史上最強の弟子ベル・クラネル   作:不思議のダンジョン

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第五話

 

 

 

「……どうですか、ケンイチさん。クラネルさんの様子は?」

 

「ぐっすり眠っていますよ。よほど疲れていたんでしょうね」

 

 梁山泊の達人たちとヘスティアが外出して数十分の間、ケンイチと美羽は寝込んだベルの為に汲んできた水で濡れタオルを作ったり、汗をふいたりして過ごしていた。その間に既に体力の限界を迎えていたベルは眠りに落ちていた。

 静かに寝息を立てるベルにケンイチと美羽はこれで一安心と胸を撫でおろした。

 

「それでは私は上の教会の掃除をいたしますので、ケンイチさんはこちらの寝室をお願いしますわ」

 

「任せて下さい、美羽さん」

 

 残った水が入った桶とボロボロになった布切れを持ちながら上がっていく美羽を見送るとケンイチは寝室に向き直る。

 ヘスティアとベルの二人だけで暮らしてきたその部屋は二人だけで使用していたとあって家具も少なく、散らかってこそいないが、ダンジョン探索とバイトに忙しい二人だけしか居なかったために掃除まで手が回っておらず、所々に埃をかぶっていた。健康な時ならば問題はなかったかもしれないが、過労で眠っているベルにはこの埃っぽい空気は毒になることに違いない。

 

「さて、やるぞおお!」

 

 ケンイチは気合を入れると、雑巾で棚やテーブルを手際よく拭いていく。埃を落とすときは掃除した所に落とさない様に高い所から低い所への順番で行い、床掃除をするときは吹いたところを踏まないよう奥から手前へと行っていく。

 一般的な高校生男子ならば知らないであろう効率的な掃除の仕方は梁山泊での生活の賜物である。部屋自体が小さいこともあり、もう三十分もあれば上の教会で掃除をしている美羽の所へ手伝いに行けそうだ。

 家事のコツというものは異世界であっても役に立つのだな、とケンイチが感慨深げにうなずいていると後ろからか細い声が聞こえた。

 

「白浜さ……ん? 何をしているんですか?」

 

「あ、クラネル君。起こしてしまったかい?」

 

 ケンイチが掃除している物音で目が覚めてしまったのだろう。ベッドに横になりながらベルがケンイチを見つめていた。

 ケンイチはばつが悪そうに頭をかく。

 

「ごめんね、折角眠っていたのに、起こしてしまって」

 

「いえ、お気になさらず。こちらこそ、お客様である白浜さん達に掃除をさせてしまって……」

 

 ベルは一瞬起き上がろうとしたが、かろうじて自分の状況を思い出したらしく、すまなそうに頭を下げると再び枕に頭を下ろした。

 

「気にする必要はありませんよ。今日から僕たちもここで暮らすんですから。これくらい当然ですよ」

 

「そう言っていただければ幸いです。僕はもう少し休ませてもらいます……」

 

 ケンイチに礼を言うとベルは再び眠りにつこうと目を閉じ、布団をかぶりなおす。

 膨らんだベッドを一瞥すると、ケンイチも掃除を再開する。

 雑多に散らかった小物を一つずつ片付け、汚れた衣服と綺麗な服を分別し、食器も洗いなおそうと手を伸ばそうとしたところで、ふと、視線に気づいた。

 振り返れば、眠っていた筈のベルと目が合ってしまった。

 

「ええっと……僕に何か御用ですか?」

 

「あ……いや、その……」

 

 まさか、自分の視線に気づくとは思わなかったのであろう。ケンイチの姿を盗み見していたベルはやや慌てた様に意味不明なうめき声を上げる。

 その姿に、ケンイチはああ、と合点がいったとばかりにうなずく。

 

「あ……ひょっとして、掃除の音がうるさかったですか? それじゃあ、僕は上にいる美羽さんの手伝いに行きますね」

 

「い、いえ! そういうことじゃないんです! その、実は……」

 

 掃除用具を持ち、上に行こうとするケンイチにベルは今度こそベッドから飛び起きると思い切った様に自分が盗み見ていた理由を白状した。

 

「どうすれば、白浜さんみたいに強くなれるんだろうって思っていたんです!」

 

「え! 僕みたいに!?」

 

 思いがけないベルの言葉にケンイチは驚きの声を上げた。

 

「はい! だって、あれだけいたウォーシャドウを一蹴するなんて、並みの冒険者じゃまるで不可能なことを、まして白浜さんは恩恵も受けてないのに……! まるで神様たちが降臨する前にいたっていう古代の英雄みたいですよ!」

 

「い、いやーそんな英雄みたいだなんて……僕なんて全然大したことないよ?」

 

 英雄の様であったと、目を輝かせるベルにケンイチは困惑を隠しきれない様に頭をかく。

 ケンイチにとって英雄と言えば、師匠たちや友人たちの様に才能に溢れ、泰然自若とした者たちを指す。未だにチンピラや不良を前にすると挙動不審になる自分など英雄という言葉から世界で一番ほど遠いものだとケンイチには思えた。

 

「そんなことありませんよ! 謙遜なんかしないでください!」

 

「うーん……謙遜じゃなくて本当のことなんだけど……僕よりも強い人なんて元の世界に一杯いたよ?」

 

 ケンイチの言葉は正しい。闇との壮絶な戦いを乗り切ったとはいえケンイチは未だ達人どころか妙手の領域にすら至っていない。

 しかし、それは達人という遥か格上の存在を日常的に目の当たりにしてきたケンイチだからこその見解である。先ほど自身の神と出ていったケンイチの師匠たちがケンイチよりも強いということは分かっていてもどれほどのものなのかすら知らないベルは疑問の声を上げた。

 

「本当ですか……? 僕から見たら白浜さんってオラリオでもかなりの使い手だと思うんですが……まあ、僕もオラリオ有数の強者と言えばアイズさんぐらいしか知らないんですけど……」

 

「アイズさん……?」

 

「あっ……!?」

 

 何気なく呟かれた名前にケンイチが疑問符を浮かべるとベルの顔色が急に変わりだす。その様子を見て、この手の話に疎いケンイチも瞬時に事を察した。

 

「ひょっとして、その人が洞窟で言っていたクラネル君の憧れの人ですか?」

 

「うえええええっ!? ど、どうして分かったんです!?」

 

「あはは、そんなに慌てれば、そりゃ分かりますよ。それで、そのアイズさんってどんな方なんですか?」

 

「ええっと……実は僕もあんまり知らなくて。この間までは名前しか知らなかったんですが、一昨日ダンジョンで……」

 

 そう言って始まるアイズとの出会いにケンイチはしばし掃除の手を休めて、耳を傾けた。ダンジョンの中で怪物から逃げ回り、最後は憧れの人に助けられるという内容は年頃の男子ならば少々語りたがらない類のものであった筈だが、アイズがいかに強かったか、いかに美しかったかを夢中で語るベルの顔はうれしくてうれしくて仕方がないとばかりに輝いていた。

 例え、それがどんなにみっともない思い出であったとしても好きな人が関わっているのであれば瞬時に輝かしい情景となる。それは、ケンイチにも心当たりのあることであった。

 

「それでですね! アイズさんは華麗にミノタウロスを切り倒した後、何とこの僕に……あれ? どうしたんですか、白浜さん。そんなにニコニコと笑ったりして?」

 

「ん? いや、クラネル君は本当にアイズさんのことが好きなんだな、と思ったんです」

 

「!?!? な、何故分かったんです!?」

 

「いやー、実は他人事じゃありませんからね。僕には」

 

「そ、そうなんですか……あれ? ひょっとして……お相手の方って、美羽さんですか?」

 

「そうだよ」

 

「へー、そうなんですか……」

 

 あっさりと、美羽への気持ちを肯定したケンイチにベルは感心した様に声を上げる。好きな人を好きだと言える。簡単なようであるが、それができるのは自分にそれだけの自信がある人間だけだ。

 果たして自分は目の前の人間の様にアイズの事を好きだと言えるだろうか。

 そう考えたところで昨日の豊穣の女主人亭の一件を思い出し、一気に顔色が暗くなった。言える筈がない。いや、本来であれば懸想すること自体非難されても仕方のない程に彼我の差は大きい。せめて、目の前の人間程の力があれば話は違うのだろうが。

 ため息をつき、羨ましそうに自分を見るベルにケンイチは不思議そうに問いかけた。

 

「ええっと……どうかしたんですか、クラネル君?」

 

「いえ、やっぱり僕も白浜さんみたいに強くなりたいな、と思いまして」

 

「? なぜこの話の流れで……ああ、そういうことですか。そのアイズさんと自分では釣り合いが取れないから、ですか」

 

「ええ、その通りです。本当によくお分かりになられますね……」

 

 またしても自分の気持ちを言い当てるケンイチにベルは最早驚かない。

 

「その気持ち、痛いほどわかりますからね。僕も一年前は武術なんてやったこともない素人で、とても美羽さんにふさわしい男じゃなくて随分悩んだものでしたよ。まあ、今でも美羽さんには敵わないんですけどね」

 

「ええっ!? 美羽さんってそんなに強いんですか!? というか、白浜さんって武術を始めて一年しかたっていないんですか!?」

 

 恥ずかしそうなケンイチの言葉にベルは二重の意味で驚愕した。ケンイチの強さを目の当たりにしたベルだからこそ分かるが、ケンイチの強さは間違いなく上級冒険者の域に達している。

 上級冒険者と言えば上はレベル7から下はレベル2まで幅広い差があるが、共通する点が二つ存在する。一つはレベル1である下級冒険者とは隔絶した力を持つこと、そしてそしてもう一つはそこに至るまでに相応の時間が必要であるということだ。

 現在、レベル2に至った最短期間はアイズの1年だ。天才剣士の名をほしいままにしているアイズでさえ1年という時間が必要であったのだ。

 1年かかってレベルアップ、と聞くとずいぶん時間がかかっている様に聞こえるが、これでも驚異的な早さである。

 何せ、レベルアップを果たすにはただ漫然と経験値をためるだけでは不十分であり、果たす為には身の丈に合わない、自らの殻を打ち破り、神々すら賞賛するほどの偉業を成し遂げねばならないのだ。その為、冒険者の街であるオラリオでも上級冒険者は少数派であり、その少数も十年単位の活動の結果ようやく、という人間も多い。

 だが、その分、成し遂げた見返りも大きい。レベルアップをした魂は一段階上の存在へと押し上げられ、それに伴い肉体もまた、上位存在にふさわしい性能となるのだ。その上昇ぶりはステータス向上によるものとは一線を画し、神はこのことを存在の昇華、神への接近とまで表現するほどだ。

 それ程の力をアイズは僅か一年で手に入れたのだ。天才という言葉だけではもはや表現することも出来ない程に常識外れである。

 だが、その非常識を目の前の少年は成し遂げたのだ。いや、神の恩恵という、人間の潜在能力を引き出す要因を得ていないことを加味すれば、もはや同列に語ることすら見当違いか。

 何せ、恩恵を受けていない以上、ケンイチはレベルアップによる器の昇華もステータスによる能力向上すら得ていない。ただただ、愚直なまでに己の力を高める事だけで神の恩恵を受けた天才に並んでみせる。一体どれほどの才能が有ればそんなことが可能なのであろうか。

 

「白浜さんって、すごい天才だったんですね……」

 

 ベルの体からヘナヘナと力が抜けていく。ここまでくれば最早、羨ましいという感情すら起きなかった。あまりに自分と違う存在にベルはただただ感服するほかなかった。

 

「へ? 僕が天才? 冗談でしょう? だって僕、今まで戦った相手からは全員、師匠たちからも才能なしって言われてきましたよ?」

 

「ええ……いくら何でもそれは信じられませんよ」

 

 だが、そんなベルの言葉に対するケンイチの返答は思いがけないものであった。

 そんな筈がない。あのアイズですら手に入れるのに一年かかった強さを恩恵なしで手に入れることができる者が無才など謙遜が過ぎる。

 

「いや、本当なんですって。一年前の僕は典型的ないじめられっ子でしてね。その時、美羽さんに紹介され、師匠たちに鍛えられて今の力を手に入れたんです」

 

「あの人たちに……ですか……?」

 

 半信半疑のベルの脳裏に先ほど出ていった人たちの姿が映る。確かに筋骨隆々とした体格や泰然自若とした態度といい、ただ者ではない雰囲気をまとっていた。しかしながら、実際にその力量を見ていない以上、ベルにはその話を鵜呑みにすることはできなかった。

 昨日のダンジョンで、戦う姿を見れていたら話は別だったのだろうが……

 と、そこまで考えたところで気が付いた。

 

「あれ?」

 

「どうかしましたか、クラネル君?」

 

「あ……いえ、何でもありません……」

 

 突如、声を上げた自分に怪訝そうな視線を送るケンイチにベルは慌てて何でもない様に取り繕いながらも先ほど浮かんだ疑問について思考を張り巡らしていた。

 昨日のダンジョンからの帰還中、ケンイチの師匠たちが戦う姿を見ることができなかった。

 新人とはいえ日常的にダンジョンに潜っていたベルにだって分かる。そんなこと、あり得ないのだ。

 魔物たちを無限に生み出す工場であると同時に住処でもあるダンジョンには当たり前の話だが、魔物たちが大量に生息している。ましてや、時刻は深夜。昼間の様に沢山の冒険者がおらず、間引きがされていないため日中以上にその数は多かった筈だ。

 そんな場所に十人近い集団が忍ぶことなく移動していれば間違いなく発見された筈なのだ。

 だが、そうはならなかった。どういう訳かベル達の前に魔物たちの姿はおろか、声や足音すら一つも見当たらなかったのだ。まるでベル達一行に戦う前から怯え、逃げ出したかのように。

 他人に話せば誰もが一笑に付す話だろう。

 野生の動物ならば不利と見れば決して人を襲わないが、魔物にその様な理屈は通じない。

 多種多様な種を持つ彼らだが、どのような種であっても一度人間を見つければ、人間が憎くて憎くて仕方がないとばかりにたとえ数で負けようと力量で劣っていようともわが身を省みずに襲い掛かってくるのだ。

 唯一の例外が先日のロキ・ファミリアが出くわしたミノタウロスの集団逃走ぐらいのものだが、それも一度は戦い、力の差を見せつけられた上で起こったのだ。戦う前から魔物を遁走させるなど眉唾物としか思えない。

 思えないのだが、今のケンイチの話を聞いた後ではもしやという考えがベルの頭からぬぐい切れなかった、いや、そうであって欲しいと本心では願っていた。もし、あの人たちにそれ程の力があるのであれば、彼らに師事することで自分も強くなれるかもしれない。そんな考えがちらつき、気が付けば声が喉から飛び出していた。

 

「あの……白浜さん」

 

「ん? なんですか、クラネル君?」

 

「もし僕も弟子入りすれば、僕みたいな人間でも強く、なれるでしょうか……?」

 

 真剣なベルの表情にケンイチは一瞬気圧されたが、すぐに満面の笑みで答えた。

 

「勿論ですよ! クラネル君ならすぐにでも強くなれるに決まっています!」

 

「本当ですか!?」

 

 その言葉を聞き、ベルは決心した。自分もまたあの人たちに弟子入りすることを。当たり前のことだが、故郷に帰る手段を探している最中の彼らに指導を求めることが如何に非常識な事かはベルとてわきまえているつもりだ。だが、それでもいつか必ず憧憬へと手を届かせると覚悟を決めた少年にとって偉大な先達の教えを受けられるかもしれない好機を逃すことはできなかった。

 たとえ、断られても石にかじりつく勢いで頼み込み、手の空いた時だけでも教えを受けられるようにしよう。隼人たちが帰って来た時に向けて、ベルは固くそう決心した。

 そして、そんなことを考えていたためにベルの耳にはケンイチの最後のつぶやきが届くことはなかった。

 

「……まあ生き残れば、の話ですけどね……」

 

 

 

 隼人たちが帰って来たのは日も沈みかけ、そろそろ暗くなり始める時間帯であった。

 そのころにはベルの体調は起きて歩けるほどまで回復しており、ケンイチ達の反対を押し切り、掃除の手伝いまでできるようになっていた。

 三人の手によって上の礼拝所の片づけが一段落し、さて夕食はどうしようかと考え始めたとき、入り口の扉が勢いよく開かれ、そこから見覚えのある者たちが入って来たのだ。

 

「ホッホッホッ! 今帰ったぞ、三人とも」

 

「長老! お帰りなさい……うわっ! どうしたんですか、それ!?」

 

 そう言って入って来た隼人に目を移すや否や、喜んでいたケンイチの顔が驚愕に染まった。その後ろにいる二人も同様に、隼人たちが運んできた物に目を丸くしていた。

 隼人たちが持っている物、それは袋一杯の穀物や牛一頭を丸々使ったかのように巨大なブロック・ハム、動かすたびに水音がしていることから察するに大人一人が余裕で入る樽一杯に入った酒等々、およそ貴族のパーティーでも使いきれない程の食料であった。

 初めて見る御馳走を前にして呆然とするケンイチたちに至緒が得意げに自分たちの成果を見せた。

 

「ヘッヘッヘ……どうだ、すげえだろ。何せ今日は俺たちがこの世界に来て初めて屋根の下で過ごす夜だからな。景気づけに宴会でもやることにしたのさ」

 

「いや、確かにすごいですけど……一体この食べ物はどうやって……?」

 

「勿論買ったのさ、この世界の金を稼いでな」

 

「稼いだ? 一体どうやって?」

 

 ケンイチの至極尤もな疑問。それに答えたのは意外な人物だった。

 

「賭博場で稼いだのさ……」

 

「神様!?」

 

 ふらふらと隼人たちの後ろから現れた自分の主神にベルは驚愕の声を上げた。朝に別れてから数時間程度しか経っていないというのにその顔色は疲労により土気色になっていた。ベルは慌てて駆け寄り、ケンイチと美羽はおそらくはこうなった原因であろう人物たちに詰め寄った。

 

「な、ななな何をしたんですか、一体!? その稼いだお金、真っ当なんですよね!?」

 

「当たり前だろうが! むしろこれでも控えめだったんだぞ。もうちょっと頑張ればこの倍ぐらいは稼げたのに秋雨の野郎がそのへんにしとけって止めやがったんだ」

 

「仕方あるまい。あまり目立ちすぎるのは良くないからね。ああいう所では稼ぐのはほどほどにしておかないと刺客を差し向けられるからね。実際、ここに来るまでにもう30人ばかり返り討ちにしたじゃないか」

 

「し、刺客……? あの、本当にどうやって稼がれたんですの……?」

 

 聞こえてきた物騒な単語にケンイチと美羽もドン引きであった。

 

「アイヤー、三人ともそんな怖い顔する必要はないね。おいちゃん達は賭け試合をしてきただけね」

 

「賭け試合……?」

 

 そう言ってケンイチの頭に思い浮かべるのは一つの場所。以前、梁山泊の家計が苦しいと知り、至緒に相談した結果、ほぼというか完全に拉致監禁され連れていかれた裏格闘場であった。そこでは、夜な夜な腕に覚えのある者たちがルール無用の真剣勝負を行い、その勝敗で違法ギャンブルが執り行われていたのだ。

 このオラリオは冒険者の街だ。荒くれ者たちが集うこの街ならばそういう賭けが行われていたとしてもおかしくはないだろう。

 

「ヘスティア殿から、この街では外国資本の大きなカジノがあると聞いてのう。そういう場所ならばそういった趣向のものもあるのではないかと思ったら、案の定でな。ここは一つこの世界の冒険者とやらがどれほどのものか腕試しも兼ねて全員で参加してみたのじゃよ」

 

「え゛っ!? 師匠たちだけでなく、長老まで参加したんですか……!?」

 

「そう……だ。レベル4とやらが何人か出てきたが、正直ケンイチと同等かそれ以下だった……な」

 

「アパパ! アパチャイも頑張ったよ。アパチャイ、こういった場所で戦うのは久しぶりだったから、いつもより頑張ってたくさん相手を物理的に地獄に落としたよ! なぜか最後の方は皆逃げ出したけど!」

 

「うわあ……ですわ……」

 

 特A級の達人である師匠たちだけでなく、その上の超人レベルの長老までもが参加し、しかも相手はいい所で弟子クラス最上位程度という賭け試合。一体どのような惨事になったかは想像すらしたくない。

 賭場を開いていた胴元はさぞ肝を冷やしたことだろう。ケンイチはあったこともないその賭場の胴元に心の底から同情した。

 

「あー、ケンちゃん。どうやら胴元に同情しているみたいだけど、その必要はないね。こういった事態は賭場を開く以上起こり得ることとして覚悟してしかるべきだし、何より……」

 

「何より?」

 

「先ほど秋雨どんが言ってたでしょ、刺客を30人ほど返り討ちにしたって。あれ、儲けを奪われた胴元が奪い返そうとして差し向けたものね」

 

「ええっ! 刺客ですか!? だ、大丈夫だったんですか!?」

 

「あ、ああ大丈夫だったよ。ケンイチ君、君の師匠たちは強いんだね。30人もいた刺客だったけど全く歯が立っていなかったよ」

 

「え……?」

 

 30人の暗殺者に襲われたと聞き、焦った様子を見せるケンイチの姿にヘスティアは安心させようと師匠たちの無事を伝える。

 だが、ヘスティアの言葉に当のケンイチはその意図が分からないかのように首をかしげると、すぐにヘスティアの勘違いに気づき、訂正した。

 

「あ、いえ。僕が心配しているのは師匠たちじゃなくて相手の方です。師匠たちが30人程度の刺客に後れを取るとは思えませんし」

 

 きっぱりとした口調に神の権能を使うまでもなく本心だということがヘスティアは理解できた。きっと目の前の少年は元居た世界でもこういった騒動に巻き込まれていたんだろうなあ、と会って数時間の少年に同情を禁じ得なかった。

 

「ああ、そう。大丈夫かってそういう意味だったのかい……うん、まあ……死んではいないと思うよ、死んでは」

 

「そ、そうですか……」

 

 死んではいないということをやたら強調するヘスティアの口ぶりにおおよそのことをケンイチと美羽は察してしまった。

 そんな二人の心情などつゆ知らずとばかりに大人たちは和気あいあいと宴会の準備を始めていく。

 

「おい、秋雨。今日ばかりはパーッとやってもいいんだろ!?」

 

「やれやれ、まあ今日ぐらいは羽目を外してもいいだろう」

 

「アパパ! ハンバーグ、ステーキ、食べ放題! 食べ放題よ!」

 

「今日は久しぶりにおいちゃんも腕を振るって見せるね!」

 

「切るのはボクに任せ……ろ」

 

「ホッホッホッ! それでは皆の衆、早速宴会の準備を……」

 

 始めるかのう、と言いかけたところで隼人はピタリと動きを止めるとキョロキョロと自分たちの買ってきたものを見渡し、ようやく自分たちの失敗に気が付いた。

 

「しまったのう。食料を買ったのはいいが、肝心の食器を買い忘れてしまったわい」

 

「おお、そういえば確かにそうですな。我々としたことがついうっかり」

 

「ええっ!? 本当ですか。だとしたら急がないといけませんよ。もうすぐ冒険者がダンジョンから帰って来る時間と被りますし、そうなったらすごい人込みになってしまいますよ!」

 

 あっけらかんとした様子の隼人たちとは対照的に夜のオラリオの混雑ぶりを知っているベルは焦った様子で空をうかがう。

 空からは既に日が姿を消し、うっすらと白い色を帯びた月が顔を出そうとしていた。耳を済ませれば、寂びれたこの教会付近でも徐々に賑わいが起こり始めていた。

 この様子では一時間もすればベルの言葉通りとなるのは明らかであろう。

 

「なんと、それはいかんのう。それでは、ここはワシがひとっ走りしてしてくるかのう」

 

「ちょっと待ってくれ、隼人君。君は昼間の街並みを歩いただけだろう、夜のオラリオは初めてだし、ボクもついていくよ」

 

 飛び出そうとする隼人をヘスティは呼び止めると自分もついていこうとする。そして、隼人についていこうとするものはヘスティアだけではなかった。

 

「それでしたら、私もご一緒したいですわ。当分この街で暮らすことになりそうですし、物価の相場も知っておきたいですわ」

 

「あっ! 美羽さんも行かれるのなら僕も行きます。荷物持ちは必要でしょう!」

 

「まあ、それもそうじゃのう。ではワシらは行ってくるから留守番は任せたぞ、皆の衆」

 

「お任せください。長老」

 

 家計を預かる美羽とそんな彼女との夜のデートができるチャンスを逃すまいとするケンイチもヘスティアに続いた。

 隼人としても特に申し出を断る理由もなく、三人を連れて教会を出ていった。

 あとに残ったのは、達人たちと彼らに師事することを望むベルだけとなった。

 それは、つまりベルの弟子入りを止める、止めてくれる存在がいないということだ。

 

「やれやれ、長老にご足労をかけてしまうとは、どうやら我々は知らないうちに浮かれてしまったようだね」

 

「まあ、いいじゃねえか。おかげで美羽とケンイチも保護者同伴付きデートができたしな」

 

「ケンイチはともかく、美羽はそんなこと微塵も考えていなさそうだった……ぞ」

 

「そもそも、保護者同伴付きでデートと言えるのかね……?」

 

「アパパ……そんなことよりおなか減ったよ……じじい達早く帰ってきて欲しいよ」

 

「あの、皆さん!」

 

 突然のベルの大声に達人たちは虚を突かれたように振り返る。ベルの顔は緊張で真っ赤になっており、ただ事ではないということが見て取れた。

 しかし、当のベル本人は自身の状態など気にも留めない。何せ、今から自身の運命が決まるのだ。

 ごくりと生唾を飲み込み、そして遂にその言葉がベルの喉から飛び出した。

 

「僕を……僕を弟子にしてください!」

 

 

 

 

「ふー、やっぱり人込みに巻き込まれてしまったね」

 

「ですけど、良い買い物ができましたわ」

 

「ウム、そうじゃのう。これで当面はここでの暮らしに困ることはなさそうじゃわい……おーい、ケンちゃん。お主もそう思うじゃろう?」

 

「は……はいいいい……!」

 

 相場よりもずっと安い値段で生活用品を買うことができた隼人たちはうれしそうな顔で帰路についていた……約一名を除いて。

 その一名……息も絶え絶えといった様子のケンイチは三人からやや遅れた位置でふらふらとしながらもついてきていた。その背中には見上げるばかりの荷物が乗っかっており、今にもケンイチを押しつぶそうとしている。そんなケンイチを美羽は心配して話しかける。

 

「あのーケンイチさん。やっぱり私も持ちましょうか?」

 

「いいえ! 荷物持ちに来ると言ったのは僕ですから。美羽さんは心配しないでください! この程度! 普段の修行と比べればなんてことはありませんよ!」

 

 ほうら、この通り! と美羽の申し出をきっぱりと断ると、ケンイチは勢いよく走り出し三人に並ぶ。足はガクガクと震え、笑顔は引きつっており、誰が見てもやせ我慢だと分かるのだが、それを指摘するものはいない。当事者の二人と保護者の隼人は勿論、今日出会ったばかりのヘスティアも強引に美羽の分の荷物まで持ち始めたケンイチの姿に好きな子に荷物を持たせまいとする彼の心情が理解できたからだ。

 

「なんというか、男の子だねえ……ケンイチ君は」

 

「ホッホッホッ……まあ、美羽を任せるには最低でもワシを超える必要があるがのう。さあて、ケンちゃん。教会までもう一息じゃぞ」

 

「はっ……いっ……!!」

 

 あまりの重さに下がっていた視線を上げてみれば、いつの間にか教会まで数百メートルの所まで来ていた。

 あと少しで到着できる。そう考えれば体の底から力が沸きあがってくる。

 腰を持ち上げ背筋を伸ばし、足を振り出していく。教会まで百メートルを切り、数十メートルの所で膝が笑い始め、数メートルの所で体が崩れ、そして遂に倒れこむようにして教会にたどり着いた。

 

「つ、着いた……」

 

「お疲れ様ですわ、ケンイチさん」

 

「頑張ったのう、ケンちゃん」

 

「やったね、ケンイチ君。君の頑張りは神であるボクが認めてあげるよ」

 

 ケンイチの頑張りに各々が賞賛していると、教会の奥から大きな影が近づいてきた。

 

「あ、ケンイチよ! お帰りなさいだよ。おーい! 秋雨、ケンイチ達が帰って来たよ!」

 

「おお、そうかね。いや、すまないね、ケンイチ君。我々の不手際で随分迷惑をかけたみたいだ」

 

 アパチャイに呼ばれ、奥からやって来てニコニコとした表情でケンイチを労う秋雨。普段と変わらない様子であったがその右手に握られているものにケンイチは目を丸くした。

 

「あれ!? それってお酒ですよね? 岬越寺師匠ってあまりお酒を飲まれない方では……?」

 

 うっすらとだが顔を朱に染める秋雨の手には赤ワインの入ったグラスが握られていた。ケンイチは梁山泊で暮らして一年以上が経っているが、秋雨が酒を嗜んでいる所を見たことなど数えるほどしかなかった。

 

「ああ、これかい? 何、今日は実にめでたい日なのでね。たまにはいいかと思ったのだよ」

 

「ああ、成程ですわ。今日から私たちはここで暮らしていくことになりますものね」

 

「ああ、もちろんそうだが、実は君たちが出ている間にもう一つ喜ばしいことが起こってね。今、皆で喜びを噛みしめていたのさ」

 

「喜ばしいこと?」

 

 ケンイチが疑問の声を上げたところで教会の奥から至緒が酒瓶を片手に歩み寄って来る。その顔色は秋雨のそれよりも赤く、息も酒臭い。酒臭さに秋雨が眉を顰めるが、全く気付かない様子だ。完全に出来上がっているようだった。

 

「おい、秋雨! 早くケンイチに弟弟子を紹介してやれよ!」

 

「は? 弟弟子?」

 

 思いもよらない言葉に思考が停止するケンイチの前に至緒に続いてベルがやって来ると、ケンイチに深々と一礼した。

 

「どうも、白浜さん! 今日からよろしくお願いします!」

 

「へ? あ、ああ……うん、こちらこそ……? ええっと……クラネル君。弟弟子っていうのはどこのどなたなんですか?」

 

 まだ状況が呑み込めていないケンイチの言葉にベルはうれしくてうれしくてたまらないとばかりに告げた。

 

「僕です! 僕も白浜さんみたいに強くなりたくて! 僕も白浜さんの師匠たちに弟子入りしたんです!」

 

 ガシャン!

 その言葉を聞いた瞬間、ケンイチの手から荷物が落ちる。それだけでなく、顔面は蒼白になり、手が、足が震え出す。尋常ではないケンイチの様子にベルが慌てだす。

 

「うわっ! どうしたんですか、白浜さん!?」

 

「し……」

 

「し……?」

 

「正気かい! クラネル君!? この人たちに弟子入りするだなんて!?」

 

「えっ……!?」

 

 きっと、ケンイチも喜んでくれると思っていたのにまさかの言葉にベルも言葉を失った。

 

「この人たちの修行がどれだけ過酷か分かっているのかい!? 僕なんか一体何回死にかけたことか! いや、むしろ死なせてくれと何度願ったことか!」

 

「えっ……!? えっ……!?」

 

 混乱するベルの肩をつかみ、必死にケンイチは説得する。事態の展開の速さにベルはついていけていないのだが、それに気づく余裕すらないのか、ケンイチは雪崩の如く言い募る。

 

「いいですか! 今ならまだ間に合います。ここは一つ誠心誠意謝って無かったことに……ぐえっ!?」

 

「白浜さん!?」

 

 ベルの目の前で突如として崩れ落ちるケンイチ。その後ろにはいつの間にか小柄な中年男性が佇んでいた。

 

「おやおや、突然眠っちゃうなんてケンちゃん、ずいぶん疲れていたみたいね。ここは師匠としておいちゃんが責任もって見ておくから後は任せるね、みんな」

 

「へ、任せときな! 久しぶりの弟子候補、絶対に逃さねえよ!」

 

「う……ん。脅迫……じゃなくて説得は得意……だ」

 

 明らかに眠ったのではなく、眠らされたケンイチの体が下手人の手によって運ばれていく。

 哀れな犠牲者の姿をまるで隠すようにしてベルを取り囲む達人たちの姿に、ベルはようやく、しかしあまりにも遅まきながら恐怖を感じた。

 

「あの……皆さん? なんか、白浜さんが恐ろしいことを言っていたような……? あの……大丈夫なんですよね?」

 

 恐怖のあまり、抽象的な物言いとなる。案の定、秋雨はそれを都合のいい解釈をする。

 

「はっはっはっ! 安心し給え、ベル君。先ほどのあれはケンイチ君の悪ふざけさ。我々に任せてもらえれば、達人の世界に転がり落ちること間違いなしさ!」

 

「いや……僕の言っている大丈夫と言うのはそういう意味では……というか転がり落ちるって、なんか不穏な響きなんですけど、普通そこは上り詰めると言うべきでは?」

 

 当然のベルの疑問に答える秋雨の口調は優しい。しかしなぜだろうか、ベルにはそれがまるで罠にかかった獲物を逃がすまいとする猟師を連想させた。

 

「いいかね、ベル君。上るという表現は途中でやめることができる場合に使うものだよ。しかし、我らに任せた以上は中途半端などあり得ない。見事転がり落ち切って見せるか、もしくは命を落とす……いや、死ぬことも許さないからやはり落ちきるしか道はないね」

 

「えっ……!? えっ……!? えっ……!?」

 

 話の端々にちりばめられた危険な単語の数々がベルの生存本能に最大級の警鐘を鳴らす。これと比べれば先日のミノタウロスからの逃走など子供の鬼ごっこみたいなものである。

 自分のやらかした失敗とそれが引き起こした事態にベルの血の気が引いていく。このまま自分は若き命を散らしてしまうのか、そうベルが絶望しかけたとき、救いの手が差し伸べられた。

 

「ちょーと、待ったああああっ!」

 

「神様!?」

 

「む、ヘスティア殿。何か問題でも?」

 

 自らの眷属の危機にヘスティアが秋雨の前に立ちふさがる。その小柄な体を精一杯広げベルを秋雨から隠すようにして睥睨する。

 

「問題も何も、さっきから僕のベル君にやれ死ぬだの転がり落ちるだの物騒極まりないことを言ってくれたじゃないか!?」

 

「成程、確かに少々不安がらせることを言ってしまったようだね。これは確かに我々の落ち度でしたな、申し訳ない」

 

 怒りで顔を赤くするヘスティアの弾劾に秋雨は素直に自分たちの非を認める。だが、そこで引き下がる様な男が特A級の達人になどなりはしない。

 

「しかし、安心してもらいたい。我々も鬼ではない。弟子入りしてすぐのベル君にいきなり無茶などさせはしませんよ」

 

「……本当に? 言っとくけど神であるボクには君たちの嘘を見抜く能力があるんだからね」

 

 秋雨の言葉にヘスティアは疑り深そうにしながら自らが持つ神の権能を説明する。

 地上に降り立ち、不自由さを満喫するために自らの力のほとんどを封印した神々だが、いくつかの力は権能として残していた。嘘を見抜くというのはその中の一つだ。これにより、神を謀ることは確かにできないのだが……

 

「ええ、勿論ですよ。明日からの修行はベル君の体が出来上がるまでは(我々の基準において)軽いものにしますし。怪我、ましてや命に関わるようなことは(修行を続けさせるためにも絶対に蘇生させるので)ありません」

 

「むう……どうやら嘘は言ってないようだね。安心していいよ、ベル君」

 

 しかし、それは嘘を見抜くというだけであり、真実を見抜くわけではない。相手がそれを嘘と認識していなければ嘘として感知できないのだ。

 秋雨の『嘘だけは言っていない』言葉にヘスティアは納得し、ベルも胸を撫でおろした。

 

「ほ、本当ですか!? ふー、びっくりしました。すみませんでした、岬越寺師匠。弟子入り初日から疑うようなことをしてしまって」

 

「ははは……それはお互い様さ。こちらも誤解させるようなことを言ってしまったからね。お互い今日のことは水に流そうじゃないか、ベル君。今日から我々は師弟なのだから」

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

「頑張りなよ、ベル君。僕も応援しているからね!」

 

 和解し笑いあう師と弟子、そして保護者。一見すれば微笑ましい光景であろう。しかし……

 

「何故でしょうか、お爺様。私は今、時限爆弾を見ているかのような気分ですわ……」

 

「ホッホッホッ! 若いころは苦労をしとく者じゃぞ、美羽」

 

 こうして、異世界からの闖入者が混じって最初のオラリオの夜が更けていく。その夜が明けたとき、なにが起こるかは誰も分からなかった。

 

 

 

 







 遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。
 ようやく、今回ベル君の弟子入りが決まりました。次回からは皆さんお待ちかねの修行パートへと移ります。このSSではケンイチの強さは大体レベル4ぐらいとしています。美羽でレベル5で達人以上からは測定不能です。異論はあるかもしれないですが、どうかご了承ください。
 それでは皆様のちょっとした楽しみになれたことを祈って筆を置かせてもらいます。




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