ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。   作:ゔぁいらす

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【特別編】吹雪と不思議な夜

 ある日、いつも通り海水浴場をしていた××鎮守府の面々だったが久しぶりの敵襲に遭ってしまった。

急なことで焦りの色を隠せなかった謙達だったがなんとか町や海水浴場への被害は出ずに済んだものの艦娘達はそこそこの被害を受けてしまった上、深海棲艦が出たとあって海水浴場も数日の封鎖を余儀なくされた。

「えーみんなお疲れ様・・・ひとまず無事で町に被害もなくて本当によかった・・・なんとか被害も出ずに済んだのは皆が頑張ってくれたおかげだ。町の人たちに代わって俺から礼を言わせてほしい。本当にみんな頑張ってくれてありがとう。今日はゆっくり休んでくれ」

謙は出撃した艦娘達をそう言ってねぎらった。

「あの程度の敵にここまでやられるとは不覚デース・・・明日からもっと精進しなきゃいけないネー・・・あ、そうそう、入渠の順番はどうするんデース?」

今回出撃したのは警備中だった吹雪と阿賀野そして救援に駆けつけた金剛と愛宕と那珂の5人だ。

それに対し××鎮守府の入渠ドックは4つしか無い。

全員少なからず小破以上のダメージを受けてしまっていて、相手の攻撃をかばい金剛が中破を負ってしまっている。

「入渠の順番か・・・金剛お前が一番傷も深いし時間もかかるんだから一番先に入ってくれ。えーっと・・・一人待ってもらうのは・・・」

「NONO!どうせ高速修復材だって大量に余らせてるんでしょ?ワタシは最後にささっと入っちゃいマースそれに〜こんなにバストが露出したワタシの貴重な姿ケンにもっと見てもらいたいから最後でいいんデース!ほらほら〜もっと見ても良いんですヨ〜?」

金剛はボロボロになった服の間から露出する胸を強調するように謙に見せつけた。

「こっ、こら!そんな節操のない事みんなが集まってる場所でするなよ!」

謙は顔を真っ赤にして金剛から目を逸らす

「あ〜金剛抜け駆けはずるい!それなら阿賀野が最後に入るから金剛はさっさと入ってきたら?代わりに阿賀野が入渠待ってる間提督さんにおっぱい見せてあげる〜」

阿賀野もそれに負けじと謙を誘惑し始める。

「わっ、バカ!男のおっぱいなんか見せられてもうれしく・・・うれしくなんかないからな!」

「まあ!そんなこと言って顔真っ赤だし鼻の下も伸びてるわよ〜?それならお姉さんのおっぱいまた触ってみる?」

愛宕も面白半分で謙に服がはち切れんばかりの胸を強調して見せた

「提督さん!?またって何!?」

「愛宕のバストさわったんデース!?ワタシのも触ってほしいデース!」

「ち、違う誤解だ!あれは事故で・・・お、大淀助けてくれ!」

「知りません。肉の塊に埋もれて窒息死でもしたらどうです?私は長峰さんのところに今回の報告に行ってくるので後はお任せします」

大淀はそんなやりとりを見ていてヘソを曲げたのか謙にそう言い放ち執務室を出て行ってしまった。

「あーあ、提督ったらまた大淀ちゃんの事怒らせちゃったわね〜」

「怒らせたもなにも愛宕さんが変なこと言うからでしょ!?」

「あら〜でも嘘はついてないわよ?あの欲望にまみれた提督の手つき・・・また感じたいわぁ〜なんちゃって♡」

「何それ!?提督さんそんなことしたの!?散々男の胸なんか興味ないって言ってたのに!!」

「それならワタシのも触るデース!」

「ああもうこれ以上話をややこしくしないでください!」

大淀が居なくなりヒートアップする三人を那珂と吹雪は少し離れた場所で見ていた

「はぁ・・・みんな出撃の後だって言うのに元気だよね〜那珂ちゃん早くお風呂入りた〜い」

「・・・そうですね」

呆れたような那珂に吹雪は少し寂しそうにそう答える。

(やっぱりお兄ちゃん・・・男の子の身体の私じゃ喜んでくれないよね・・・私も愛宕さんたちみたいな身体だったら男の子のままでももっと大切に想ってくれるのかな・・・)

吹雪は謙の周りでゆらゆら揺れる愛宕達の胸を見てそんなことを思っていた。

そして結局くじ引きの結果那珂が最後に入渠することになった。

「ほら!もう順番決まったんだからさっさと入渠しにいってくれ!」

謙は金剛や阿賀野達をそう言って執務室から追い出した。

「・・・吹雪?お前も早く入渠しちゃえよ?」

「・・・私最後でいい・・・裸見られたくないし那珂さんに先譲ります」

「いいよそんなの!それに吹雪ちゃんはすぐに入渠も終わるでしょ?そんな気を使ってくれなくても那珂ちゃんは大丈夫!もっと自分に自信持って?」

「は、はい・・・・」

那珂に促され吹雪は気乗りしないまま入渠へと向かった。

そして大浴場の脱衣所では愛宕達が服を脱いでいる最中だ。

「あら吹雪ちゃん遅かったわね。もう阿賀野も金剛も入っちゃってるわよ。それじゃあ私もお先にお風呂いただくわね〜」

「は、はい・・・」

(愛宕さんおっぱいもおちんちんもおっきいなぁ・・・私もあれくらい美人でおっぱいが大きかったら・・・)

吹雪は愛宕の体を羨ましそうに見つめながら服を脱ぎ、自分の体を隠すようにしてゆっくりと大浴場に足を踏み入れた。

そして入渠用の浴槽の隅に縮こまるようにして入っていると

「う〜ん・・・最近胸のハリが少し悪くなってきたデース・・・」

「なあに金剛?ついに垂れてきちゃったの?」

「アタゴ酷いデース!ワタシまだそんな歳じゃないヨー!」

「あーはいはいわかってるわよ。それにしても阿賀野またおっぱい大きくなったんじゃない?ついこの間まであんなにぺったんこで男らしい胸板だったのにねぇ・・・久々に触らせなさい!」

「んぁっ♡愛宕ぉそんなに強く揉まないでよぉ〜」

三人の巨乳の男性が乳繰り合うという凄まじい場面を吹雪はまじまじと見つめている。

(みんなずっとおっぱいの話ししてる・・・それに比べて私は全然おっぱいもないしスタイルもよくないしこれじゃただの男の子だよ・・・)

吹雪は自分の胸が平らな少年のものだと言う現実を目の前で起きている出来事を見るたびにまざまざと見せつけられていた。

「はぁ・・・」

吹雪がため息をついていると

「じゃあそろそろ高速修復材入れちゃいましょうか!ちゃんと4個出してきたわよ〜」

「yes!待ってました!」

「高速修復材が体に染み渡る瞬間すっごく気持ちいいんだよね〜」

愛宕たちは入渠用の浴槽に4個の高速修復材の入ったバケツの中身をぶちまけた。

「はぁっ♡この感じ久しぶりね・・・!」

「ohyes!yes!ダメージだけじゃなく体の芯からアンチエイジされるようなこの感覚・・・また若返っちゃいマース!」

「んっ・・・・♡あぁん♡ほんとにこれ癖になっちゃうよね」

愛宕達の体にできていた擦り傷やあざがみるみるうちに消えていき肌はツヤを増していく。

高速修復材は詳しいメカニズムはわかっていないものの艦娘の傷や疲労を一瞬にして取り払ってくれる驚異の液体だ。

男性の艦娘の身体が女性化していくのも高速修復材による修復機能で基になった艦娘の身体に近づいていくからではないかとも言われている。

「はぁっ・・・・♡」

それは吹雪も例外ではなく身体中に高速修復材が染み渡っていった。

しかしその日は何かが違った。

「んっ・・・!」

吹雪の身体になにか電流のようなものが走った

(な、何・・・?なんか身体がびりっとしたような・・・気のせい・・・かな・・・あれ?なんか頭がぼーっとする・・・のぼせちゃったのかな・・・)

「あの・・・みなさん・・・那珂さんも待たせてますし私お先に失礼します・・・」

「あら?吹雪ちゃん顔色悪いけど大丈夫?」

愛宕が心配そうに吹雪を見つめるが

「は、はい・・・大丈夫です」

吹雪は愛宕を心配させまいとそう言ってふらふらと足をよろつかせながらも大浴場を後にした。

(どうしちゃったんだろ・・・今日の私なんか変かも・・・)

吹雪はくらくらするのを我慢しつつ部屋着に着替えて脱衣所を出る。

「うう・・・久しぶりの実践で疲れちゃったのかな・・・?まだお夕飯まで時間もあるし部屋に戻って休それまで休んでよう・・・」

吹雪は足をふらつかせながらやっとの事で部屋に戻りベッドに倒れ込んだ。

「はぁ・・・私どうしちゃったんだろ・・・・・うっ!」

また吹雪の身体にさっきのような電流が走った次の瞬間

「な、なに・・・?身体が・・・熱い・・・」

吹雪の心臓がドクドクと鼓動を早め音を立てて脈打つ

「ぅ・・・・あっ!くっ・・・・・なに・・・これ・・・・!」

吹雪は今までに感じたことのない苦しみから体をうずくまらせた。

「くぁっ・・・・!か・・・身体が変っ・・・!」

吹雪の身体がメキメキと音を立ててだんだん形を変えていく。

「うぁっ・・・・!いっ・・・・!」

変化は体だけに止まらず吹雪の後ろで結っていた髪はだんだん伸びていき、最後にはその伸びた毛の量に耐えきれなくなったゴムが弾け飛び肩にかかるくらいまで伸びきってしまった。

「いっ・・・あっ・・・・あぁっ・・・・あああああああああああああああああああああ!」

吹雪は苦しみのあまり声を上げてその場に倒れ込んだ。

 

それからしばらくしてだんだんとその苦痛や体の熱さも和らいできた吹雪はかろうじて動けるようになっていた。

「・・・はぁ・・・はぁ・・・・なんだったの・・・?熱いのも苦しいのも治ったけどなんだか胸もきついし体も重いし・・・・」

吹雪はよろよろと立ち上がってみるがその時凄まじい違和感を覚えた

「あれ・・・?ベッドってこんなに小さかったっけ・・・」

そのままおぼつかない足取りで部屋を見回してみるといつもと変わらないはずの部屋なのになぜか全体的に小さく見えてしまう。

「どうしちゃったんだろ私・・・えっ!?」

そんなときふと鏡に長い髪の女性が映っていることに吹雪は気付いた

「だ・・・誰ですか!?」

吹雪はあたりを見回してみるがそんな女性はどこにもいない。

「も・・・もしかしてお化けとか・・・?」

吹雪は恐る恐る鏡に近づいてみると鏡の女性も吹雪の方へ近づいてくる。

それに鏡にはいつも見慣れた自分の姿はなく、ただその髪の長い女性が吹雪を見つめていた。

「えっ・・・?」

吹雪は試しに自分の顔を触ってみると鏡の中の女性も同じような動きをする。

それに女性の服装は吹雪が着ていた部屋着を無理やり着ているような状態で、部屋着を留めているボタンは今にもはちきれんばかりに胸を締め付けていた。

「どういうこと・・・?」

吹雪は自分の胸を見てみるとそこには鏡に映っていた寝巻きからはち切れんばかりの大きな膨らみが見える。

試しに触ってみるとぷにぷにと柔らかい感触が吹雪の手に伝わった。

「・・・これ・・・・私!?」

吹雪は鏡を見ながら髪をかき分けて見ると少し大人びてはいたが確かに吹雪の面影のある女性が鏡から吹雪を見つめている。

見たところ謙と同じくらいか少し年上くらいだろうか?

吹雪はなぜかそれくらいの年齢にまで成長してしまっているのだと薄々気づいた。

「なんで私こんなことに・・・髪もこんなに伸びてるしおっぱいもこんなに大きく・・・」

その時ふとさっき見た愛宕の裸を思い出す。

「こんなにおっぱいも大きくなったんだから下も大きくなっちゃってるのかな・・・もしそうなら嫌だな・・・お兄ちゃんに嫌われちゃうかも・・・」

吹雪は恐る恐るギチギチに身体に食い込んだボトムとパンツを恐る恐る下ろしてみると

「えっ・・・!?」

そこには吹雪がいつも忌々しく思っていたものも何も付いてはいなかった。

「な、ない・・・・おちんちんがなくなってる・・・!?私・・・本当の女の子になってるの・・・?それもお兄ちゃんと同い年くらいの女の子に!?」

吹雪は嬉しさを抑えきれずその場でぴょんぴょんと飛び跳ねた。

跳ねるたび胸も上下に大きく揺れる。

「わぁ・・・これがおっぱい・・・!すごい!私本当の女の子なったんだ!」

吹雪はなぜこんなことになったのかはわからなかったがとにかく本当に女性になれたことが嬉しかった。

そんな時である。

ドアが開く音がして

「ふう・・・疲れた・・・一時はどうなることかと・・・ってあれ?吹雪帰ってるの・・・・か?」

謙が部屋に戻ってきた。

そこで謙が見たものは鏡の前で嬉しそうに笑う下半身を露出して身の丈に合わない部屋着を着た女性の姿だった

「え・・・・え、ええええええ!どどどどどどどちら様!?俺の部屋で一体何してるんですか!?」

謙は顔を真っ赤にして顔を手で覆った

「ち、違うのお兄ちゃん!私、私なの!!」

吹雪は必死に謙にわかってもらおうとするが

「お、俺にこんなでかい妹なんていませんよ!」

「だから私吹雪なの!」

「ふ、吹雪!?あなたが?からかうのもいい加減にしてください!吹雪はもっと小さくて・・・それに何よりあいつは男なんですよ!?」

「だから私が吹雪なんだってば!お風呂上がったらなんでかこんな身体になってたの!」

(あ、そうだ・・・・いつも阿賀野さんがやってるようにしたらお兄ちゃんも落ち着いてくれるかな・・・)

吹雪はとっさに謙の腕に抱きついて胸を腕に押し付けてみる

「お兄ちゃん落ち着いて・・・?私本当に吹雪なの・・・」

「な・・・な・・・・・な・・・・」

謙は急な出来事でフリーズしてしまう。

(よかった・・・お兄ちゃん落ち着いてくれたみたい・・・)

吹雪が安心したのもつかの間、ギチギチと悲鳴を上げ続けた部屋着はついに限界を迎え、止まっていたボタンが弾けてたわわな胸があらわになった。

「きゃっ!」

「うぉぉぉぉお!?」

謙は素っ頓狂な声を出すと鼻血を出してその場に倒れてしまった。

「お兄ちゃん・・・!?お兄ちゃん!!とにかく止血しなきゃ・・・」

吹雪は鼻血を出して倒れた謙の鼻をティッシュで塞ぎ、そのままベッドに寝かせてやった。

それからしばらくして謙が目を覚ます・・・

「ん・・・あれ・・・?俺なんかすごいものをみたような・・・」

「あっ、お兄ちゃん!目が覚めたんだね!」

謙の声を聞いて吹雪が駆け寄る。

「うわぁぁああああああ!!」

「そんなに驚かないで!私吹雪なんだってば・・・信じてよ・・・」

「本当に吹雪・・・・なのか?」

「だからそうだって言ってるでしょ?入渠が終わって急に身体が熱くなったと思ったらこんなことになってて・・・」

「そ、そんなことがあるのか・・・?」

「私だって何が起こったのかわからないよ・・・」

「わ、わかった・・・わかったからとりあえず服着よう・・・な?」

吹雪は謙にそう言われて今自分が下半身裸で上ははだけたぴちぴちのパジャマという恥ずかしい姿だったことを再認識して恥ずかしくなってしまった。

「う、うん・・・でもいつもの服は着れないよ」

「じゃ、じゃあとりあえず俺のジャージでも着てろ!そうだな・・・とりあえず医務室!医務室行くぞ!」

「う、うん・・・」

吹雪は言われるがまま謙から渡されたジャージを着るとウエストは少し大きかったがなんとか着ることができた。

「お兄ちゃんのジャージ着れちゃった・・・それにぜんぜんだぼだぼじゃない・・・」

謙のジャージを身にまとって鏡の前で軽く一回転してみたりする

(もし私がお兄ちゃんと同じ学校のクラスメイトだったらこんな格好でお兄ちゃんと一緒に体育とか部活動とかできたのかな・・・・)

吹雪はそんなジャージ姿の大ききくなった自分に見ほれていた。

「吹雪、着替えたんなら行くぞ!」

謙は恥ずかしそうに言った。

「う、うん」

 

そして医務室につくと

「あら提督・・・・ってななななんですか!?急に医務室に知らない女の子なんか連れ込んだりして!?」

高雄が吹雪の姿を見て鳩が豆鉄砲を食らったように驚いた。

「ちがうんです!な、吹雪!!」

「う、うん・・・高雄さん・・・私吹雪なんです」

「え、ええ!?吹雪ちゃん!?言われてみれば確かに面影があるような」

「あの実は・・・」

吹雪は高雄に入渠してから体の調子がおかしくなりなぜか大人の女性のような姿になっていたことを話した。

「そんなことが・・・入渠したらナイスバディーになって性別まで変わるなんて・・・」

「私どうなっちゃうんですか?元に戻ったりしないんですか?」

(本当はこのままでもいいんだけど・・・)

「うーん・・・私もこんなの初めて聞いたからなんとも言えないわね・・・もしかすると高速修復材の過剰摂取が原因かもしれないし身体にどんな影響があるかもわからないわ」

「・・・そう・・・ですか・・・吹雪は元に戻れるんですか?」

謙も心配そうに高雄に尋ねる

「とりあえずちょっと調べてみるわ。それとそうねぇ・・・さすがに戻るまで提督の服を着続ける訳にもいかないし・・・今からショッピングモールにお洋服でも買いに行って来たらどうかしら?」

「今から・・・ですか?」

「ええ。愛宕には私が言っておくから夕飯もショッピングモールで済ませてきたらどうかしら?」

「本当ですか!?ありがとうございます高雄さん!それじゃあ早く行こっ!お兄ちゃん!」

「ちょっと待ちなさい吹雪ちゃん」

「な、なんですか・・・?」

「そんなジャージで行くつもり?一応サイズが合うかどうかはわからないけど私の服貸してあげるからそれ着て行きなさい」

「は、はい!」

「それじゃあ提督、今から吹雪ちゃんに合う服着せて来ますから少し待っててくださいね」

高雄は吹雪を連れて自室へ向かった。

それからしばらくして高雄と高雄の私服を来た吹雪が医務室に戻って来た。

「一応それっぽいのを選んでみたんですけどやっぱり吹雪ちゃんにはもうちょっと可愛らしい服の方が似合うわね・・」

「お兄ちゃん・・・どう・・・かな・・・・?」

少し大人びた服を着た吹雪の姿に謙は胸を高鳴らせていた。

「あ、ああ似合ってると思う・・・ぞ?」

「やったぁ!お兄ちゃん大好き!」

「うわぁ!その姿でそんな抱きつくなってば!!」

「それじゃあお兄ちゃん早く行こっ!」

「うわぁ!ちょっ・・・ひっぱるなよぉ!」

吹雪は謙の手を引いて鎮守府を後にしてショッピングモール行きのバスが出るバス停へ向かう。

(いつもは見上げてたお兄ちゃんの顔がいつもより近くにあってなんだかドキドキする)

吹雪は胸を高鳴らせながらバス停にたどり着き、ショッピングモール行きのバスに乗った。

「はぁ・・・ちょうどいいバスがあってよかったねお兄ちゃん!」

「あ、ああ・・・・」

「どうしたのお兄ちゃん?」

「あのさ・・・なんかその格好でお兄ちゃんって言われるのなんかすごく恥ずかしいって思ってさ・・・」

「えっ、そうなの?じゃあなんて呼べばいい?司令官?」

「ああいやそれはそれで変だし・・・・」

「じゃあ謙・・・さんって呼んでも良い?」

「へっ・・・!?い、いいぞ?」

「それじゃあ謙さん♡」

「はっ、はいぃ!」

大人になった吹雪の魅力にもう謙はタジタジと言ったところだ。

そのまま謙は緊張からかほぼ何も話さずにショッピングモールへと着いてしまった。

「じゃあ育田さんの店、行くか」

「うん!それじゃあ謙さん・・・手つなご?」

「え、ええ・・・!?」

「良いでしょ?私と手、繋ぐの・・・嫌?」

「い、嫌じゃないけど・・・・」

「じゃあ繋ご!」

吹雪は恥ずかしがる謙の手をぎゅっと握り、そのまま服屋へと向かった。

「はーいいらっしゃいませなのー!あっ、提督のお兄さん!その女の子だれなの!?もしかして彼女さんなの!?キミも隅に置けないのねー」

育田も吹雪の変わり果てた姿に驚きを隠せなかったようだ。

「ああいやこいつは吹雪で・・・」

謙は吹雪がこうなってしまった理由を簡単に育田に話した。

「ふぅん・・・不思議なこともあるもんなのーでもだいたいわかったの!そんな古臭い服よりもっと良い今の吹雪ちゃんに似合うトレンドの服用意してあげるからそこでまってるのー!ほら吹雪ちゃんもぼーっと突っ立ってないでついてくるの!」

「は、はい・・・!」

吹雪は育田に連れられ店の奥へと消えていった・

(さっきの古臭いっていうの高雄さんが聞いてたら怒るだろうなぁ・・・)

謙はそんなことを思いながら店の入り口でしばらく待っていると

「おまたせしましたーなのー!」

育田が一人で戻ってくる。

「あれ?吹雪は?」

「試着室なの!あっと驚くのー!ついでだからイクが持って着てた化粧品とかヘアアイロンで軽くメイクもしておいてあげたからずっと可愛くなってるの!あっ、もちろんその辺はサービスだからお兄さんの出世払いって事でつけにしといてあげるから安心するの!」

「は、はあ・・・」

「ささ!善は急げなの!早くくるのー!」

謙は育田に連れられ店の奥にある試着室へと向かった。

「それじゃあ開けるのー!じゃーん!」

育田が試着室のカーテンを開けるとそこには見違えた吹雪が恥ずかしそうに立っていた

「ふ・・・吹雪・・・?」

「どう・・・かな・・・?変じゃない?」

「いいや全然変じゃないぞ!すごく似合ってる」

「えへへ〜どういたしましてなの〜」

「育田さん・・ありがとうございますっ!」

「吹雪ちゃん見た目は大人になっても中身は素直な子のままですっごくかわいいのね!はぁ・・・この姿で汚れひとつ知らない純粋な子・・・・羨ましいの〜あっ、お兄さんお兄さん!これ、今回のコーデの総額なの!」

育田は謙に電卓を見せてきた

「げっ!?こんなにするんですか!?」

「いくらこのお店の服が安いからっておしゃれをしようと思ったらそれなりに値が張るのは当然なの!それに下着から靴から全部揃えたんだしこれでも安いくらいなのね〜」

「ぐぬぬぬ・・・でも背に腹は代えられないし・・・・とりあえず鎮守府宛てで領収書出してもらえます?」

「はーい!毎度ありなのー!それじゃあタグとか全部切っちゃうからこのまま着て行くと良いのー!」

謙は育田に服代を支払い店を後にした。

 

「はぁ・・・思わぬ出費だったなぁ・・・経費で落ちるかな・・・」

「お兄ちゃ・・・謙さん・・・ごめんね」

「ああいやお前が謝る事じゃないんだ。でもすごく似合ってるぞ」

「・・・ありがと・・・」

「じゃあ飯でも食うか。ファミレスで良いか?」

「うん!」

謙は吹雪とそのままファミレスで夕飯を済ませた。

「ふぅ〜食った食った」

「美味しかったね・・・いつもよりいっぱい食べちゃった」

「そりゃそんだけ大きくなったんだから腹も減るだろ。じゃあそろそろ帰ろうか」

「・・・いや」

「えっ?」

「もっと謙さんといっぱい遊んでたい」

「遊んでたいってお前・・・」

「良いでしょ?私だってもっといっぱい遊びたいんだもん!それにせっかく女の子になれたんだから謙さんとデートしたいの!」

「デデデデート!?」

「年頃の女の子と男の子が一緒にお出かけしてるんだからデートだよ!ね?良いでしょ?」

「えーあ・・・うん・・・吹雪がそういうならそうするか」

「やったぁ!」

そのまま吹雪と謙はショッピングモールの中を二人で気が済むまで散策した。

「はぁっ・・・!初めてお兄ちゃんとここにきた時よりもずっと楽しかったよ!」

「吹雪が喜んでくれたなら俺も嬉しいよ。でもそろそろ遅いし帰らないとな・・・」

「うん・・・そうだね・・・・でもこうやって謙さんとデートできて本当に夢みたいだった!私のわがまま聞いてくれてありがと!」

「あっ、そうだ。最後に屋上いこうぜ!あそこからの眺めは最高なんだよ!」

「う、うん・・・」

謙に連れられ吹雪は屋上へとやってきた。

「うわぁ〜綺麗・・・」

もうあたりは真っ暗で屋上からは街灯や建物や車の明かりがぽつぽつと光る明かりが見えた。

「そうだろ?」

「ねえ謙さん・・・こういう時・・・女の子と男の子がこういうところに居たら何すると思う・・・?」

「へっ・・!?いきなり何言い出すんだよ!?」

「あのね・・・謙さん・・・・私にあの時みたいにちゅってして?」

「え、ええ・・・・!?」

「良いでしょ?」

「あ、ああわかった・・・・それじゃあやるぞ」

謙は吹雪にゆっくり顔を近づけた。

しかし途中で謙は顔を止め

「吹雪・・・近くで見るとすごく可愛いよ」

「そんな・・・照れるよ・・・」

「吹雪・・・・この夜景なんかよりずっとお前は綺麗だよ」

「え、ええ!?け、謙さん何言ってるの!?」

「吹雪・・・・」

「はーい?」

「吹雪・・・・・」

「なに?」

「吹雪・・・・」

謙に名前を呼ばれるたびなぜか吹雪の視界がどんどんとぼやけてきた。

(あれ・・・なんかまた頭がぼーっとしてきた・・・)

そして最後にはもやがかかって謙の顔も見えなくなってしまいそのまま意識が遠のいていく

「・・・き・・・・ぶき・・・・・ふぶき・・・・・吹雪!!」

その声ではっと吹雪は目を覚ますとそこは医務室で謙が心配そうに吹雪を見つめていた

「あ、あれ・・・私・・・」

「吹雪!よかった目、醒めたか!?・・・・お前風呂場で湯あたりして倒れてたんだぞ?」

「えっ・・・?」

吹雪は体をゆっくり起こして胸を触ってみるとさっきまでの豊満な胸はなく、いつもの硬くてぺったんこな胸板がそこにはあり、

謙にバレないように股間に手をやってみるとそこには本当はあって欲しくないそれがしっかりと付いている。

そして遠巻きに鏡をみるといつもの自分の姿が写っていた。

(はぁ・・・私のぼせて変な夢見ちゃってたんだ・・・・)

吹雪はさっきまでの出来事が夢だった事が残念で寂しい気分になったがきっと寝ている間ずっと謙が心配してくれていたんだと思うと嬉しかった。

「吹雪?まだここで寝てるか?」

「ううん。もう大丈夫・・・うわっ!」

吹雪はベッドから降りるもバランスを崩してしまう

「大丈夫か?今起きたところなんだから急に動いたら危ないだろ?」

謙はよろめいた吹雪を転ばないように既のところで支えた。

「ご、ごめんお兄ちゃん・・・」

「しょうがないな・・・部屋まで運んでやるから・・・よいしょっと」

謙は吹雪をお姫様抱っこの要領で抱きかかえる。

「うわ・・・ちょっとお兄ちゃん!?」

「あっ、こらあんまり暴れると落としちゃうから大人しくしてろ?俺でもお前くらいならこれくらい朝飯前だからさ」

「う、うん・・・・」

謙は吹雪をそのまま医務室から連れ出し、自室へと連れて帰った。

(確かにお兄ちゃんと同じくらいの年になるのも良いけど今のままでもこうやってお兄ちゃんに甘えられるんだしこんなお姫様抱っこまでしてもらえて・・・この身体も少しは悪くない・・・かな・・・)

吹雪は心の中でそう思いながら今の身体でしか味わえない謙の暖かさや腕の感触に浸っていた。




一応ハーメルンお気に入りユーザー150人突破記念で書いたものです。
応援してくださっている方々ありがとうございます。今後ともどうかよろしくお願いいたします。

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