やはり俺のToLOVEるな日常はまちがっている。 作:スキート
すみません。
「ひ、比企谷くん。一緒に回ろっか?」
「あ、ああ」
場所は水族館。俺は今、クラスメイトである西連寺春菜と一緒にいた。
最初はお礼という名目で西連寺が俺を誘い、商店街をブラブラしていたのだが、途中、ララに彩南町を案内しているリト、小町、美柑と会ったのだ。
そして、6人で水族館に行くことになったのだが……
ララが初めての水族館ではしゃぎ始めてどっかにいってしまい、それを追いかける形で、小町、美柑、そしてあのリトまでもがララの方に行ってしまった。
非常に気まずい。
そりゃあさっきまでは二人で一緒にいたが、こう唐突にされると先程までとは違う緊張感が湧き出てくる。
西連寺の表情も心なしか少し固まり気味な気がする。
「…さ、西連寺。すまん。変なのに付き合ってもらっちゃって」
「だ、大丈夫だよ。ララさんがああなのは前に学校案内した時に知ってるしね」
「じゃあ俺らもあいつらの後を追いかけるとしますか」
俺はそう言い、ゆっくりと歩き出した。その直後、俺の服の袖が引っ張られた。
俺が後ろを振り返ると、少しどぎまぎした表情の西連寺が俺の袖を引っ張っていた。
「ど、どうした? 西連寺?」
「……ひ、比企谷くんに伝えたいことがあるの…」
西連寺の頰がほんのり赤く染まる。
「…わ、私は、……中学の頃から……ひ、比企谷くんのことが……す─────」
西連寺の言葉が途切れる。そして、俺の後ろをバサバサと鳥のようなものが通った。
「うおっ!」
周りを見ると、本来飛ぶはずのない鳥類の動物。ペンギンが飛んでいた。
何匹ものペンギンは「クエーーーッ」「クエーーーッ」と泣きながらバサバサと羽の音を立てて飛んでいた。
周りにいた人たちからはどよめきの声が上がる。
すると、いきなり呑気な声が聞こえてくる。
「あ! 八幡に春菜ー‼︎ どう? すごいでしょ? これ!」
「…やっぱお前か……」
俺はさっとため息を吐く。西連寺の顔なんて真っ白で固まっちゃってるし。
「で、何したんだ?」
「いやー。あの子達の動きが鈍かったからコレあげてみたの!」
すると、ララはどこからか錠剤を取り出した。
「じゃじゃーん‼︎ 一粒で元気1000倍♡
デビルーク戦士の秘薬‼︎ 『バーサーカーDX』‼︎」
「おかげであんな元気に‼︎」
「おいララ。この状況を一体どうするつもりだ?」
「それに関しては安心だよ‼︎ 持続時間はたったの20分だけだからね‼︎」
「十分長いじゃな……」
暴走するペンギンは、放心状態の西連寺の方は突進を始めていた。
「春菜! 危ない‼︎」
咄嗟に出た言葉は、苗字ではなく名前の方だった。それほど余裕がなかったのだろう。
西連寺の名前を呼んでもまだ気づかない。俺はいつの間にか、西連寺の方へ走り、向かっていた。
「…ひゃ!」
西連寺に向かって走っていた俺は、ペンギンから守ることはできたが勢いを止められずに、西連寺を床ドンしたような形になっていた。
「「……………………………………」」
両者数秒の沈黙。
「「……………………………」」
そして同時に赤くなる頰。
「す、すまん春菜! …じゃなくて西連寺」
「う、ううん‼︎ あ、ありがとう! 比企谷くん」
すると、西連寺が何かに気づいたらしく……、
「…あ、あれ? 今比企谷くんわたしのこと春菜って言わなかった?」
「うっ。すまん。咄嗟に出てきて………嫌な思いさせたんなら謝るわ」
「私はむしろ嬉しい……かな?」
にっこりと、首を傾げ、頰が赤い西連寺の笑顔に、俺は不覚にもドキッとしてしまった。
「じゃ、じゃあこれからは春菜…で、いいか?」
「うん。それなら私は八幡くんって呼んでいい?」
「ああ。全然いいぞ」
「「……………………………………」」
いや、まてこれ。会話が続かないとくそ恥ずかしいぞ。何かリトには申し訳ないような気持ちがしてくる。
昔の俺なら、とっくに西連寺……春菜との関係を自ら断ち切っていたかもしれない。だけど俺は変わってしまった。今この時、この瞬間が最高に心地よく感じてしまう。
できるだけこの時を長く、この瞬間を長く。
「おい! ララ! これは一体どういう!」
ララはいつの間にか合流していたリトと話していた。
。。。
結城家
「ほんと八幡は羨ましいよなー! 春菜ちゃんと仲良くて!」
「うるせぇよ。リト。今日帰ってきたから何回言うんだよ……」
「ニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤ」
「……………………」
「?」
結城家には八幡にやたらブーブーうるさいリトと、八幡をニヤニヤニヤニヤニヤニヤ見つめる小町と、少し怒り気味の美柑と、事情も何もわからず首を傾げているララと、そして、床ドンのことを忘れられないのか少し頰が赤い八幡の姿があった。
今日も結城家は賑やかである。
。。。
春菜の部屋
「……………………………」
今日のことを思い出すたびに、何度もフリーズを繰り返していた。
この日、西連寺はなかなか寝付けなかったという………。