僕が読みたいと思う二次創作『インフィニット・ストラトス』 作:那由他01
三機のISをアリーナに搬入して、クラスメイト達が揃ったことを確認する。数名女の子の日で参加できなかった子も居たが、まあ、ほぼすべての少女達が参加している。
俺は全員の前に立ち、静かに見渡す。
「えっと、前の授業で飛行することに違和感を覚えて、あんまり飛べなかった人、手を上げてくれるかな?」
六人か、まあ、俺も最初の頃は飛ぶことに違和感を覚えて、テストパイロットの人達に教えてもらったことを色々と覚えている。そうだな、彼女達はまだまだISを身に纏って戦闘を行う段階ではない、一番違和感を覚えないで飛行出来る方法を教えて、駄目だったら俺が付くか。
「じゃあ、最初にこの子達を教えていいかな?」
六人以外のクラスメイトは素直に俺の案を受け入れてくれた。よしよし、じゃあ、テキパキと飛行訓練に移ろう。
二列に並んで前列の方の子達が唾を飲み込んでISを身にまとう。
「俺は打鉄しか乗ったこと無いけど、ラファールは最高速と最高速到達時間の差しか無いと思うから気張る必要はないと思う。じゃあ、一番簡単な飛行するイメージを教えるよ」
三人はコクコクと頷いた。まあ、これは後々応用できないから、空を飛ぶイメージを植え付ける為に使う手法だ。俺もこれを使用して自分なりの飛ぶイメージを掴んだ。
「じゃあ、まず、自分の行きたい方向を一点に見つめてくれるかな?」
「一点を見つめる……」
「ああ、流石に鳥のように、ひらひらと舞うように飛ぶなんて初心者の状態で出来る筈がない。だから、最初は直線的な飛行。この方法を使うと本当に簡単だから自分なりのイメージを構築させよう」
三人は頷いてから自分が向かいたい部分を見つめてゆっくりと飛行した。そして、ふらつくことなく目的地に到着し、驚きの表情を見せている。懐かしいなぁ、俺も三綾に居た頃は面白くていつもこの方法で飛び回っていた。今は自分なりのイメージを構築させて、緊急回避や完全停止も使いこなせるようになり、使用することは無くなった。やっぱり、飛行に関しては自分なりのイメージを構築させるのが大切なのだろう。十人十色というやつだ。
「うーん、違和感が払拭できない……」
「日野さんそれでも駄目か……他の子は次の子と交代、日野さんには俺が付くよ。あの方法でも違和感を覚えた子が居たら俺に報告して、その子にも付くから」
「ごめんね礼遇くん……どうにも違和感が……」
「いいさ、人には得意不得意が絶対にあるんだから」
日野さんの纏っている打鉄の手を取る。するとハッとした表情で顔を赤くする。この子も男性への耐久が低いのだろう。まあ、IS学園は世界有数のお嬢様校のようなものさ、こういう子が多くても頷ける。
「俺が引っ張るから安心して飛んでいいよ。俺と飛行している間に何かが掴めたら言ってね、放して見てみるから」
「わ、わかったよ!」
日野さんの手を引いてゆっくりと飛行してみる。するとやはりふらつきが目立つ。色々と手解きをしないといけないようだ。
「目を瞑って、そして風を感じるんだ。怖いと思うから受け身を取ろうとふらついてしまう。目を瞑って、すべて俺に任せてくれ、そしたら恐怖が少しずつ薄れていくから」
「う、うん……」
ふらつきが少しずつ消えていく。そして、最終的には自分で方向転換の微調整までしだす。無意識の中で彼女は少しずつ成長する。見ない方が色々と覚えやすいこともあるということだ。
目を開けるようにと指示を出し、そして、もう一度直線的に飛行してみてと告げると胸を張って飛んでみせた。するとふらつきなどしない、綺麗に他の子と同じように飛んでいる。やはり、飛ぶことに恐怖と違和感を覚えていただけなのだろう。今後の成長に期待だ。
「よし、じゃあ、次の人と交代しようか」
「うん!」
さて、練習はまだまだ続く。
2
向坂ソフィア、それがわたしの名前だ。
父親が日本人、母親がロシア人ということになっている。
このIS学園に入学した理由は日本に現れた男性操縦者のデータを入手することであり、母からの命令だ。だが、わたしは専用機なんてもの持ち合わせていない。専用機を持ち合わせている代表候補生では、色々と警戒される可能性がある。だから、一般入学でデータを収集する役割の人間も必要と表現しよう。
宮本礼遇、それがわたしが所属している一年三組に在籍している男性操縦者の名前だ。
身長180cm、
体重は70前半くらい、
体はガッチリとしている、
血液型はO型、
見る限り右利きだが、幼い頃に肩を壊して左を使用することも多く、両利きの可能性が高い、
専用機は倉持技研が開発製造した打鉄、
三綾重工の企業代表として働いている。
異色の経歴を持ち合わせており、幼少期は織斑一夏と篠ノ之束が暮らしていた町に暮らし、篠ノ之束の妹と織斑一夏、その二人で篠ノ之流とかいう剣術を教える道場に通っていたらしいが、ISの発表により、道場は閉鎖、何かの因果があり、織斑一夏によって肩を壊された。その後は父親の死、情報によると殺人らしいが、裏で何者かが手引して、自殺として処理されたらしい。
父親が死んだ後、母親の実家に移住し、織斑一夏が発見された数週間後に三綾重工が主催した適性試験で発見され、そのまま三綾重工の所属になっている。打鉄も三綾重工が所有しているものを借り受けているようだ。
「一通りの練習は終わり。だけど、三十分くらい残ってるな……射撃練習でも行おうかな?」
「いえ、一つ手合わせをお願いしたいのですが」
見るだけのデータでは母さんに怒られる。実戦で感じた癖や弱点、そして、どの程度の腕を持ち合わせているのかを確認した方がいい。男と戦うのは癪だが、これも報告の為だ。それに、制限を多く付けたら教師に代表候補生、織斑千冬の弟、織斑一夏に打ち勝った力も消えるだろう。それに、今わたしが纏っているのはラファール、打鉄とは数年の開きがある第二世代だ。
宮本礼遇は少し悩んで、何かしら付けてもらいたい条件はあるかと尋ねる。
「では、そちらは武器を使用しない格闘だけでわたしを戦闘不能にしてください。わたしは、このアサルトライフル一丁で戦います。そうですね、その打鉄の三分の一のエネルギーを消耗させたらわたしの勝ちということで」
「俺は、素手で向坂さんを戦闘不能か弾薬をすべて使わせたら勝ちということだね」
「はい」
クラスメイトの全員が驚いた表情になっている。なにを驚くことがある。所詮は男、雪影とかいう雪片の模倣品を使いこなして辛い勝利を手に入れてきた奴だ。それが使えない、銃火器すら使えない、そんな状態で勝てる筈がない。彼女達は彼を過大評価しているだけだ。
「やめておいた方がいいよ、礼遇くん強いから……」
「……やはり、自分のクラスの代表、実力を確認してみたいので」
「まあ、時間は余ってるし、やれるだけやろうよ。危ないから皆は中に入ってて」
クラスメイト達は渋々安全な場所に避難する。
「じゃあ、このハンドガンが地面に落ちた瞬間に戦闘開始で」
「わかりました……」
ハンドガンが地面に落ちた瞬間にアサルトライフルで射撃を行う。
――刹那、シールドで射撃を弾き返し、わたしが構えているアサルトライフルを掴み、思い切り地面に向かって投げ飛ばされる。あまりの衝撃にアサルトライフルを放してしまった。まさか、ここまで強いとは……。
「うーん、瞬時加速は使ってないんだから、突っ込んできたと同時に上昇して掴まれることを回避しないとね。ラファールはその辺り、機敏に動くから。後、出来る限り弾幕を張る以外は撃ち出す弾を制限しないと。トリガーを引きっぱなしで敵が倒れるわけじゃないんだから」
「……強いのですね」
「まあそら、君達を守るクラス代表だからね、このくらいやれないと務まらないよ」
男は弱い存在、そんな固定概念が崩れ落ちたのがわかる。
圧倒的に自分の方が有利だった。弾薬も大量にあった。だが、反応が遅れた。彼がシールドを移動させたことさえ、硝煙で見えなかった。そして、何一つ技を使わないで、ただ、投げ飛ばされるだけで戦闘が終了する。あまりにも鮮やかで、美しかった。
「じゃあ、負けた向坂さんは俺と一緒にISの片付けね」
「は、はい!」
「「「「「(それ、ある意味ご褒美なんですけど……)」」」」」
クラスメイト達の視線が突き刺さって痛い……。
3
さて、ISの収納は終わった。手伝わせた向坂さんは顔を真赤にして俯き、ブツブツと何か独り言を言って、手伝ってくれなかったが、まあ、居るだけでも手伝いにはなるか、そうだろう。
時刻は夜の帳が下りる頃、夕食を取るには少しばかり遅いとも思える時間帯だ。
「宮本さん……貴方は強いのですね……」
「ん、まあ、俺が憧れている人はもっと強いし、自分自身で強い弱いの表現は出来ないかな」
「でも、丸腰で武器を持ったわたしを……」
「まあ、色々と方法は練っていたんだけど、ファーストアタックはあれ以外に考えられなかったし、避けられたらそれ以外の方法も考えていた。でも、やっぱり丸腰の状態で相手を倒すのは難しいよ。それに、ISは丸腰の状態で使うものじゃないし、方法も限られてくる。セカンドアタックでアサルトライフルを取り上げられなかったら俺が負けてたと思う」
「ご謙遜を……」
謙遜ね、いや、謙遜するようなことは何一つしていない。相手が最近ISに触れた普通の少女だとしても、武器が何もない状態では、使える手段は本当に限られる。一瞬で相手を沈めなければ、ある程度ISの動かし方を身に着けた人間でも負ける可能性は五分五分だ。だから、俺は自分を褒められない。
「……わたしは、男の人をもっと弱い存在だと思ってました」
「いや、男は弱いよ。俺も女尊男卑の世界に生まれて生きているんだ。男の情けなさはこの目で見ている」
「それでも、宮本さんは強いです。弱くなんか……」
「この世界にISに乗って戦える男は二人だけ、その中の一人を見て、男って本当は強いって思うのは筋違いだ。それに、俺が憧れる人は、もっと凄い。俺は、その人の足元にも及ばない。だからこそ、強くなりたいと願っている。そして、君達を守りたいと思っている」
向坂さんは、そうですね、と、小さく呟いた。そして、腹の虫を鳴らす。ハッと顔を真赤にして、顔を隠した。クールな子だと思ったけど、こういう可愛らしさは持ち合わせているのか、意外な発見だ。
「夕食に行こう、俺が奢るよ」
「……はい、ご一緒します」
向坂さんを連れて食堂に向かう。
今日もなんやかんやあったけど、楽しい一日になったな。
誤字脱字ありましたら報告オナシャス!
こんな自分勝手に、自分が読みたい展開を書き連ねた物語にお気に入りしてくれてありがとナス!