僕が読みたいと思う二次創作『インフィニット・ストラトス』   作:那由他01

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05:企業代表VS代表候補生

 打鉄の調整は高垣さんと一緒に完璧に仕上げた。過敏に動き過ぎて違和感を覚えるほどに完璧に仕上がっている。グレネードもスモーク4スタン2チャフ2フレア2と潤沢にぶち込んでいる。戦術は構築した。あとは、状況に応じて変化させるだけ。

 織斑のISも到着したが、まだまだ初期状態。万全の状態ではない。相手の方は対戦相手が現れるのを刻一刻と待っている。最初に戦うのは俺だろう。もう少し早く彼のISが到着していたら、相手の攻撃パターンを見抜くことも出来ただろうが、それは贅沢というものか。

 

「すまないが宮本、先に出てもらう」

「了解しました」

 

 織斑先生の言葉に静かに頷いて所定の位置に立つ。

 

「礼遇くんなら出来る! がんばって!!」

「作戦も色々考えたし! やれるよ!!」

「機体は完璧に仕上げた、振り回されるなよ」

 

 にこやかに笑って、相槌を打つ。

 

「宮本……勝ってこいよ……」

「わかってる、織斑……」

「礼遇! ……がんばれよ」

「ありがとう、箒ちゃん」

 

 全員の期待が一瞬でのしかかる、だが、それが心地よかった。俺は、こんなにも期待されたことが生まれてこの方、無いに等しい人間だった。だからこそ、緊張よりも、充実感の方が勝っている。俺の背中には、一年三組がいる。無様な姿は見せられない。それに、皆で考えた作戦もある。全部、全部、全部、やれることはやった。あとは、相手を翻弄するだけだ!

 

「行ってくる!」

 

 

「あら、うちのクラスのお馬鹿さんじゃなくて、一年三組のお飾りの代表さんからですのね」

 

 最初から鋭い言葉を投げつけるオルコット、だが、彼女も奮い立っているのだろう。このような対戦、入学する時の先生との対戦の時以来だろう。だからこそ、溜まりに溜まった闘争本能が燃え上がる。現に、俺も戦うことを喜んでいる。打鉄も機敏に動いているようにも感じられた。

 

「お飾りでも、代表は代表さ、互いにフェアプレーで戦おう」

「男性の貴方を信用するとでも?」

「手厳しいね、英国のお嬢さんは」

 

 雪影を展開し、左手で握りしめる。そして、何度か振るい、感覚を確かめる。田辺先生との戦闘以来、一度も振るっていなかったが、それでもしっくりとくる何かは感じられる。コンディションはバッチリというやつだ。あとは、作戦を遂行しつつ、相手の弱点を探るだけだ。

 戦闘開始のブザーが鳴り響く。

 刹那、チャフを投げる。

 

「チャフグレネード!? ですが、ブルー・ティアーズには効きませんわよ!」

 

 出してきたかBT兵器、だが、ミサイルは打ち出していない。そうか、ミサイルは奥の手として温存する作戦なのか、なら、好都合。ファーストアタックに移らせてもらう!

 レーザーの雨霰を掻い潜り、一定の距離に達したところで瞬時加速を使う。

 

「――瞬時加速!?」

「当たれ!!」

 

 零落白夜を発動させ、オルコットの腹部に向けて切り込む。だが、間一髪のところで回避される。それでも、若干の手応えは感じた。シールドをある程度は削ったのかもしれない。今後の作戦を有利に進めることが出来る喜ばしいことだ。

 オルコットはビットを使った攻撃では、追撃を受けると踏んだのか、スターライトmkIIIを構えて発砲する。それを浮遊シールドで防ぎ、距離をとる。

 ズタズタに融解したシールドをパージ。

 チャフの効果が終わる。ビットの動きに若干の変化が見られた。チャフが効いている状態より機敏に動いている。やはり、回線妨害である程度の動きの制限を付けることが出来るのか、これは有益な情報だ。

 

「(ただのブレードを掠っただけでここまでのダメージは与えられないはず。第三世代特殊兵装? いえ、彼のISはどうみても打鉄、第三世代の兵装は装備できないはず……)」

 

 よし、セカンドアタックを行う。チャフが効いている状態よりビットの動きが機敏になっているが、そこは意地と根性で乗り切ってやる。俺は、負けたくない、いや、負けられないんだ。

 オルコットに接近すると即座にビットのレーザーが飛んでくる。それを紙一重のタイミングで躱し、スモークを使用する。

 

「(今度はスモーク!? 第二世代が第三世代と戦う時の定石ですわね、ですが、彼は近接戦闘用の武装しか持っていない。格好の的ですわ!)」

 

 刹那、大量の鉛玉がオルコットに向けて飛来する。

 

「(!? 焔火、いえ、それにしては機体が受けるダメージが少ないですわ……12.7×99mm程度、三綾が製造している硝煙ですわね、そうでした、彼は三綾の企業代表、こういった装備もちゃんと装備しているということですわね)」

 

 スターライトmkIIIからも、ビットからも射撃されない、このタイミングだ!

 雪影を展開、瞬時加速を駆使して一瞬でオルコットとの間合いを詰める。するとスターライトmkIIIを構えた状態のオルコットが現れる。即座に射線にシールドを移動させ、第一打を封じる。そして、もう一度、零落白夜で斬りつける。

 

「(っ!? 重たい……ですが、エネルギーはまだ残っていましてよ!)」

 

 斬りつけ終わったと同時にビットが俺の背後に狙いを定めてレーザーを撃ってくる。即座に回避運動を取り、射線から離れるが、数発程、ダメージを受けてしまった。

 セカンドアタックで削りきれなかったか……。

 

「(彼とのエネルギー差は大きく開いてしまいましたわ。ミサイルを出し惜しみしては、勝てませんわね……)」

 

 角度がついていたからか、二枚目のシールドは表面だけが融解していた。まだ使える。

 

 

 強い、そして、賢いという言葉が先行する。代表候補生が操縦する第三世代機を正攻法で倒しに行っている。それに付け加えて、打鉄のポテンシャルと浮遊シールドも完璧に使いこなしている。打鉄が第三世代機を倒すなら、こうするのが一番効果的だと言わんばかりの模範的な行動だ。

 だが、零落白夜の使用に少しだけ粗さが残っている。見ている分には、正しい零落白夜の使い方に見えるかもしれないが、あれは間違った使い方だ。

 

「山田くん、零落白夜の正しい使い方を知っているかね……」

「え、あの、いえ……」

「零落白夜は斬ったり刺したりして使うんじゃないんだ。斬る刺すだけでは、一撃必殺で相手を倒すことは出来ない。零落白夜の正しい使い方は、相手に押し付ける、それが正しいのだ」

 

 零落白夜は相手のシールドを無効化し、絶対防御の部分に攻撃する。だが、一太刀では、相手のエネルギーをすべて削り取ることはまず無理だ。だからこそ、零落白夜は相手を掴んだ状態や拘束した状態で押し付けることでようやく一撃必殺になる。だが、暮桜の雪片では、それが難しかった。刀身の長い雪片では、どうしても掴んだ状態で相手を攻撃することは難しい、そして、攻撃の速さも落ちてしまう。

 雪影はどうだ? 礼遇が装備しているあの雪影なら、相手を掴んで押し付け続けることも容易であり、射撃武器も必要最低限は積むことが出来る。トリッキーな戦い方をしつつ、相手の腕でも掴んで零落白夜を発動させ、押し付け続ければ、本当の意味で一撃必殺の攻撃になる。

 ……この様子を見る限り、奴は少ない戦闘でそれを理解してしまいそうだ。

 

 

 まだまだエネルギーは残っている。劣勢なのは、絶対的にオルコットの方だ。だが、セカンドアタックで確実に出し惜しみをしようとする考えは消え去っているだろう。つまり、ミサイルが飛んでくる。正確な装弾数はわからないが、ミサイルはミサイル、当たったら大ダメージは確定だろう。

 じゃあ、こっちも出し惜しみをしない方針で行こうか!

 右手にスタンを展開し、オルコットに向かって投げつける。

 激しい閃光から視界を守るためにシールドを顔に移動させる。

 

「(スモークの次はスタン!? 視界が……カバーするためにミサイルを!)」

 

 ミサイルを発射するならこのタイミングだ!

 フレアを展開し、空高く上空に投げつける。するとオルコットが発射したミサイルが誘導され、爆散する。雪影を使用してフィニッシュを狙うが、オルコットは薄目でスターライトmkIIIのスコープを覗き込み、俺に狙いを定めていた、出来る限りジグザグに飛行し、雪影を収納、そして硝煙を展開して弾幕を張る。

 一発目のスタンで駄目だったか、なら、追い打ちで二発目を使う!

 シールドを顔に移動させ、もう一発スタンを投げる。

 

「(シールドを顔に移動させた! スタンですわね!!)」

 

 オルコットは即座に左腕で目を覆い、閃光を回避する。そして、俺にスターライトmkIIIを構え、発砲する。

 シールド! 間に合ってくれ!!

 レーザーの射線にシールドがギリギリ間に合い、融解して地面に落ちる。

 スタンをすべて消費した。残りはスモーク3チャフ1フレア1、少し押され始めたな……セカンドアタックで倒せなかったのが原因か……。

 

「(渋い顔をしてますわね……スタンを使い切ったのでしょう、なら、攻撃に転じるのは今!)」

 

 ビットが機敏に動く、大量のレーザーの雨霰が降り注ぐ、回避行動をとるが、やはり、こうも手数が多かったら掠る程度でも被弾してしまう。仕方なくスモークを使用して精確な位地を特定されないようにする。

 エネルギーが減ってきた。だが、それはオルコットも同じこと。

 ……消耗が激しい零落白夜は使えない。相手のエネルギーを見る限り、雪影で斬りつければ、戦いは終わる。瞬時加速は後二回。だが、もう彼女は慢心していない。どういう風に攻めれば……。

 足元に転がる冷えて固まったシールドがある。

 ――!? こいつだ!

 

「(スモークが晴れますわ、全方位から一瞬で)」

 

 刹那、またチャフが展開される。

 

「(チャフ!? まだありましたのね……ビットの動きが重い……ですが、使えないわけじゃありませんことよ!)」

 

 フレアを上空に投げ、そして、もう一発スモークを使う。そして、もう一発、スモークの準備をする。

 

「(ミサイルが封じられました、ビットも重いですわ……またスモーク、ん!? 二発目……まだ一発目が晴れてないのに……)」

 

 お願いだ、俺の作戦に勘付かないでくれ……。

 打鉄のシールドを二発目のスモークの方向に思い切り投げる。気流が乱れ、俺が移動したように見えてくれ!

 

「移動しましたわね! これで終わりですわ!!」

 

 スターライトmkIIIの射撃音が響き渡る。だが、そこに俺は居ない。俺は、ここにいる!

 刹那、瞬間加速を駆使してオルコットに接近、そして、

 

「――!?」

「チェックメイトだ!」

 

 刹那、雪影の一太刀が彼女を斬り裂く。

 すべてのシールドエネルギーが削られ、オルコットは敗北した。落下する彼女の腕を掴み、お姫様抱っことも呼べる状態で地面に降ろした。

 

「……君は強いな、運が悪ければ、俺が負けてた」

「……お強いのですね」

「いや、ずる賢いだけさ。それに、この作戦は一人で考えたものじゃない。クラスの皆で考えて、練りに練って、ようやく完成したものさ。まあ、最後のシールドを投げるのは咄嗟の判断だったんだけどさ」

「ああ、気流が乱れたのは、パージしたシールドを投げたから……」

 

 負けたからか、高飛車な態度が目立っていたオルコットは妙にしおらしかった。

 

「何がともあれ、わたしの負けですわ。色々と気分を害することを言って申し訳ございません……」

「わかってくれたなら何も言わないよ。それに、君は十分に強い。誇っていい。ただ、悪運が俺の方が強かっただけさ」

「……おもしろい人」

 

 オルコットは静かに反対側のピットに戻っていく。織斑との対戦があるから、迅速に補給を行わなくてはならないのだろう。俺も織斑と戦うために学園側の打鉄のシールドと外してあるハンドガンを装備しないとな。

 

 

 ピットに戻ると半分の生徒が泣いていて、もう半分が狂喜していて、高垣さんだけが修理用の機材の準備をしていた。打鉄を脱いで、勝ってきたよ、と、告げると高垣さん以外のクラスメイト達が俺に抱きついてきた。なんだろうか、色々と美味しい。うん、胸が大きい子が抱きついている。うん、美味しい。

 刹那、箒ちゃんの鋭い眼光が突き刺さる。命の危険すら感じられた。

 

「勝ったぞ、織斑、おまえもがんばれよ」

「わかってる、宮本がくれた時間でファーストシフトを終わらせた。自分の出来ることをするさ」

「礼遇……かっこよかったぞ……」

「ありがとう、箒ちゃん」

「はいはい、勝利の余韻に浸るのもいいけど、ISの整備ができる人全員集まれ! 三十分で整備を終わらせるぞ!!」

 

 高垣さんの喝が効いたのか、ISに強いクラスメイト達は即座にシールドを取り付けて、レーザーが掠った部分の溶接をして、高垣さんはキーボードを叩きながら機体の微調整に取り掛かる。俺も手伝わないとな、そう思い、打鉄に向かった。




 僕の考えた打鉄でブルー・ティアーズを倒す方法。
 誤字脱字がありましたら報告お願いします。
 こんな自分勝手に自分が読みたいだけの物語にお気に入り登録してくれてありがとうございます。

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