ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。 作:ゔぁいらす
突然の海斗の来訪から一夜明け、俺は忙しい1日を送っていた。
今日は人手が足りないとかなんとかで鎮守府の仕事をまた高雄さんと愛宕さん、それに大淀に任せて長峰さんの海の家の手伝いだ。
最初はなんで提督のはずなのにこんな雑用をやらされなきゃいけないんだと思ってたけど長峰さんたちはそれなりに気も使ってくれるし臨時の収入も悪くない額だったから悪い気はしない。
それになにより本物の女性客の水着姿がすごく目の保養になる。
・・・はずなんだけどいつも阿賀野や高雄さんたちの異次元クラスの巨乳を見ているだけにとどこか物足りなさを感じてしまう俺がいた。
そろそろヤバいんじゃないかな俺・・・
そんなこんなでピークの時間を過ぎそろそろ日も暮れて来て客足も減ってきたので一息ついていると
「ごめんくださいデース!」
「いらっしゃ・・・って金剛!?」
突然聞き慣れた声がしたので声の方に振り返るとそこには水着姿の金剛が立っていた。
「どうデース?ワタシの水着姿惚れ直ましたー?」
金剛がこちらに向けてセクシーなポーズをして自慢の胸を見せつけてくる。
やっぱりそんちょそこらの女の子の胸なんかよりずっとでかいし張りがあって綺麗だ
それに胸だけじゃないメリハリのあるボディーラインに透き通るような肌
こんな美女に浜辺で声かけられたら男は即落ちするだろう
でも悔しいけど金剛は男なんだな
「あの・・・レジの前でそんなふしだらなポーズ取らないでくれます?」
「もーケンひどいデース!ワタシお客さんとして来てるのにー!!」
「はいはいわかったわかった。で、何買うんだ?」
「ケン一つくだサーイ!」
「はいよー・・・って俺は売りもんじゃないっての」
「いいじゃないですか!この間ケンと一緒に泳げなかったしそれも兼ねて水着で遊びにきたのにぃー!」
そういえば金剛あの日どこにもいなかったと思ったら晩になって身体中に海藻やら巻きつけて一人でふらふらになって帰って来たけど一体どこで何してたんだろう?
「とにかく俺は今日はここの店番で忙しいんだ!冷やかすくらいなら帰ってくれよ」
「嫌デース!今の時間他のお客さんもいないし暇そうじゃないですかー!」
「それはそうだけど・・・」
「あっ、そうデース!グッドアイディアネ!焼きそば二人前と午●ティー二本買いマース!」
誰かに買ってくるように頼まれたんだろうか?
「二人前?えっと合計で1100円でーす」
「1100円ネー・・・hereデース!」
「はい丁度いただきまーす」
身内とはいえどうしてもタメ口で接客するのはいかがかと思うのでそれっぽい接客で金剛からお金を受け取る。
しかしながら海の家の商品って高いよなぁ・・・
それでも売れるんだから海の魔力ってのは凄いもんだ。
そんなことを思いながらパックに入った焼きそばと氷水につけてあった午●ティーと割り箸を2つづつ袋に詰めた。
「お待たせしましたー」
袋を金剛に渡すと金剛はその袋から焼きそばと午●ティーを一つづつ取り出すと
「これケンに奢ってあげるデース!だからケンはワタシのことそこのお座敷で接客してほしいデース!」
金剛はガラガラに開いた海の家の座敷を指差して目を輝かせている。
「いやいやそういう店じゃねぇからここ!」
「むぅ〜ケンの意地悪!ちょっとくらいいいじゃないですかぁ」
金剛はわざとらしくいじけて見せてくる。
「騒がしいと思ったら金剛じゃないか 鎮守府の方はいいのか?」
店の奥から売り上げやらを計算していた長峰さんが出てきた。
「今日はもう自分のシフトは終わったデース!だからケンと親睦を深めようと思って遊びに来たネー!」
「そうか・・お前は相変わらずだな・・・そうだ謙くんもう今日は上がってくれて構わないぞ
「えっ、もういいんですか?」
「ああ、鎮守府の社会貢献と言う形とはいえ半ば強引に手伝わせてしまっているのだから必要以上に苦労をかけさせたくないからな。それにこの客足ならあとは私と陸でなんとかなるだろう。これが今日の分のバイト代だ。小遣い程度にしかならんと思うが大事に使ってくれ」
長峰さんから封筒が渡された。
中を見ると同じ時間アルバイトするよりかは幾分ましなくらいの金額が入っていた
「あ、ありがとうございます!」
「あとは私達が片付けるからせっかくだ、金剛の相手でもしてやってくれ。鎮守府にはこちらから連絡しておこう」
「えっ、マジっすか?」
早く帰って休憩したいのに・・・
「君の本業は提督だろう?出撃がない間は艦娘とのコミュニケーションも仕事のうちだぞ」
「YES!流石ナガト話がわかるネー!」
「ただし金剛、節度は弁えろよ?非番とはいえ艦娘としての自覚を持ってだな・・・それとこの海水浴場の開放時間は18時までだからそれまでには帰るんだぞ?」
「あーはいはい・・・ナガトの真面目委員長みたいなところは相変わらずデスネー・・・あんまり根を詰めすぎると疲れるでショー?」
「真面目で何が悪い!」
「げっ!怒らせちゃったデース?ケン早く行くデース!ではナガトbye!!」
金剛が俺の手を握って結構な力とスピードでそのまま引っ張り浜辺の方へ駆け出した。
「うわっちょ・・・金剛!?」
「こらー!人の話は最後まで聞け!!」
金剛は全速力で走り長峰さんの声がどんどん遠くなっていく
そして海の家から少し離れた場所で立ち止まり、人のまばらになった海水浴場にぽつんと置かれていたベンチに金剛は腰掛けた。
「ふぅ〜ここまでくれば大丈夫デース!」
「はぁ・・・はぁ・・・金剛お前急に走んなよ・・・肩抜けるかと思った」
「ケンも座るデース!ほらここ!」
金剛はベンチの開いたスペースを手でポンポンと叩いて俺に座るよう促してくる
「あ、ああ」
俺は金剛に言われるがまま隣に腰掛けた。
「それじゃあこれ、今日はお勤めご苦労様デース!」
金剛はまた焼きそばと午●ティーを取り出して俺に手渡してきた。
「ありがとう。でもいいのか?奢ってもらって さっき給料もらったばっかりなんだぞ?」
「ノープログレムヨー!ワタシがケンに貢ぎたいだけデース!」
「貢ぐてお前・・・」
「レディーからの好意は受け取っておくべきデース!ささ早く食べてヨー!」
レディーてお前・・・・
こんなツッコミを半年経たないうちに何回したことか
もう突っ込むのもバカバカしくなってきた。
「あ、ああいただきます・・・」
金剛から焼きそばを受け取って食べ始めた。
賄いでもらったりで何回か食べていたがパック詰めして作り置きした奴を食べるのは初めてだ。
冷めても美味しいし夕日の浜辺というロケーションで食べるからかもしれないがいつも食べるよりも美味しく感じる気がした。
奥田さん曰く愛宕さんが監修しているらしく流石としか言いようがない。
ただ焼きそばに午●ティーの甘ったるいのは合わないかなぁ・・・
そんな俺を尻目に横で金剛は美味しそうに焼きそばと午●ティーを交互に口に運んでいた。
そして焼きそばを食べ終えてしばらくして
「・・・みんな楽しそうデース」
砂浜ではしゃぐ人々を見て金剛は静かに言った
「急にどうしたんだ?」
「海でこうして人が楽しそうに遊んでるところを見るとワタシ達が戦った甲斐があったなって・・・」
金剛はこちらを見て微笑む。
いつものようなテンションに全振りしたような金剛とはまた違った一面に俺はドキッと心を揺さぶられた。
な・・・なんか金剛って可愛くね・・・?
いやいやいや金剛は男で・・・しかもいつもは騒がしいし裸族だし・・・・
「ん?どうしたの?ふふっ・・・今日は疲れた?」
金剛はこちらの顔を覗き込んでくる
おいいいいい!!!いつもの変な口調はどうしたんだよぉぉぉぉぉぉ!!!
「あ・・・・え・・・え・・・・は、はいぃ・・・・」
「ふふっ!照れてるケンはいつ見ても可愛いネー」
はぁ・・・よかった・・・いつもの金剛だ。
あのままの感じでグイグイ来られたら流石にやばかったかもしれない
「こ、金剛人をからかうのもその・・・いい加減にし・・・・んむっ!!?」
何が起こった!?
唇に柔らかいものが一瞬当たって・・・金剛の顔があんな近くに!!!!
波の音が聞こえなくなるくらいに鼓動が高まり日が暮れてきて涼しくなってきてるはずなのに顔がすさまじく暑くなっている
「お疲れさまデース・・・これはワタシなりの労いの気持ちデース!」
「こっここここここここ金剛!?」
「ん〜?ケンには刺激が強すぎました?英国では挨拶みたいなものだから気にしないでほしいデース!ケンの唇・・・柔らかかったネ♡海水浴一緒にできなかった分だと思って許して・・・ネ!」
「お、おま・・・・きっ、きききき・・・・」
オーバーヒートしそうな頭が導き出した答えは金剛は軽く俺にキスをしたに違いない
いやしたね!
一瞬すぎて反応できなかったがその結果を頭と唇が遅れて徐々に理解していく
「お、お前ー!!いくら英国ではどうこうとかじゃなくて急に俺の唇を奪うなぁぁぁぁぁ!」
「ohケンが怒ったデース!heyワタシを捕まえてみるデース!!」
金剛は立ち上がって走り出した
焼きそば食った直後なのによくあんな走れるなあいつ・・・
「あっ、こら待てぇ!」
そうは言ってみるが今走ったら絶対焼きそば吐くし急にあんなことされた仕返しだ。
俺はそのまま凄まじいスピードで走っていく金剛の背中を見送った。
はぁ・・・黙ってたらすごく可愛いんだけどなぁ金剛・・・
どのみち男なんだけど
「はぁ・・・帰るか・・全くあいつ買うだけ買ってゴミ置いていくってどうなんだ」
金剛が置いていったペットボトルと焼きそばが入っていたパックを俺のパックと一緒にビニール袋に入れて鎮守府へ帰ることにした。
「はぁ・・・疲れた」
金剛はどうせ腹が減ったら帰ってくるだろう。
疲れたしさっきので更に体力を吸われた気がするしさっさと戻って高雄さん達に報告しなきゃ
そして鎮守府に帰り執務室へ戻ると愛宕さんが机で突っ伏していた。
「あ”〜やっぱデスクワーク向いてねーわ俺・・・・って提督!?コホン・・・お、お帰りなさぁいうふふっ!」
俺に気づいた愛宕さんは何事もなかったようにいつものお姉さんモードに入った。
「いやいや今更ごまかしても遅いですよ!」
「え〜なんのことかしらぁ?」
「ああいえなんでもないです・・・ところで高雄さんと大淀は?」
「二人ならもう今日の見回りも終わったし先に上がってもらったわ。高雄は明日からの出張の準備もあるから」
そういえば少し前に鎮守府の状況報告も兼ねて召集がかかって最初は俺が行く事になってたけど忙しいし場慣れしてる高雄さんが代わりに行く事になったんだっけ・・・
しかしもっと先の話かと思ってたらもう明日からなんだな
「高雄さんが居ないとなると明日から更に一段と忙しくなりますね」
「代わりに私と金剛がお手伝いするから安心してね」
「え、ええ・・・」
さっきデスクワーク向いてないとか漏らしてたのはどこの誰だ!
それに金剛がそういう事してるところ見た事ないけどどうなんだ?
「何?不安?高雄ほど良くできるわけじゃないけれど・・・」
「い、いやそんな事はないですけど・・・」
「ま、こう見えても元提督だし?大船に乗った気分でいて頂戴!」
愛宕さんは胸を張った
「は、はい・・・」
「長門から聞いてるわよ今日は疲れたでしょう?あとちょっとで終わるしもう上がっても大丈夫よお疲れ様」
「わかりました。それじゃあお先失礼します」
俺は頭を下げてから執務室を後にした。
するとこちらにドタドタと足音が近づいてきて金剛がこちらに向かって走ってきた
「うわぁぁぁぁん!ケン酷いデース!あのシチュエーションはフツーワタシの事追いかけますよネー!?」
金剛は俺に抱きついてくる
「うわぁちょ・・・!離れろ!!」
「嫌デース!もう離しまセーン!!ケンLoveyouデース!!」
「ああもう暑苦しいからやめろ!!」
「ワタシいつでもバーニングネー!!」
「そういう事じゃないから!!はーなーれーろー!」
「ノンノンデース!私は食らいついたら離さないワ!」
「そういうのいいからぁ!」
そんなもみ合いを続けていると
「お前らうるせぇぞ人が仕事終わって疲れてんのにギャーギャー部屋の前で喚いてんじゃねぇぞ!!」
あまりのうるささにブチギレたのか愛宕さんが執務室のドアを蹴破ってきてさっきまでの優しいお姉さんみたいな愛宕さんはどこへ言ったのかと問いたくなるほど荒々しい口調で俺たちを怒鳴りつけてきた。
「ひぃっ!す・・・すみません・・・」
「ソーリーデース愛宕・・・」
「ちょっとお灸を据えなきゃいけねぇみてぇだなぁ?おいお前らちょっとそこになおれ」
愛宕さんは床を指差した。
なんで俺まで?超理不尽じゃない!?
でもここで反論しようもんならどうなるかわからないぞ・・・?
「は、はいぃ!!」
「わかったデース・・・」
俺たちは愛宕さんの迫力に押されその場に正座させられその後めちゃくちゃ怒られたのだった。