ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。   作:ゔぁいらす

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俺がこんなに可愛いわけがない

 「な・・・なにするんだ・・・・やめろ・・・・・・・・・・!!」

怯える俺をよそに高雄さんと阿賀野は不敵な笑みを浮かべにじり寄ってくる。

「えへへへ〜だから変装だって言ってるでしょ?ねえねえ高雄〜あれちょうだい」

「はいはい」

高雄さんは棚からおもむろにガムテープを取り出して阿賀野に渡した。

「それで何するつもりだ!?」

「まあまあ提督さん落ち着いて。痛いのは最初だけだから♡」

阿賀野は笑みを浮かべながらガムテープを伸ばし始めた

さっきも言ったけど不安でならない。本当に何する気なんだ!?

「それじゃあ脱いでください提督」

は!?

「そんないきなり・・・ってうわぁ!」

気付いた時には高雄さんに背中を取られズボンを降ろされていた。

「ほあっ?高雄さん!?いつの間に・・・・うわっ!」

俺はそのまま高雄さんに後ろから抱きしめられる様にして身動きが取れなくなってしまう

背中に高雄さんの柔らかい物の感触を直に感じる

「ちょ・・・高雄さん!?何するんですか?当ってますよ!!ってか離してください」

「少しでも苦痛が和らぐように当ててあげてるんです阿賀野、ちゃっちゃとやっちゃいなさい!」

「はーい!それじゃあ提督さんちょっと痛いけど我慢しててねー」

阿賀野はガムテープを俺の臑にくっつけた。

「えーい!!」

次の瞬間阿賀野は俺の臑のガムテープを思いっきり剥がす

「ぎゃぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

ガムテープに引っ付いた臑毛が抜けその痛みで俺は声を上げた。

「も〜情けない声出さないでよ提督さん!じゃあ次いくよ〜」

は?次・・・?

それから阿賀野は俺の脚の至る所にガムテープを張っては剥がしてを繰り返して行った。

「ふう〜提督さん。脚きれいになったよ!!」

阿賀野は笑顔でそう言った。

少し赤く腫れてはいるが阿賀野の言う通りスネ毛なんて処理したこともなかった足がツルツルになっている。

なんでそんな事する必要があるんだよ・・・・

まだ脚がヒリヒリしていてあまりの痛さに目に涙を浮かべてしまう

「うう・・・・もういやだ・・・・」

「提督、よく頑張りましたね」

高雄さんが俺の頭を撫で解放してくれた。

しかし俺の臑毛なんか抜いて一体どうするってんだ?

なんの罰ゲームなんだこれ・・・

でももうこれで終わりだろう。

しかし俺が胸を撫で下ろして安堵していたのも束の間

「それじゃあ高雄、あれ用意しといて!」

「わかったわ!」

高雄さんは待ってましたと言わんばかりに医務室を出て行ってしまった。アレってなんだ・・・?

てかまだ何かされるのか!?

俺が不安と恐怖で身を縮ませていると

「それじゃあ提督さん、メイクしよっか」

阿賀野はおもむろにポーチから何やら化粧品を取り出した。

メイク・・・?なんで!?俺が!?

「えー提督さんまだ気付かないの?そのままじゃ大淀ちゃんにバレちゃうじゃない。それに聞いたよ〜この間大淀ちゃんと金剛さんにひどいこと言ったらしいじゃない?」

阿賀野にも知られてたのか・・・

「そ・・・それは・・・」

阿賀野の言う通りで言い訳のしようがない。

俺は何も言い返せなかった。

「だから高雄と考えたんだけどね?提督さんにはオンナノコになってもらおうかなーって」

え・・・ええ!?つまり女装させられるって事か・・・?

「いや待て!俺男だし!それに女装なんて絶対似合わねぇから!」

昔学祭でふざけてクラス全員で女装カフェをやった事があったけどそりゃもう酷いのなんの。そんな俺に女装をしろって!?

「だいじょーぶだいじょーぶ!阿賀野に任せて♡阿賀野も自分の事最初はそうだと思ってたから!それに一回女装してみたら私達の気持ちもわかるかもしれないよー?ほら提督さん座って座って」

阿賀野は俺を椅子に座らせようとしてくる

「いやいや別にお前らの気持ちなんて・・・・」

いや・・・待てよ?もしかしたら淀屋の・・・大淀の事、少しはわかるかもしれないのか?

気にならないと言えば嘘になってしまう。

「んー?気持ちなんてどうなのかなー?」

「う・・・」

反論しても最早どうにもならなさそうだし大淀を傷つけてしまった罰だと言割れてしまっては甘んじて受けるしかない。

「さ、さあどうにでもしてくれ!どうせ俺が大恥かいて終わるだけだろうけどな!」

俺は苦し紛れにそんなことを言いながら阿賀野に言われた通り椅子に腰掛けた。

「ふふっ♡提督さんのそういう潔いいところ好きよ♡それじゃあやるね」

阿賀野はそう言うと楽しそうに化粧品を俺の顔にどんどんと塗っていった。

なんだか阿賀野に顔を延々と撫でられている気分で落ち着かない。

そして俺の口元を念入りに化粧する鏡に映った阿賀野の顔はいつしか真剣な顔になっていた

阿賀野のこんな真剣な顔あんまり見たことないしなんだか恥ずかしいと言うか・・・それに自分の化粧した顔なんて恥ずかしくて見れたもんじゃないだろうから鏡も見たく無いなぁ。

俺は恥ずかしくなり鏡から目線を逸らす

「ん〜?自分の顔見るの恥ずかしい?それなら目つぶっててもいいよ?」

「あ、ああ・・・」

阿賀野がそう言うので俺は目をつぶった。

それからしばらくして

「はーい完成!」

と阿賀野は言った。

「えっ・・・?もう出来たのか?」

「うん!見てみる〜?今の提督さん超かわいいよ?」

「いやいやお世辞でもそんな俺が可愛くなるわけないだろ」

そう言うと阿賀野はニヤリと笑みを浮かべ

「そうかなぁ?一回見てみたら?」

「あ、ああ・・・」

阿賀野に促され恐る恐る目を開けるとどこかで見覚えがあるような無い様な顔が映っている

「これが・・・俺?」

俺が口を動かすと鏡のに映った艶のある唇が同じように動いた。

「お約束のリアクションありがとー提督さん!いや〜我ながらすごく可愛くできたと思うの!」

噓だろ・・・?普通に女の子に見えなくも・・・ない・・・かも・・・

「阿賀野!?お前一体どうやったんだよ!?」

「えっへん!阿賀野こう見えても毎日女装してるようなもんなんだからこれ位お手の物よ!それに艦娘になりたての頃は尚更男の子っぽさを隠すのが大変だったんだからその時の事思い出してちょちょいっとやってみたの」

阿賀野は得意げに言った。

「そ・・・そうか・・・・」

鏡の中では俺の声で女の子が喋っているようななんだか変な感覚に襲われる。

そんな時

「阿賀野終わった!?」

高雄さんが何やら大量に服を担いで戻ってきた

「あ、高雄遅かったじゃない」

「色々迷っちゃって・・・・あら提督?見違えましたね可愛いですよ」

か・・・可愛い!?俺が・・・?

阿賀野に言われたときはふざけてるのかと思ったがあながち噓でもなさそう・・・だよな・・・

なんで可愛いって言われてこんなに胸がドキドキしてるんだ俺・・・!

「あ・・・ありがとうございます。ところでそれは?」

「ああこれですか?提督に着せるお洋服ですよ」

「え・・・」

そりゃ女装するんだから当然とは言え・・・

「俺のサイズに合うんですか?」

「はい。もちろん」

高雄さんは即答する

「は・・・?なんでそんなもんがあるんですか!?」

「私、お裁縫とかも好きで暇な時に作ってるんですよ。昔愛宕の為にサイズを計って作ってた服があってそれを提督のサイズに合わせて作り直してたんです!ああ・・・まさか本当に着てもらえる日が来るなんて・・・・」

高雄さんはなんだか嬉しそうだ

「ええ!?いつの間に俺のサイズなんか計ってたんですか!?」

「それは企業秘密ですっ!うふっ♡」

高雄さんはウインクをする

「いやいやいやいや急にそんな事言われたら怖いですよ!!」

「高雄はねー見ただけで大体人のサイズを当てられちゃうんだよねー阿賀野もびっくりしたの それじゃあ阿賀野も準備してきまーすそれじゃあ高雄、後よろしく!!」

阿賀野は思い出した様に出て行ってしまった。

「阿賀野に頼まれた事ですし・・・・さっさとやってしまいましょうか。うふふふふ・・・・」

高雄さんは不気味な笑みを浮かべ担いできた服を何着か俺にあてがい始める

「うう・・・・なんで俺が女の子の服なんて・・・・」

「あっ、そうだ提督パンツ脱いで頂けます?」

「は!?なんで?」

なんでパンツなんて脱がなきゃいけないんだよ・・・!

「女装は見えない所からですよ提督。なんで女物の服着てるのにパンツがボクサーパンツのままなんです?逆に不自然でしょう?」

そう言って高雄さんが女物の下着を手渡してくる

レースやリボンのついた可愛らしいデザインのパンツだ

「えええええええ?これを履けと!?」

「当たり前じゃないですか」

目の前に女物の下着が・・・・確かに憧れはあったよ?でもそれは別に履きたいとかじゃなくて未知への探究心とか冒険心からというか・・・・断じて履きたいなんて思った事なんかない・・・ぞ?

「そ・・・それに俺なんかが履いたらただの変態じゃないですか!」

「大丈夫ですって。今の提督ならちゃんと女の子の恰好をすればちゃんと女の子に見えますって!なんなら私が履かせてさしあげましょうか?」

それは流石に恥ずかしいしあんなデカいあれを持ってる人の前に俺の粗チン・・・って誰が粗チンだよ!!高雄さんのがデカいだけなんだけど・・・その・・・・それを高雄さんの目の前に晒すのは恥ずかしいし・・・

でも女の子の恰好をしたらもっと女の子に見えるって高雄さんは言ってたけど本当なんだろうか・・・・?

でももう化粧までされちゃったし逃げるわけにもいかない。

「わ・・・わかりました!それじゃあ俺、向こうで履いて来るんで絶対見ないでくださいね!?」

「はいはいわかりましたよ」

俺は高雄さんから下着を取り医務室のベッドのカーテンを閉めそこで履く事にした。

「絶対ですよ!?」

「わかってますって」

カーテン越しに見た高雄さんはどこかうれしそうだ。

そしてカーテンで封鎖された空間で一人になった俺は下着をまじまじと見つめる

やはりどこからどう見ても女性もののパンツだ。

「うう・・・これ履かなきゃいけないんだよな・・・・?大丈夫なのか?その・・・はみ出たりとか・・・・

ええい!もうどうにでもなれ!!!」

俺は覚悟を決めて履いていたボクサーパンツを脱ぎ捨てその下着に脚を通し始める

うう・・・・なんでだ・・・?ただ履いてるだけなのにこの背徳感は・・・・それに男として大事な物を失った気もする・・・淀屋も最初はこんな気分だったのかな・・・・?

「・・・・よし」

なんだか肌触りも落ち着かないし不自然に膨らんでるけど・・・これで大丈夫なのか・・・?

俺は恐る恐るカーテンを開け外に出る

「は・・・履きましたけど・・・」

「まあ提督!似合ってますよ。どうです?女の子の下着を履いた感想は」

「どうって言われても・・・その・・・変な感じというか・・・やっぱ俺がこんなの履くの変ですって」

自分の顔がだんだん熱くなっていくのがわかる。

しかしそんな俺を見て高雄さんは恍惚とした表情を浮かべていた。

「う〜ん!その初々しい感じ・・・・昔の私やていと・・・・愛宕の事を思い出してこっちまで歯が浮いちゃいます!!それでは次はこれ!!」

そう言って高雄さんが取り出したのはブラジャーだった

「そ・・・それも付けるんですか!?俺別にそんなのなくたって・・・」

「ですから女装は見えない所からなんですって!ついでに付け方も教えてあげますから」

「いらないです!!」

「そうですか・・・でも逆にパンティーだけっておかしくありません?ほら・・・早く上も脱いでください」

「ええ・・・・!?は・・・はいわかりました・・・・」

もう下着まで履いてしまったんだからもう今更抵抗してもどうにもならないだろう。

俺は半ば自暴自棄になって服を脱いだ

「それじゃあ付けてあげますね」

そう言って高雄さんは俺の胸にブラジャーを付ける

なんだか胸がつつまれてるような不思議な感覚だ・・・・ふと鏡に目をやると女性物の下着を身につけた俺の姿。

やっぱり顔はなんとかなっても身体はいつも見てる俺のままだ

「やっぱ無理です!!これじゃただブラジャーとパンティー履いた変態ですよ!!」

「だからこれからお洋服着せてそれを隠すんじゃないですか。最初から何着せられるかわかってても面白くありませんし目をつぶっててください」

「は・・はい・・・」

俺は言われた通りにすると

「うーん・・・これなんかどうかしら?」

高雄さんはそう言って俺に服を着せ始めた

うう・・・・なんだか女の子の服って着にくいんだな・・・・こんな所大淀や吹雪達には見せられない・・・見られたらお婿に行けなくなっちゃう・・・!

「はい!完成です!」

言われるがまま鏡を見ると俺はメイド服に身をつつんでいる。

それにサイズは恐ろしく俺にフィットしていた。

「ななななななんでメイド服!?」

「私の趣味です。いいでしょう?」

そう言うと高雄さんはポケットからデジカメを取り出して俺の写真を撮り始めた

「うわぁ!やめてくださいよ!!」

俺はすかさず顔を隠す

「いいですよ!!いいですよ!!その恥じらってる感じが尚更そそりますわ!!!」

高雄さんは鼻息を荒くしていろんなアングルで俺の事を撮ってくる

「良いって何がですか!?」

「安心してください!別にばらまいたりしませんし個人的に楽しむだけですから!!はあ・・・初々しい女装子・・・いい・・・・」

「そ・・・その・・・個人的に楽しむって言うのは・・・?」

「ええ。具体的には私の今晩のオカズにします」

ド直球!?

「オカズぅ!?や・・・やめてください・・・・」

なんだか恥ずかしい・・・・でもなんでだろう?ちょっと嬉しい・・・?いやそんな筈ない!断じてないぞ!

「ああ良いですよ提督!その表情のままこっちに目線ください!!はぁ・・・♡久しぶりに愛宕以外の男の人で勃たせてしまいました・・・♡はぁ・・・・提督可愛い・・・♡普通の男の人にしておくのはもったいないですよ・・・♡」

恍惚の表情で高雄さんは俺を見つめてくる。

「ひっ・・・!」

やっぱりこの人も男だ!!

俺の中の確かに男だけど清楚で頼れる綺麗なお姉さんだった高雄さん像が音を立てて崩れ去っていく。

「っと遊びはこれくらいにして・・・」

高雄さんは急にカメラをしまって淡々と話し始めた。

「遊びだったんですか!?」

「ええ。流石にそんな恰好で出掛けたら目立っちゃいますし」

「何故着せた!?」

「ですから私の趣味で・・・もちろん可愛いって言うのは本当ですからね!」

高雄さんはまた鼻息を荒くした。

はぁ・・・もうやだ・・・・

「そうですね・・・これとかいかがでしょう?」

高雄さんはまた新しい服を俺にあてがって尋ねてくる

「うーん・・・俺にはよくわからないですよ・・・」

「それじゃあ物は試しです!一回着てみましょうか」

高雄さんはそう言うや否や俺のメイド服を脱がし始める。やばい・・・脱がされる・・・・!!

「うひゃぁ!」

なんか変な声でちゃった・・・

なんで俺脱がされるのこんな怖がってるんだ・・・・?

「ん?どうしました?そんな可愛い声を出して」

「い・・・いやなんでもないです・・・でも俺、自分で脱ぎますから」

俺はまたベッドの方まで行き、カーテンを閉じてそこで服を脱ぎ始めるが本当に女物の服って脱ぎにくいな・・・・

あれ・・・?ここどうするんだ?

思いの外ボタンやらチャックが多くて脱ぐのに苦戦してしまいやっとの事でメイド服を脱ぐことができた。

「はぁ・・・やっと脱げました・・・」

「あら、思ったより早かったですね。それではさっきの服、着せますね では目をつぶってください」

「は、はい」

目を瞑ると高雄さんは俺にまた服を着せた。

さっきよりもスカートが短くて股間周りが落ち着かない。

それに腕とかにも何かつけられてる!?

それからしばらくして

「できましたよ!目を開けてみてください」

高雄さんがそう言うので俺は恐る恐る目を開け鏡を見るとわざと着崩した感じにカーディガンとスカートを着せられていた。

「はい!次は今時のギャルJKっぽい感じにしてみました!」

「こ・・・・これはちょっと・・・その・・・・派手過ぎると言うか・・・」

「うーん・・そうですか。それじゃあこっちにしてみましょうか?」

高雄さんがそう言うので俺はまた服をベッドで脱ぎ高雄さんにまた服を着せてもらった。

「はい。こんな感じでどうでしょうか?すこしおとなしめな感じにしてみたのですけど」

そう言って俺を鏡の前に立たせる。よかった。さっきみたいな目立ちそうな服じゃ無さそうだ・・・・

それになんだか可愛い・・・かも?

「い・・・良いと思います・・・」

「そうですか!よかったです。しっかり腕の筋が目立たない様に手袋、それに首元にチョーカー極めつけに近くで見られてもバレない様にメガネも用意しておきました」

高雄さんは嬉しそうだ。

すると医務室の扉が開く。

まずい!こんな所誰かに見られたら!!

と思ったがそんな懸念は杞憂に終わる。

「お待たせー」

「あら阿賀野。遅かったじゃない」

「えへへーちょっと準備にてまどっちゃってー」

「あ・・・阿賀野?」

声の方に振り向くとそこには男装をした阿賀野の姿があった

「なんで男装?」

「いや〜折角提督さんが女装するんだから阿賀野も男装しよっかな〜ってそれにしても提督さん、可愛くなったじゃん。あが・・・俺も良いと思うぜ?」

阿賀野はたどたどしい男言葉を喋りながらこちらに近付いてくる。

な・・・なんだろうこの気持ち・・・俺の心拍数と体温がじわじわ上がって行くのがわかる

男の恰好してる阿賀野かっこいいんだよな・・・・ってなに考えてんだよ俺!!

「提督さん」

「ひゃいっ!!!」

「その髪型のままじゃ変そうにならないとおもってウイッグ持ってきたよ」

そう言って阿賀野は袋から幾つかウイッグを取り出した。

「あ・・・うん・・・・ありがとう」

「それじゃあ提督さん、何個か付けてみよっか」

阿賀野はまた俺を鏡の前に座らせて何個かウイッグをつけてくれた。

そして金髪の長いウエーブのかかったウイッグを付けた時

「うーん・・・これとかどう?高雄、どれがいいと思う?」

阿賀野はそう尋ねた。

「私はなんでも!もう今の提督見てるだけでご飯3杯はいけるわ!!」

高雄さんは鼻息を荒くして答える。

ダメだこの人・・・

「うん!高雄からお墨付きも貰ったしこれで行きましょう!」

今のはお墨付きなのか?

俺はまじまじと鏡を見つめる

うーん・・・今ならちゃんと女の子に見えてる・・・はず・・・・俺は気付かれない程度に少し鏡に向かってポーズをとってみたりした。

「ふ〜ん。提督さん嫌がってた割にはノリノリじゃない?」

やば・・・気付かれてる!?

「そそそそそそんな事ないぞ!?これは阿賀野が言ったから仕方なく・・・・・」

「ふ〜んそうなんだ〜」

阿賀野はニヤニヤと笑みを浮かべた。

「そ、それよりそろそろ行かないと間に合わないんじゃないか!?」

俺は話をそらす様に尋ねると

「そうだね!提督さんであそ・・・・・女装させるのが楽しくて時間忘れちゃってた!!」

阿賀野今遊ぶって言いかけなかったか・・・?

「提督、流石にその恰好でスニーカーはないですよね?」

そう言って高雄さんが何やら箱を渡してくる

「なんですかこれ・・・・?」

「靴ですよ。流石にスニーカーで出掛けさせるわけにはいきません。頭の先から脚の先まで気を配らないと!」

そこには踵が高い目の靴が入っていた

「え・・・これ履くんですか・・・?」

「ええ。もちろんですよ」

「で・・・でも俺、こんな靴履いた事ないし・・・・」

俺が狼狽えていると

「大丈夫だよ提督さん。こけそうになっても俺がしっかり支えてやるからさ」

そう言って阿賀野が俺に顔を近づけてくる。きれいな顔してるなーそれに阿賀野が支えてくれるならあんし・・・って違う!

「ふわぁっ!?ちょ・・・阿賀野!?急にそう言うのやるのやめてくれよ!!びっくりするだろ!?」

「えへへへ〜やっぱり提督さん可愛いっ!」

ダメだ・・・気を抜いてたら阿賀野に良い様にされてしまう・・・気を引き締めないと・・・

俺はそう心に誓いつつ靴を履き替えてみるとサイズが恐ろしい程にぴったりだ。

高雄さん怖い・・・・

それになんだか重心が不安定で転びそうでそれも怖い・・・・

女の人っていつもこんなの履いて歩いてんのか?

「それでは行きは私が車で送ります。車を出して来るので門の前で待っていてください」

高雄さんはそう言うと医務室を出ていった。

「それじゃあ提督さん、阿賀野達もいこっか」

「お・・・おう・・・」

俺は脚をよろよろさせながら阿賀野に付いていくが

「あーもう!提督さん見てたら危なっかしいよ。ゴホン・・・・お手をどうぞプリンセス」

そう言って阿賀野は俺の前に跪き手を差し伸べてくる

あらありがとう・・・・・じゃあない!!!

プププ・・・プリンセス!?

「だーかーらー!!そう言うのやめろって言ってるだろ!それに俺はプリンセスじゃねーから!!」

「へへーだってー提督さんからかうの面白いんだもーん」

くっそぉ・・・良い様に遊ばれてる・・・・でもこんなところで時間食って誰かに見られても困るし俺は仕方なく阿賀野の手を取って門の前へ向かった。

「ふう・・・誰にも見られなくてよかった・・・」

「え〜折角だし皆に見てもらえば良いじゃない」

阿賀野の奴呑気な事言ってくれるなぁ・・・

「絶対やだ!他の奴らに見られるなんて死んだ方がマシ・・・いや見られたら死ぬから!!」

でも今の俺の姿を他の皆に・・・か俺がもしこの姿を他の艦娘達に見せたらどうなるか想像してみるよう。

まず愛宕さんは・・・・

『いいじゃん。一発ヤる?もちろん私ががタチで!うふふふふ♡』

いやいやぜったいない!!絶対ないから!!

次は金剛か・・・

『Oh!ケン!ベリーキュートネー!!今夜一発やりませんカー?もちろん私がactiveネー!!今夜は寝かせないヨー?』

ああ違う違う!!何で二人連続で俺が掘られる事になってんだよ!!

次、天津風!!

『なにそれキモ・・・死んだら・・・?』

ダメだ・・・!すんごい蔑みの目で罵ってきそうなのがわかる・・・・

それじゃあ春風は・・・

『司令官様・・・わたくしに男らしくなれる方法を教えてくださると言っていたのにそんな恰好を・・・わたくし幻滅しました』

春風までもがぁぁぁぁぁ!!!

だめだ。俺の想像力が豊かすぎるのか?誰一人として俺の女装を寛容に受け入れてくれそうな奴がいねぇ!!

それじゃあ吹雪だ!

『お兄ちゃんはどんな恰好でもお兄ちゃんだよ!』

ああ・・・やっぱり吹雪しかいないわ・・・でもやっぱり見られるのは恥ずかしいし・・・

大淀は・・・・・・・・・・

どうなんだろ?ぶん殴られるのかな・・・?多分阿賀野にやってもらったって言ったらへそ曲げるだろうなぁ・・・

うん。やっぱり誰にも見られるべきではないな!ここは俺と阿賀野と高雄さんの秘密って事にしといてもらおう。

「へーそうなんだ。それじゃあ大淀ちゃんにもバレない様にしっかり尾行しなきゃねー」

そんな話をしていると車が門の前で止まり

「お待たせしました。それでは乗ってください」

高雄さんが俺と阿賀野を後部の座席へと誘導した。

「は、はい・・」

「それじゃあここはレディーファーストってことでお先にどうぞ」

阿賀野はそう言ってリヤドアを開ける

「俺はレディーじゃねぇ!」

「え〜ノリ悪いなぁ提督さん・・・・ヒールだと段差危ないでしょ?だからほら!何かあったら阿賀野が支えてあげるから乗って!」

「あ、ああ・・・」

俺は恐る恐る車の後部座席に乗り、それを見届けた阿賀野も俺の隣に乗り込んできた。

「それでは出発しますね」

高雄さんがそう言うと車は水族館に向けて走り出した。

「それじゃあ私達もデーt・・・尾行しっかり頑張らなくちゃね!」

「はぁ!?阿賀野お前今デートって言ったか!?」

「言ってませ〜ん」

うう・・・・ほんとにこんな調子で大丈夫なのか・・・?

そんな不安とともに車に揺られながら水族館へ向かう道中なんだかすれ違う車に乗っていた人の視線が気になって落ち着かなかったがなんとか水族館にたどり着いた。

ここで俺、女装したまま人前に出なきゃいけないのか・・・

そんなことを考えると不安やら緊張やら恥ずかしさで胸の鼓動がどんどん早まって行く

本当にこんな状態でバレずに大淀を尾行できるんだろうか・・・?


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