旅人マレファの旅日記   作:飯妃旅立

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ブラッククイーンは微笑まないより。


旅人と偽物と卵、時々怪盗と授業と探偵卿。

 ●「歴史の終端」

 

『なるほど、フィニス・パクトゥンね』

 

 超弩級巨大飛行船トルバドゥール。遥か高空を航行するこの飛行船の一室で、通信が行われていた。

 テレビ電話の画面に映るのは、どこかのアパートの一室。迷惑そうな顔を隠そうともしないギリシャ人の青年と、2Dのキャラクターとしてふよふよ浮いている煌びやかな格好をした女性が映っている。

 珍妙なことに、中央をぽっかりと空けて、まるで中央の誰かがメインであるかのような立ち位置なのだ。

 

【はい。フィニス・パクトゥン……500年前に世界各地で起こった”奇跡”。デジタルデータは勿論、紙のデータすらほとんど残っていませんでしたが、クイーンや皇帝(アンプルール)と同じく長い年月を生きる貴女であれば、知っているんじゃないかと】

『それで、私に連絡を取ってきたというワケね。でも、よく私がアンゲルスの所にいるってわかったわね?』

【あ、それはわたしがRDに言ったのよ。彼が探していて、ちょうどこのアパートにいるんだから、教えないはずがないでしょう?】

【ああ、助かったよマガ。マレファさんは伝書鳩以外では中々捕まえられないからね】

 

 そう、中央にいるのはマレファだ。探偵卿アンゲルスのPCのカメラで、RDとテレビ電話を行っている。旅人であるマレファは、スマートフォンはおろか携帯電話自体を所持していないので、運よく捉まえられた事は幸運であると言えるだろう。

 相変わらず電子機器に映らないマレファから発生しているエラーをRDとマガの二人掛かりで封殺しながら、RDは用件を話す。

 余談だが、Ms.マレファとマレファさんの間で揺れていた彼女の呼称はマレファさんに収まったらしい。アラビア語なのであまり関係はないのだが。

 

【それで、フィニス・パクトゥンについて知識を頂けないでしょうか? また、出来るのならばエッグについても……】

『うーん……まぁ、教えてあげるのは吝かではないのだけど……』

【何か不都合が? それとも、対価が必要でしょうか】

『ああ、いえいえ。記録にほとんど残されていない伝承を言葉で伝える――これは旅人にとって、とっても楽しい事で、嬉しい事なのよ。だから不都合もなければ対価も要らないんだけど……』

 

 言いよどむマレファ。

 その声色からは「苦笑」というニュアンスが感じ取れた。

 

『ええと……まず、フィニス・パクトゥンについてね。フィニス・パクトゥンっていうのは、――ワードなの。要は――みたいなものよね。多分エッグを――した――がエッグを――させるために必要な――として教えたんじゃないかしら? だから、全世界で同じ言葉が伝えられているのよ』

『……今、なんて言った?』

【すみません、マレファさん。エラーが出て……マガ、君には聞き取れたかい?】

【いいえ、こっちでもダメよ。アンゲルスも聞き取れていないみたい。ノイズみたいなのが入ってしまって……】

 

 RD側も同じだった。マレファの言葉の端々にジジジジッというノイズが走り、大切な部分が上手く聞き取れない。アンゲルスに「もう一度言ってくれ」と言われ、苦笑しながら何かをもう一度呟くマレファだが、やはり三人とも聞き取れないらしい。

 

『まぁ、そうなるのよね。ごめんなさい、これ外の言葉だから……。ええと、――……じゃない、――、でもなくて……ええと、そう、じゃあON、ONみたいなもの。これならわかる?』

『……起動スイッチ、という事ですか?』

『あぁ、流石は天才くんね。そう、そうだったわ。ちょっと違うけど、ニュアンスは合ってる』

【文脈から察するに、エッグの起動スイッチがフィニス・パクトゥン……という解釈でよろしいのでしょうか】

『うん、まぁちょっと違うのだけどね。使う分にはフィニス・パクトゥンだけで問題ないと思うわ』

 

 RDはその「ちょっと」の部分が聞きたかった。

 なんせ、最近のクイーンが関わってきた獲物(今回ももちろんクイーン絡みだ)は皆、世界の危機だとか宇宙の危機だとか、ちょっとしたミスで全てが滅ぶような、そんな綱渡りばかり。

 外の言葉、という「外」がどの「外」なのかはわからないが、RDは「地球外」と書いて「そと」と読むのだろう事は推測していた。

 

【では、エッグとはどういうものなのでしょうか】

『エッグはクリスタルタブレットの原型みたいなものかしら。超強力なハディーヤでもいいわよ』

【つまり、物凄いエネルギーをコンパクトな形に閉じ込めた百徳ナイフ、のようなものですか?】

『ええ、時間も操れるくらいのね。まぁでもそんなに危険な物じゃないわ。癪だけど、あのジジイが保管しているのならそうそう盗まれる事は無いだろうし』

【それについてなのですが……マレファさんはニュースとかって見ます?】

『旅人がそんなもの見るわけないじゃない。え? 何? ……えっ!? 十番目のエッグ!?』

 

 テレビ画面の向こうでマガがニュースを見せたらしい。マレファが心底驚いている声が聞こえる。

 そして何かを数えはじめた。

 

『嘘……いえ、そんなことあるはずが……あってはならないわ。だってアレは……』

【十個あると、何か不味いのかしら?】

『……もし、本当に十個目があったのなら……それは、今の――の――を意味するわね。あぁ、ごめんなさい。ええと……今の年月の末端……じゃなくて、ええと……アンゲルス!』

『ぼくは翻訳機ではないのですが……ええと、もう少し類似の言葉をお願いします』

『日記、メモリー、オロロージョ、サーア……』

『ふむ……。(calendar)、でしょうか?』

『……もしかしてあなた、本当に天才?』

 

 アンゲルスが面倒くさそうな顔をする。

 

『それで、もう一つの方はなんですか』

『ああ、ええと……リミット、淵、ディスコネクション……』

『途切れる? ……いいえ、終わり(end)でしょうか。いや、こんな簡単な言葉が出てこないはずがないか……』

『あ、いえ、それで合っているわ。そう、暦の終わり……12月31日という意味ではないわよ? 今の時間軸の終端にのみ、エッグは十個現れるの』

 

 ようやくチューニングが終了した、というような声色で、マレファはとんでもない事を言った。

 それが本当であれば、一刻も早くエッグを消滅させる必要がある。

 

『だから、有り得ないのよ。十個目が現れた時点でこの世界は止まるわ。逆に言えば、世界が続いている時点で十個目なんてものは存在しない事がわかるわね』

【しかし現に、エッグは展示され、クイーンが盗む宣言をしているのですが……】

『……』

 

 喋っていて安心したような声になっていたマレファだが、RDのツッコミにヒュッと息を飲んだ。

 

『……もし、もし本当に停止した世界なら……私、そろそろ行かないとっ!』

 

 マガとRDの観測していたエラーの量が爆発的に増えた。

 気のせいでなければ空間にゆがみが見える。アンゲルスが反対側の部屋の隅に移動した事から、現実世界で起きている事なのだろう。

 

『あ、クイーンにもうちょっといるって約束してた……あ、あのジジイにもちょっと餞別とか考えたかったけど……あ、華代にさよなら言わなきゃ……あ、あの背の高い名探偵にもお土産渡さないと……』

 

 ぶつぶつと未練タラタラな様を見せつけるマレファだが、RDとマガはエラーの対処に忙しく、アンゲルスに至っては迷惑極まりない存在が出て行ってくれるのなら万々歳という顔だ。

 

『……いえ、いえ、待ちなさい、マレファ。()()が開ける時点で、止まってないわ。そうよ。()()は入出管理を――してないと――だから、――、――? ――……』

 

 エラーが収まりを見せ始める。

 歪みのような物が閉じて行くのが見えた。

 

『……つまり、これはデマね。そもそも十個目のエッグはそんな色してないし……あぁ、無駄に焦ったわ。ちょっと復讐したい気分』

『……結局、出て行かないんですか?』

『ええ、そのつもり。もうちょっとこの部屋でゆっくりさせてもらうわね』

『はぁ……』

 

 深い深いため息がアンゲルスから漏れる。

 対処せずとも消えて行くエラーに安堵したRDは、そういえばそもそもマレファがアンゲルスの所にいる理由を聞いていなかったな、と思い出した。

 

【そういえば、何故マレファさんはアンゲルスの元にいるんですか?】

『え? だって彼が、私の――の技術を研究したいっていうから』

『違います! 確かにそれはぼくの目標の一つにはなったけど、別に貴女を必要としているワケじゃない。貴女が知りたかった科学的な疑問や作ってみたかった電子工学のアプリケーションを僕に無理矢理造らせているんじゃないですか! 自分は使いもしないくせに!』

『旅人が電子機械を持つわけないじゃない。いつか私はいなくなるから、その時のために託せる技術を託しているだけよ。まぁ、遊びにお話に付き合ってもらってはいるけれど』

『そんなのは皇帝にでもやらせればいいでしょう! なんならRDでもいい! 世界最高の人工知能に頼めば時間だって早いはずだ! 何もぼくの時間を削ってまでやることじゃない!』

 

 ぜぇぜぇと肩で息をするアンゲルス。

 相当不満が溜まっているらしい。

 RDは、ベクトルは違っても、やっぱり皇帝と同じく一か所にいると迷惑しかふりまかない人なんだな、とRDは「世界の迷惑者リスト~実害一覧~」にメモを書き加えた。

 ちなみにこのリストには他に、クイーンは勿論皇帝やパシフィスト、元探偵卿のMが載せられている。

 

『だって、RDにはクイーンとジョーカーのお世話があるじゃない。クイーンは言わずもがなだし、ジョーカーはクイーンの嘘に騙されやすいから、RDがしっかり舵を取らないといけないのよ? 自分の時間もあるだろうに、RDが可哀そうだわ』

『ぼくは可哀想じゃないんですか!?』

 

 RDはジーンと来ていた。全米フォルダから涙があふれ出ていた。

 労われたのは久しぶりなのだ。それに、あの二人のお世話の辛さをわかってくれる人に巡り合うのも中々ない。

 これでマレファが面倒くさいエラーを吐き出しまくる存在でなければ、是非ともトルバドゥールに招待していた事だろう。マレファを招き入れるとエラーとバグが大変な事になるのであまり呼びたくないのが現実なのだが。

 

『まぁ、そんな感じで、多分この展示されているエッグは偽物よ。ま、クイーンもあのジジイもそんな事分かりきっているだろうから、わざわざ言う必要はないだろうけど』

【ああ、ありがとうございます。大変参考になりました】

『ええ、それじゃ、ね』

 

 通信が切れる。

 同時にエラーも全て無くなった。

 

 RDは先程の通信を再生してみる。

 マレファの存在は姿どころか、声まで入っていなかった。

 

【……クイーンに連絡は……まぁ、いいか】

 

 なんだかどっと疲れたRDだった。

 

 ●「通信機越しの会話はいいけど、どっちも顔が見えないのは不気味じゃないか? あれ、普通?」

 

 所変わって、日本の居酒屋。

 畳座敷の席で、異国の集団が盛り上がっていた。

 

 探偵卿花菱仙太郎。コンビニ王を目指す、探偵卿きっての頭脳派。推理する時に瞳が銀色になり、銀色の間の推理は間違う事が無い。普段との二面性から「ダブルフェイス」と呼ばれている。

 

 探偵卿ヴォルフ・ミブ。推理力より腕力にステータスを振り切った探偵卿きっての武闘派。戦闘時は探偵卿並みに頭がいいのだが、普段はあまりよろしいとは言えない。あんまり呼ばれないが「ミリタント」という渾名を持っている。

 

 探偵卿マンダリン・アタッシュ。断片的な情報から真実に辿り着くその様から「パッチワーク」と呼ばれる。最近妻や娘と上手くいっていないらしい。この情報いるのかな?

 

 元探偵卿ルイーゼ。「伏兵(ヒンターハルト)」という異名でかつて活躍していた、現中間管理職の女性。やることなす事に抜け目が無く、また格闘戦においても非常に強い事から、あのヴォルフさんがひるむ姿もちょくちょくみられる。あんまり知られていないけど日本の大阪出身。

 

 探偵卿アンゲルス。この場にはいないのだが、タブレットからのテレビ電話での参加だ。彼が作り出したという人工知能マガと、もう一人誰かいるらしいのだが良く見えない。

 

 そしてこのぼく、パイカル。

 探偵卿ウァドエバーの元で助手をする、探偵卿見習いである。

 今日はウァドエバーさんに「代打パイカル。背番号なし」として送り出されたのだ。あの人はふざけているのかそうでないのかよくわからない。

 

 そして、今日これだけの探偵卿が集まった理由――上層部のMの指令を聞くためだということで、カセットテープの再生が始まった。

 M。「探偵卿の中の探偵卿」と謳われる、探偵卿随一の頭脳を持つ男。

 ごくりとつばを飲み込んだ。

 

【おはよう、エンジェル諸君】

 

 人を小馬鹿にしたような合成音声。

 その声色でエッグの話をし始めた。ウァドエバーさんの引き受けた件なだけに、ぼくにも緊張が走る。

 

【今回、エッグを守護するための強力な助っ人を用意した。――アンゲルス君】

 

 カセットテープだというのに、まるで会話しているかのようなタイミングで声を発するMがアンゲルスに話しかける。それと同時か直後か、アンゲルスさんのタブレットがパッと灯りを点した。

 まるで、アンゲルスさん側もこのタイミングで名前を呼ばれる事を予期していたかのような。

 ――……これが、探偵卿!

 

 僕は戦慄する。

 

【あ、アンゲルスは話したくないみたいなのでー】

 

 ヴォルフさんの手が長刀に伸びる。

 

『構わないよ。マレファくんさえ出て来てくれればね』

『お電話かわりましてー……で、よかったかしら? アッサラームアレイコム、探偵卿の皆さん。マンダリンさんはお久しぶりね?』

 

 誰も移っていないタブレットから声が響く。

 その声にヴォルフさんは顔を顰め、仙太郎さんは「お」という顔をし、ルイーゼさんは笑みを深め、マンダリンさんは驚愕に目を見開いた。

 

『そしてパイカルくん。スキップのパイカル、なんて呼ばれているあなたならアラビア語も分かると信じたいのだけど……』

「あ、わかります。でも、どうしてぼくの名前を……?」

『だって私、ウァドエバーの文通相手だもの。あなたの成長日記が毎週送られてくるのよ』

「嘘ですね。ウァドエバーさんはそんな性格じゃありません」

『正解よ。流石探偵卿見習いね?』

 

 ……こんな、ウァドエバーさんを1ミリでも知っていれば分かるような問題を解けたことで褒められてもうれしくは無い。

 そんな事より彼女は誰なのだろうか。

 

「マレファ、だって? ……君は、オリエント急行で出会ったあの子かい?」

『ええ、そうよ。あの時は余計なプレッシャーを与えてしまったみたいで、ごめんなさいね』

「いや……それは全く気にしていないが、そうか、君は探偵卿と繋がりがあったんだな……」

 

 遠い目をするマンダリンさん。マンダリンさんとは知り合いのようだ。

 

「マルハバン、マレファ。この間はヴォイニッチ手稿の概要を教えてくれてありがとう。とっても助かったわ」

『一番助かったのはウァドエバーだと思うけれどね。でも、あの内容じゃあ上へ報告は出来なかったでしょう?』

「ええ、誰があんなことを報告するものですか」

 

 ニコニコと話すルイーゼさん。ルイーゼさんとも知り合いのようだ。

 

「……またお前か。今度こそ叩っ斬ってやる」

「まぁまぁ旦那。特にあの人悪い事してないだろ? ……そりゃ、器物損壊とかに目を瞑れば、だけどさ」

「公務執行妨害だ!」

『でも今回は探偵卿の協力者なのよねぇ。Mから全ての行為の許可をもらっちゃっているしぃ……』

「Mごと叩き斬ってやる!」

 

 嫌悪を隠そうともしないヴォルフさんと苦笑いの仙太郎さん。彼らとも知り合いの様子。

 

【こらこら、そう暴れるものではないよ、ヴォルフ君。そこは公共の場だ。声量も抑えたまえ】

 

 ギリッという歯を噛みしめる音が聞こえる。

 しかし、Mは本当にすごい。此処にいる全員とマレファさんのやり取り、息継ぎなんかを全部読んだ上でこの音源を収録していると考えると、背筋に恐ろしい物が走る。

 

『でも面白いと思わない? 誰もいない部屋で一人芝居を録音している様子』

「ぷっ」

 

 ルイーゼさんが噴き出した。

 ヴォルフさんの携帯型プレイヤーを見る目が、苛立つモノを見る目から可哀想なモノを見る目に変わる。

 

【推測は勝手にしてくれていいよ。それよりマレファ君。君には、()()()()()()()()()()()。構わないかな?】

()()()()()()。確認するけれど、()()()()()()で、いいのよね』

【あぁ、そうだ。話が早くて助かるね。()()()()()()()()()。いいね?】

『ええ、勿論。()()()()()()()()()()()()()()()じゃない』

 

 何か、二人ともとても含みがある言い方だな、と思った。

 二人とも顔が見えず、声だけが聞こえているのにも拘らず、その視線がどこにあるかがわかる。どっちも、互いの顔なんて見ないで話している。むしろ背中合わせで、鼻歌でも歌っているかのような、そんな口ぶりだ。

 

『そうそう、探偵卿方々』

【そうだ、エンジェル諸君】

 

 二人が同時に言う。

 

『【このテープは自動的に消滅する】。言ってみたかったのよね、これ』

『時間制限で相手の端末に無害な煙を吐き出させるアプリを造らせたのはそのためですか!?』

『なんでわかったのかしら……もしかして、天才?』

 

 プシュー! という音。

 タブレットと携帯型プレイヤーから白い煙が上がる。

 全員が全員、眉をひそめた。

 

「爆弾だ! 逃げろ!」

 

 瞬間、店内にそんな声が響く。

 さらに黒煙が充満し始めた。先程の白い煙ではない、咳き込んでしまうような煙――本当に爆弾!?

 

 その後色々な事があって、ヴォルフさんは何者かに後頭部を殴打され、意識不明。

 ルイーゼさんは現場検証。Mとアンゲルスさんに連絡を入れても留守番電話に繋がる。

 

「いいか、パイカル。

 ……探偵卿はこれを乗り越えて行かなきゃいけないんだぞ」

「はい、仙太郎さん……ぼく、ちょっと舐めてました。これからは心を入れ直します!」

 

 ――負けるもんか!

 

 ●「鬼が一匹だけだったら良かったね」

 

 中国奥地――。

 猿も鹿も住めないような断崖絶壁が、何重にも行く手を阻む。

 元より、里の者は近づかない。

 

「あそこには鬼が住む」

 

 いつからか、そうささやかれるようになったからだ。

 

 

 

 山地の奥の奥にある屋敷。

 そこの漬物の上にある漬物石を、髪の長い男が漁っていた。一目見ればどこぞの怪盗と見紛うその姿は、しかし真っ黒だ。

 時計を見る男。時間を気にしているようで、カウントダウンをしている。

 

「五、四、三、二、一、――」

 

 零。

 その瞬間、漬物石を奪い取る男の手が、

 

「お前、何者だ?」

 

 不意にかけられた声に止まった。

 男が振り向けば、そこにはオレンジの髪を後ろで括った青年――ヤウズが立っていた。

 

「おかしいな……今日、屋敷には誰もいないはずなんだが」

「勝手な事言ってんじゃねえ。何者かって聞いてんだ」

 

 声を荒げるヤウズ。

 男はウァドエバーと名乗った。ついこの間まで、怪盗クイーンと名乗っていた事も。

 ヤウズは偽物のクイーンがコイツであると確信する。

 

「いま、わたしは少し怒っているんだよ。君さえ声をかけてこなかったら、わたしは時間通りにエッグを盗む事ができたのに……」

「……」

 

 ヤウズは冷や汗を流す。

 その、”少し”の怒気で、ヤウズは死にそうになっていたからだ。

 

「さて、少し遅れたが……きみを倒して、エッグを盗ませてもらうよ」

 

 その一撃を避けられたのは、まったくの幸運だった。

 皇帝(アンプルール)の吐き出した杏子の種で足が滑ったのだ。

 瞳の数センチ先を通り過ぎて行く掌底は、今のヤウズでは到底さばききれない威力を持っている。

 

 ――逃げろ、まずは、逃げるんだ!

 

 ヤウズに刻まれた本能が逃走を促す。

 だが、同じ本能が闘争も求めていた。

 

 強くなければ、意味が無い。

 

 弱ければ、死ぬしかない!

 

「フッ!」

 

 一気に距離を詰める。

 そして急ブレーキし、地面の砂を蹴りあげた。

 

「うっ」

 

 好機(いまだ)

 しかし次の瞬間、ヤウズの視界は真っ白に染まっていた。

 シーツだ。そう気付いた時には、首筋に風圧が――。

 

「これで借りは返したわよ、皇帝(アンプルール)

 

 最後にそんな声が聞こえて、ヤウズは気が付くとどこかの医務室にいた。

 

「は?」

 

 

 

 

 

「……放浪者(ヴァンデラー)。何故貴女がここに? 皇帝(アンプルール)との仲はよくなかったと思っていたんだけどね」

「Mから依頼を受けてね。エッグを守ってほしい、って」

「……Mめ」

 

 ヤウズを消してしまったマレファが、キャリーケースに腰を掛けて笑う。

 ウァドエバーはMへ悪態を吐いた。何故なら、エッグを皇帝の元から盗めと命令したのも他ならぬICPOの上層部だからだ。

 

「だってあなた、奪ったエッグをICPOに渡すつもりがないでしょう? Mはそれを推理していたんじゃないかしら?」

「どこまでも気に食わない男だね。しかし、君が来たところで何が出来るんだい? 君はただの旅人だ。確かにわたしに君の能力はコピーされていないけれど、旅人の力なんてあってもなくても一緒だろう」

「……えっと、それは、旅人が怪盗に劣っていると……私があのクソジジイより下だと、そういう言いたいワケ?」

「そうだろう? だって、皇帝(アンプルール)は最強の存、在な……のだか……」

 

 ウァドエバーの言葉が尻窄みになっていく。

 逆鱗を踏み抜いた。ウァドエバーの探偵卿としての部分がそう囁いた。

 

「そうね、そうね、そうね。認めるわ認めるわ。私はただの旅人で、怪盗じゃない。そうね、そうね。そうよね。技術の面では皇帝どころかアンゲルスやクイーン、ジョーカーにさえ負けるでしょうね、そうよね、そう。そうね。

 そうねぇ……そうね、そうね……そう、あなたのいう事は間違いじゃないわ」

 

 ウァドエバーが一歩たじろぐ。

 マレファの笑みが深まっていくと同時に、ウァドエバーの中の皇帝の能力が叫ぶのだ。

 「面倒くせぇ事になるからとりあえず行方をくらませておけ」と。

 

「いいわ、なら、そうね、全力で抗いましょう。最強の皇帝(アンプルール)の、コピー。いいじゃない、丁度いいわ。あなたに勝てば、少なくとも強さの面であのジジイを越えた事になるわよね。技術の面は知らないけど。

 いいじゃない。そう言う事ならやる気も出るわ。あぁ、良い物があった。これなら」

 

 矢継ぎ早に言葉を呟くマレファ。

 その手が、漬物石――エッグの一つを掴む。

 

「何を」

「――フィニス・パクトゥン……私とウァドエバー。座標は……そうねぇ、――で、時間は――’――で」

 

 景色が一変する。

 今まであった林も皇帝の屋敷も、シャワーに流される泡のように流れて行く。

 

 そうして、二人はこの世界からいなくなった。

 

 ●「あ、これ返却で」

 

 日本の回転寿司。

 ここに、居酒屋探偵卿’sが集まっていた。

 

 ここに僕ことパイカルが呼ばれた理由。

 

 それは、ウァドエバーさんを呼び出すためだ。

 僕が探偵卿皆さんに虐められていると言えば、ウァドエバーさんは来てくれるかもしれないと。

 

 そして、

 

「まったく……わたしを呼び出したのは誰なんだ? こちらは心底疲れているというのに……」

「ウァドエバーさん」

 

 現れたウァドエバーさんは酷く疲弊していて、本当に苛立っているといった様子だった。

 彼は強引に僕らの席に座りこむと、スーツの皺なんかを伸ばし始める。

 何があったんだろう。

 

「ウァドエバーちゃん、何かあったのかしら?」

 

 ルイーゼさんが果敢にも尋ねる。

 

「……旅人の美学、とやらを八時間ほどぶっ通しで聞かされました。その後、四時間に及ぶ旅人の心得の取得講座。如何に旅人が怪盗より優れているか、という事を長々と、ネチネチと……」

「そ、それは大変だったわね……」

 

 隠しきれない怒気が溢れているウァドエバーさん。

 いつも怒っているようなウァドエバーさんだけど、ここまで不機嫌なのは久しぶりかもしれない。

 

「ですので、パイカルくんの推理などを聞こうと思っていたのですが、早々に話を進めさせていただきたい。さて、怪盗クイーンはこの中にいます」

 

 軽い口調で、付け足すように言ったウァドエバーさん。

 ついでにマンダリンさんの両手首に手錠をかけた。

 

「え?」

「推理はパイカルくんから聞いてくれたまえ。仮にも助手を名乗るなら、それくらいはできてくれないと困る」

「あ、はい。では――」

 

 頼まれたので、話し始める。

 といっても簡単な推理だ。ウァドエバーさんがエッグを盗み出し、どこにいるかわからなくなってしまったので、助手である僕がいじめられているという情報を流し、ウァドエバーさんをおびき出す。

 それを行う者なんて、クイーンか皇帝しかいない。

 

 そして、今まで黙っていたけどマンダリンさんは今日、今日限定のテーマパークにご家族で遊びに行っている。先程滅多に見る事の出来ない彼の満面の笑み付きのショートメッセージが飛んで来たし、ここにいるのが偽物――クイーンであるのは確実だろう。

 

 そこまで聞いて、ヴォルフさんがマンダリンさんことクイーンに斬りかかる。

 だが、それを止めた人がいた。

 

 意外や意外、ウァドエバーさんだった。

 

「話がややこしくなるので武闘派くんは黙っていてくれたまえ。ほら、寿司でも食べて」

「むぐっ!」

 

 ヴォルフさんの口に寿司を突っ込むウァドエバーさん。

 一気に五貫も突っ込まれたからか、ヴォルフさんは咀嚼でいっぱいいっぱいだ。

 

「端的に言わせてもらいましょう。わたしは国際刑事警察機構(ICPO)を巨大な悪にしたくありません。よって、皇帝の元から盗んだエッグをICPOにも、ルイーゼさんにも渡すつもりはありません」

 

 全員が口に寿司やお茶を含んだタイミングでそんな爆弾発言をするウァドエバーさん。

 クイーンといつの間にかいたジョーカーさん、そしてルイーゼさんはなんともなさそうだったけど、僕や仙太郎さんはむせてしまった。ヴォルフさんは最初からいっぱいいっぱいだ。

 

「それは、ICPOに反旗を翻すと……そう取ってもいいのね?」

「ええ、構いません。話が早くて助かります。悪はわたし一人でいい。巨大な力を有してICPOが悪になる事をわたしは許容できません。わたしは究極の悪になりたいんです」

「てめぇ、気は確かか? 正気なら、ここでぶったぎる!」

「出来ない事は言わない方がいい。ほら、腕が震えているぞ」

 

 突きの構えを取ったヴォルフさんの腕が震えている。良く見れば額に脂汗も凄い。

 いや、ヴォルフさんだけじゃない。

 

 ルイーゼさんも仙太郎さんも、そして、僕もだ……。

 

「毒を盛らせていただきました。君達二人に毒が効かない事は知っているよ。旅人の心得の中で、余談の部分に『旅人はイタズラと称してパートナーに毒を盛らない』と教えてもらったからね。逆に言えば、怪盗は盛るという事だ。耐性が付いてることはわかる」

「はい。そしていま、ぼくは旅人のパートナーになりたくなりました」

 

 無表情で言うジョーカー。クイーンは口をとがらせている。

 

「どうせ周辺に設置した爆弾は世界一の人工知能とやらが解いてしまうでしょうから、この辺りでお暇させていただきます。あぁ、どうやらわたしは探偵卿に向いていないようなので、辞職させていただきますね。後任の探偵卿はパイカルくんを推薦します」

 

 ポケットから何かを叩きつけるウァドエバーさん。この間の居酒屋の件とは比にならない量の煙が噴き出す。

 

「……ああ、ここで死んだら探偵卿になれないか。仕方ない、救急車を呼んでおく。毒の解毒方法も伝えておくよ。それじゃあ」

 

 礼を言うか迷った。だって毒を盛ったのウァドエバーさんだし。

 でも、力を振り絞る。

 

「あ……りが……」

「……」

 

 もう視界は真っ暗だけど、ウァドエバーさんがきょとんとした表情を見せた、ような気がした。

 

 ●「さて――問答を始めよう」

 

 暗い部屋だ。

 いや、黒い空間かもしれない。

 

 奥行きの見えない闇が広がるその場所に、彼女は立っていた。

 彼女の目の前にはスクリーンのようなもの。その奥に、逆光になって何も見えないなにかが座っている。

 

【わたしは”エッグを守護してほしい”と言ったはずなのだけれどね】

「ええ、守護したわ。盗まれないように護ったもの。その後、私がエッグをどうするかは自由でしょう?」

【ふむ、君自らウァドエバーくんにエッグをあげた、というのかね?】

「勿論。旅人はね、旅の途中で他の旅人にあったら、背負い荷の中から一つ、なんでもいいから交換するのよ。それだけの話」

【つまり、何かをウァドエバーくんから貰ったのかな】

「ええ、貰ったわ。新しい目的地をね」

【ウァドエバーくんは旅人なのかな?】

「旅人の美学と旅人の心得を、たった十二時間とはいえしっかり詰め込んだわ。旅人見習い、という所かしらね」

【それは、わたしにも教えてもらえるのかな】

「あなたはダメよ。だって、旅をする気がまったく無いもの。いつかも言ったけれど、あなたと私は対極よ。私があなたに教える事も、私があなたに教わる事も、一つだってありはしないわ」

【そのようだ。では、最後に一つだけいいかな】

「ええ、いいわよ」

 

【これ以上、わたし()の世界を引っ掻き回さないでもらいたい。アルマウト】

 

「あなたに仲間意識があったなんて、驚きだわ。それじゃあね、M」

 

 ●

 

「旅人の美学――そんなものを叩きこまれたようだけど、どうだい?」

「どうも何も、酷く疲れたよ……。なんたって、旅人の美学は『悪を許容する』理念が含まれている。わたしには受け入れ難い内容だったよ」

「でも、逃げださずに十二時間も聞いたんだろう?」

「……わたしにはわからなかったけど、フィニス・パクトゥン……エッグの正式な使い方で、約500年前に飛ばされてね……フィニス・パクトゥンが起きる様を見せつけられながらの講義だった。逃げるにも、身体が動かなかったのさ」

「うわぁ……」

 

 色を変えただけの対照的な二人が話し合っている。

 ウァドエバーは四肢を大に開いて寝転がり、クイーンはそんな彼を見下ろしていた。

 

「……クイーン」

「なんだい?」

「彼女は……放浪者(ヴァンデラー)は、なんだ? 旅人などと名乗ってはいるが……」

「おっと、それ以上は止めた方がいいんじゃないかな。彼女が旅人である事を否定すると、距離や時間を無視してまた講義に来ると思うよ」

「……忠告、感謝する」

 

 能力をコピーしただけのウァドエバーでは、クイーンに勝つ事は出来なかった。

 能力を扱う圧倒的なセンスも技術も、ウァドエバーでは使いこなせなかったのだ。

 

 唯一の有効打は、爪に仕込んだ暗器による斬撃のみ。

 それはクイーンの技術でも皇帝の技術でも無く、マレファの技術だからだ。

 

「……講義の中で、エッグとは何か、フィニス・パクトゥンとは何かを聞いたよ」

「へぇ? それは興味深いね」

「時間流の再構築……まさか、彼女が十個目を持っていたとはね。その場で使い方も、危険性も伝授された……。わたしはもう、こんな悪魔のエッグを使おうとは思わないよ」

「あれ? じゃあなんでさっきは使おうとしていたんだい?」

「……それでも、……危険でも、わたしは……究極の悪になりたかったんだろう」

 

 ウァドエバーの記憶。

 フィニス・パクトゥンが過去にあった町は、「奇跡の恩恵に浸っていただけの町」として見捨てられ、現代ではゴミ捨て場になっていた。

 隣国のゴミが積もりに積もるその場所で生まれたウァドエバー。

 彼には病弱な弟がいて、食料も衣服もゴミ山のなかでは上質な物を与えていたが、病院へ連れて行く事だけは躊躇ってしまった。

 お金がかかる。そのお金は、ウァドエバーの為に使うもの。

 

 だからウァドエバーは悪を名乗る。

 そして、弟を殺した自分は悪で、そして、そして。

 

 自分だけが悪になった世界をエッグで造り出せば、それ以外が平和で、正義溢れる世界になると思ったのだ。

 

「うーん、君の言う『悪』っていうのは、自分以外の者の事を考えない奴の事であっているかい?」

「あぁ、そうだよ」

「それなら君は『悪』に当てはまらないね。君は弟の事を考えていたし、さっきはパイカル君の事を考えて救急車を呼んであげていた。君は『悪』になりきれないんじゃないかい?」

 

 指摘され、キョトンとするウァドエバー。

 そして、重たい腕で瞳を覆った。

 

「……参った。そうだな……フィニス・パクトゥンで書き換えた世界の正義も平和も偽物だ。そんなもので書き換えてしまえば、あの町の様に今度は世界が滅びてしまう」

「それは困るな。わたしはまだジョーカーくんやRDと遊んでいたいし」

「……わたしも、パイカルくんに教えていない事がたくさんあるな」

 

 二人は、笑う。

 お互い、周囲の者の面倒を見なくてはいけないのだ。

 

【ICPO及び他犯罪者データベースの情報の書き換え、終了しました。もうすぐ捜査員を乗せたヘリがそこに到着します】

「……何をしに来るんだい?」

「クイーンと闘っているウァドエバーくんの回収及びエッグの回収。まぁ、エッグは不可能だけどね。どうやら君の上司は君を辞めさせるつもりはないようだし、君の報告書も書き換えさせてもらった」

 

 目を真ん丸にするウァドエバー。

 それはまるで、悪すらも怪盗に盗まれた探偵卿のような顔だった。

 

「……さて、そろそろわたしは行くよ」

「……ああ、少し待ってくれないか?」

「うん?」

 

 立ち去ろうとしたクイーンを呼びとめるウァドエバー。

 

「旅人の心得にね……こんなものがあるんだ。旅人は、旅の途中で他の旅人に会ったら、なにか持ち物を一つ交換しなくてはいけない」

「でも、わたしは旅人じゃないよ」

「トルバドゥールで空の旅をしているだろう?」

 

 こんどはクイーンがきょとんとする番だった。

 そして頬をポリポリと掻く。

 

「……でも、上げられるものなんてもってないんだけど」

「今、わたしは君に『悪』をあげた。君はそれに対して何をくれるかな」

「ふむ」

 

 遥か遠く、微かにヘリの音が聞こえ始める。

 クイーンは一つ思案した後、微笑んだ。

 

「じゃあ、人生に必要な一番大事なものをあげよう」

「それは?」

 

 

 

「人生に必要なものは、C調と遊び心!」

 

 

 

 ●「お前それ、クリスタルタブレットじゃなくてホープ・エッグじゃねえか!」「うるさい。耳元で叫ばないで。というかどっちも一緒よ。なんならピラミッドキャップも半月石(ハーフムーン)も割と一緒の素材よ。ヴォイニッチ手稿にも造り方載ってたでしょ」「あ、てめぇピラミッドキャップの時わかってて言わなかったな」「当たり前じゃない。わざわざ使い辛くしたものをどうして説明しなきゃいけないのただでさえチューニング難しいのに」「小僧に説明するの面倒なんだよ」「私だって面倒よ」「……そういえば、クイーンの偽物に怪盗が如何に旅人に劣っているか、なんて捏造を叩き込んだらしいな」「捏造でも嘘でもなく事実よ。十全たる事実」「いいだろう、そこまで言うなら容赦はしねえ」「なによ、やるの?」「おい小僧! 酒持ってこい!」「飲み比べとかなら許さねえぞジジイ」「おうアタリだ。早く持ってこい。樽でな!」「許さねえつったろ!」「じゃあ私の持ち込み酒で勝負しましょう。神代のお酒だから、あなた程度にはちょっとキツイかもしれないけど」「ほぅ、そりゃあいいじゃねぇか。勝ったら残りは全部貰うからな」「お好きにどうぞ、負けないし」

 

 




争いは同レベルでしか発生しない。

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