ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。   作:ゔぁいらす

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祭りの後で

更衣室を服も着替えず飛び出した俺は天津風と約束した海辺のベンチ目指して走り出す。

参道を罰当たりな巫女服姿で走り抜けなければならないので人目が気になり恥ずかしくて死にそうだが今はそれどころではない。

後ろから

「提督さ〜ん!待ってよ〜」

なんて阿賀野の声も聞こえてくるし幾ら艤装と接続していない時は一般人と大して変わらない(らしい)と言われても日夜艦娘としての業務をこなしているアイツらに基本デスクワークの俺では恐らく体力的にも脚力的にも勝ち目はないのでこの人通りの多さを活かしてなんとか逃げおおせるしかないだろう。

服は着替えられなかったが靴だけはなんとか履き慣れたスニーカーを履くことができたのは不幸中の幸いだ。

なんせさっきまでは履かされていた草履は走りにくいだけでなく中に鈴が入っていて動く度に可愛らしい音がしていたからだ。

あの鈴ももしかすると俺が逃げるのを想定して位置を特定するためにチョイスしたのかもしれないと考えると少々怖くなってくる。

そんな事を考えながら花火を見上げる人々の間を掻い潜っているうち鎮守府の出している屋台の前を通りかかった。

チラッと目配せをしてみるが皆花火を見ていて客足もまばらで愛宕さんが一人暇そうにしているのが見える。

ん?一人・・・?

この時間は愛宕さんと金剛が店番のハズだけど・・・まさか・・・

「HEY!ケンーどこ行ったデース!?ケンの唇を奪うのはワタシデース!!」

人混みの中からそんな声が聞こえてきた。

クソっ!やっぱりか!!

どうやら阿賀野だけでなく金剛という獣までもが解き放たれてしまったらしい。

最近大人しいと思っていたが今日は本気の様でこのまま正規のルートを辿っていては見つかるのも時間の問題だ。

俺はこっそり参道を外れ、道の無い獣道を通って天津風と約束したベンチへ向かうことにした。

それからしばらく裾やら袖を木の枝やらなんやらに引っ掛けながら鬱蒼とした雑木林を抜けると天津風の待っているベンチが見えてきて、そこには浴衣姿の天津風の姿があった。

どうしよう・・・一応約束の場所までは来れたけどこんな格好だし何言われるかわかんないしなんか恥ずかしいなぁ・・・

俺はやっとここまで来れたのにも関わらず物怖じしてしまっていてこっそり林の影からしばらく天津風の様子をうかがうことにした。

「お兄さん遅いわね・・・とっくに花火は始まってるのに何してるのよ・・・もう・・・」

そんな事をつぶやきながら花火を見上げる天津風の横顔は薄暗くなる中で花火に照らされているからかいつもより綺麗に、そして少し大人びて見えた。

そんな彼の横顔に俺はいつの間にか見とれていたのだがふとした拍子に落ちていた木の枝を踏んでしまいポキっという大きめの音を出してしまう。

「ひゃっ!な、なにっ!?」

その音で驚いた天津風は身体をピンと強張らせこちらの方に顔を向け俺と目があってしまう。

「きゃぁぁぁぁっ!ど、どちらさまぁぁぁぁ!!!?」

天津風は俺の方を見て悲鳴を上げた。

そりゃ突然林から変な巫女服を着た女装した男が出てきたら誰でもそうなるわな。

「おおおおお俺だよ天津風!とりあえず落ち着け!」

とっさにそんな事を言ってみるが

「いやぁぁぁぁ!!お兄さんにそんな趣味があったなんてぇぇぇぇ変態ぃぃぃっ!!!」

尚に彼を刺激してしまったようで更に大きな悲鳴を上げる。

「違う!だ、断じてそんなんじゃない!!ひとまず話聞いてくれ!な?」

俺は天津風の方に駆け寄り必死になだめ、初めは慌てふためいていた彼だったがなんとか落ち着きを取り戻しなんとか休暇中に使えるホテルの宿泊券を貰った代わりに無理やり女装させられた上阿賀野や金剛に追いかけられて仕方なく外れた道からここまでやってきた事を話した。

「ふーん・・・そんな事があってその格好のままここまで来たの」

「そ、そうなんだよ・・・断じてそういう趣味があるとかじゃないからな?」

「はいはいわかったわよ。なんか高雄さんが元気そうだと思ったらそういう事だったのね・・・それにあたしの読みも当たってたみたいだしホントに大丈夫なのかしらあの人達・・・」

天津風はやれやれと言った感じで頭を抱える。

「でも天津風がここ教えてくれたお陰でなんとか逃げ切れたよありがとう」

「べっ・・・別にそんなつもりじゃ・・・でもお兄さんを助けられたんなら良かった・・・かも。それよりせっかく教えてあげたんだから花火ちゃんと見なさいよね!?」

それからしばらく天津風は何も言わずに花火を眺め始め、俺も特に話すことが思いつかないまま花火の上がる空を眺めることにした。

こんなゆったりと花火を眺めるのは初めてかも知れない。

花火の音とひんやりとした風が頬を撫で天津風の長い髪を揺らす。

すると

「ねえ」

突然天津風が花火の音に消え入りそうな声で口を開く

「ど、どうした?」

「あたしとお兄さんは・・・友達・・・なのよね?あたしはこんな見た目になっちゃったし話し方もこんなになっちゃったけど」

「当たり前だろ?話し方が変わろうが見た目が変わろうがお前はお前だよ。鎮守府に来てまだ慣れない時に話し相手になってくれたのは凄く嬉しかったし今も立場は変わったけどこうして一緒にいられて俺は嬉しいぞ?艦娘になってからはちょっと当たりが強くなった気はするけどな」

「・・・一言余計よ・・・。でもあたし・・・いや僕もお兄さんと一緒に居られてうれしい・・・かも・・・[[rb:鎮守府 > ここ]]での生活も退屈しないし」

「そっか。お前が艦娘になって帰ってきた時は驚いたし初めはどうなるかと思ったけど馴染めてるみたいで安心したよ」

「あ、当たり前でしょ!?吹雪は何かと一人で放っておけないし春風は世間知らずだしであたしがしっかりしなきゃいけないんだから!」

天津風はそう言って胸を張った。

初めはツンケンしてて手のつけられないヤツだと思っていた時期もあったが今やそんな彼も他の駆逐艦と良くやっているみたいだし気にもかけてくれている。

それが義務感から来るものだと知って彼が少し成長して見えた。

「ありがとう天津風。お前結構みんなのこと考えてくれてたんだな」

「結構って何よ!?これでも色々考えてるんですけど?」

「ごめんごめんまあそう怒るなって」

「ねえ」

「どうした?」

「あたし・・・ちゃんと艦娘できてる? 最初に男の子でも艦娘になれるって聞いた時は半信半疑だったけどなってみたら不思議ね。身体もなんだか女の子みたいになっちゃったし喋り方だって恥ずかしいはずなのに今はこっちのほうがしっくり来ているもの。でもそれだけじゃなくてちゃんとお兄さんの役にも立ててるかどうか気になって」

「当たり前だろ?夏の警備だってなんとかこなせたしお前の言う通り吹雪の事を気にかけてくれてるのはすっごく助かってる。アイツもよく楽しそうに話してくれてるよ。いつもありがとな」

「そ・・・そう・・・それなら・・・よかった」

天津風の頬が自然に緩むのを感じた。

そんな彼の微笑みを空に咲いた花火が優しく照らす。

「ねえ」

「まだ何かあるのかよ」

「さっきこんなになっても友達だって言ってくれたわよね?」

「ああ。」

「それじゃあ友達としてあた・・・僕のお願い聞いてくれない?」

「どうしたんだよ急に改まって」

「い、良いから最後まで聞いて!今から1分だけ・・・目瞑ってて・・・?」

「なんで!?」

「良いから!えーっと・・・そう!目の上にゴミが付いてるからよ!ほんとにだらしないんだから!それを取ってあげるって言ってるの!」

「えっ、そんなの付いてるか?別に自分でそれくらい・・・」

「良いから!・・・ダメ?」

天津風は何故か顔を赤らめながらこちらを見つめてくる。

別にそれくらい自分で出来るのだがそこまで言われたならお言葉に甘えようか

「分かった。一分くらい目を瞑ってたら良いんだな?」

「うん。良いって言うまで開けちゃだめだからね?開けたら殺すから」

「わ、わかったよ・・・」

俺は天津風に言われるがまま目を閉じる。

しばらく風と花火の音と天津風の妙な息遣いだけが聞こえていたのだが・・・

「「あーっ!見つけた」デース!!」

というあの二人の声が聞こえ目を開くと俺の顔の真ん前に天津風の顔があった。

「うわぁぁ天津風!?何やってんだ?」

俺が目を開けたのに気づいた天津風はその声に驚いて飛び退き二人が走ってこちらに近づいてくる音も更に大きくなっていく。

「きゃぁぁっ!目開けるなって言ったでしょ!?い、今の・・・今の無しっ!全部忘れてもらうんだからぁ!!!連装砲くんっ!!」

天津風がそう叫ぶとどこからともなく連装砲くんが飛び出してきて天津風はそれを両手で抱えてこちらの頭目掛けて振り下ろそうとしてきたので俺はその場から走って離れる。

火事場の馬鹿力と言うやつだろうか?その時の俺の反射神経は凄まじいものだったと思う。

「おいおいおいその使い方は違うだろ!!」

ベンチを離れて走ると後ろには阿賀野、金剛、天津風の三人がこちら目掛けて走ってきている。

「まちなさぁぁぁぁいいっ!」

「ケン!モウ逃げられないヨー!?」

「提督さーん?せっかくなんだし阿賀野とシようよぉ〜」

男とキスするつもりもないし天津風に捕まったら生命の危険すらある中俺は必死に巫女服の袖を

振り三人から逃げた。

そうだ。社務所に行って雲人さんに助けてもらおう!

俺は一目散に社務所へ向けて走る。

 

社務所へ向け走っているとその道中突然声をかけられた。

「あれ・・・・嘘!もしかして謙!?どうしたのその格好!?それにそんなに汗書いて」

「お、大淀!」

汗をダラダラ流して走る俺を見つけた大淀が声をかけ走る俺に着いてきたのだ。

「とりあえず詳しいことは後で話すし他にも話したいことがある!ただ今はそれどころじゃないんだ!ほらあれ!!」

俺が指差す方向からはあの三人がこちらにめがけて走ってきている。

「あーやっぱり・・・一体何してるんだか・・・一応この地域を守る艦娘としての自覚を少しは持ってほしいわ・・・」

「とにかくだ!俺はあいつらから逃げなきゃいけないからまた後で!!」

「うん!わかった!私も・・・少しの時間稼ぎくらいはしてみせる!謙を・・・提督を守るのが秘書官の努めだから!」

そう言うと大淀は歩みを止め三人の前に立ちふさがった。

「止まりなさい三人とも!提督が嫌がって・・・・・きゃぁぁぁあっ!!」

大淀は一瞬にして三人に跳ね飛ばされてしまう。

「淀屋あぁぁぁぁあぁ!!!」

「謙・・・逃げ・・・・て・・・・」

後ろ手に見えた彼の中に舞う姿を見て俺は彼の犠牲をムダにしないためにも全力で逃げる。

そしてやっとのことで社務所が見えてきてちょうど雲人さんの姿が見えたので俺は助かったと手を振る

「雲人さーん!!助けてくださいっ!!」

「お、おや謙さん、まだその格好を・・・」

良かった。大淀のおかげもあってかまだ三人との距離もあるしとりあえずこのまま社務所に入って籠城すれば・・・

「と、とにかく色々あって・・・・うわぁぁぁぁっ!!」

俺は一瞬安堵して気を緩めた。

その時足がもつれて俺は盛大に転んでしまい、そのまま雲人さん目掛けて倒れ込む。

 

いたたたた・・・盛大に転んじゃった・・・でもその割に痛くないし何か柔らかいものに乗っかっているような・・・・

俺は恐る恐る目を開けるとつややかな肌と透き通るようなが目の前に見え、口には何かやら若いも感触がある。

「叢雲ちゃーん?ひとまず全員分のお茶とお菓子は用意できたけど・・・・あら?あらあら?提督も隅に置けないですね」

高雄さんの声が聞こえ更に足音がこちらに近づいてきて

「ケン!待つデース・・・・oh・・・」

「提督さん・・・嘘だよね・・・?」

「・・・バカ」

俺を追いかけていた三人も俺の惨状を見てこちらを見つめる。

そう。俺はすっ転んで雲人さんに突っ込んだどころかそのまま押し倒した上唇を重ねてしまったらしい

いやそんな漫画みたいなこと・・・あったんだなぁ・・・

同じく何が起こったのか気づいたのか雲人さんも顔を真赤にして震えていて・・・

「ごごごごごめんなさいっ!!!これはその・・・不可抗力と言うか事故というかで・・・」

「まだ誰ともしたことも無かったのに・・・・許さない…許さないんだからぁっ! 」

雲人さんはそう言うとどこからともなく金属バット・・・いやもっと細いし何か付け根にはスクリューのようなものがついている何かを取り出しそれを思い切り俺の頭に振りかざす。

コーンという高く響く音とともに俺は気を失ってしまった。

 

「・・・ところでその写真後で私にも送ってくれませんか・・・・?」

「当たり前じゃない!」

う・・・ここは・・・?

話し声が聞こえ目を覚ますとズキッとした頭の痛みと共に以前一度見たことのある天井が広がっていた。

ここは多分雲人さんが寝泊まりしている部屋だろう。

そしてその障子の向こうでは大淀と高雄さんが何かを話しているようで俺はこっそり障子の隙間からそんな二人の会話を伺うことにする。

「私はあれから地域振興会の方の集まりに行っちゃったけどあの後どうなったの?」

「ええ。もちろんきっちりお説教してやりましたよ!金剛さんと阿賀野さん二人まとめて正座してこってりと」

「あらあら。着任半年でそれだけ出来るなら秘書官として頼もしいわね。後任として鼻が高いわ」

「それに高雄さんも高雄さんですよ!提督を玩具みたいにして!」

「ごめんなさい。でもあの子見てるとついつい熱が入っちゃって・・・」

「・・・今度は私も同伴でお願いします。べ、別に見たいとかではなくて秘書官として何か問題がないか見守る為にですっ!」

「はいはいわかったわよ。それじゃあ次はどんな理由を付けましょうか・・・」

何やら聞き捨てならない会話が繰り広げられていたので俺は勢いよく障子を開く

「今何やら凄まじく聞き捨てならない話しが聞こえたんだが・・・?」

「ひゃっ!?け、謙!?起きてたんだ・・・おは・・・よう・・・いやこんばんは・・・?」

大淀はそんな俺を見て視線を泳がせながらそんな事を言い出す。

「誤魔化し方下手か!」

「ひぃっごめんなさいっ!」

「こらこらあんまり怒っちゃダメよ提督。大淀ちゃん貴方が起きるまでそばに居るんだって言って氷枕とかも全部準備してくれたんだから。とりあえず私は叢雲ちゃんを呼んでその足で愛宕のこと迎えに行ってくるから後は若いお二人でごゆっくり〜」

そう言うと高雄さんはその場を後にする。

そして二人残され少し気まずさを覚えながらもここに運び込まれる経緯を大淀に尋ねることにした。

「な、なあ・・・あの後何があったんだ?」

「えーっと・・・三人に跳ね飛ばされてその後を追いかけたら謙が伸びてるのをみんなが見てて・・・雲人さんもものすごい慌てっぷりだったんだけどそれからここまで雲人さんと運んだの。安心して!あの二人には指一本触らせてないから!それにお灸もきっちり据えといたからね!」

大淀は得意気に言った。

「あ、うん・・・ありがとう」

「それと化粧も落としといたし服も着替えさせておいたから」

「助かったよ」

「高雄さんから聞いたよ?と、とにかく色々大変だったね。女装させられて働かされた上追いかけ回されて頭酸素魚雷で殴られるなんて・・・どうしてみんなこうも乱暴なんだろ・・・」

大淀は大きくため息をついた。

酸素魚雷・・・!?そんな物騒なもん一体どこから・・・

というか何か有ったら問答無用でぶん殴ってくるお前がそれを言うか?とも思ったがこれ以上殴られたら本当に命が危ないので黙っておくことにしよう。

「ああもう本当に大変だったよ。あんな与太話にムキになってさ」

「ほ、ホントだよね!観光客呼び込むためのでっち上げの嘘なのにみんなムキになってばかみたい!」

「ところで他のみんなは?」

「もう鎮守府に戻ってるよ。愛宕さんはまた地域の人達とお祭りの反省会・・・と言う名の飲み会」

「・・・そっか。また明日二日酔いで面倒なことになりそうだな」

「そうだね。ほんっとに問題児ばっかりだから私ももっとしっかりしなきゃ!もちろん提督も」

「ああ・・・そうだな」

そうだ。

今の俺は提督でクラスメイトの男友達だったこいつは艦娘。

今は互いにそんな関係にあることを夜風で揺れる以前の面影もないほどに伸びたしなやかな髪を見て再認識し、それと同時に俺がこんな散々な目に遭う原因になったモノの事も思い出す。

「そ、そうだ!これ終わった後の休暇・・・なんか予定決まってるか?」

「ううん・・・特に何も。」

「そ、そうか・・・そりゃよかった。もしお前がよかったらなんだけどさ・・・温泉、行かないか?」

「・・・えっ?」

「いやさ、高雄さんからなんか旅館のペアチケット貰っちゃってさ。軽く調べたんだけど源泉かけ流しの温泉と料理が目玉らしい。名目上は地域交流とか視察とかそういう事らしいんだけど・・・とにかくこいつのせいで女装させられるわ散々な目に遭った!」

その一言で大淀も俺が女装させられた理由を察したらしく哀れみなのか同情なのか愛想笑いを浮かべた。

「ああそれで・・・でも良いの?」

「当たり前だろ?お前以外誰誘うんだよ」

俺がそう言うと大淀は少し考えるように黙り込み・・・

「本当に良いのかな・・・?私こんなだよ?もしかしたら旅先で謙に迷惑かけちゃうかも」

大淀は少し重くそう言った。

多分今の彼はどう見ても女にしか見えないがあくまで生物学上では男。そんなどっちつかずの身体じゃ温泉すらまともに入れるかどうかも怪しいという事を言いたいのだろう。

しかし同じ様な境遇である高雄さんがそんな事も考えずにこんな物を渡すだろうか?

「とにかく気にすんなって!もしそれで何か文句言われたら俺も温泉入るのは諦める!それに提案してきたのは高雄さんだぜ?あの人がお前のこと考えずに用意すると思うか?」

「・・・ううん。その点に関しては私、あの人のこと信用してるし信じてみようかな」

「だろ?今日の俺の頑張り無駄にさせないでくれよ」

「うん・・・ありがとう謙。それじゃあ私で良ければご一緒させてもらおうかな」

「ああもうそういう硬っ苦しいの無し無し!たまにはダチ同士水入らずでさ」

「・・・うん。そう・・・だね!早く帰って準備して当日までに旅行のしおりも作らなきゃ!帰ったらその旅館の名前教えてね!きっと楽しい旅行にするから!!」

大淀は目を輝かせる。

こういう真面目なところは本当に艦娘になる前から変わらないなという安堵感が俺の中にはたしかにあった。

寧ろ俺が立場が変わった事を気にしすぎているのかも知れないしこれはそんな現状をいっときでも忘れてコイツと一緒に居られるいい機会なのかもしれない。

「急に張り切り過ぎだ!でもよかった。それじゃあこれで休みの予定も決まったな!当日は提督とか艦娘とか忘れて楽しもうぜ!」

「うんっ!」

大淀は嬉しそうに頷いてくれた。

こうしてなんとか旅行に大淀を誘うことには成功したのだが・・・

 

それからしばらくしてドタバタとせわしい足音と共に雲人さんがやってきて相当責任を感じていたようで何度も頭をペコペコと俺に向かって下げてきたが不可抗力とはいえ俺が押し倒したのが原因だしおあいこという事で話を収めておいたのだがそれでは気がすまないとお祭りのお供物の余りやお菓子なんかを沢山もらってしまった。

それを大淀と二人で担いで他愛のない会話なんかを交わしながら鎮守府へと戻るのであった。


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