ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。 作:ゔぁいらす
俺が笑っている大淀の顔に見とれていると何やら騒がしい足音がこちらに近付いてくる
「うわぁぁぁぁぁぁん!大淀!!やっと見つけたデース!!!!!」
いつもなら俺に飛び込んでくるはずの金剛が目の前で大淀をぎゅっと抱きしめていた。
「金剛さん!?ちょっ・・・苦しいですって!!」
「大淀・・・ワタシのせいで髪までこんなに短く切ったデース・・・?ソーリー・・・全部ワタシがやりすぎてしまって起こった事ネー・・・」
金剛は泣きながら大淀に許しを乞っていた。
「これは私が勝手にやった事で・・・・ちょ・・・ホントに苦しいですからまずは離して・・・くださ・・・」
大淀の顔がどんどんと青くなっていく
「oh・・・ソーリー大淀・・・ワタシまたやってしまったデース・・・・」
金剛は慌てて大淀を解放した。
「けほっ・・・けほっ・・・いえ・・・こちらこそご心配おかけしたみたいで・・・それに高雄さんから聞きました。お洋服も拾って来てくれたみたいで・・・ありがとうございます。」
「高雄から聞いたデース!?秘密にしておいてって言ったのに〜!でも大淀が嬉しそうでなによりデース!それではこれを大淀の部屋に運ぶのとお片づけ手伝いマース!」
「あっ、助かります。でも今お部屋が散らかってて誰かを上げられる状態ではないので片付けてきますね。それではけ・・・提督!また後で」
そう言うと大淀は部屋の方に行ってしまった。
そして金剛は俺の手を取り
「Heyケン!仲直り上手くいったみたいで良かったデース!」
と言った。
「あ・・・ああ・・・なんとかな・・・金剛は本当に俺の言った事怒ってないのか・・・?」
俺は唯一引っかかっていた事を尋ねた
「もうあんな言葉はずっと言われてましたしもっと酷い事もいっぱい言われてきてたデース!だからアレくらいどうってこと無いネー!!それにフツーの人はそう思うのがフツーデスよ!!」
金剛は笑ってそう言った。
もっと酷い事を言われて来たなんてそんな簡単に笑い飛ばせる事なんだろうか?
「金剛・・・お前・・・・」
俺はやっぱり酷い事を言ったんだという罪悪感に襲われる。
しかし金剛はそれに気付いたのか
「あっ!別にもうそんな事を言われたのもずっと前の話だから気にしないで欲しいデース!」
と気丈に振る舞った。
「金剛・・・・」
「それよりケンをそんな事を言わせるまでに怒らせてしまった事の方がよっぽどワタシはショックだったネ・・・・ソーリーケン・・・ケンの優しさに甘えて・・・ワタシ・・・・」
「俺・・・そんな優しくなんかないよ・・・」
「ノンノン!この前吹雪にお話聞いたデース!それで確信しましたケンが優しくて良い人だって!だからワタシはケンの事を好きになったんデスヨ?」
こんな美人(男だけど)に好意を向けられて悪い気はしない。でも俺はもうあいつの事を・・・だから金剛のその言葉に応える訳にはいかないんだ
「ごめん金剛・・・・」
俺がそう言おうとした次の瞬間
「あっ!そうデース!この服、大淀の部屋の前まで持っていくの手伝ってくだサーイ!!」
金剛が話を遮る様に言った。
俺は金剛に今これ以上悲しそうな顔はさせたくなかったし大淀との事を話さなくて済んだ事を少し安心した。
「あ、ああ・・・」
「サンキューケン!!それじゃあテキトーに袋渡しマスヨー!!」
金剛はそう言うと俺にゴミ袋を1つ渡して来た。
そのゴミ袋は中がうっすらと透けているので少し中身が見えてしまう。
いや・・・別にあいつがどんな服とか持ってたのかなんて気になった訳じゃなくて偶然目に入っただけと言うか・・・・
俺はそう思いつつも袋の中身を少し見てしまいそこには女性ものの下着類が入っていた。
あいつこんな下着付けてんのか!?
俺はそんな下着を付けたあいつの事を想像してしまう。
昔なら考えられなかっただろうけどこの間見た控えめに膨らんだあいつの胸をこんな下着が包み込んでいるのか・・・そんな事を考えていると
「ケン・・・?どうしたデース?顔が赤いデスヨ?」
と金剛に声を駆けられ俺は我に返る
「ああいや!なんでも無いなんでも無い!!」
俺は必死に誤摩化す。
「そうデスか!それならもう一袋持ってくだサーイ!!」
金剛はそう言ってもう一つ袋を渡してくる。
そこには可愛らしいぬいぐるみが大量に入れられていた。
あいつ・・・こんな可愛い趣味してたのか・・・
昔は生活に必要な物しか無い様な部屋で生活してたのにあいつも変わったんだな・・・・
そんな時以前にゲームセンターでクレーンゲームをやって出て来たぬいぐるみをあいつにあげた事を思い出した。
そういえば昔一緒にゲームセンターで遊んだ時に別にそこまで欲しくなかったけどヤケになって取ったぬいぐるみをいくらなんでも部屋が殺風景過ぎるからこれでも置いとけって言ってあいつに渡したんだよな。いくらかけたんだっけ・・・・いや思い出すのはやめておこう。
でもゴミ袋を見た感じあのぬいぐるみは入っていない。
それじゃああのぬいぐるみはどうしたんだろう・・・?ここに来る時に処分しちゃったのかな・・・・
俺はあのぬいぐるみの行方が気になったが今そんな事を気にしてもどうにもなる話ではないので俺はその事をかき消す様に
「それじゃあこれを部屋の前まで運べば良いんだな?」
と金剛に尋ねた
「Yes!それじゃあレッツゴーネ!!」
金剛は残りのゴミ袋を抱えてそう言った
そして大淀の部屋の前に到着し、金剛が扉をノックする
「Hey大淀!袋持って来たデース!もう入っても良いデース?」
金剛がそう尋ねると扉が開き大淀が出て来た
「はい。あらかた片付きましたもう入って大丈夫です。あっ、提督も持って来てくれたんですね」
そんな大淀の後ろに見える部屋は家具なんかは以前に比べ明るい色の物になっていたが部屋時自体は以前と変わらず殺風景な物だった。
きっとこういうぬいぐるみで埋め尽くされていたのに俺のせいでそれを全部捨てて以前の淀屋の住んでいた部屋のようにするつもりだったのだろう。
少しでも誤れば本当に大淀にもっと苦しい思いをさせていたと思うと俺の胸は締め付けられる。
そんな時ふと扉越しに見えた引き出しの上にあの日渡したぬいぐるみが一つぽつんと置いてあるのが見えた。
あいつずっと大事にしててくれたんだ・・・・
「大淀・・・・あれ・・・」
俺はそのぬいぐるみを指差す
「女の子らしい物は全部捨てようと思ってたんですけどやっぱりアレだけは捨てられなくて・・・」
大淀は照れ隠しに笑いながら言った。
「ん〜?なんデース?そんな大切なモノなんデース?」
金剛が興味深そうに大淀に尋ねる。
「はい。昔大切な人に貰ったんです。私を変えてくれた大切な人から・・・」
大淀は頬を赤らめた。
嬉しい事言ってくれるじゃん。
「お・・・大淀・・・」
俺はそんな大淀にお礼を言いたかった
「なんですかていと・・・・・・そ・・・それ・・・・」
俺の持っていた袋の中身に気付いたらしく大淀は顔を真っ赤にした
「あっ・・・・こっこれは金剛が持てって言うから!!」
俺の言い訳など聞く耳を持たないとばかりに大淀は拳を握りしめ
「謙のスケベ!!」
そう一言言うや否や大淀は俺にアッパーをかましてきた
「ぐえっ!!」
俺はそのまま吹き飛ばされてしまう。なんだかんだで殴られたのも久しぶりな気がするなぁ・・・・
とりあえず大淀がしっかり元気だと言う事を理解して俺は少し安心しつつ地面に叩き付けられる
「それでは提督、私は金剛さんとお部屋の整理をしますからそこでのびててくださいね。すみません金剛さん、袋を部屋の中に運んで頂いていいですか?」
大淀は笑顔でそう言って金剛を部屋の中へと迎え入れる。
「oh・・・ケン痛そうデース・・・・」
そんな金剛の哀れみを込めた視線に看取られながら俺はまた気を失ってしまった。
それからどの位経ったのだろうか俺は誰かに揺り起こされる
「・・・・謙!起きて・・・・」
そう呼ぶ声がしたので俺は瞼を開ける。
「ん・・・・・ここは?」
そこは大淀の部屋の前の廊下ではなぬいぐるみにかこまれた可愛らしい誰かの部屋の中だった。
「謙!ごめんなさい。久しぶりだから加減出来なくて・・・」
俺の目の前には大淀が居る
「部屋の片付け終わったんだな」
「ええ。金剛さんももう帰ったわ。これで2人きりだね」
大淀はそう言って笑う
「えっ・・・!?二人きりって・・・・!!」
俺はそんな彼女の言葉に少しドキッとしてしまう
「も〜やっぱり謙はエッチなのはずっと変わらないんだから。別にナニかしようって思って部屋に入れた訳じゃないの」
そうか・・・なんか残念・・・・って何で残念がってるんだ俺!?
確かに俺は大淀の事は好きだけど・・・その・・・・そう言う事をやった事が無いからどうすれば良いのか分からないし男同士だから尚更わからないし・・・いやいや何考えてんだ俺は・・・
俺はそんな思考を脳内で巡らせる。
すると
「この部屋・・・どう思う?」
彼女が俺にそう尋ねてくる
「あ、ああ。なんと言うか前までのお前じゃ考えられない部屋だなって・・・」
「うん。あの時は生活に必要な物だけあれば良いって思ってたし・・・私の心の中も空っぽだったから・・・・でも今は部屋も心の中も沢山の物で溢れてる。全部謙のおかげなんだよ?」
彼女が笑う
「俺の・・・おかげ?」
「うん。謙が何も無いあの頃の私を変えてくれたから・・・いまこうしてここに私は居るの。何も無い部屋にあの日謙のくれたぬいぐるみが一つ置かれた様に私の心にも謙っていう大きな存在が出来たから私は空っぽじゃ無くなった。それでね・・・せっかく今こんな恰好だし髪の毛が伸びちゃう前に謙に伝えたい事があるの・・・」
彼女は俺を見つめメガネを外す。
「つ・・・伝えたい事?」
俺はゴクリとつばを飲む。
すると彼女は俺にまたキスをした後
「謙・・・僕と友達になってくれてありがとう。それにどれだけ私が変わっても僕は僕だって・・・親友だって言ってくれてありがとう。それに私の事も好きだって言ってくれてありがとう。こんな私だけどこれからもあなたの側にずっと居られたらいいなって・・・それで聞きそびれてたんだけど・・・・私のこと・・・その・・・男・・・だけど大事にしてくれる?」
「ああ。もちろんだ。淀屋も大淀も俺の大切な人だから・・・俺の側に居てくれ・・・俺もお前が居るからこうやって頑張れるんだ・・・これからも親友として・・・秘書官として・・・それから・・・・・・・・・・好きな人としてよろしく頼めるか?」
「うん・・・それが聞けただけで私嬉しい・・・でもこの事は皆にはまだ内緒にしておかない?私・・・その・・・まだ他の人に知られるのが恥ずかしくって・・・お仕事の時とかはいつも通りの大淀で居るから・・・」
「あ、ああ。そうだな。お前がそうしたいならそうしてくれ」
「うん・・・それじゃあ謙・・・・これからも・・・」
大淀がそう言おうとした時
「あらあら・・・・熱いわねぇ〜」
そんな声が聞こえた
「なっ・・・・愛宕さん!?」
俺は驚きの声を上げる
「アツいのはいいけど鍵、開けっ放しだったわよ?高雄がご飯だから呼んで来てくれって」
「愛宕さん!せめてノックくらいはしてください」
大淀はそう言った。
「大丈夫大丈夫♡二人の事はヒミツにしといてあげるから」
「信用出来るんですかそれ・・・?」
俺は少し心配になる
「ええ。男に二言は無いもの」
愛宕さんは笑った。
「そ・・・そうですか。頼みましたよ」
「それじゃあ謙・・・・ご飯食べに行こっか・・・」
大淀は少し残念そうに言った。
「ああ。」
「あっ!私この恰好で行ったら変に思われるよね・・・お洋服着替えてから行くから謙は先に行ってて」
「わかった。じゃあまた後で」
俺は大淀の部屋から出て愛宕さんと共に食堂へ向かった。
その道中こっそり愛宕さんは
「良くやったな。これからもあの子の事大事にしてやれよ?」
と低めの声で耳打ちした後
「約束だったわよね?頑張ったご褒美におっぱいもませてあげるわぁ〜!」
と言って俺に胸を押し付けて来る。
柔らかい・・・・ってそう言う事じゃない!!
「だからぁ!要らないって言ったじゃないですかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺はそんな愛宕さんから全力で逃げて食堂へ向かった。