ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。 作:ゔぁいらす
今後ともよろしくお願いいたします。
『提督さ〜ん!最後の巡回索敵機電探目視全部異常なしっ!砂浜にお客さんが残ってないことも確認したよ〜はぁ〜これで明日からゆっくりできるね〜』
阿賀野の声が無線機から聞こえてくる
今日は海水浴場解放最終日で阿賀野と春風がで最後の警備に当たってくれていた。
「ああ、お疲れ様」
『それだけ〜?阿賀野たちすっごく頑張ったのにそれだけなの〜?』
「それだけって仕事なんだから仕方ないだろ!?」
『もっとこう・・・頑張ったから俺のこと一晩だけ好きにしていいぜ?とか言ってくれないの?』
「絶対嫌」
『え〜遠慮しないでいいんだよ?だいじょうぶ!阿賀野がちゃーんとリードしてあげるから〜』
「え〜じゃねえよ当たり前だろ!それに遠慮なんかしてねーから!!」
そんなやりとりを阿賀野と続けていると
「阿賀野さん?ただ任務が終わっただけで明日は海水浴場の後片付けもありますしその後も平常通りの戻るだけなんですからあまり羽目を外さないでくださいね?それに報告が終わったならダラダラ喋ってないでさっさと帰投してください」
大淀が無線機をぶんどりそう言うと一方的に無線を切ってしまった。
毎度毎度阿賀野や金剛は何かしら報告がくるたびに小言を挟んでくる。
俺も退屈なのでそれとなく返事をしているがいつも大淀は不機嫌そうな顔をしていたけどついに最終日の今日そんな大淀の不満が爆発してしまったらしい。
しかしなんでただ話してるだけでそこまで不機嫌になるのかがよくわからない。
「ふぅ・・・全く阿賀野さんいつもこうなんだから・・・」
大淀はため息混じりにそう言った。
「お、おう・・・そうだな・・・」
「謙も謙だよ!謙が優しいのは知ってるけど毎回相手してるからあっちもダラダラ喋ってくるの!一応仕事中なんだからね!?」
「ええっ、俺!?別にいいだろそれくらいは」
「よくない!それに・・・」
「それに?」
「ううんやっぱりなんでもない」
「なんだよそれ」
「あっ!そうだ謙!」
「次はどうしたんだよ?」
「警備任務任務お疲れ様!一ヶ月弱の間よく頑張ったね!」
「お、おう・・・ありがとう。まあ俺がやったことなんか艦娘に比べたら大したことないけどさ」
「よかった・・・一番最初に言えた」
大淀は嬉しそうに呟く。
急に怒ったり喜んだりなんだか最近大淀の考えていることがよくわからない時がある。
初めて会った時から何考えてるかわからないような奴ではあったけどそういう思考パターンとかの話ではなく今までより些細なことで怒ったり喜んだりするようになったような気がする。
それだけ感情豊かになったと素直に喜んでやるべきなのかなぁ・・・
「そんな嬉しいことか?それにお前も俺以上に仕事してたろ?」
「別にいいでしょ?秘書艦なんだし提督の任務終了を真っ先に労ったって。素直に受け取ってよ」
「あ、ああうん・・・大淀もお疲れ様」
「ありがと、謙」
大淀は急にしおらしくなってしまった。
なんか調子狂うなぁ・・・
そうこうしているとドアをノックする音が聞こえたので中に通すと
「提督さ〜んたっだいま〜!」
「司令官様、ただいま戻りました」
阿賀野と春風が執務室へ入ってきた。
大淀はさっきまでとは打って変わって苦虫を噛み潰したような顔で阿賀野を見ている。
そんな仲悪いのかな・・・
「二人とも最後の警備任務ご苦労様」
「ほんとだよ〜せっかく提督さんともっとお話ししようと思ったのに急に大淀ちゃんに切られちゃうんだもん」
「任務中に私語を挟むからです!」
阿賀野の言葉に大淀が即座にそう言い返した
「別にそれくらい良いでしょ〜?大淀ちゃんだって同じ部屋に居るんだし提督さんとちょっとお話しすることくらいあるんじゃない?それにぃ〜艦娘とのコミュニケーションだって提督さんの大事な仕事だもんね〜」
「ぐぬぬぬぬ・・・」
大淀は悔しそうに口を噤んだ。
確かに阿賀野の言う通り俺と大淀は暇な時はくだらない話なんかをしてはいたけどそれで反論できなくなるくらい何も考えなしで大淀は怒ってるのか?
「あれ〜やっぱりそうなんじゃない?それだったら阿賀野も提督さんとおしゃべりするくらい大目に見て欲しいな〜」
「でっ・・・でもあなたは任務中で・・・」
「任務〜?それなら大淀ちゃんだって提督の補佐する任務中でしょ?」
「そう・・・ですけど・・・」
「あれ〜?それじゃあ大淀ちゃん阿賀野が提督さんと喋ってる見てもしかして妬いてるの?」
「ちっ・・・違いますっ!そんなのじゃ・・・」
「ほんとかなぁ?それじゃあ提督さんとちょっとお話しするくらい大目に見てよね」
阿賀野はしてやったりと言ったような顔でこちらに歩いてくる
「あ、阿賀野?」
「ふわぁ〜もう夏も終わりだって言うのに暑いよね〜阿賀野汗かいちゃったなぁ」
阿賀野はそう言うと胸元が見えるように襟の部分を掴んでぱたぱたと服の中に空気を送り始めた
「あ、阿賀野・・・?」
「阿賀野シャワー浴びてこよっかなぁ〜よかったら提督さんも一緒にど〜お?」
阿賀野は胸を強調しながら不敵な笑みを浮かべた。
「い・・・一緒にって・・・」
「別に男同士なんだから良いでしょ?阿賀野背中流して欲しいなぁ〜」
阿賀野の背中・・・
よく見たら男っぽい身体つきをしている阿賀野だけどその綺麗な肌に長い髪・・・それに膨らんだ二つの乳房は女性に勝るとも劣らない物だ。
それなのに男だから大丈夫なんて超理論でたまに一緒に風呂に入ってこようとしてくる阿賀野が恐ろしい・・・
「おおお男同士だからってそんな一緒に風呂なんて・・・一応阿賀野にはおっぱ・・・胸もついてるしさ・・・」
「ん〜?やっぱり気になるんだ?さっきから提督さんの視線がちくちく刺さるみたいにおっぱいに向かってきてるのすごく感じてたよ?」
阿賀野はわざと色っぽくそう言いつつ胸を手で一撫でしてさらに胸を強調してきた。
本当に男なのか疑いたくなるくらいには自分の今の身体の強みを完全にわかった上でやっていることが理性ではわかっていても理性で抑えられない部分がどうしてもその二つのふくらみの方へ俺の目を向かわせる
「ほーら♡一緒にお風呂入ってくれたら見せてあげるから」
「み・・・見せ・・・・!?」
いやいやいや流石にこれ以上はまずい。
大淀も春風も見てるんだぞ!?
「だーかーらー警備任務で疲れちゃった艦娘の背中流してよ提督さん」
阿賀野はそう言うと俺の腕を掴んでくる
あっ、やばい
このままだと流れで阿賀野に連れて行かれそうだ
するとその時
「もう良い加減に謙をからかうのはやめてください!」
大淀が机をバンと叩いてそう言った
「ん〜?どうしたの?」
「謙はちょっとスケベでバカだけどすっごく優しくて人の言うこと断れないお人好しなんです!そんな謙に付け込んで擦り寄るなんて私が許しません!謙も困ってますしシャワー浴びるならさっさと一人で浴びてきたらどうなんですか!?これ以上謙をからかわないであげてください!!」
大淀が声を荒げた事に阿賀野も驚いたのか少しの間執務室がシーンと静まり返る。
そして
「なんか阿賀野が無理やり提督さんの事連れて行こうとしてるって思われるのも嫌だし今日は一人でシャワー浴びにいこーっと。それじゃあ提督さん、また晩御飯の時にね!バイバーイ」
阿賀野はそう言って一人執務室を後にした。
そして気まずい空気が流れる中
「お、大淀・・・」
大淀に声をかけると
「ごっ、ごめんなさい!!」
大淀も顔を真っ赤にして執務室を飛び出してしまった。
本当に最近のあいつは些細な事で怒ったり笑ったりよくわからないなぁ・・・
俺が呆然としていると
「司令官様?」
春風が声をかけてくる
「春風どうした?」
「司令官様も大変ですね」
「大変?」
「今日も阿賀野さんが楽しそうに司令官様の照れてる顔が可愛いとかなんとか仰っていたので」
やっぱり阿賀野のやついつもみたいに俺の反応を見て楽しんでただけだったんだな・・・
「そうだったのか・・・」
「しかし大淀さんがあそこまで感情をあらわにして怒るなんて珍しいですね」
「そうなのか?」
「はい。大淀さんあんまりわたくし達には何かを気取らせないようにしているのかあまり感情の起伏がない方だと思っていたのですが」
「そうか?あいつあれで結構感情豊かなんだぞ?」
「そうなのですか・・・あまりそのような一面をわたくし見たことがなかったですから先ほどの大淀さんを見て少し驚きました」
「そうか・・・」
確かに言われて見れば俺や吹雪、それに那珂ちゃん以外には機械的と言うか秘書艦娘として最低限の付き合いしかしていないような気もしなくもない。
俺的にはもっと他の艦娘たちとも親交を深めて欲しいんだけど無理強いはできないよなぁ・・・
「今後大淀のそう言うところ春風達ももっと見れる様になったら良いよな」
「ええ。そうですね。それではわたくしも吹雪達と合流しますからそろそろお暇します」
「ああわかった。春風も警備任務ご苦労様!」
俺は執務室を後にする春風を見送った。
そしてぽつりと一人残された執務室で後片付けなんかを終わらせて部屋を出ると大淀が部屋を出た先の廊下の壁際にもたれかかっていた。
「大淀!なんだよ居たなら片付け手伝ってくれよ」
「・・・ごめん」
「どうしたんだよ今日のお前なんか変だぞ?」
「だって・・・阿賀野さんと謙が一緒にいるの見てたらなんかモヤモヤして・・・それで私怒っちゃった・・・阿賀野さんやってることはともかく言ってることは間違ってなかったし謙は私の物でもなんでもないし艦娘とコミュニケーションを取るくらいはしなきゃいけないのに謙のこと独り占めしたいって思っちゃって・・・冷静になったら阿賀野さんの言葉が図星だったから怒鳴ってた事に気づいてすごく恥ずかしくなっちゃって・・・ごめんなさい」
大淀は俺が他の艦娘と話しているところを見るとジェラシーを感じてしまうらしい。
だからこそそんな自分自身の感情と秘書官として公私を混同してはいけないという思いが大淀の中で揺れていたんだろう。
そんなところを他の艦娘にも見られたくないからどうしても機械的な対応をしてしまうのかもしれない。
それもこれも俺を思ってのことだと思うとなおの事なんとかしてやらなければいけないという気にもなる。
「なあ大淀?」
「どうしたの謙」
「お前確かにみんながいる時は秘書官の大淀としてすごく真面目にやってくれてるよな?」
「え、ええ・・・」
「でもさ。今日もそうだったけど二人の時は昔みたいに話してくれるだろ?」
「うん・・・だって謙と仲良くしてるところ他の子達に見られるの恥ずかしいし」
「それはお前が俺の秘書艦だからか?」
「え、ええ・・・だって仲良くしてる所見られたら秘書艦として他の艦娘達に示しがつかないじゃない」
「確かにあんまりみんなが見てる前でベタベタしてたらそうかもしれないけど普通に仲良くする分には良いんじゃないか?阿賀野も言ってただろ?コミュニケーションも俺の大事な仕事だって」
「で、でも・・・」
「それに俺だってお前が他の人と話してるの見たら少し妬いちゃうしな」
「えっ・・・!?」
「鎮守府に赴任したての頃男装した阿賀野と喋ってただろ?あれ見て少しそんな事思っちゃったりしてさ」
男装して那珂ちゃんと二人で出かけた時も思ったけどそれは伏せておこう。
「謙・・・」
「でも俺はお前に吹雪たちだけじゃなく他の艦娘たちとも関わって行ってほしいし俺も他の艦娘たちと話くらいするしそれこそ阿賀野とか金剛とか愛宕さんとかがからかってくる事だってあると思う。金剛はともかく愛宕さんと阿賀野は本気じゃないと思うし・・・」
「・・・うん」
「そりゃ多少は・・・その・・・なんだ・・・確かにみんな男だけどあんなおっぱい見せられたらどうしても・・・な?」
「やっぱりおっぱい大きい方が良いんだ・・・・謙のエッチ」
「ああもう違うって最後まで聞いてくれよ!でもあれだ。コミュニケーションの範囲を超えたこととか度の過ぎた事もあると思う。そんな時はお前が秘書艦として止めに入ってくれれば良いんだよ。俺も流されない様に頑張るからさ・・・」
「謙・・・そうだよね!私、秘書官として謙のこと守らなくっちゃね!」
「まあそんなとこだ。そろそろ飯だし行くか?」
「・・・うん!」
「今日は任務も終わったし愛宕さんがいつもより気合い入れて作るって言ってたけどなんだろうなー」
「楽しみだね・・・あっ、ねえ謙?」
「どうした?」
「手、繋いでも良い?食堂前の曲がり角までで良いから」
「・・・ああ良いよ」
「・・・ありがとう」
そう言うと大淀は俺の手を優しく握り、俺はその手を握り返して食堂へ向かった。
食堂に差し掛かると
「あっ、もう食堂だね・・・手、離さなきゃ」
「あ、ああ・・・」
少し名残惜しそうに手を解き俺たちは食堂へ入った。
食堂には艦娘達が集まり始めていて、美味しそうな匂いが立ち込めている。
それを嗅ぐだけで空腹がさらに加速していった。
それからしばらくして
「は〜い!みんな今日まで本当にご苦労様〜頑張った皆に今日はとっておきな料理を作ったわよ〜」
エプロン姿の愛宕さんがそう言って運んできたのは山積みにされたとんかつとハンバーグだった。
「に・・・肉だ!」
何日振りの肉料理だろう・・・最近魚料理とカレーのローテーションが結構続いていてがっつりした肉料理は本当に久しぶりだったのでテンションが上がってしまう。
「提督まだ食べ盛りだもの。毎日魚介じゃ飽きちゃうでしょ?だから今日はお肉フルコースにしてみたの!いっぱい作ったからみんなも遠慮しないで食べてね!」
愛宕さんがそう言うなりとんかつとハンバーグめがけて艦娘たちが列をなし、思い思いに食べたい方の料理を持って行くものも居れば両方持って行く艦娘も居た。
そして俺もハンバーグととんかつをとりあえず一つづつもらって食べ始めた
ハンバーグはこの間鳳翔さんのお店で食べたハンバーグに似ているけどそれとはまた少し違った味わいがあてさすがハンバーグの作り方を鳳翔さんに教えた張本人だけあって口の中で混じり合う肉汁とソースがたまらない。
とんかつも中は柔らかくて衣はサクサクしていてご飯が進む。
それだけでなく雲人さんが持ってきてくれたたくあんも相まってご飯がどんどん減って行き、俺はなんどもおかわりをした。
飯を食べ始めてしばらくして
「高雄〜お酒入れて頂戴」
「はいはい」
高雄さんが愛宕さんにお酌をしていた。
嫌な予感がしたので
「愛宕さん!明日も一応海水浴場の後片付けの手伝いが残ってるんですからあんまり羽目を外し過ぎないでくださいね」
そう釘を刺しておいた。
しかし艦娘たちが夕飯を食べ終え徐々に食堂を後にして行く中愛宕さんはまだお酒を飲んでいた。
「あのー愛宕さん?」
「あぁ”ん?」
もう完全にさっきまでの料理上手なお姉さんはそこには居なかった。
「明日も仕事あるんですよ・・・?」
「わーってるよそれくらい・・・自分で作った料理肴にして酒飲んじゃいけねぇのかよ」
「いやそう言うわけじゃないんですけど・・・」
「提督ごめんなさい。私がそろそろ止める様に言うから・・・」
高雄さんが申し訳なさそうに頭を下げてくる
「なんだよ高雄・・・お前も飲みゃいいのに・・・」
「私はそう言うわけにはいかないの!私まで酔っ払っちゃったら誰があなたを止めるのよ!私が飲むのは次の日がお休みの日だけ」
「あーそうかい・・・・ひっく」
「ほらほらもうみんなご飯食べ終わって部屋戻ってるわよ?洗い物は私がやっておくからあなたはお風呂の準備でもしてて」
「うーい・・・わーったよ」
高雄さんが言うと愛宕さんはよろよろと立ち上がって部屋の方へ歩いて行った。
これでもう夕飯を食べている艦娘は居なくなったが大皿にはまだハンバーグととんかつが少し残っている。
「あの・・・これ残っちゃってますけど大丈夫なんですか?」
「あああれ?明日観光協会の人にお裾分けするのよ。あの人その分多めに作ってたの」
「そうだったんですか」
「媚は売れるところには売っとけー特に協会のジジイたちにはちょっと良い様にしといてやれば酒とつまみが無尽蔵に手に入るからって気合い入れて作ってたのよ?」
「はぁ・・・結局そっちが本音でしたか」
「そっち半分でちゃんと提督への労いも兼ねてると思うわよ?ただ恥ずかしくって言えないだけじゃないかしら?」
「うーん・・・そう言うことにしときます!」
「ふふっ・・・それじゃあ後片付けしなくっちゃね」
「それなら俺も手伝います!」
俺は高雄さんと一緒に皿を片付け、
余ったハンバーグととんかつをタッパーに入れて冷蔵庫に入れた。
「それじゃあ後はやっておくわ。手伝ってくれてありがとうございました」
「いえいえ。どういたしまして。それじゃあお先失礼します」
俺は高雄さんに一礼して食堂を後にした。