ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。 作:ゔぁいらす
初雪を見送ってやる事もなくなった俺は自室に戻りベッドで寝転がり一服していた。
そんな時ふと大淀の事を思い出す。
あいつ・・・まだ怒ってるかなぁ・・・
今朝のあの感じを思い出すとまだ怒っているに違いない。
せめてもう一回だけでも謝りに言った方が良いんじゃないかと思った俺は大淀を探す事にした。
そして大淀を探して彷徨っていると金剛とばったり出くわしてしまう
「ヘーイケン!!昨日はどうしたデース?」
「あ・・・その・・・いろいろあってさ・・・」
「色々デース?・・・・でも深くは聞きまセーン!」
「そ・・・そうか・・・よかった・・・」
俺はまた胸を撫で降ろす
「でも良かったネ・・・また何かあって居なくなっちゃったかと思っちゃったデース・・・これでも心配してたデース」
「心配かけてごめん・・・」
「やっぱりワタシ・・・ケンのそういう素直な所大好きネー!!」
そう言うと金剛は俺に飛び付いてきた
「うわぁ!!やめろ金剛!!」
「もうぜったい離さないネー!!あれからずっと自重してたけどワタシを心配させた罰デース!!!」
金剛はがっちりと俺に抱きついて離れないし胸が当ってるし・・・それになんでこんないい匂いするんだよこの人!俺と同じ男だとは思えない・・・
「こ・・・金剛・・・悪かったって・・・でも大淀に見られたらヤバいから・・・」
「そうでした・・・ケンは大淀のことが好きなんですよネ・・・」
金剛はそう呟いて俺を解放した
「えっ!?な・・・何でそう思うんだよ!?べべべつに俺と大淀はそんなのじゃ・・・」
俺は必死に誤摩化してみせるが
「やっぱりケンは噓がヘタデース。ケンと大淀の事見てたら2人が恋仲だなんてすぐに分かりマース・・・!」
「こ・・・金剛・・・」
「でも・・・ワタシはケンの事が好きデース・・・likeでもloveの意味でもどっちもネ・・・だからケンには幸せになって欲しいんデース!好きな人が幸せになってくれればワタシも嬉しいネ!だから・・・大淀のこと大事にしてあげてくだサーイ!きっとケンと大淀はお似合いデスから!」
金剛は笑顔で言った
「あ、ああ・・・ありがとう金剛・・・」
「でも・・・・もしケンが大淀に振られたらいつでもワタシが受け入れてあげるからネー!待ってマース!!」
「おいお前なぁ・・・」
「というのはジョークネ!!でもいつ何時そう言う事があってもワタシはずっとケンの事好きでいるからネ・・・それまでこの体型を維持して待ってマース!」
金剛は胸を強調して言ってきた
「い・・・維持って・・・?」
「ワタシ男でショー?だから気を抜いたらすぐに腕とかも太くなっちゃいマース。それに最近少し食べ過ぎただけですぐにお腹が出てきちゃって・・・ってこれ皆には内緒だヨー?だからワタシ・・・結構身体の維持には気を使ってるんデース!自分で言うのもアレだけどワタシ結構女の子に見えるでショー?」
「あ、ああ・・・」
「こう見えてもワタシ結構努力してるんデース!あんまり自慢できる事じゃないんだけどネー」
金剛は恥ずかしそうに言った。
やっぱり金剛も男の身体でその体型を維持するのに相当苦労してたんだな・・・
「そうだったのか・・・」
「そうデース!でもあんまりワタシがケンの事誘惑すると大淀が可哀想ネ!だから早く大淀のところに行ってあげてくだサーイ!!」
「で・・・でも大淀はどこに居るんだ?」
「大淀なら大浴場の方へ行きましたヨー?」
風呂か・・・大淀こんな時間に風呂入ってるんだな・・・
「わかったありがとう金剛!」
「いいってことネー!」
俺は金剛に礼を言い大浴場の方へ向かうと少し髪の湿った大淀が大浴場の方から歩いてきた
「大淀!探したぞ!!」
「な・・・なんでしょう提督・・・実は私も探してて・・・」
「うん。金剛に聞いた。で、用事ってなんだよ」
俺がそう尋ねると
「ごめんなさい!」
大淀は突然頭を下げた
「な・・・なんでお前が謝るんだよ」
「だ・・・だって私・・・用事があったからとは言え謙に朝のお仕事丸投げしちゃったし・・・」
そんな大淀の口から発された意外な言葉に俺は呆気にとられる
「え・・・?俺もお前が怒ってると思って謝ろうと思ってたんだけど・・・」
「う・・・うん・・そりゃ勝手に居なくなっっちゃうんだもん。少しは怒るよ・・・だから少し意地悪しちゃおうかなって思ったんだけど私も良い息抜きをさせてもらった訳だし・・・少しやりすぎちゃったかなって」
大淀は申し訳無さそうに言った
「そんな事無いって!俺が急に帰れなくなったのが悪いんだから。でもそっちも那珂ちゃんとの水族館楽しめてたみたいで安心したよ」
「そ・・・そう・・・?ならよかった。明日からはちゃんとお手伝いするから」
「ああ!今日一人で書類片付けてたらお前が居ないと大変だって分かったよ。いつもありがとうな」
「う・・・うん・・・謙がそう言ってくれるなら・・・私もやってる甲斐があるよ・・・」
「で、用事ってなんだったんだ?」
「今日の夕飯の当番那珂ちゃんだったでしょ?でも私も料理・・・すこしくらい出来た方が良いかなって勉強がてらに那珂ちゃんのお手伝いしてたの」
「そうだったのか。お前高校の時一人暮らしだったのに自炊全然してなかったもんな・・・でもあのサンドイッチ美味かったぞ」
「そう・・・なんだ・・・もっとお料理覚えて謙に振る舞える様に頑張るからもう少し待っててね」
「ああ。とびきり美味しいのを待ってるよ」
「謙のご飯よりおいしいのは作れないかもしれないけど・・・頑張るね!それじゃあそろそろ夕飯の準備のお手伝いに行かなきゃいけないから私行くね」
「ああ。それじゃあ夕飯待ってるからな〜」
「うん!」
俺は大淀を見送った。
そうだ!あの書類に書いてあった海水浴場警備の話を長峰さんに聞きに言った方が良いかもしれないな・・・それに春風と釣りをする約束もそのままだし竿とか貸してもらえないかついでに聞きにいこう。
俺は長峰さんの家に向かおうと部屋で私服に着替えて外に出る準備をして鎮守府から出ようとすると
「またお出かけ?今夜も帰ってこないのかしら?」
と突然天津風に声をかけられた
「い・・・いや・・・すぐ帰ってくる用事だけど」
「ほんとかしらね?前科2犯の貴方の言う事を信じろって言う方が無理じゃない?」
「確かにそうだけど・・・」
「私も付いていくわ!また貴方がどこほっつき歩いてるのか分からなくなったら大変だから監視よ監視!!」
天津風はそう言って俺に付いてくる
「天津風・・・お前演習は良いのかよ」
「演習?もうとっくに終わったわよ!」
「そうなのか・・・そうだ!初雪・・・初雪はどうだった?」
「あの先輩凄いわ!ブランクがあるって言ってたのに私なんかよりずっと命中率も魚雷の扱いも上手いんだもの!教え方は少しヘタだけど・・・技術は本物だったわ!私もあれくらい強くならなくちゃ・・・」
よかったそれなら今後も初雪には演習の監督を主な仕事として与えよう。
ちゃんと初雪の居場所が出来て俺は安心した。
「で、初雪は?」
「ああ。春風が男同士裸のおつきあいをしませんか?って言って2人で今頃お風呂よ。春風も好きよねお風呂・・・男だって分かってても目のやり場に困ってるってのに・・・」
天津風は愚痴っぽく言った
「2人って事は・・・」
「ええ。吹雪はやっぱり他の人に裸を見られるのが嫌みたい・・・一人でシャワーを浴びるって言ってたわやっぱりあなたが言ってた通り身体のアザを気にしてるのね・・・」
「そう・・・か・・・」
全然表には出さないがやっぱり吹雪は昔のトラウマをまだ引きずっていると言う事をひしひしと感じた。
俺が少しでもそんな吹雪の支えになってやらなきゃ・・・
「で、どこ行くのよ?」
天津風が話題転換とばかりに尋ねてくる
「え?ああ。長t・・・長峰さんの所だけど」
俺がそう言うと天津風は硬直してしまった
「な・・・長峰さんって・・・あの・・・」
「ああ。あの長峰さんだけど。お前天津風になってから1回も会ってなかったよな?」
「え、ええ・・・それに私がここに着任してる事も知らないはずよ・・・」
「会うの気まずいか?それなら別に無理してついてこなくても良いんだぞ?大丈夫だって絶対帰ってくるからさ」
「でもついてく・・・!」
「大丈夫なのか?」
「ええ。一応お世話になった人だし・・・顔位出した方がいいかなって・・・でも・・」
「でも?」
「私の事天だってバラしたら許さないからね!?あくまでもあなたの付き添いとしてきた天津風として紹介する事!!」
「あ、ああ分かったよ」
そして俺と天津風は長峰さんの家のある方へと歩き出した。
この道を歩いていると初めて天津風・・・いやソラと会った時の事を思い出す。
そんな事を思っていると
「なんだかこの道もとっても久しぶりに感じるわ・・・まだこの身体になってひと月くらいしか経ってないのにね・・・とっても懐かしい感じがする・・・」
天津風がぽつりとつぶやいた
「そうか?俺はいまでもアイス食ってた時にお前が急に話しかけて来たときの事忘れてないぞ?ほんとに最初は可愛げの無いクソガk・・・・いってぇ!!!」
「誰がクソガキですって?」
天津風は俺のつま先を思いっきり踏みつけつつ俺を睨みつけてきた
「い・・・いや・・・クソ・・・・クッソかわいい子だな・・・・って思った・・・うん・・・」
いやまてこれ・・・フォローになるどころか完全に変質者じゃねーか・・・
「はぁ?そんな目で私の事見てたの!?やっぱりあなたショタコンだったのね?」
「ち・・・ちがう!!これは言葉のアヤで・・・」
「やーたすけてーおまわりさーんこのひとへんたいでーす」
天津風は抑揚の無い声でそう言った。
「おいそれはマジでやめろ!!捕まるって!!ごめん・・・悪かった!!言い過ぎた!!だからそれだけはやめてぇぇぇぇぇ!!本当は良い子だと思ってたから!」
「はぁ・・・良いわよ噓付かなくても・・・実際吹雪なんかとは比べ物にならない可愛げの無いクソガキですよーだ」
天津風はそう言っていじけてみせる
「分かってるならなんで怒ったんだよ・・・でもなんだかんだあんな職場だったし普通に同性で気兼ねなく話せる人間が近くに居なかったからさ・・・結構ソラと話すの楽しかったんだぜ?これは本当」
「な・・・!なによ!そんな事言ったって何も出ないんだから!!もう・・・本当にもっと早くにあなたと会えてたら良かったって思うわ・・・でもこうなっちゃったものは仕方ないし艦娘として頑張るから・・・これからもよろしくね・・・お兄さん・・・」
「え!?あ、ああ。もちろんだとも!」
そうこうしている間に長峰さんの家の前にたどり着いた俺達はひとまずインターホンを押してしばらくするとガラガラと引き戸が開き
「謙君じゃないか。どうしたんだこんな夕暮れ時に」
長峰さんがそう言って出てきた
「あの・・・少し用事があったんで今日整理した書類に書いてあった海水浴場警備の話もついでに聞こうかなって思いまして」
俺はそう説明したがなにやら長峰さんの目は俺の方を向いていない。
「そ・・・そうか・・・おや?その子・・・」
長峰さんは天津風を見てそう言った
そうか。長峰さんもソラが××鎮守府に着任した事知らないんだよな?
でも黙っててくれって言われたし・・・どうしたもんかなぁ
「あ、ああ・・・こいつは少し前に新しく着任した天津風です。今日は付き添いで来てもらったんです」
俺は言われた通り天津風として彼の事を長峰さんに紹介した。
「あ・・・天津風ちゃん・・・・か。初めまして私はここで漁師をしている長峰・・・と言う者だ。よろしく」
長峰さんは何やらたどたどしくそう挨拶した
「は・・はい・・・私、天津風・・です・・・はじめまして・・・」
天津風も少し気まずそうにそう言って頭を下げる
「・・・で、用事ってなんだ謙くん」
「あ、ああえーっと・・・新しく入ってきた駆逐艦の子と釣りをするって約束をしたんですけど釣り具屋がどこにあるか分からないんで釣り具とか持ってたら貸して頂きたいなって思いまして」
「ああ。それくらいならお易いご用だ!日程を教えてくれたら私も同行しよう・・・で、その・・・天津風ちゃん・・・済まないが謙くんと2人で話がしたいんだ。少し席を外してくれるかな・・・?」
長峰さんはそう言った
すると
「は・・はい!わかりました・・・それじゃあ提督・・・私はあの場所で待ってるから・・・早く来てよね・・・?」
そう言って天津風はそそくさと何処かへ行ってしまった。
しかし俺と2人で話したい事ってなんだろう・・・?
俺がそう思っていると
「な・・・なあ・・・・天津風ちゃんはちゃんと艦娘としてやっていけているか?」
長峰さんはそう尋ねてきた
「え・・・?はい!もちろん。最初は心配でしたけどなんとか他の艦娘とも仲良くやってますよ」
「そう・・・か・・・それは良かった・・・それと私が長門だと言う事は天津風ちゃんに秘密にしておいてくれないか?」
「え・・・なんでですか?」
「いや・・・その・・・なんと言うか・・・いや・・・謙くんには話しておいた方がいいか・・・いいか謙くん。驚かないで聞いてくれよ・・・」
長峰さんは深刻そうな顔で俺を見つめてくる。
一体何を・・・
「は・・・はい・・・」
「あの子・・・実はソラくんなんだ・・・」
はい・・・?
いや知ってたけど・・・・
逆に当たり前過ぎる事をすごくマジメな顔で言われてしまって俺は拍子抜けしていると
「・・・すまん・・・言葉が出ない程驚かせてしまったか?」
と長峰さんは聞いてくる
「い・・・いえ・・・知ってたんで・・・」
「な・・・何!?知ってたのか!?」
いやいやそんな驚かなくても・・・
「はい。最初はあいつも隠してましたけど色々あってそうだって打ち明けてくれました」
「はぁ・・・そうだったのか・・・緊張して損をしたぞ」
長峰さんは一つため息をついた。
「でもそれじゃあ別に長峰さんが長門だって打ち明けても良いんじゃないんですか?悩みを共有出来ると思いますし・・・」
「それは・・・それだけは駄目なんだ!」
突然長峰さんが声を荒げる
「な・・・なんでですか・・・!?」
「それはだな・・・私は艦娘として前線に出ていた時ソラくんのご両親を助けられなかったんだ・・・皆を守る為に男でありながら艦娘になったのに結局ソラくんの大切な人もあの人の大切な人も守れなかった・・・私はそんな自分が許せなかったんだ。だから私は罪滅ぼしのつもりで天涯孤独になったソラくんの保護者に名乗り出たんだ・・・でもきっと私がその時ご両親を助けられなかった艦娘だと知ればソラくんはきっと私を恨むだろう・・・そう思うと怖くて結局私は長門だと言う事を隠していたし・・・それに保護者らしい事をしてやれなかった。だからせめてやりたい事はやらせてあげようと思った私はソラくんが艦娘になりたいと言い出した事を断る事が出来ずに知人にお願いして彼に艦娘として生きて行く道を選ばせたんだ・・・まだ彼は中学生なんだぞ?きっとご両親が生きてさえ居れば学校へ行って勉強して友達と遊んで暮らせたはずなのに・・・私があそこで止めてさえ居れば良かったんだ・・・でも結局それを私は出来なかったんだ・・・」
長峰さんは目に涙を浮かべていた
「長峰さん・・・」
「しかし君がソラくんと仲良くなってくれていた事を知った私は彼を××鎮守府に着任させられるように手を回させてもらったのさ・・・君なら凍てついた彼の心を少しでも溶かしてくれると思ったから・・・」
全部長峰さんがやった事だったのか・・・
通りでソラが都合良く××鎮守府に来た訳だ
「そうだったんですか・・・」
「それに何かあっても私が助けにいけるからな。半ば押し付ける様な事をしてしまってすまないがこれがソラくんが艦娘として生きて行く上で最良の決断だと私が勝手に思ってやった事なんだ・・・!すまない。全て私のひとりよがりなんだ・・・!あの子が鎮守府に着任してから頃合いを見て君に話そうと思っていたんだがそれも怖くてできなくて・・・本当にすまない!許してくれ全部私が悪いんだ!私が彼を復讐の道へ進めてしまったんだ」
長峰さんはそう言うと深々と頭を下げてきた。
きっと長峰さんも色々考えた結果だったのだろう。
天津風はもっと他の選択肢を見出せたかもしれないって言ってたけどだからといって艦娘になる事を止めなかった長峰さんを責める事なんて俺には出来ない。
でもおかげでまたソラと会う事が出来た事だって事実だ。
それに理由はどうあれ俺も提督としてソラと・・・天津風と向き合っていく義務があるはずだ。
「わかりましたから頭を上げてください。長峰さんの選択が正しかったかどうかは俺にもわかりません。でもソラ・・・いえ天津風はあれでも必死に頑張ろうとしてるんです。だからまた彼に話したくなったら面と向かって話してやってください。あいつも今日長峰さんがどうしてるか気になってついてきたんですよ?だからきっと長峰さんの事は嫌いだとは思ってないはずです・・・だからそれまで俺と・・・それに高雄さんと愛宕さんだっています!それに吹雪だって・・・天津風より少し早めに着任してきた春風だってみんな天津風を見てますから・・・・それにあいつだってそんな皆に触れて少しずつだけど変わってきてます!最初は確かに深海棲艦に復讐をするって言ってましたけど今は復讐のためじゃなくやりたい事をさがす為に艦娘としてやっていくって言ってくれました。だから心配しないでください。あいつもあいつなりに変わろうとしてるんですよ」
「そう・・・か・・・結局一番私が素直になれていないのかもしれないな・・・もう少し時間はかかりそうだがいつかきっとすべてを彼に打ち明けよう。約束する。でも今はまだ・・・私にその勇気がないんだ。だから今日話した事はまだあの子には秘密にしておいてくれないか?」
「はい!俺も・・・いや俺だけじゃないきっと天津風だって長峰さんとちゃんと話せる様になるのを待ってると思いますから・・・時がきたらちゃんと話してあげてください」
「ああ。わかった・・・ありがとう謙くん・・・それまではあの子を頼む」
「ええもちろん!それじゃあ俺、そろそろ帰りますね」
「ああ。また釣り具の用意をしておくから日程と人数が決まり次第教えてくれ」
「はい!それじゃあお邪魔しました!」
俺はそう長峰さんに挨拶して彼の家を後にした。
さああいつを迎えにいかなきゃ・・・多分あそこだろうな。
俺はいつもあいつと話していた海沿いのベンチのある方へ向かうとそこには退屈そうな天津風がひとりでぽつんと座っていた。
「やっぱりここか」
俺は天津風にそう声をかけた
「はぁ・・・遅いわよ!もう待ちくたびれちゃった」
「ごめんごめん」
「で、私の事バラさなかったでしょうね?」
天津風は俺を睨みつけてくる
バラさないも何もあっちから言ってきたし・・・
でも秘密にしておく様にって言われてるし黙っておこう。
「えっ・・・!?あっ・・いや・・・大丈夫・・・」
俺は適当に答えをはぐらかした。
「怪しいわね・・・じゃああ何を話したのよ!?」
「ああえーっと・・・その・・・」
あれ・・・?なんか忘れてる様な・・・・
あっ!結局海水浴場警備のこと聞きそびれてる!
はぁ・・・何のためにここまで来たんだか・・・まあいいや。あとで愛宕さんに聞こう。
それにおかげでなんで天津風がこの鎮守府に来たのか分かったし俺も提督としてもっとちゃんとしなきゃな・・・
「なにニヤニヤして黙ってるのよ?何を話してたか教えなさい!」
「え・・・?ああ。別になんでも無いよ。ただ世間話をしてただけだって」
「む〜怪しいわね・・・でもまあ良いわ!あなたがちゃんと私がここにいる事分かってくれたし許してあげる」
「そりゃ忘れる訳ないだろ?さあ。早く帰ろうぜ。今日の晩飯は大淀が手伝ってるって言ってたからお手並み拝見ってとこかな〜」
俺はそう呟いて鎮守府へ向けて足を進めると
「あっ、ちょっと待ちなさいよ!!」
それを見た天津風はベンチから立ち上がって俺を追いかけてきた。
長峰さんの言う通り天津風はもっと幸せになれる生き方を選ぶ事も出来たのかもしれない。
でもこうやって天津風と一緒に居られる事も悪くないし天津風にも嫌だとは思って欲しくない。
だからソラ・・・お前が艦娘になった事を後悔させる様な事は絶対にしないから・・・
いつか他にやりたい事が見つかった時はそれが出来る様に俺も全力で手伝ってやるからな!
俺はそう決意を固め、後ろから追いかけてくる天津風を見つつ鎮守府のある方へと足を進めた