいつらのことだ俺が死んで喜ぶのが目に浮かぶ)

 

 

落下により地面が迫ってくる、比企谷八幡の終わりが迫ってくる。

 

八幡(これで、終わる)

 

 

八幡(もしも、1つだけ願いがかなうのなら)

 

八幡「俺は本物が欲しかっ『グシャッッ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い)

 

どうやら俺はあっさりと死ぬことは出来なかったようだ

 

八幡(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い)

 

俺の体中に余すことなく激痛が走っている、もはや体の感覚なんて無いのに律儀なことに痛みだけはハッキリと残っている

 

八幡(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い)

 

 

後どれだけ待てば、俺は死ねるのだろうか?早く楽になりたい

 

 

 

彼はゆっくりと近づく己の死を望み、そして息絶える………

 

 

 

筈だった

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

()()は誰かを必死に守り、そして守ったものからも見捨てられる哀れで愚かな青年を見ていた。

 

そして()()は信じては裏切られ、蔑まれる。なのに本物を求め続けていたこの青年のことを面白いと思った。

 

()()はこの世全ての悪により汚染され、破綻した願望器。故にそんな願望器を手に入れるがために行われるこの聖杯戦争も元から破綻していた。

 

だからこそ()()は軽蔑され侮蔑され理解されることの無い青年をこの破綻した聖杯戦争(イレギュラー)に招待した。

 

だがせっかく治して招いたんだ、簡単にこの聖杯戦争から降りたり死んだりされては意味が無い。

 

なので()()は青年に生き残る為の力と、この聖杯戦争を降りさせない為のある規約をつけた。

 

この青年だからこそ破ることの出来ない、ある規約を……

 

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???「・・なさ・・おき・さ・って・・・・」

 

八幡(何だ?誰かの声が聞こえる)

 

???「お・・さい・・て・」

 

八幡(確か俺は総武高の屋上から飛び降りて自殺したはず、つまりここはあの世って奴か?) 

 

???「起きなさいってば!!!」ドカッ

 

八幡「うぐっ」

 

八幡(何だいきなり、腹に痛みが!!?)

 

???「あら、やっと起きたわね」

 

少しばかり蹲り腹の痛みと格闘した後に起き上がり、八幡は先ほどからの声の主に目をやる。

 

そこには、所々端がボロボロな黒い服のような鎧のような物を纏い。髪は白い短髪で自分よりも10cm程身長の低い整った顔立ちの少女が自分を見下ろしていた。

 

八幡「誰…だ?」

 

???「サーヴァント、アヴェンジャー。召喚に応じ参上しました……どうしました。その顔は?さ、契約書です。」

 

八幡(サーヴァント?召喚?いったい何の事だ、さっぱり話しに付いていけん)

 

八幡(それに俺は死んだんじゃ無かったのか?ここはいっその事聞いてみるか)

 

八幡「ちょっと待った、お前はいったい誰なんだ?それにサーヴァント?召喚?契約?さっぱり訳が分からんぞ」

 

???「私はアヴェンジャーと名乗ったはずですよ?それに人に名を尋ねるときは自分から、ではなくて?」

 

八幡「分かった、俺は比企谷八幡だ」

 

???「ヒキガヤハチマン、名前を偽るならもっと上手くやりなさい」

 

八幡「変な名前なのは自覚してる、悪いがこれが本名なんだよ。それに偽名はお前だろ、俺は別に偽名を知りたい訳じゃない」

 

???「え、ウソ?ちょっと待って、あなたそんな変な名前なのに偽名じゃなかったの!?」

 

八幡(初対面で失礼すぎるだろ、八幡泣いちゃうよ?)

 

八幡「取りあえず俺の名前が変なことは置いておこう。それで、お前はいったい誰なんだ?」

 

???「真名はジャンヌ・ダルク・オルタ。ですが先ほどのも偽名って訳じゃないわよ、現に私のクラスはアヴェンジャーなのですから。」

 

八幡(ジャンヌ・ダルク?オルタ?クラス?真名?あー、あれだ。この子は俗に言う中二病って奴だ。そんな俺もコートと襟巻きで仮装して永久欠神なんて名乗ってた時期があったな、今では死にたくなるような思い出の1つだ)

 

八幡(まあ実際に今さっき死んじゃったんですけどね)

 

ジャンヌ「何ですか?その哀れむような目は。不快ですね、焼き殺されたいのですか?」

 

八幡「いや、一日に二度も死ぬのは嫌なので遠慮させてもらいます」

 

ジャンヌ「一日に二回死ぬ?何を言っているのですかあなたは、人間が一日に二度も死ねるわけ無いでしょう」

 

 

―――違和感

 

その違和感は朧でとても小さいものだったが絶対に見逃してはいけないような気がする。だから八幡はその違和感の正体を探るために目の前の少女にある疑問を投げかけたのだ。

 

 

八幡「ここってあの世じゃないのか?」

 

 

それは普通に聞くのであれば酷くあほらしい質問だろう、俺だってもしこんな質問されたら『お前頭でも打ったか?』とか言うはずだ。

 

だが今の八幡は自分の質問を否定して欲しくは無かった、自分が生きているなんて信じたくは無かった。

 

何故ならあの自殺は俺が望んだもので俺は死ぬことでようやくこの、どれだけ努力しようともその努力が正当に報われることの無い。欺瞞だらけの無理解の世界から逃げ出せるのだと思っていたのだから。

 

 

ジャンヌ「なに訳の分からない事を言っているんですか?あなたは現に今五体満足でそこに立っているではないですか」

 

 

その淡い望みはたったのその一言で打ち消された

 

 

八幡「嘘…だろ。どういう事だ」

 

 

何故俺は死んでいない?何故俺は死に損ねた?

 

もしかしたら自殺したのは今さっき俺が見ていたただの夢なんでは無いだろうか?

 

だから実は俺はまだ自殺してはいなかったのではないだろうか?

 

いや、そんなことはどうでもいいのか。

 

ようは簡単なことだ、もう一度死に直せばいい。それだけの事だ。

 

そう思い今自分がいる場所を確認する為に少し周りを見渡す。

 

 

だがそんな八幡の考えは。濁り、腐り、何をうつすわけでも無くなったその双眼にの先にあるものに否定された。

 

その視線の先にあったものは。周りが暗かったとはいえ何故気が付かなかったのか不思議な程のおびただしい量の血がぶちまけられた地面。よく見ると所々に自分のものと見られる脳漿や肉片が散らばっていた。

 

 

そう、比企谷八幡は確かに一回死んでいた。


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