ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。   作:ゔぁいらす

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罪悪感という足枷

 俺は神社から鎮守府へと歩いていた。

きっと金剛も淀屋も怒っているだろう。それに何もかもすっぽかして来たから高雄さんも怒るだろうなぁ・・・そんな事を考えると足取りが重くなるが俺はそれでも鎮守府へ向けて足を進めた。

そして鎮守府が見えて来た頃俺はある事を思い出した。

「あっ、やべ・・・鍵持って来てないぞ」

そう。何も持たずに飛び出して来てしまったので鍵すら持っていないのだ。どうしよう・・・

俺が途方に暮れていると鎮守府の方から声が聞こえて来た

「昨日も高雄さんに言われたでしょ?アテもなく探したって見つからないわよ・・・私だって・・・その・・・」

「そうですよ吹雪。もう少し司令官様を信じて待ちましょう」

「離して!昨日の雨でお兄ちゃんはどこかでずぶ濡れになってるのかもしれないんだよ!?何で居なくなっちゃったのかはわからないけど早く見つけなきゃ・・・」

どうやら吹雪が俺の事を探そうとしているのを天津風と春風が制止しているようだ。

やっぱり心配かけちゃったなぁ・・・でもあんな暴言を吐いてそれに勝手に飛び出して行った俺なんかに吹雪に心配してもらえる資格なんてないんだ。

そんな吹雪の声を聞いて更に俺の中の罪悪感は膨らんで行った。このままじゃ罪悪感に押しつぶされてしまいそうだ。

俺は気がつくと物陰に逃げる様に隠れてしまっていた。

ここまで来てまた逃げちゃうのかな・・・俺・・・

そう思ったときふと雲人さんの悲しそうな顔と言葉が脳裏をよぎる。

そうだ。俺を助けてくれた雲人さんの為にも俺はここでまた逃げるわけにはいかないんだ。

理由はわからないが彼が悲しい顔をしていると初めて会った頃の吹雪をどことなく思い出してしまう。だからあの人にも笑って欲しいし俺の背中を押してくれた雲人さんの背中を俺も押してあげたい。何よりあんな悲しそうな顔をしている淀屋を目の前にしてその場から逃げてしまった事は自分としても許せない。だから行くんだ。俺は震える足で迷いや恐怖を踏みつぶす様にして地面を踏みしめ物陰から飛び出した。しかし足がもつれて盛大にそのまま素っ転んでしまう。

吹雪、天津風、春風がそんな俺の事を目を丸くして見つめて来た。

「お、おはよう・・・・」

俺はなんと言って良いかわからずそう一言

すると

「お兄ちゃん何処行ってたの!?それにこんな傷だらけ・・・・大淀お姉ちゃんも部屋から出てこないし金剛さんは何も教えてくれないしお兄ちゃんは急に居なくなっちゃうし・・・・私・・・私・・・」

吹雪がそんな俺に抱きついてきた。

その時俺の脳裏に以前吹雪に対して言った男だからって誰も気にはしないと言う事そして金剛に言ってしまったとっとと出てけこのオカマ野郎!!!という2つの相反する言葉が浮かぶ。そうだ・・・俺は結局噓付きだ。吹雪にも阿賀野にも綺麗事を並べてかっこ付けて・・・でも結局あんな事を言ってしまうような最低な人間なんだ・・・そんな俺にここの提督が務まるんだろうか?やっぱり俺なんかには出来ない事だったんじゃないか?

俺はそんな事すら考えてしまう。

そんな事はつゆ知らずと言わんばかりに

「ふんっ!私は別に心配なんかしてなかったけど!?」

天津風が言った

「あらあら天津風、あなたも昨日泣きべそをかいて吹雪と一緒に司令官様を捜しに行くんだーと言って聞かなかったじゃありませんか」

「ちょ・・・春風!?それは秘密にしといてって言ったじゃない!!!そうよ!心配してたわよ!!散々人には偉そうなこと吐いといて突然いなくなるなんてあなた提督のクセに何を考えてるよこのバカ!!!」

天津風はそう言うと俺を蹴った

「痛い痛いって!!ごめん・・・急に居なくなって悪かったよ!!だから蹴るなって!!!」

「天津風、寂しかったのはわかりますが司令官様は怪我をしている様ですのでその辺りにして差し上げてはどうでしょうか?司令官様、昨日の天津風ったら・・・・」

春風が何か言おうとしたその瞬間

「わー!!わかった・・・わかったわよ・・・」

天津風は顔を真っ赤にして俺を蹴るのをやめた。一体昨日俺が居ない間何があったんだろう・・・?

そうだ!それより淀屋が部屋から出てないって!?金剛は!?

俺は吹雪達に尋ねる事にした。すると

「ああ金剛さんならいつも通りよ。でもあなたの事ははぐらかされて結局なにも話してくれなかったの」

「私も大淀お姉ちゃんをご飯だからって呼びに行ったら1人にしてて欲しいの一点張りで全然部屋から出てこないの。それに今日になっても部屋から出てこないから高雄さんも心配してて・・・お兄ちゃん何か知ってるの?」

吹雪が俺に尋ねてくる。

なんて言えば良いんだ・・・それに俺の言葉のせいで淀屋が部屋に閉じこもっている状況を今すぐなんとかしなければいけない。これは提督としてではない。友人として彼を傷つけてしまった事をなんとしてでも謝らなければならない。

「吹雪・・・天津風・・・それに春風。心配かけてごめん。俺、大淀の所へ行ってくる」

俺はそう言い残して3人と別れた。

 

そして大淀の部屋の前に付き大急ぎでノックをする。

「大淀!開けてくれ!!昨日の事を話しに来た」

しかし返事もなにも帰ってこない。試しにドアノブを捻ってみるが鍵は固く閉ざされている。

「クソッ・・・」

やっぱり相当怒っているんだ・・・俺は一体どうすれば

そんな事を考えていると突然

「ハーイケン・・・・グッドモーニング・・・帰って来てたんデスね・・・」

遠慮がちな声で金剛が話しかけて来た

「こっ・・・金剛!?その・・・昨日は・・・・」

俺は気まずくなり目を泳がせる。すると

「ソーリーケン・・・・ワタシのせいでこんな事に・・・・」

「えっ?」

俺は予想外の言葉に耳を疑う

「ワタシがケンを怒らせたせいで提督にあんな酷い事を言わせてしまったワタシに責任があるネ・・・」

金剛は泣きそうになって言った。

何を言ってるんだ金剛は・・・こいつだって俺の言葉に傷ついたはずだ。

いくら頭にきたからってあんな事を言って良い事にはならないんだぞ?俺はひとまず金剛が怒っていない事に安心する反面何故そんな自分を責めないのかという不安にも駆られた。

「で・・・でも俺はお前にあんな酷い事・・・」

「ノンノン・・・そんなのもう言われ慣れてまマース・・・それに今のケンの顔を見れば自分が悪いと思っている事くらい分かりマース・・・ワタシはただ疲れてそうなケンに元気になってもらおうと思っての事だったデスがすこし悪ふざけが過ぎました。ごめんなさいケン・・・・」

金剛は頭を下げた

「頭を上げてくれ金剛。悪いのは俺の方だ・・・いくらカッとなったからってあんな事言っちゃいけないのに・・・・金剛にも許してもらえないと思ってた・・・・ごめん・・・・俺があんなこと言わなければ大淀もこんな事にならなかったのに・・・・ごめん・・・・」

俺の目からは自然と涙が流れて来た。

「ケン・・・やっぱりケンは優しいネ・・・そういう所がワタシは好きになったデース・・・でも今はワタシより大淀デース・・・」

金剛は扉を指差した。

「ワタシがケンの部屋のから出たとき大淀は泣いてたネ・・・でも少しこのままにしておいて欲しいと大淀が言うからワタシはその場を離れました。それからしばらくしてケンが鎮守府に居ないって高雄から聞いたデース・・・」

それから昨日の晩何があったか金剛は一部始終を教えてくれた。

あの後大淀は俺の部屋の前でうずくまっていたままでそのままにしておく訳にはいかないと高雄さんが部屋まで連れていき、

俺が居ない事に気付いた吹雪達が俺を捜そうと鎮守府を飛び出そうとしたが大雨が降って来たから愛宕さんたちが吹雪達をなだめていてその間金剛は部屋から出てこない大淀にずっと話しかけていた様だが部屋からは返事すらない状態だったらしい。

「そうだったのか・・・」

「ごめんなさいケン・・・ワタシがケンの部屋に忍び込んだりしなかったらこんな事にはならなかったデース・・・」

「金剛・・・」

俺と金剛が大淀の部屋の前で途方に暮れていると

「あら提督、何処をほっつき歩いていたのかは知りませんけど遅いお帰りですね」

と少し嶮のある感じの声が聞こえた。

「た・・・高雄さん・・・」

その声の主は高雄さんだったがいつもと少し雰囲気が違う

「提督、少しお話を伺いたいのですが・・・工廠の裏まで来て頂けませんか?」

工廠裏・・・?

何をする気なんだ・・・・でも今の俺は何をされても文句を言えないだろう。俺は覚悟を決めて

首を縦に振り高雄さんに着いていった。

 

そして工廠の裏に付くと、そこは日が当たっておらず昨日の雨のせいでじめじめとしていた。

そこで高雄さんは辺りを見回すと

「よし。誰も見て無いわね・・・コホン」

高雄さんは咳払いを一つすると突然俺の胸ぐらを掴み

「お前・・・大淀に何したんだ?」

と俺を睨みつけ一言。

愛宕さんの怒った時とはまた違った感じの怖さがある。

「そっ・・・それは・・・」

俺は今までに見たことの無いそんな高雄さんの圧に押され言葉が出てこなかった

「何したかって聞いてんだ。早く言えよ。返答次第では・・・わかってるよな?」

高雄さんはそう言って更に俺の胸ぐらを掴む力を強める。

その迫力と鋭い視線に噓を付く訳にもいかず、正直に昨日金剛に言ってしまった事を全て話した。

すると

「お前・・・自分が何したかわかってんのか?」

高雄さんはそう言った

「はい・・・許されない事だと思います・・・・それによりにもよって大淀があんな事になるなんて・・・・」

俺は今の思いのたけをぶつけた。

しかし

「ならなんでその場から逃げたんだお前は?」

高雄さんは声を荒げる

「ごっ・・・ごめんなさい・・・・!俺・・・あいつのあんな悲しそうな顔見た事無くて・・・それで怖くなって・・・」

そうだ。俺は結局逃げ出した卑怯者で腰抜けだ。

「言いたい事はそれだけか?歯・・・食いしばれ」

高雄さんは俺を掴んでいない方の拳を強く握りしめた。

そしてその拳は俺を目がけて一直線に飛んでくる。

俺は思わず目をつぶった。しかしそれから何秒か経ってもその拳は俺には届かない。

俺は不思議に思い目を開くと高雄さんの手をがっちりと掴んだ愛宕さんがいた

「も〜高雄探したわよ〜!こんな所に提督連れ込んでこんな事してるなんてまだまだあなたも若いわねぇ〜」

愛宕さんはいつもの明るい声で言った。

「愛宕・・・離して!私いくら提督が悪気がなかったとは言えそんな事を言うなら一発殴らないと気がすまないの!大淀は・・・大淀は泣いていたのよ!?」

高雄さんは愛宕さんを振りほどこうとする

「も〜ホントに意固地なんだから高雄は〜でも〜私高雄の怖い顔見たくないわぁ〜可愛い高雄じゃないとイヤよ〜それに怒るとシ・ワ・増えちゃうわよ?」

愛宕さんは空気を読めていないかの様にそこには場違いな呑気な事を言っている。

「愛宕・・・・ってシワは余計よ!!」

高雄さんはそう言うと俺から手を離した。

「あーもう愛宕のせいで調子狂っちゃったわ。でも提督、大淀があの部屋から出て提督が大淀に許してもらうまで私はあなたの事を許しませんから!」

高雄さんはそう言って俺を睨みつけた。いつも怒らない高雄さんに怒られたので俺は軽いショックを受けたが俺はそうされても仕方ないと思った。そして

「あとは私がお話つけとくから高雄はお仕事に戻って。ね?」

愛宕さんはそう言って高雄さんをなだめる

「あ・・・愛宕がそう言うなら・・・・」

高雄さんはそう言うと工廠裏から離れていった。

「さーて高雄も居なくなった事だしぃ〜」

愛宕さんは笑みを浮かべた。

いつも怒ると怖い愛宕さんがこんな事を言うって事はやはり殺されるんじゃないか・・・俺はそんな恐怖さえ覚えて俺は身構える。

しかし

「えい♡」

愛宕さんは次の瞬間俺にデコピンをした

「痛てっ・・・・・・えっ!?」

まさかの出来事に俺は鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしてしまった。

「はいお説教おしま〜い。提督・・・こんなに傷だらけになって何処言ってたのよまったく・・・」

愛宕さんはそう言って俺の額を撫でてくる。

いつも通りなら多分もっと怒鳴ってくると思っていたがその予想を裏切られて俺は開いた口が塞がらなかった。

「あらぁ?これで終わり?見たいな顔してるわねぇ」

「え・・・ええ・・・・もっと怒られると思ってました」

「も〜!私そんな怖い女じゃないんだからぁ!!」

愛宕さんは頬を膨らまして言った。いや・・・怒ったらめちゃくちゃ怖いし・・・それにあんた女じゃないだろ・・・・でも今ここでそれを言うと本気で怒られかねないと思った俺は黙っておく事にした。

「まあ男だか女だかわかんない相手に言い寄られて訳がわかんなくなるのはわかるのよね〜あっ、そうだ!提督?こんなじめじめするところでお話しするのなんですからランチ一緒しない?そこでお話ししましょ?ご馳走するわ。私も準備したらすぐ行くから先にお店で待ってて。ここに場所書いてあるから。」

えっ?ランチ?急な事に処理が追いつかないが愛宕さんはなにやら店の名前が書いてあるマッチ箱を俺に手渡して来た。

そこには【居酒屋おおとり】と書かれている

「ここの料理ほんとに美味しいのよ〜場所わかる?」

愛宕さんは得意げに言った。女将さんのお店か。愛宕さん良く行ってるんだ・・・

「はい。何回か行った事があるんでわかります」

「え〜知らないと思ってたのに〜まあいいわ。じゃあ先におおとりに行っておいてくれますか?私も準備して追いかけるから。それじゃあ提督、また後でね♡」

愛宕さんはそういうと俺を置いて走り去ってしまった。

今は飯食ってる場合じゃないとは思うが愛宕さんとの約束をすっぽかすとあとが恐いので俺はひとまずずたぼろになっている服を着替えておおとりに向かう事にした。

 

そして服を着替えておおとりに向かうため鎮守府を出ようとすると突然背中になにか柔らかい感触が押し付けられた。

俺はすかさず後ろを振り返るとジャージを着た阿賀野が俺に抱きついてきている。

その横には同じくジャージを着た那珂ちゃんもいた。

「お・・・お前ら・・・」

「も〜提督さん!帰ってたなら帰ってたって言ってよ〜探してたんだからぁ!!!」

「そうだよ提督〜那珂ちゃんもう汗まみれになっちゃった〜でも汗で輝く那珂ちゃんもかわいいっ☆」

那珂ちゃんが言う様に2人は汗でびしょびしょになっていてズボンは泥が付いている。

きっと雨上がりでぬかるんだ中俺のことを探してくれていたんだろう。

「ご・・・ごめん・・・ところで2人は何を?」

「何を・・・?じゃないよ提督さん!!提督さんの事探してたの!!昨日雨降っててぬかるんでるから吹雪ちゃん達に探しにいかせるのは危ないでしょ?だから朝早くから提督さんの事探しにいってたんだよ!こう見えても阿賀野体力には自身あるんだ〜」

体力に自身あるってお前・・・俺におんぶーとか言ってたあれは猫かぶりだったのかよ・・・・!

「那珂ちゃんはその付き添い!キャハッ☆」

「そ・・・そうか・・・ごめんな手間かけさせて・・・」

俺は2人に頭を下げる。

あれだけ天津風に偉そうなこと言っておいて俺も勝手な行動でみんなに迷惑かけてるな・・・

本当に提督失格だよ俺・・・

「良いの良いの!提督さんも無事に帰って来たし阿賀野も良い運動になったよ!で、またお出かけ?」

「ああ、うん。ちょっと愛宕さんに呼ばれてな」

そこでおおとりに行くと言えば阿賀野も着いてきそうなのでただ出掛けるとだけ行っておいた。

「そうなんだ〜でも阿賀野心配したし疲れちゃったな〜これ貸しにしとくから××ショッピングモールの超ギガ盛りパフェでも奢ってくれたら許してあげる!」

「あ〜那珂ちゃんも〜!」

全く現金な奴だなぁほんと・・・まあ俺のせいだし仕方ないか。

「わかったよ・・・また今度な」

俺は渋々頷いた。

「ほんとぉ?やったね那珂ちゃん!」

「うん!」

2人はうれしそうに向かい合っていた。単純な奴らだ。

「じゃあ俺ちょっくら出掛けるわ」

「うん!いってらっしゃーい」

2人は俺を見送ってくれた。

 

そしておおとりへとたどり着き、

「すみませーん」

俺は戸を開ける

「あら謙くんいらっしゃいお久しぶりね・・・・ってどうしたの身体中絆創膏だらけじゃない!」

女将さんが心配そうに出迎えてくれた

「ええ。ちょっと色々あって・・・」

俺は適当に言葉を濁す。

「そうなの・・・大変なのね。あっ、そこ座ってね」

女将さんは俺をカウンター席に通してくれた。

そして俺が席に着くと

「そういえば今日は1人?阿賀野ちゃんや吹雪ちゃんは?」

と女将さんは聞いてくる。

「居ません。ちょっとここで昼飯を一緒に食べないかってある人に言われて先に来て待ってる様にって言われたんです」

「そうだったの?ここで待ち合わせだなんて一体誰かしら?」

女将さんは首を傾げる。

「まあ良いわ。喉かわいてるでしょ?お冷やをどうぞ謙くん」

女将さんは水を出してくれた。

「いただきます」

俺はその水を飲んで一息つくと店の引き戸がガラガラと音を立てて開く

「いらっしゃ・・・・い・・・」

女将さんが何やら驚いた顔をするので俺も戸の方を振り向くとそこには提督の制服を来た金髪の男性が立って居た

「よう鳳翔さん。久しぶり・・・って程でもないか」

彼はそう女将さんに言った。

「久しぶりも何も・・・その恰好でウチに来るのは初めてじゃないですか?」

女将さんはそう言った。知り合いなのだろうか?彼からはどことなくチャラそうでいい加減そうな印象を受けた。

すると彼は俺の方に歩いて来て

「よっ、提督待たせちまったな!」

と言って俺の肩を叩く

「はっ!はいっ!?」

誰だこの人・・・・!!!?近所の鎮守府の提督の人・・・?いやそれにしても初対面の人にこんな感じで接するだろうか?それに待たせた?一体どういう事だろう?俺が待ってたのは愛宕さんなんだけど・・・でもこの声どこかで聞いた事があるような気がするぞ・・・?

「あの・・・すみません・・・・どちら様ですか?人違いじゃ・・・」

俺はおどおどとして男に言った。すると

「あれ?やっぱ気付かねぇ?だよなぁ!」

男は勝手にゲラゲラと笑い出した。何だこの人・・・

俺が怪訝な顔をしていると

「ちょっと待ってくれな・・・ん”ん”っ!!!」

男が大きな咳払いをした次の瞬間

「ぱんぱかぱぁ〜ん♪」

彼の口から発されたその容姿からは想像もつかない声と言葉に耳を疑った。そして畳み掛ける様に

「高雄型の2番艦、愛宕よ、うふふ」

と言った。

「えっ・・・あた・・・・ご・・・・?」

俺は訳も分からずに呆然としていると

「もう提督ったらまだ謙くんにお話しされてなかったんですか?」

女将さんは呆れた顔で言った。

「だって〜黙ってた方が面白いと思ったからぁ〜なんちゃって♪」

その男は愛宕さんの声でそう返した。

「もう・・・ホントに相変わらずですね提督は・・・」

女将さんはくすくすと笑っている。

愛宕さん・・・?提督・・・?何を言ってるんだ?

俺が訳も分からず2人をキョロキョロと見渡していると

「黙っててごめんなさい♪私愛宕だけどその前は××鎮守府の提督をやってたの〜これはぁその時の恰好♡」

「えっ・・・ていと・・・えっ・・・・ええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!」

男の口から発される衝撃の事実に俺の開いた口は塞がらなくなり俺はそう叫ぶしかなかった。


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