この人ならざる『ヒト』に祝福を!   作:ヴァニフィア

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なんとか一話にするか二話にわけるかで試行錯誤したところ、結局中途半端な長さになった上に投稿が遅くなりました。反省せざるをえない。


ダクネス、顔真っ赤だけど大丈夫?

ある日の昼過ぎ、ルミは自分の部屋で箱に瓶を詰めていた。隣では、物珍しそうにアンナがのぞいている。

 

「えっと〜、これとこれと…とりあえず持ってくのはこれだけかな?」

『すごい荷物ねぇ。昨日まで作ってた薬みたいだけどどうするの?』

「友達のところに持っていくんだ。お薬を置いて売ってもらってるんだよ。」

『そうだったの。なら、移動中に入れ物を壊したりしないようにしなさいよ?あ、ズボンから尻尾が出てないわ。せっかくアクアが作ってくれたんだからちゃんと着なさいな。服も少しめくれあがってるじゃない。』

「あ、ありがと。アンナってなんだかんだで面倒見いいよね?」

『死ぬ前は自分が世話を焼かれる方だったから、どうしてもらったら助かるかとかがよくわかるのよ。それに、ルミは色々と放っておけないわ。…はい、これでいいわよ。気をつけていってらっしゃいな。』

「うん、行ってくるよ。」

 

……………

 

ルミは一人で押せる荷車に荷物を載せてウィズの魔道具店に向かった。尻尾があるせいで若干注目はされたが、この世界では人間ではないが街に住んでいる種族もいたりするので、一部を除いて大きな騒ぎにはならなかった。…ギルドの中はかなり大騒ぎになっていた。

 

「よいしょっと…ふぅ。お邪魔しまーす。」

「いらっしゃ…ああ、ルミさん!」

「割と久しぶりかな?ここ来るの。」

「一週間ぐらいですから、そこまで空いていたわけでも…あ、もしかしてお薬を持って来てくれたんですか?」

「うん、今回はたくさん持って来たよ。屋敷に住んでいいことになって薬草を植えたんだ。これからはある程度安定してもってこれると思う。」

「そうなんですか。じゃあ、それは預かりますね。いつもありがとうございます。あ、それと、私からルミさんに渡すものがありまして…」

「ん?なになに?」

「あ、私からというよりはバニルさんからですけど…これなんです。」

 

ウィズは袋に入れられた何かをルミに差し出した。ルミはそれを開けた。

 

「これは…何?仮面かな?目元あたりしか隠せそうにないけど。」

「数日前にバニルさんがここにやって来まして、どうしても渡してほしいと…」

「バニルが?…どこかの、かめんぶとうかいとか言うやつの仮面とかじゃないんだよね?」

「人伝に未来を見たら、これはルミさんが使うべきものらしいということがわかったらしくて…魔王城の近くに落ちていたのを最近見つけたそうなんですけど…」

「…私が使うべきものかぁ…あれ?」

 

ルミが仮面を受け取って少しすると、冒険者カードが光った。取り出して確認すると、スキルの欄に文字が浮かび上がっていた。なぜかすでに習得済みのようだ。横からウィズも覗き込んでいる。

 

「なんだろ?」

「新しいスキル…ですか?」

「うん、そうみたいだけど………これ読めないなぁ…職業欄の文字とも違うみたいだし、カズマも読めないっぽいかも…まあいっか。じゃあこれは私がもらうってことでいいんだよね?」

「はい、私には価値がわかりませんし、そのつもりでしたから。」

「バニルは他に何か言ったりしてた?」

「ええ、と…その仮面はどうしようもないと思った時だけつけるようにと…それ以外の時に使うとまずいことになるかもしれないとか…」

「危なっ!たった今つけるとこだった!…もしかして危ないやつなのかな?これ。」

「ルミさんから聞いていた他のスキルのように、仮面を持ってすぐにスキルが現れたので呪いの品というわけでもないと思います。スキルと関係してるということでしょうし、バニルさんが危険なものを渡すとも思えないです。『何故そうなるかはわからないが、消耗している姿が見えた』、と言っていましたし…」

「バニルは色々知ってそうだと思ったんだけど、人伝に見てるからあんまりわからなかったのかなぁ…仕方ないね。まあ、必要になるらしいなら持っとくよ。」

 

そう言いながら、仮面をもう一度袋に入れなおして懐にいれた。その時、ウィズはルミの後ろにゆらりと揺れるものを見た。

 

「そういえば尻尾が出るようになってますけど、服が新しくなったんですね?前に言っていた、頼んでいたものですか?」

「ああ、そうなんだよ。アクアが作ってくれたんだ!ちょっと注目されちゃってたけど、こうじゃないとなんか動きにくくてさ。森にいた時はスカートみたいなやつ着てたから出したくなったら出したりしてたんだけど。」

「スカートでそれをやるとめくり上がりませんか?」

「うん、まあ…多分それもあって、カズマにこっちに来て服を買うときにスカートはやめてくれって言われたんだろうなぁ…」

「ルミさんは気にしてないですけど、カズマさんからしたら他の人からの目もありますし…」

「あー、確かに迷惑はかけてるのかも…うん、これからは気をつけよう…じゃあ、私は今日はこれぐらいで帰るよ。またね。」

「あ、寒くなってきていますし、風邪をひかないように気をつけてくださいね〜!」

「ありがと!アンデッドに風邪とかあるかは知らないけど、ウィズも元気でね!」

 

 

ウィズの店から出た後、家まで戻ろうと街の中を歩いているとギルドの前を通った時に数人の職員に尻尾がなんだ、よく見れば耳も、と可愛がられ、結局帰ってきたのは夕方ごろだった。

 

「んー…!少し疲れちゃったなぁ。色々と……そういえば今日の晩御飯なんだろ?カズマが魚でも釣って来てくれてたりするのかな?…今度久々に狩りとかしようかなぁ。…ただいまー。」

「おかりー!」

 

扉を開けると、アクアが嬉しそうにドタドタと走って来た。

 

「ルミ!喜んで!今日の晩御飯はカニよ!」

「カニ?カニって海とかで取れると思うんだけど、なんで?アクセルの街で売ってるのも見たことないけど。」

「ダクネスの家の人が、パーティーに入れてくれたからその記念にって送ってくれたの!」

「そうなんだ…いいのかな?カニって高級品だと思うけど。」

「もらったものはありがた〜くもらう方がいいのよ。返したりしたらそれはそれで失礼だし。ほら、ルミも晩御飯の準備手伝って!」

「あ、うん!わかった!」

 

 

夜になる少し前にはカズマも帰って来て五人で食卓を囲んだ。カズマは今にもヨダレを垂らしそうなめぐみんを、若干怪訝そうな顔で見ていた。

 

「このカニはそんな美味いのか?」

「当たり前ですよ!このカニを食わせてやるから爆裂魔法を使うなと言われれば喜んで我慢して、食べた後に爆裂魔法をぶっ放す、そのくらい美味しいんですよ!」

「へぇ、そりゃすごあれ?お前今最後なんて言った?」

「ねえダクネス、このカニって高級なやつだとは思うんだけど、家は大丈夫なの?」

「ああ、まあ心配しなくてもいい。その…まあ、実家は少し海に近いからな…うん。」

「?なんか歯切れ悪いけど…まあいいや。いただきまーす。」

「あ、カニの甲羅は硬いから中の身を食べるんだ。」

「あ、そうなんだ。」

 

ルミがカニの身を口に入れると、表情をへにゃりとさせつつパクパクとカニを食べ始めた。

 

「はは…ルミ、気に入ったのはわかるが、もう少しゆっくり食べたらどうだ?カニは逃げないぞ?」

「んぐ…ぷあっ。これすごく美味しいよ!」

「カズマ、火を貸して!お酒の美味しい飲み方を教えてあげるわ!」

「ん、ほら、ティンダー。」

「この即席七輪の上に空いた甲羅をおいて、さらにここにお酒を入れて少し待てば…」

 

ダクネスやめぐみんはそれに注目して、喉を鳴らしている。

 

「ん…ぷはー………」

「…これがギルドにいたおじさんたちが言ってる通な飲み方ってやつなのかなぁ…」

「今日は気分がいいから、とっておきの宴会芸を披露してあげるわ!行くわよ…!機動要塞!デストロイヤー!!!」

「おおっ、この動きこの形、まさにデストロイヤーです!」

「なんかウネウネしてるんだ…?」

「ああ、まさにこんな感じの動きだ。…ん?カズマは飲まないのか?いつもなら…」

「あ、ああ…まあちょっと昼にギルドで他の冒険者たちと飲んで来てな?今はちょっと飲めないかなー、と…」

「…そうか。」

「私がギルドに連れてかれたのは昼過ぎだったし入れ違いかな。」

「アクア、私にもシュワシュワ飲ませてくださいよ。」

「子供にはまだ早いわ。」

「もう私は子供じゃないですよ!」

「ダクネスもよく言ってるでしょ!子供が飲むと頭がパァになるって!」

「そんなこと言ってその高級らしいシュワシュワを独り占めしたいだけじゃないんですか!」

「そんなことないわよ!」

「………」

「ん?カズマどうしたの?」

「俺、今日は酒飲まないし疲れたからそろそろ寝るわー。みんな、おやすみ。」

 

カズマはなぜか笑顔で部屋から出て行った。

 

「…カズマ、どうしたんでしょうね?」

「ふふん、さては私にお酒を譲ったのね。なかなか殊勝な心がけじゃない!直接言うのは気恥ずかしかったのよ!」

「…そうなのかな…?」

「昼に冒険者たちと飲んだと言っていたし、これ以上飲めないと思っただけなのではないか?」

「一応残しといてあげたら?」

「仕方ないわね…まあ、少しぐらい残しておいてもまだまだあるわ!じゃんじゃん飲むわよー!」

 

……………

 

「花鳥風月ー!」

「アクア、そろそろやめてくださいよ。居間のそこかしこが水浸しじゃないですか…」

「いい?芸というのは人に請われて見せるものじゃなくて自ずからやってしまうものなのよ?それ、もういっちょ花鳥風月ー!」

「冷たっ!アクア、かかってる!こっちに飛んで来てる!」

「アクアは完全に回ってしまっているな…ルミ、タオルだ。」

「あ、ありがと。…それにしても、アクアさっきからずっと花鳥風月使ってるね…」

「おんなじこと言ってますしね…それにしても魔力が切れないんですかね?宴会芸スキルって爆裂魔法ほどじゃないにしろ、普通の魔法に比べれば燃費は悪いはずなんですけど。そんなに水出ませんけど、中級魔法レベルは消費するはずですよ。」

「クリエイトウォーターとあんまり変わらないように見えて消費は多いんだね…あ!アクア倒れたけど⁉︎」

 

顔から倒れ込んだアクアにダクネスが近づくと、そこそこ大きめのいびきが聞こえてきた。

 

「…飲み過ぎで寝ただけだな…」

「な、なんだ…」

「…さて、私も寝ますかねー。ダクネス、アクアをお願いしてもいいですか?」

「ああ、部屋に戻しておくよ。」

「じゃあ、私はとりあえず机の上だけでも片付けとくね。」

「手伝いましょうか?ルミも眠たいでしょう。」

「うん、お願い。」

 

……………

 

30分ほどでなんとか机の上だけは体裁が整った。めぐみんは疲れていたのかすぐに戻ったが、ルミは水を飲んでゆっくりしていた。しばらくするとダクネスが部屋に入って来た。

 

「片付けを全部任せてしまったな…すまない、アクアが手を離してくれなくてな…」

「いや、いいよいいよ。ダクネスは悪くないしね。あ、めぐみんはそのまま部屋に戻ったよ。」

「さすがに少し眠かったようだな。ルミは大丈夫なのか?いつもならもう寝ている時間だと思うが…」

「まあ、少し眠いけど、お風呂はいってから寝ようかなって思って。ダクネスも入る?」

「ああ、そうしようか。」

 

二人は一度部屋に戻って着替えなどを持ってから風呂場に向かった。

 

「あれ?ダクネス、カズマの服置いてあるよ?」

「本当だな…まあ、おそらく忘れたのだろう。早々に部屋に戻ったし、入っている訳ではないと思うが…」

「そうかな?まあ、いっか。一番乗りー!」

「あ、ルミ、走るのは危な…」

「あれ?カズマ?」

 

風呂場にはカズマが湯船でリラックスしており、ダクネスはそれを見ると固まってしまった。

 

「ん?ルミ…か?…おかしいな…」

「え?なんか言った?」

「いや、なにも…」

「な…な、な、何故カズマが風呂にいるのだ…⁉︎」

「お、ようダクネス。少し寝落ちしちまってな。せっかくだからこっち来て体流してくれないか?」

「は、はぁ⁉︎お、お前はなにを言っているんだ⁉︎」

「いいんじゃないの?」

「ほらほら、ルミはこう言ってんだしな?」

「く、くぅ………!ル、ルミが言うにゃら…!」

「…なるほど、ルミがいるのはある程度のリアリティ要因か…確かに言いそうだ…」

「ん?またなんか言った?」

「いや、なにも…」

「カ、カズマ!前ぐらい隠せ!」

「なるほど、世間知らず設定ってとこだな…」

「ブ、ブツブツ言ってないではやく座るなら座れ!背中を流すぐらいはしてやるから!しょ、そんなイヤラシイ目で見るなぁー!」

「ダ、ダクネス、近くにあんまりお家ないけど、めぐみんとかは寝てるんだから真夜中に大声はダメだよ…」

「焦らしプレイとか設定してないし、はやく流してくれ。あ…いや、アンケートには恥ずかしがる系の…じゃあこれでいいのか…」

「…?なんか今日のカズマ独り言多いね。まあいいけど。」

「いや、ルミ!よくない!こ、こんな状況をめぐみんとアクアに見られたら…!」

「その時はみんなで一緒に風呂に入ればいいんじゃないかな?」

「どうしたんだ⁉︎今日のお前は本当にどうしたんだ⁉︎」

「あ、それいいかも。たまにはみんなで…」

「ル、ルミもそろそろ恥じらいというものをだな…!」

「ダクネス、騒がしいぞー。近所迷惑とかも考えろよ?常識知らずにもほどがあるからな。」

「この状況下でそれだけはお前には言われたくないぞ⁉︎わ、私がおかしいのか⁉︎私の方がおかしいのか⁉︎」

「だから静かに…あー…夢だから………まあ騒いでもいいのか。よし、とりあえず背中流すの頼むなー。」

「くっ…うぅ…どうしてこんな目に…し、しかし、こう、堂々と命令されたり、イヤラシイ目で見られたりすると逆らえない自分の性癖が情けない…」

「ダクネス、顔真っ赤だけど大丈夫?」

「だ、大丈夫だ!」

 

ダクネスは若干パニックになりながらカズマの背中を流す。その隣で、ルミも体を洗っている。

 

「…よ、よし、これでいいだろう。な、なあカズマ?そろそろ出てはどうだ?私も体を洗いたいんだが…?」

「なんでだよ?これからが本番だろ?」

「は、はっ⁉︎ま、前も洗えとでも⁉︎」

「定番で言えば、次はそのタオルを外して直接だな…」

 

『この曲者ー!出会え出会え!みんな!この屋敷に曲者よー!!』

 

「ん?アクアの声?」

「ああ、もうこれからがいいとこだってのに…!」

 

カズマは小声でそんなことを呟きながら風呂場から出て行った。

 

「ふぅ〜………」

「…ルミは落ち着いているな…」

「せっかくお風呂なんだからゆっくりしないと損だよ〜。ダクネスは入らないの?」

「…カズマのやつをとっちめてくれる!あれは私の望むすごいことではない!」

「え、あ!ダクネス!…行っちゃった…風邪ひかないといいけど…はふー…」

 

ずんずんとダクネスもまたカズマを追って行ってしまったが、別段何も気にしていないルミはのんびりと湯船に浸かっていた。

 

『シャオ〜!!!』

 

「…誰の声だろ?…掛け声かなにか?……まあいいや。ふ〜…あ、曲者退治、私も行った方がよかった?………まあいいや〜…」

 

……………

 

20分ほど後、風呂から上がって服を着て部屋に戻ろうとすると、みんなが廊下に集まっていた。カズマはボロボロになって床に転がっている。

 

「あれ?みんな起きてたの?…って、アクアは何してるの?それにカズマがなんか大変なことになってるけど…」

「塩をまいてるのよ。さっきここに悪魔が入り込んできたの。カズマは操られてたのかそいつを庇ったから私たちで気絶させたわ。」

「今夜のことは忘れてしまっていてほしいが…悪魔に操られる間は記憶は残らないというし…」

「あ、ルミは大丈夫でしたか?ダクネスが、カズマに体を洗えとか命令されたりしたらしいですけど…」

「私にはあまり何も言ってこなかったよ。最初に私を見た時少しびっくりしたみたいだけど。」

「…では、あの悪魔はダクネスとカズマだけを狙ったんでしょうか?実質的に被害を受けたのって二人だけですよね?ルミは直接は何もされなかったみたいですし…」

「なんにしても、悪魔ごときが私のいるここに入ろうだなんて…!もっと強い結界を張らないと!」

「…あー、アンナ大丈夫かな…」

『問題ないわよ。その人の結界、悪霊だけ追い払う効果みたいだから。』

「あ、いたんだ。」

『なかなか帰ってこなかったから気になったのよ。まあ、何もないならいいわ。先に部屋に入ってるわ。』

「うん、わかったよ。」

「…?ルミ、どうしたのだ?」

「いや、さっきまでここにアンナがいてね?」

「アンナ…って、誰でしたっけ?どこかで聞いたような気がしますけど…というかそこには誰もいませんでしたよ?」

「あ、アンナ幽霊だからみんなには見えないかも。」

「えっ。」

「いや、あの、アクア?そんな身構えなくても悪霊じゃないからね?アクアの結界の中にいても大丈夫だったんだよ?アンナは悪い幽霊じゃないよ!」

「…言われてみればそうね…」

「ま、前の人形たちとは無関係ですよね?」

「ああ、元々はアンナの人形だったみたいだけど、悪霊が勝手に動かしてたんだって。アンナがやるイタズラはそんなに悪質じゃないから大丈夫だよ。あ、そうだ。めぐみん、これ返しとくね。」

「イタズラはするのか…」

「なんです…ってこれ、なくなったと思ってたチェスの駒じゃないですか!どこにあったんです?」

「綺麗だからって、アンナが持ってきちゃってたんだ。まあ、イタズラって言ってもこんなかんじだし見逃してあげて?」

「アクアが言っていたことは本当だったのだな…」

「私は嘘はつかないわよ。なんてったって女神ですもの!」

「「嘘ついてるじゃない(です)か。」」

「嘘じゃないわよ!私は正真正銘の女神なの!」

 

その後、少しの間言い争いもあったが夜も遅いので目を覚まさないカズマは部屋に放り込んでそれぞれの部屋に戻っていった。

 

『あら、お帰りなさい。』

「あー…眠い…お休み…」

『あ…ちゃんと布団に入りなさいよ。風邪ひく…』

「………スー…スー…」

『…ふぅ、本当に放っておけないわね…お休み、ルミ。』

 

 

翌日、ルミは普通に目が覚めたらしいカズマと一緒にアンナの墓の掃除をしていた。ダクネスがその後ろで見ているが、昨日のことがあっただけに、近づきにくいようだ。

 

「ねーねー、カズマ。」

「カズマだよ。」

「昨日のことやっぱり覚えてないの?」

「ああ、居間から出て行って風呂入って寝落ちしたところまでしか覚えてないな。」

「ほ、本当に忘れているのだろうな?」

「だから、何も覚えてないって。朝起きて顔とか痛くて割と驚いたんだからな?…ってか、ルミから聞いた限りじゃお前が俺の言葉に流されたかんじだったらしいじゃないか。そもそもランタンの火とかつけてたし入浴中の札もかけてただろ。それを無視して入る方がなぁ…」

「な!あ、あれは、その…というか何故そんなことを聞いているのだ⁉︎」

「あ、札とかは私が外しちゃってたからダクネスは見てなかったんだったと思うよ。ランタンの火は…アンナが消しちゃったかも…」

「ほ、ほら見ろ!これに関しては私は悪くないじゃないか!と、とにかく何故そんなことを知っているのだ⁉︎」

「なんか顔が痛いんだが何があったんだってルミに聞いたら教えてくれた。」

「ど、どうしてそんなことを言ってしまったのだ⁉︎」

「え?いや、気になってたみたいだし。そういえば、あの時カズマがみんなで風呂に入ればいいって言ってたけどだめなのかな?」

「だめに決まっているだろう⁉︎」

「冷静に考えるとこっちとしてもなぁ…あとが気まずくなるってレベルじゃないし…」

「お、おい!冷静に考えるととか言ったか⁉︎まさか冷静ではなかったことを覚えているんじゃないだろうな⁉︎」

「いや、だから操られてたんだって。冷静も何も…」

 

未だにどことなく疑いを持つダクネスにカズマがそんな言い訳をしていると、突然街中に放送を伝えるためのスピーカーから一瞬キーンという音がなってから、ギルドのルナさんの声が聞こえてきた。

 

『デストロイヤー警報!デストロイヤー警報!起動要塞デストロイヤーが、現在この街へ接近中です!冒険者の皆様は、装備を整えて冒険者ギルドへ!そして、街の住人の皆様は、直ちに避難してくださーい!!』




うたわれるもの用語
仮面…形状はオシュトルというキャラクターがつけていたもの。詳しくは次話で解説します。

あと、ルミが薬を作るスキルって、名前決まってないよね?という感想がありまして、その方の提案の通り名前を募集してみようかと…アンケートのやり方はあまりわかりませんが、感想欄は使わないようにしないといけなかったと思うので活動報告の方にそのページを作っておこうと思います。手間でなければ考えていただきたく…本当は作者が決めろよって感じなのですが、理系寄りの自分がオリジナルの名前を考えると変に厨二くさくなりそうでして…なんで理系なのに二次小説書いてんだとかはツッコミなしで…

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