ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。   作:ゔぁいらす

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超絶ご無沙汰です。


XX祭り最終日(中編)女装と打ち上げ花火

「良いわ良いわ!!提督?こっちに目線くれます?」

目の前に置かれた姿見には女巫女服を着せられた俺と鼻息を荒げて一眼レフを構える高雄さんが映っている。

 「ううっ・・・また女装する羽目になるなんて・・・」

「どう?提督さんっ!前よりうまくいったと思うんだけど」

鏡に映る変わり果てた自分の姿をまじまじと見つめていると姿見の後ろから阿賀野が顔を出し得意げに胸を張った。

「どうもこうもねぇよ! だいたい何で女装しなきゃならないんだ? それになんだよこれ!?お前のはまだ百歩譲って袴だからわからなくも無いけどなんで俺だけこんな丈も短いしキツネの耳みたいなカチューシャも付いてんだよ!!」

そう。俺の着せられている巫女服は阿賀野が身につけているオーソドックスなそれよりもなんというかめちゃくちゃ丈の短いスカートに全体的にわざとらしいほど可愛らしいデザインでコスプレ寄りというかどう考えても罰当たりな物になっている。

「あら?気に入らないかしら?私がこんな事もあろうかと作ったおいたのだけれど」

「やっぱりそういうことか・・・」

この巫女服は俺のサイズに恐ろしくぴったりで前もこんな事があったがいつのまにか高雄さんに俺の全身のサイズを知られてると思うと本能的な恐怖みたいなものを感じた。

以前女装をさせられたときは長いスカートだったが今回はミニスカートのような丈の袴を履かされているせいで肌寒さがそのスカートから直に伝ってきて落ち着かないしそんな裾から覗く太ももの毛は毛と共にガムテープで強引に引き抜かれてすべすべにされてしまっていてまだ少しヒリヒリする。

それだけでなく阿賀野に「女装は見えないところからだよ!」とか言われてもう2度と履くことはないだろうと思っていた女物のパンツにブラジャーまで付けさせられてしまった。

ああ・・・何でまたこんな目に遭わなきゃいけないんだ?

「・・・似合うとか気にいらないとかじゃなくてなんでこんな格好しなきゃいけないんですか?」

この間は俺にも非があったわけだけど自慢じゃないがここ最近は真面目に働いてたはずなんだけど・・・

「なんでってそりゃそっちのほうが面白いからだよ!ま、ホントのところは高雄がずっと着せたがってたみたいなんだけどね〜」

阿賀野はニヤニヤといやらしい笑みを浮かべてそんな事を言っている。

「面白いってお前俺は第一男なんだぞ!?こんなフリフリの短いスカートなんて・・・」

「あら?男がスカート履いちゃいけないなんて決まりはないでしょう?第一私達も男ですから」

そう艦娘の制服を見事に着こなす高雄さんに言われてしまうと反論の余地がない。

そりゃこんな俺のサイズぴったりなコスプレチックな巫女服がそんなすぐに用意できる訳もないしこれは恐らく計画的な犯行と見て間違いないだろう。

「高雄さん!いくらなんでもこんなのパワハラですよ!?」

「何言ってるんですか提督、一応貴方のほうが上司なんですよ?それにしっかりと対価は先に渡したでしょう?その分はしっかり私のおかz・・・いえ目の保養・・・でもなくて地域に貢献してもらうわよ?」

「対価・・・?」

「ほら、旅館のペア宿泊券。 しっかり受け取ってくれたじゃない!今更返品交換は受け付けませんよ?」

「あっ・・・」

くっそぉ!完全にハメられた!

タダほど高いものはないとはよく言ったものだけどまさかこんな仕打ちを受ける羽目になるとは・・・

こんなことになると知っていれば絶対断ってたけど今更突き返してもどうしようもなさそうだ。

「で、でもこんな格好・・・第一男だってバレますって!ましてや接客しなきゃいけないのに声だってそんな高くないし」

「大丈夫大丈夫!阿賀野たちも身体はオトコなんだし隣に並んでも相対的に肩幅も広いんだからバレないって! それに阿賀野が精一杯可愛くなるようにメイクしてあげたんだからもっと自身持って! 前だってバレなかったじゃない」

「なんだよその超理論・・・自信持ってって言われてもなぁ」

鏡に映る自分をマジマジと見つめるがやはりこんな格好で人前に出ることを考えると恥ずかしくて死にそうだ。

そんな時

「謙さん阿賀野さんそろそろ・・・あっ・・・」

俺が女装をさせられている間に用事があるからと更衣室を出て行っていた雲人さんが俺たちを呼びにやってきた。

雲人さんは俺を見るなり上品に右手を口元に持っていて俺を物珍しそうに見つめてくる。

いくら知り合いとはいえ阿賀野や高雄さんに見られるのとは大違いで俺の顔はカッと赤くなった。

「謙さん、良くお似合いですよ。」

恐らくお世辞だろうが雲人さんはそう笑みを浮かべて言ってくれたのだがやっぱりこんな格好で人前に出るなんて・・・

と尻込みをしていると

「ほら!稲叢さんもそう言ってるんだしそろそろ時間だから行くよ提督さんっ!」

「うわぁっ!引っ張るなって!まだ心の準備が!」

「提督〜行ってらっしゃい」

阿賀野に手を捕まれ半ば無理やり持ち場へ連れて行かれる俺を高雄さんは一眼片手に手を降って見送っていた。

 

そして授与所へ連れて行かれ雲人さんから大まかな確認も兼ねた説明を受ける。

買収されたとは言え雲人さんには後ろめたさもあったらしくあまり人と接しなくても良いようにと裏手でおみくじやら商品を用意する仕事に回してくれた。

そして仕事が始まると、阿賀野は愛想を振り撒きながら参拝客にお札やら御守りやらをどんどん捌いていく。

「提督さ・・・バイトちゃん!おみくじの38番お願い!」

「は、はーい・・・」

俺は阿賀野にこきを遣われながらか細く高めな声で返事をして早く終われと思いながら黙々と作業をこなしていった。

最終日な上初詣でもないのでわざわざそんなものを買いに来る客もあまり居ないのかそこまで人が押し寄せてこない事が不幸中の幸いで、俺は接客をすることなく裏で黙々と阿賀野にお守りやらおみくじを渡したり補充したりする事なんかに徹する事が出来ていてこのままなんとか終わるまで波風立たず極力顔を他人に見せず過ごせるかもしれないなんて淡い期待を抱いていた時だった

 

「おーっ、阿賀野ちゃんやってるのね!」

裏で補充用の商品を用意しているとそんな聞き覚えのある特徴的な声が聞こえてきて俺は思わずその場で見を伏せる。

「イクちゃん先輩来てくれたんですか!?」

育田さんだ。

突然の知り合いの来客に俺は育田さんから見えないようにその場で身を屈めて早くここを離れてくれと祈るが

「あったりまえなの!それにしても阿賀野ちゃん去年より巫女服も着こなしてていい感じなのね!また艦娘として磨きがかかったんじゃないの?」

「そんな褒めても何も出ないって!それもお化粧とか教えてくれた先輩のおかげだよぉ。おかげさまでこの3日間で連絡先20件くらい貰っちゃって」

俺の祈りも虚しく話は弾んでいるようで・・・

というかそんな連絡先もらってんのかこいつ・・・

こいつが男だって知ったら連絡先渡した奴らはどんな顔をするか・・・

「ほほーモテモテなのね!で、その中にいい人いたの〜?それともやっぱ付き合うならカノジョなの?イクにもよかったら紹介してほしいの〜!」

「うーん・・・やっぱまだ初対面の男の人と付き合うっていうのはちょっと抵抗が・・・でもこんなだし女の子と今更付き合うってのもどうかなーって・・・」

こっそり積まれていたダンボールの影からそんな二人を観察していると阿賀野がそんな事を言いだした。

あんまり俺には見せないけどやっぱ男の身体で艦娘をやる以上そういう悩みも尽きない物なんだろうか?

いつも悩みなんて無いように振る舞ってるけどやっぱ少しは気にかけてあげたほうが良いのか・・・?

「またまた〜・・・もうなっちゃったものは仕方ないし当たって砕けるの!あ〜っ!そうだの。阿賀野ちゃんには提督さんが居るのね。最近どうなの?」

「え〜最近はねぇ・・・あっ、そうそう!いつもは顔真っ赤にしてすぐに逃げちゃうんだけど今朝はぎゅって抱きしめてもしばらく逃げたりしなくて!」

前言撤回。

大体あの時は阿賀野の朝帰りとかアイオワさんの関係とかが気になってそれどころじゃなかっただけであってだな・・・

「ふふぅ〜ん・・・阿賀野ちゃんから聞く限り提督さんは相当ウブみたいだからそれは結構な進展かもしれないのね!しっかし一回ラブホにまで一緒に行ったって聞いてたのに未だにそんなプラトニックな関係なの〜?」

「違います!!あれはあくまで事故というかなんというかで仕方なく一泊しただけでやましいことなんて・・・あっ」

育田さんの言葉に反応して思わず飛び出してしまったが今の俺の格好は妙ちくりんでコスプレチックな巫女服・・・

そんな俺を育田さんは一瞬誰か分からなかったのか首を傾げたが声で誰だか理解したようでニンマリと笑みを浮かべた。

「えっ!?もしかして提督さんなの!?やっぱりそっちのシュミもあったのね!」

「あ、いや!違いますよ?これは阿賀野と高雄さんたちに無理やり着せられて・・・」

見られたからには必死に弁解するしか無い。

しかしそんな俺を尻目に阿賀野はどこか得意げで・・・

「そうなの!メイクも阿賀野がやったんだよ?どう先輩?可愛く仕上がってるでしょ?」

「ほほーまた腕を上げたの!教えた身として鼻が高いのね!」

「何盛り上がってんですか!!それに阿賀野とホテルに泊まったのもバスで寝過ごして帰れなくなったからであって何もやましいことはなかったんですからね!?」

「ふぅん・・・それにしても可愛いの!今度イクもコーディネートさせてもらって良いなの?」

育田さんはそう言って目を輝かせながら俺をジロジロと見つめてくる。

「嫌ですよ絶対!」

「も〜新しい提督さんはつれないのね。ま、今日はイクも似たような事既にやって来たんだけど! ほーらいつまでも阿賀野ちゃんたちの死角になるところに隠れてないで出てくるの。同じような被害者が目の前にいるのね!」

「被害者って・・・」

育田さんがそう言って何やら手を背の方に回すと彼女の後ろで何やら綺麗な柄の布がひらひらとしているところが見え、ひょっこりと黒髪の少女が顔を出してきた。

「うわキツ・・・」

その少女は俺を見るなり小さな声で言う。

突然初対面の人に向かって失礼なやつだとも思ったがその声にはどこか聞き覚えがあった。

「キツくて悪かったな!!」

「ほ〜らちゃんと阿賀野ちゃんと提督さんに見てもらうのね!!」

育田さんはそう言うとひょいと少女を捕まえて前に出す。

その少女は可愛らしい浴衣を着て髪もセットされているのか黒い髪を結いウェーブもかかっていてまるで七五三や初詣の様な気合の入り方をしていて人形みたいという言葉があまりにも似合う。

「うう・・・イクさん・・・私今日は混むから行かないって言ったのに・・・後司令官も・・・あんまりジロジロ見ないで・・・」

少女は恥ずかしそうに顔を伏せる。

司令官・・・?

という事は鎮守府の誰かか?

いやでもこんな可愛くて清楚な子居なかったよな・・・?

俺がその美少女が誰なのか分からず首を傾げていると

「あーっ、もしかして初雪ちゃん!?」

阿賀野がそう声をだした。

阿賀野に言われてじっくり見てみるとたしかにその声も背丈も初雪と言われればしっくりと来る。

昨日一昨日とTシャツにズボンなんてラフでどちらかと言えば男っぽい格好をしていた初雪が今日は打って変わってこんな格好をしているなんて・・・

そう言えば育田さんが被害者って言ってたな・・・

多分俺同様きせかえ人形みたいにして遊ばれたらしい。

「・・・うう・・・帰りたい」

「ダメなの!せっかく綺麗におめかししてあげたんだし今から叢雲ちゃんに見せに行くの!!」

初雪、お前も育田さんに無理やりオシャレさせられたのか・・・

なんというか阿賀野と育田さんも似た者同士というかなんというか・・・

そんな事を考えて少し初雪に同情の念を抱いていると

「・・・それにしても司令官・・・デュフ・・・・・まあ、似合ってるんじゃない・・・?」

初雪は目を細めて可愛くない笑みを漏らす。

その顔はいつもの初雪そのものでやはり目の前の美少女が初雪であることを一瞬で理解させられる。

「わ、笑うな!!」

「ま、お互い運がなかったってことで・・・でも司令官の弱みをまた1つ握れたなら出てきたのも悪くはなかったかな・・・」

「お、おい!どういう事だよ!!」

「それじゃあ初雪ちゃん、そろそろ行くの!それじゃあ阿賀野ちゃんに提督さん!引き続き頑張るのね!」

「・・・はいはい。じゃ、そういう事だから今後私に便宜を図るように・・・ね」

育田さんに手を引かれ初雪は不穏なことを言い残して行ってしまった。

 

そんな騒がしい来客が居なくなり、再び境内の喧騒が嘘のような退屈な時間が訪れる。

「ああ見られてしまった・・・しかも今後がめんどくさそうなヤツ筆頭に・・・!!」

「良いじゃない褒められてたし」

「女装姿褒められたってなんら嬉しくねぇって!」

「またまたぁ・・・今のお前、すげぇ可愛い・・・。彼女にしたいくらい」

阿賀野はそんな事を低めのトーンで囁きかけてきて身体をぞわぞわとした感覚と頭にカッと熱が昇るような感覚が同時に走り思わず阿賀野から離れる。

「ああああああ阿賀野!?」

「あははははは!やっぱり提督さんはからかいがいがあって可愛いなぁ・・・!冗談だよ冗談!半分だけ・・・ね♡」

相変わらず俺をからかって楽しんでいるのか阿賀野はゲラゲラと笑っている。

「半分ってなんだよ!」

「内緒!すげぇ可愛いって方が本当かもしれないし提督さんを彼女にしたいって方が本当かもね〜」

相変わらず阿賀野が何を考えているのか俺にはさっぱりわからないしどっちが冗談でどっちが本当だろうがまっぴらゴメンだ。

それに結局阿賀野が俺にちょっかいをかけてくるのはあくまで反応を楽しむ為であって本当に好きな人は別に居るんだろう。

一瞬本当に俺に気があるのかと勘違い思想に鳴ることもあるが第一阿賀野は男だし昨日のアイオワさんがそうなのかもしれないし・・・

「お、お前なぁ・・・それにお前にはほら・・・昨日のアイオワさんが居るだろ?結局朝まで帰ってこなかったし」

「あーそのこと・・・大丈夫だよ提督さん!アイオワは・・・そう!大切な友達だから!あれ〜?もしかしてヤキモチ妬いてくれてる?阿賀野嬉しいなぁ〜」

そうか大切な友達・・・

阿賀野のそんな言葉に何故か俺は安堵を覚えていた。

あれ?なんで俺安心してるんだ?

別に阿賀野が誰と付き合おうが俺には関係のない話だし阿賀野がそれで幸せなら無理に首を突っ込むことでもないはずなのに・・・

もしかして俺ホントに阿賀野のこと・・・

「ち、違う!そんなんじゃない!第一お前は男なんだぞ!?」

俺は自分に言い聞かせる意味合いも含めて語気を強めてそう吐き捨ててしまう。

「ふぅん・・・そっかぁ・・・残念」

阿賀野はそう言うと急にしおらしくなり境内のにぎやかな雰囲気を黙って眺め始めた。

あれ・・・?俺言い過ぎたか・・・?

それならなんて言っておけばよかったんだ・・・?

 

それからしばらく掛ける言葉も見つからず少し気まずい雰囲気になりながら再び仕事に戻っていると

『みなさーんっ!3日間のXX祭りもそろそろ大詰め!これまで楽しんでくれてるー?』

ステージでMCを買って出た那珂ちゃんの声が聞こえてきて彼女の声に答えるようにステージを見ている客たちの声が聞こえてきた。

それにしても3日間ぶっ続けでステージイベント任されてるのに元気ですごいなぁ・・・なんて感心してしまう。

『さーてステージイベントのラストを飾るのは・・・そうっ!この私!XX鎮守府の那珂ちゃんのライブなんですっ!良かったらXX鎮守府の那珂ちゃんの事っ・・・覚えて帰ってほしいなー!!』

那珂ちゃんの声に答えるように拍手や歓声が上がる。

「那珂ちゃんすごいなぁ・・・」

阿賀野はそんな声を聞いて一人呟いていた。

『ありがとー!それじゃあ那珂ちゃん皆のために歌っちゃうね!!ライブの後も花火大会があるけどそれに負けないくらい頑張るからね!!いっくよー』

そして那珂ちゃんの歌声がステージの方から聞こえる。

その曲は有名なアイドルソングから知らない曲まで色々だったがその間にも日は落ち辺りはだんだん暗くなり始めていた。

そんな那珂ちゃんの歌声を聞きながら仕事を続けていると雲人さんが裏口から入ってきて・・・

「謙さん阿賀野さんそろそろ花火大会も始まりますし後は私に任せて見に行ってくださっても大丈夫ですよ。」

「えっ、もう良いんですか?」

「はい。ちょうど可愛いお手伝いさんも来てくれたので。ほら、恥ずかしがってないで出てきて。」

「うう・・・可愛いお手伝いって・・・一応雲より私の方がお兄ちゃんなんだけど・・・」

雲人さんに促され巫女服姿の初雪が彼の後ろからひょっこりと顔を出す。

「急にイクに七五三みたいな服着せられたり巫女服着せられたり・・・私は着せかえ人形じゃない・・・のに・・・早く帰ってネトゲ・・・したい・・・」

「いつもお世話になりっぱなしなんだから今日くらいは謙さんの役に立ちなさい。」

「・・・うう・・・わかった。」

「そういう訳ですから後は私達にお任せください。ご苦労さまでした」

初雪は嫌そうな顔をしていたが雲人さんがそう言うので厚意に甘えることにして、安堵しながら阿賀野とさっき無理やり着替えさせられたスペースへと戻った。

はぁ・・・やっと女装からも開放される・・・そう安堵したのもつかの間で・・・

 

「ふぅ・・・提督さん、疲れたねぇ・・・」

あろうことか阿賀野がそんな事を言いながらおもむろに巫女服をはだけさせた。

「ウワーッ!!あ、阿賀野!?何してんだよ!?」

「ええーだってここで着替えたんだから当然でしょ?それにオトコ同士なんだから気も使わなくていいじゃない。提督さんも早く着替えちゃいなよ。お化粧も落としてあげるから」

阿賀野はまた俺の反応を楽しんでいるのか巫女服をわざとらしくはだけさせ、その隙間からたわわな胸とブラジャーをちらつかせてくる。

これで男だなんて言われても目の前にあるおっぱいにはどうしても目が行ってしまいそうだ。

「お前が気にしなくても俺が気になるわ!!」

「えー良いじゃん早く着替えようよぉ・・・ほらほらぁ・・・あっ、もしかして脱ぎ方とかわかんない?それじゃあ・・・」

阿賀野は不敵な笑みを浮かべて此方ににじり寄ってくる

嫌な予感がして後ずさると後ろは壁になっていてその間にも彼女は距離をだんだんと詰めてきてドンと壁に手をつき此方に顔を急接近させてきた。

「俺が脱がしてあげよっか・・・?」

ほぼゼロ距離でまた少し低めの声でそんな事を言われて顔がじんわりと熱くなってしまう。

「お、おい阿賀野・・・そろそろいい加減に・・・!!」

そう言って振りほどこうとしたその時

『皆ありがとーそれじゃあ花火大会のカウントダウンいっくよー!』

という那珂ちゃんの声とともにカウントダウンの声が会場から聞こえてきた。

「そろそろ始まっちゃうね花火大会・・・」

「だ、だからなんだよ・・・早くどいてくれよ」

「やーだ。ねえ提督さん?せっかくなんだしキス・・・しない?」

「はぁ!?」

「ほら花火大会中にキスしたらどうのこうのってヤツ・・・」

「あ、あんなの観光協会の人たちが勝手に考えただけだって言ってただろ!?」

「でもさ、それを阿賀野と提督さんで本当にしちゃわない? そんなうるうるした唇見せられたら俺もう我慢できない・・・っ」

「おま・・・ちょっ阿賀野!?」

必死に振りほどこうとするが腕をがっしりと掴まれ阿賀野の顔が更に俺の方へ近づいてくる。

これだけ顔を近づけられても阿賀野が男だなんてわからないほどつややかな肌と唇を見て俺はもう訳がわからなくなってしまう。

だ、ダメだ・・・そ俺と阿賀野はそんな関係じゃ・・・

それに男同士でキスなんて・・・

俺は必死に言い聞かせ

「すまん阿賀野!俺ちょっと行くとこあるから!!」

「きゃあっ!ちょっとまってよ提督さぁん!」

俺は阿賀野を振り払い更衣室を飛び出した。

ほんのりと涼しい風の服境内を走っている最中夜空には花火が飛び始めその音と空気の振動が直に伝わってくる。

そんな音を体で感じながら俺は天津風と約束した場所へと走るのだった。


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