ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。   作:ゔぁいらす

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高雄さんのいない日:3日目 帰ってきた高雄さん

  はぁ・・・寝坊するし大淀に説教されるしで散々な目にあった。

元はと言えば愛宕さんが昨日・・・・昨日・・・・・・

あああああああああああああああああ!!!!!!

昨日のことを思い出すだけで凄まじい罪悪感やら恥ずかしさやらおまけに柔らかかった愛宕さんのおっぱいの感触が俺に襲いかかってくる

くそっ!愛宕さんが男だろうがあんな状態であんな柔らかいのを揉めって言われたら嫌でも揉みたくなっちゃうだろ!

クソッ・・・!いくら高雄さんがいなくて寂しいからってあんなこと提督として許していいのか!?

ああもう俺はどうすればよかったんだ!!

当の張本人は昨日の事などどこ吹く風と言わんばかりに鼻歌交じりで持ち場の仕事をすごい勢いで片付けて海水浴場の警備に出かけている。

はぁ・・・愛宕さんの胸柔らかかったなぁ

じゃなくてなんで俺はあんなことをしてしまったんだ!

ああもう書類の内容が頭に入ってこない!!

俺はやり場のない感情から頭をくしゃくしゃと掻いた。

「・・・提督?どうかされましたか?」

「フゥワァオ!?」

急に大淀に声をかけられて自分でもびっくりするような声を出してしまった

「・・・ふわぁお?まだ寝ぼけてるんですか?仕事中なんですよ?遅刻するだけでなく仕事までサボらないでくださいね」

大淀は冷淡な口調でそう言った。

俺が寝坊したことに相当怒っているらしい。

そりゃ俺だけじゃなく吹雪まで寝坊させちゃったんだから秘書官としてちゃんと俺のことを思って怒ってくれてるってのはわかるんだけど・・・・

ピリピリしてるのは寝坊の理由をはぐらかしたからだと思う。

でも流石に愛宕さんの部屋で寝てて朝帰りして二度寝したら遅れましたー!

なんて言えないしなぁ

「ああ・・・うん・・・そうだよな」

「愛宕さんを見てください!昨日まで死んだ魚の様な目をしていたのに今朝はいつもより朝食も豪勢な物を作ってくれましたし今もあんなにスムーズに担当してた仕事を片付けて警備にまで行ってるんですよ?提督も少しは見習ったらどうなんですか?」

愛宕さんの機嫌ががああなったのは俺のおかげだと思うんだけどなぁ

でもそんな事口が裂けても言えない。

それに今日の夕方になれば高雄さんも帰ってくるだろうしそれまでの辛抱だ

「すまん・・・頑張るよ」

俺は大淀に小さくそう言ってから仕事に戻った。

しかしやっぱり昨日のことが頭にちらついて仕事どころではない。

あれで男って嘘だろ!?

いや愛宕さんの男の部分もちゃんと見たしたまにオッサンだしわかってはいるんだけどあんなの見せられたら・・・・

ってまた愛宕さんのこと考えてるじゃないか俺!

考えない様に意識すればするほど昨日の愛宕さんが脳裏によぎる

もしかしてこれって・・・・恋!?

いやいやいやそんなわけない

第一愛宕さんは男だし高雄さんだって居るんだぞ!?

それにちょっと優しくされたからってこんなにドキドキしてるとか我ながらチョロすぎないか俺

自分の女性耐性の低さが情けなくなってくるぞ・・・

俺は大きなため息を一つついた。

その後も何度か大淀に急かされながらもなんとか書類の整理を終えることは出来たが、寝坊してきた事といつもより時間がかかってしまった事も相まってもう昼過ぎだ。

「ふぅ・・・やっと終わった・・・」

「それじゃあワタシはティーブレイクでもしてきますネー!」

金剛はそんな俺を見届けるとそう言って部屋から出ていった。

自分たちの仕事を終えてからも手伝ってくれていた金剛と大淀には申し訳ない気分になる。

「ふぅ・・・」

「どうしたの謙?ただの寝坊だと思ってたけど体調悪いの?なんか顔も赤いし・・・」

仕事を終え金剛も居なくなったので大淀は敬語をやめて尋ねてきた。

仕事が手につかなかったのも顔が赤いのも昨日愛宕さんのおっぱいを揉んだりしたからだと考えると心配してくれている大淀に対する罪悪感がどんどん膨らんでいく。

「何言ってんだ俺はいたって健康だぞ?顔が赤いのは暑いからじゃねえかなーあーあっちぃなぁ今日・・・」

俺は無理に取り繕ってみせる

「ふぅん・・・そうなんだ。やっぱり謙って嘘下手だね」

「えっ!?」

「もう何年の付き合いだと思ってるの?謙が嘘ついてるのを見抜くのなんてすごく簡単だよ?もしそうなら体調悪いのに怒っちゃってごめんなさい」

大淀は頭を下げてきた

なんか逆に気を使わせてしまった様だ。

どうしよう・・・正直に言ってしまうか?

あの時は吹雪も居たし寝てる間に出て行ってたなんて言うのは吹雪にも悪かったから言えなかったけど今は大淀一人だけだ。

でもそれこそ大淀を本気で怒らせてしまいそうだし・・・

・・・よし とりあえず大雑把に話そう。

嘘じゃない。一部を隠すだけだ。それだけだぞ俺・・・!

「あ、あのさ・・・」

「ん?何?謙」

「先に謝っとく!ごめん!」

「急にどうしたの!?」

「いや・・・実は昨日の夜急にすんごくセクシーな格好の愛宕さんが部屋に来て・・・」

俺はその後愛宕さんの部屋に招かれて夜食を食べたり酒盛りに付き合った事を話した。

もちろん愛宕さんと一緒に布団に入った事や胸を揉ませてもらった事は伏せて

「な・・・なにそれ?それで愛宕さんの部屋で寝落ちしちゃって部屋に戻って二度寝して遅刻したって事!?」

「お前も男なんだからわかるだろ!?あんな格好で言い寄られたら断れなくて・・・」

「はぁ・・・愛宕さんがやけに元気だと思ったらそう言う事だったのね それに謙がスケベなのは今に始まった事でもないし・・・」

「えっ!?許してくれるのか?」

「許すも何もおかげで愛宕さんの今日の仕事は凄く捗ってたし多少行き過ぎてたとは言え艦娘とコミュニケーションを取るのも提督のお仕事だし・・・?それに愛宕さん勝手にひとり酒して酔いつぶれてそれこそ今日部屋から出てこないなんてことにならなかった事を考えたら仕方ないんじゃないかな・・・うん・・・きっとそうだよね」

大淀は自分に言い聞かせる様に言った

「大淀・・・」

「・・・でもこれだけ聞いてもいい?」

「なっ、何だ?」

もしかしてなんかまずい事言ったか俺!?

愛宕さんと何してたか聞かれるんじゃないか!?

緊張のあまり生唾をゴクリと飲み身構えていると

「もし私が・・・謙の男友達だった私がそんな格好で謙のこと誘ったら・・・・一緒に一晩過ごしてくれる?」

大淀は頬を赤らめて小さな声でそう言った

「・・・へっ?」

予想外の言葉にあっけにとられてしまう。

「もう・・・恥ずかしいんだから何回も言わせないでよ・・・それより返事が聞きたいな」

大淀は更に顔を赤らめてこちらを見つめてくる。

一晩過ごすってどこまで・・・

頭の中に昨日の愛宕さんの着ていたベビードールを着て恥ずかしそうに俺の前に立つ大淀の姿がぼんやりと構成されつつある。

いやいや何考えてるんだ俺は!

第一やり方とかもわからないし・・・

あれ?あれってどうやるんだ?裸になって天井のシミを数えれば良かったんだっけ?

それに男女ならまだしも男同士でやるならなおさら俺どうすればいいかなんてわからないし・・・

って違う!なんで俺はそっちに考えが行っちまうんだ!

まだそうと決まった訳じゃないだろうが

「あ、あのさ・・・・セクシーな格好して俺と一晩何するつもりなんだ?」

恐る恐る尋ねると大淀の顔は火を噴くように真っ赤になって俺から目をそらして顔を手で覆った。

どうやら俺の考えてることが向こうにバレたらしい。

「なななな何考えてるのバカ!私男なんだよ!?そんな・・・そんなこと・・・・謙のエッチ」

「はぁ!?そんな俺とお前の今のなんかよくわからん関係で格好で二人で一晩やるって言ったらイヤでもそっちの想像しちまうだろうが!!」

いやそれはそれでおかしいんだけど勢いで言っちゃったし今はそういうことにしておこう。

だって俺が一番今大淀と・・・そして淀屋とどうやって付き合っていけばいいか一番わかってないんだから。

きっと大淀とそんな関係になってしまったら本当に俺たちは今までのような関係には戻れないだろう。

でも本当に大淀から求められたら俺はどうしてやればいいんだ・・・?

「そんなに私としたいの?私のことそう言う風に見てたの・・・?」

あれ・・・これって地雷踏んだ奴・・・?

「ちちちちげーし・・・確かに?お前が艦娘になってからなんかかわいいなーとか思わないって言ったら嘘になるけど別に邪な事は考えてねーし?」

「そうなんだ・・・じゃあ私のことかわいいって思ってくれてたんだ」

「そりゃ・・・そうだろ・・・?お前なりに可愛く見られるように努力もしてるだろうしさ・・・それが見て取れると言うか・・・」

「ありがと・・・でも謙がしたいって言うなら私は・・・」

大淀がこちらを見つめて顔をこちらに近づけて来る

私は・・・・一体なんなんだよ!?

別に目を合わせるくらいなんてこと無いと思っていたが今大淀に見つめられて俺の鼓動は凄まじいスピードで脈を刻んでいる

「えいっ」

大淀は突然俺にデコピンしてきた

「うわっ!痛え!!」

「ふふっ!ドキドキした?待しちゃった?私が謙に簡単にそんなことさせると思う?期私のことすっぽかして愛宕さんと仲良くした上に遅刻してきた罰ですよーだ!それじゃあ私はそろそろお昼ご飯頂いて来るから後片付けよろしくね!」

大淀はそう言うと駆け足で執務室から飛び出していった。

「あっ、ちょ待て!」

呼び止めるがそんなものどこ吹く風と言わんばかりに足取り軽く大淀の背中はどんどんと離れていく。

結局セクシーな服装で俺と一晩何がしたかったのかも気になるけど俺もまだ昼飯どころか朝飯も食ってないんだけどなぁ・・・

腹減ってるけど頼まれごと放ったらかして帰る訳にもいかないし俺は散らばった筆記用具やら使わない資料やらをせっせと片付けた。

「ふう・・・」

やっと片付いたので椅子に座って軽く休憩していると

「ただいま帰ったわぁ〜♪」

上機嫌な愛宕さんが執務室に入って来た。

「おわぁ!?愛宕さん!」

そうかそろそろ警備交代の時間か・・・

でも昨日のこともあり俺は身構えてしまう

「もぉなによぉ〜そんな驚かなくていいじゃないの」

「す・・・すみません」

「もしかしなくても昨日のことまだ気にしてくれてるの?おっぱいに視線がちくちく当たってるわよ?当然よね〜だって自分で揉んでても柔らかくて気持ちいいものこのおっぱい・・・はぁ・・・んっ♡揉みながらシコると結構濃いの出るのよね〜」

愛宕さんはむにむにと自分の胸を揉みしだいてこちらに見せつけてきた

それに知りたくもない情報をしれっと言うな!

「誰もそんなこと聞いてないですよ!!で、以上はなかったんですか?」

「もう・・・釣れないわね〜敵影見ず偵察機電探共に反応無しで異常無しよ」

「そうですかお疲れ様です。ところで愛宕さんと随伴してた那珂ちゃんはどうしたんですか?」

「ああ那珂ちゃん?那珂ちゃんなら次の当番の金剛と吹雪ちゃんを待ってるわよ?二人には私が声かけておいたからもう向かってると思うわ」

「助かります」

「は〜い報告終わり〜これで心置きなく高雄が帰って来るのを待てるわ はぁ・・・早く帰ってこないかしら」

今のこの人の頭の中には料理と高雄さんとエロい事しかないんだろうか?

しかしサンタクロースを待ち焦がれる少女のような目を良い年こいたオッサンがしていると言うのもすごい絵面である。

「あ、そうそう言い忘れてたんだけど」

愛宕さんは待ち焦がれる少女のような表情をやめてこちらに話しかけてくる

「なんです?」

「今日も海の家人手不足らしいのよ〜だから仕事終わりで悪いんだけど今日も行ってくれない?執務室は私が見てるから」

「え、ああ良いですけど。どうせもう吹雪たちが帰って来るまでやる事ないですし」

「そう、ありがと 提督の素直なところ好きよ?」

「はぁっ!?」

愛宕さんの「好きよ」が頭の中でなんども反響する。

今までも言われたことはあったが昨日のことがあったからなのか今日の愛宕さんのこの言葉はすごく効いた

「あら?提督?おーい・・・起きろー」

愛宕さんの低めの声で俺は現実に引き戻される。

そうだ第一愛宕さんは男だし既婚者・・・・でも高雄さんと愛宕さんどっちが夫なんだ?どっちも夫?それともどっちも人妻(♂)なのか?

ああ違うそうじゃない!

何考えてんだ俺は・・・

「すいませんちょっとボーッとしてました」

「はぁ・・・相変わらず童貞しすぎてて見てるこっちまで恥ずかしいっての」

「べっ・・・別に良いじゃないですか!まだ俺18ですよ!?」

「あっそ。俺はもうその頃にはとっくに捨ててたけどなーもちろん女で」

しれっと何自慢しくさってくれてんだよこの人はぁ!

さっきまでの可愛い金髪美女はどこ行ったんだよ!!

「はいはいそうですか・・・それじゃあ俺もう行くんで後は任せましたよ?」

「はーい♡いってらっしゃ〜い」

愛宕さんは声色をいつもの調子に戻して俺を見送ってくれた。

はぁ・・・ずっとああなら美人でおっぱいもデカいし言うことないんだけどなぁ・・・

 

そして俺は動きやすい服装に着替えて海の家へ向かった。

その道中

「えぇ〜そんなことないですよぉ〜お兄さんたちったらお上手〜」

どこからともなく聞き覚えのある声が聞こえてくる

声の方に目をやると海水浴に来た観光客の男性たち3人が水着姿の女性を囲んでどうやらナンパをしているようだった。

はぁ・・・俺もナンパの一つや二つしてみたいけどなぁ

まず女の人と喋ることすらできるかどうか怪しいくらいだし夢のまた夢だけど・・・

ってあれ?あの女の人の綺麗な黒髪どっかでみたことあるような・・・

俺はこっそり近づいてみると

「お姉さんお姉さん!一人?」

「ねえねえ君さ、どこ住み?地元の子?てかL●NEやってる?」

「俺たちビーチバレーしようと思ってたんだけど3人じゃ一人足りなくてさぁ お姉さん一人ならいっしょにやんない?あとさ、夜バーベキューもしようと思ってんだけどよかったらそっちもどう?」

チャラそうな男たちはそんな定型文のような言葉で女性を口説いている

そんな下心丸見えで平然と女性と近づいて喋れる3人がすげえムカつく。

10割嫉妬だけど

「ええ〜私困っちゃうなぁ〜」

やっぱりこの声聞き覚えが・・・・って阿賀野じゃねぇか!!

あいつなんで水着でうろついてんだ!?

「おい阿賀野!!」

俺は思わず声をあげてしまった

「あっ、けんちゃん!こっちこっち〜」

阿賀野はこちらに気づき手を振ってきた。

け・・・けんちゃん・・・!?

阿賀野をナンパしていた3人の男の視線がこちらに一気に向く

「ちぇ〜彼氏持ちかよ」

「お姉さんがあんな奴の彼女とかもったいないっすよ〜」

「あんなのより俺たちと遊んだ方が楽しいって」

男たちは口々に阿賀野を諦めず口説こうとする。

「ぐぬぬぬぬ・・・」

言わせておけば好き勝手言いやがって・・・・!

そんなに女と関わらずに真面目に生きてきた俺が悪いってのかよ・・・!

でも喧嘩になったら提督って立場上やばいんじゃ・・・

それに喧嘩なんてしないし3人には絶対勝てないだろうし・・・

「も〜私はけんちゃんが良いの!ね〜けんちゃん?」

阿賀野はこちらに駆け寄ってきて俺の腕に抱きついてきた

「ほわぁっ!?」

「さっ、!けんちゃん早く行こ!」

そのまま阿賀野は俺を引っ張って男たちのいる場所から離れて海の家の物陰の方まで連れて行った。

「ふぅ・・・ここまでこれば安心だね〜どうせまた店の手伝い頼まれたんでしょ?」

「安心だね〜じゃねぇよ!お前高雄さんから医務室の番頼まれてたんじゃねえのか?それになんだよけんちゃんって!!」

「えへへ〜だって医務室誰もこないし暇なんだも〜ん!だから少し気晴らしにって思ってね〜」

「気晴らしじゃねぇよ!タイミングよく俺が通りかかったからよかったものの俺がいなかったらどうするつもりだったんだよ!もしお前がナンパされてその・・・色々されたら大変だろ?」

「ふぅん・・・提督さん阿賀野のこと心配してくれてるんだ」

「ま、まあ一応な」

「ふふっ♡ありがと!でも大丈夫!阿賀野男の人の扱いには慣れてるし一人でも躱せたから!最悪男だってわからせれば8割くらいは逃げてくって!」

「残り2割はどうすんだよ!!阿賀野一応可愛いんだからあんまり無防備なことするなよ・・・お前になんかあったら・・・あれだ!鎮守府のみんなにも迷惑かかるんだぞ?」

「へ〜そこまで考えて叱ってくれてるんだ・・・ちょっと嬉しい・・・かも?ありがとね提督さん」

「はぁ・・・調子狂うなぁ・・・さっさと医務室の番に戻れよ!」

「え〜やだやだ!もうちょっと夏の日差しと男たちの視線を楽しんでたいの!」

「お前わざとナンパされてたのかよ!」

「だって〜下心全開で男の私に近寄ってくる男の人みてるのすっごい面白いんだもん!それに可愛いとか褒められて悪い気はしないしね〜」

「ああもう男を弄ぶんじゃねえよ!帰らないって言うなら高雄さんに番サボってそんな事してたって言いつけるからな!」

「えっ!?それはやだ!高雄怒らせたらすっごい怖いんだよ?」

「知ってるよ。だから言うんだよどうせ俺の言うことなんてまともに聞いてくれないんだろ?」

「そんなことはないかもよ?阿賀野のこと叱ってくれたし可愛いって言ってくれたし今日はそれに免じて言うこと聞いてあげる!それじゃあ阿賀野医務室戻りま〜す お店のお手伝い頑張ってねけーんちゃん♡」

阿賀野はこちらに手を振って鎮守府の方へ戻って行った

「だからその呼び方やめろ!あとナンパとか道草くったりするんじゃねーぞ!」

阿賀野の背中を見送って海の家へと向かった。

 

そして海の家での手伝いをそつなくこなし、あっという間に海水浴場が閉鎖される時間だ。

深海棲艦の影響やらリスクもあって17時半には海水浴場は閉鎖されるのでいつも17時くらいには上がらせてくれる。

まだ明るいけど人の少なくなった砂浜を歩いて鎮守府に帰ると門の前で愛宕さんがバス停の方を眺めて立っていた。

「愛宕さんただいま戻りました〜」

「あっ、提督!お帰りなさい お店の手伝いご苦労様♡」

「愛宕さんは何してるんですか?」

「高雄を待ってるに決まってるじゃない!まだかしら」

「子供ですか!」

「良いじゃねえかよ!俺が真っ先に高雄を迎えてやりてぇんだよ!もう晩飯の準備も警備関係の引き継ぎも終わってるし文句ねぇだろ?」

「は、はいぃ!」

「わかればよろしい」

愛宕さんは声色を戻して頭を撫でてくれた。

それからしばらくして

「あっ、あれ!おーい高雄ー!!」

「ちょ、待ってください!」

愛宕さんがいきなりバス停の方へ走り出したので俺はそのあとを追いかける

そしてこちらに向かってくる人影が高雄さんだと言うことがわかると

「高雄〜♡おかえり!」

愛宕さんは高雄さんの胸めがけて抱きついた

「こら!もう愛宕ったら・・・こんな道の真ん中で急に抱きついてくるなんて」

「だって寂しかったんだからこれくらいして良いじゃない!」

「はぁ・・・もう・・・本当にしょうがない人・・・ただいま愛宕」

高雄さんはそんな愛宕さんを慈愛に満ちた表情で優しく撫でて抱き返した。

「高雄〜」

「はぁい♡」

俺は一体何を見せられてるんだ・・・

こんな路上でそんなイチャイチャされるとうらやま・・・じゃない公序良俗に反する!

止めないと・・・

「あの・・・」

「あら提督もお出迎えしてくれてたんですね!ただいま帰りました 愛宕が迷惑かけませんでしたか?」

高雄さんは俺に気づいたのかこちらをみて微笑んだ

「ああもう提督は良いだろ?お前の提督は俺だけなんだからよぉ」

俺と話しているのが気にくわないのか愛宕さんが高雄さんの胸に顔を埋めてそう言った。

「はいはいもう提督はとっくにやめて今のあなたは愛宕でしょ?」

高雄さんはそんな愛宕さんをなだめる

「む〜そうだけど・・・それじゃあ高雄型二番艦の私にただいまのキス・・・して」

「提督がみてるんですから・・・そう言うのは今日の夜に・・・」

「今じゃなきゃ嫌!」

「もう、バカね・・・ただいま♡んむっ・・♡」

「高雄ぉ♡おかえり・・・むちゅっ♡」

俺の眼の前では一見黒髪ショートの美女と金髪の美女が抱き合いながら熱いキスを交わしているのだがところがどっこい二人とも男なのである。

というか本当に俺は何を見せられてんだよ!!

「ああもう二人ともその辺にしてください!」

「提督がもう止めろって言ってるわよ?」

「あいつ羨ましがってんだよ。もっと見せつけてやろうぜ高雄♡」

「もうっ!あなたったら・・・♡」

火に油だったようだ。二人の抱擁はさらに過密になっていく。

これ本当にそのうち猥褻罪で捕まるぞ・・・

それからしばらくして

「ぷはぁ・・・♡おかえり高雄♡」

「ええ♡ただいま愛宕♡もう満足した?」

「ええ!続きは今夜じっくりね♡今日は寝かせないぜ」

「あら♡期待してるわ」

二人の関係をまざまざと見せつけられて衝撃を受けたがそんな二人が少し羨ましくも見えた。

俺はもし大淀とこんな関係になっちゃったらどうなるんだろ・・・

そんなことを少しだけ考えてしまった。

「それじゃあ私は晩御飯の準備に入るから高雄は早く荷物片付けてきて!今日はいつもの何十倍も気合い入れて作っちゃうんだから!」

鎮守府の門の前まで戻ると愛宕さんは食堂の方へ走っていった。

「はぁ・・・お見苦しいところ見せてしまってすみませんでした提督。あの人あれくらいしないと聞かないから」

「は、はい・・・でも二人って本当にそう言う仲だったんですね・・・連休明けにキスしてるのみましたけどまさか路上であそこまでやるとは・・・」

「もう恥ずかしいから言わないでくださいよぉ〜」

そう言った高雄さんは少し嬉しそうだった。

「それじゃあひとまず荷物を片付けようかしら。おみあげもあるんだけどみんなの分に分けなきゃいけないしあの子がちゃんと番してるかも気になるし医務室に行くわ」

確かにあの後ちゃんと阿賀野が医務室の番に戻ったのか俺も気になる。

「俺も行きますよ。荷物持ちますね」

「ありがとうございます提督 それじゃあお言葉に甘えて」

俺は高雄さんの荷物を半分持って医務室に同行した。

そして医務室の前に差し掛かると

「あ〜だれもこないし暇〜・・・あっ、屁出た・・・くっさ!」

部屋からそんな独り言が聞こえてきた

阿賀野・・・だよな?一体何してるんだ?

俺たちは恐る恐る医務室を覗いてみると水着姿のままベッドで横になってポテチをボリボリと食う阿賀野の姿があった。

確かに一見水着の美少女がベッドで寝転がっているように見えなくもないのだが品のない寝方に散らばるポテチのカス、それにポテチを食ってない方の手で尻をぼりぼりと掻くその姿はまさしくおっさんだった。

そんな阿賀野の姿を見た高雄さんの怒りが沸点に達したのか戸を勢いよく開いてズカズカと医務室に入っていく

「阿ー賀ー野ー?医務室は綺麗に使えって言ったでしょ?それになにその下品な格好!」

「た、高雄!?帰ってたんだ・・・お帰り〜」

「お帰り〜じゃないわよ!少しは任せられると思ったけどやっぱりだらしないわねあなた・・・ちょっとそこに正座しなさい!」

「ひーん!あっ、提督さん助けて!!」

阿賀野は俺に気づいたのか助けを求めてきたがそんなの自業自得だろ?

「あー俺知らなーいそうだー今日の晩飯なんだろなー(棒読み)」

俺はそう言って医務室を後にしたが医務室から凄まじい剣幕の怒鳴り声やら阿賀野の情けない声やらが聞こえてきて怒られる阿賀野にも出張から帰って早々説教をする事になった高雄さんにも同情した。

 

そして夕飯はどこかの高級レストランのバイキングかと見まごうような料理が並び、いつもに増して美味かったので高雄さんがいない間頑張った甲斐があったと思いながら料理を堪能したのだった。

 

そんな次の日高雄さんの首元やら腕やらにキスマークが付いていたので昨日はお楽しみだった事を察したが何も言わないでおいてあげるのだった。


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