ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。   作:ゔぁいらす

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pixivに5話として投稿した物を手直ししたものです


新しい朝

 夢を見ていた。ただただ暗い水の中を沈んで行く夢を。妙にリアリティはあったが、置かれている状況が非現実過ぎたのですぐに夢だと分かった。

「■■さん・・・・いつかきっとまた・・・・」

夢の中で俺はそう呟くと意識が闇に溶けていった。息は苦しく、体も重い。それに身動きも取れない。しかし不思議と恐怖心は無く、何かから解放された様なそんな気持ちだった。

視界は完全に闇に閉ざされたが身動きが取れないなどの状態はそのまま続き、これが夢でなく現実で起きている事だと知るまでに俺はそれほど時間を要さなかった。

俺の上に何かが乗っている。俺は重いまぶたを無理矢理こじ開ける。

「吹雪・・・?」

なんと俺の上に吹雪が乗っかって眠っていたのだ。

えっ、なにこれ?全く覚えてないけどもしかしてやっちゃったの俺?いやいや吹雪は曲がりなりにも男でだな・・・・・俺の童貞男で捨てちゃったのか?しかもこんな年端も行かない子にで?いやこれ犯罪だろこれはヤバい!しかし本当に記憶がないが本当にやっちゃったのか俺!?確かに前の話でフラグ的な物はビンビンだったがこういった事はせめてもう少しお付き合いをしてからですね?いやそれにしたって男とやるなんてそんな・・・・

俺の頭の中がそんな考えを巡り目が一気に覚めていく。すると

「むにゃ・・・司令官。おはようございます。」

吹雪が目を覚ましたようだ。

「すすすすまん!!全く覚えてないんだがえーっとその・・・・」

俺はあわてて弁解をしようとするがなんて言ったら良いんだよ・・・そんな事は知ってか知らずか吹雪は

「ごめんなさい司令官。私一人だと寂しくって・・・・」

と言う。さささ寂しくってなんだよ!!どうしたってんだよぉぉおぉぉぉおぉぉ!

ここまで焦ったのは友達から借りた(←ここ重要)エロマンガが家に帰ると玄関にどどんと置いてあって【おはなしがあります 母より】という書き置きが添えられていた時以来かもしれない。

「い、いや、いくらささささささささしみいや寂しくったってこんな事しちゃダメだろ!まだなんだかんだで俺たち出会ってから1日しか経ってないんだぞ?そんな出会って1日で合体なんてそそそんな」

俺はもう訳が分からなくなっていた。すると吹雪は俺の上から降り

「ごめんなさい司令官。一緒に寝て欲しかったんですけど全然起きなかったからお布団に入れてもらってたんです・・・・ダメでしたか・・・・?」

へ? 今なんて言った?一緒に寝ただけ・・・・?なぁ〜んだそうだったのか。俺は安堵すると同時にさっきまで考えて居た事がいくらなんでも童貞臭過ぎて嫌になった。

「そう言う事だったのか。ははは・・・・ちょっとびっくりしたけど別にそれくらいならお易いご用だ。」

俺は苦笑いをして答える。

「そうでしたか司令官。驚かせてしまってごめんなさい。ところで合体って何ですか?艦娘と合体出来る艤装を提督さんは持っているのでしょうか??」

吹雪は不思議そうに聞いてくる。なんて純粋な子なんだ!尚更俺がさっきまで考えていた事を思い出すとバカバカしくなってくる。

「あ、ああなんでもないよ。それより良く眠れたのか?」

俺は適当にはぐらかす。

「はい!司令官のおかげで!」

吹雪は笑顔で言った。

すると襖が開き

「朝ご飯できてるけどもう起きているかしら?それに吹雪ちゃんの方はもう大丈夫なの?」

女将さんが入ってくる

「あら?お邪魔だったかしら?」

女将さんがこちらを見るとそう言って立ち去ろうとするので。

「あっ!いえ起きてます!!ご飯いただきます!!!いや〜なんだろうなぁ?楽しみだなぁ〜?吹雪!お前も早く来いよ!?」

俺はとっさに飛び起きる。

 

 

そして俺は吹雪を連れて居酒屋のカウンターへ向かった。

「ぐごごごぉ〜・・・・・・ぷすぅ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふごっ!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぐごごごごぉ〜・・・・ぷすぅ〜・・・・・」

そこには阿賀野はまだ椅子にふんぞり返って気持ち良さそうにいびきをかいて眠っていた

「まだ寝てんのかこいつ・・・・」

とりあえず揺らしてみよう。

「おーい阿賀野〜朝だぞ〜起きろよ〜」

しかし一向に起きる気配がない。そこに

「はい。お待たせ。こんな有り合わせの物しかないけどどうぞ。吹雪ちゃんは昨日から何も食べてないでしょ?しっかり食べるのよ?」

と女将さんが白いご飯と鮭の塩焼きと味噌汁を持って来てくれた。

「ぐごごぉ・・・・・・・・くんくん ご飯!」

急に阿賀野が飛び起きる。

「ひっ!」

吹雪は突然の出来事に身を縮める。こいつどんだけ食い意地張ってんだよ・・・

「おい阿賀野、そんな急に起きて大声出したから吹雪がびっくりしてるだろ」

俺は阿賀野を諌める。すると

「吹雪ちゃん!よかった〜元気になったのね。本当に良かった・・・・・」

そう言うと阿賀野は吹雪の元へ行き吹雪を抱きしめる。忙しい奴だなほんとに。

「は、はい・・・・ご心配おかけしました・・・・」

吹雪は申し訳なさそうにそう言った。

「阿賀野ちゃんも起きた事だし冷めないうちに召し上がれ。」

女将さんがそう言うや否や

「はい!頂きます!!」

と阿賀野は朝食に箸をつける。

「俺たちも食べるか。」

吹雪に目をやる。

「はい。司令官。いただきます。」

吹雪が朝食に箸を付けたのを確認した俺も

「いただきます。」

と、朝食を食べ始めた。うまい。何の変哲もない日本の食卓って感じだがやはりどこか懐かしさを感じさせる、それに味も申し分無く美味い。

そしてどんどんと箸は進み、すぐに完食する。

「ごちそうさまでした。でも良かったんですか?晩ご飯をごちそうになって一晩泊めてもらった上に朝ご飯まで頂いちゃって。」

俺は女将さんに尋ねる

「良いの良いの。昨日も言ったけど私が好きでやってる事だから気にしないで。それより吹雪ちゃん元気になって良かったわね。」

女将さんは答える。

するとガラガラと音を立て居酒屋の入り口の戸が開かれ

「謙!・・・・いえ提督!お迎えに上がりました・・・・ハア・・・・ハア・・・・」

汗だくになった大淀が入って来た。

「あらお迎えが来てくれたみたいね。これでもう大丈夫ね。」

女将さんは笑う。

「え〜阿賀野もっとおかわりしたい〜」

と阿賀野は残念そうに言う。

「バカ!お前食い過ぎなんだよ!」

俺は阿賀野の頭を叩く

「いった〜い」

阿賀野は頭を抑える

「大淀。阿賀野を連れていってやってくれ。ちょっと足怪我しててな」

俺は大淀に言う

「はい。かしこまりました提督。」

大淀は眼鏡にクイッと手をかけると阿賀野を引っ張って外へ連れ出す。

「あ〜阿賀野鮭もっと食べたいのに〜〜〜〜」

阿賀野は半べそをかきながらも大淀に外へ連れていかれる。

「よし。俺たちも帰るか。」

俺は吹雪に言う。

「はい!司令官!」

吹雪は元気よく答える

「女将さん。何から何までお世話になりました。ありがとうございます。朝ご飯もおいしかったです。」

俺がそう言って頭を下げると

「助けていただいて本当にありがとうございました!」

と吹雪も続けて頭を下げる。

「いえいえ。また何かあったらいつでも来てね。待ってるわ」

女将さんが笑顔で手を振る。

「はい。また来ます。」

俺がそう言って居酒屋を出ようとすると

「ちょっと待って、貴方の名前を聞いていなかったわね。」

そう女将さんが言うので

「謙です。大和田謙」

俺は答える

「謙くんね。また・・・来てね?」

そう手を振る女将さんはどこか寂しそうだった。

「はい。是非!」

そして居酒屋を出ると一台の車が止まっていた。

「これ大淀が運転して来たのか?」

俺は大淀に尋ねる

「はい。そうですけど?」

大淀は答える。淀屋の奴いつの間に免許を取ってたんだろう?そうも思いながらも車に乗り込む

「提督。高雄さんと愛宕さんも心配してますよ。部屋に携帯電話も置きっぱなしでしたし・・・」

大淀は少し怒った様な口調で言う。

すると急に横に座っていた阿賀野が俺に急に抱きつき

「て・い・と・く・さ〜ん?実は昨日の事全部聞いてたの。」

と言ってくる。

「きっ・・・聞いてたって何処から何処まで・・・・?」

俺は恐る恐る聞く。

「どこからって阿賀野のパンツずらす所からに決まってるじゃない!それにしても『お前はここに居ても良いんだよ。いや居てくれ。これは俺のいや提督からの命令だ。』だって〜かっこよかったぁ〜でもあんな方法を使うなんて提督さんご・う・い・んなんだからぁ〜♡」

そう言うと阿賀野は俺にほおずりをする。

起きてた上にコイツ全部聞いてたのかよ・・・・他人に聞かれていたとなると急に昨日言ったセリフが恥ずかしくなり。俺は顔が赤くなる。横に目をやると吹雪も顔を赤らめていた。

 

じょりっ

 

ん?じょりっ?今なんかじょりってしたぞ?この感覚はもしかして・・・・

いや、何かの間違いかもしれない。俺は恐る恐る阿賀野の頬を確認する。

「おい阿賀野。・・・お前ヒゲ生えて来てんぞ・・・・」

俺は恐る恐る言う・・・・

「えっ!ウソ!」

阿賀野は何処からとも無く手鏡を取り出し覗き込む。

「も〜やだ〜ありえな〜い。」

阿賀野の悲鳴が車内にこだまする。

「ふふっ!」

吹雪が笑う。

「もー吹雪ちゃん笑わないでよ〜」

阿賀野は頬を膨らませる。

「いえ。なんかこの鎮守府にこれた事が嬉しくって!」

吹雪は笑顔で答える。

「提督、到着しました。私はガレージに車を止めてくるので先に降りていてください。」

大淀は言う。

阿賀野は車が止まった瞬間一目散に車を降り鎮守府の中へ走って行った。

「吹雪。改めてようこそ!××鎮守府へ。これからよろしく頼むな。」

俺は車から出ようとする吹雪の手を取ると

「はい!司令官!」

吹雪は笑顔でそう答えた。

 

こんなへんてこな鎮守府だけどなんとかやっていけそうだ。

俺は車から降り背伸びをした後ゆっくりと吹雪とともに鎮守府へと歩みを進めた。


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