ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。 作:ゔぁいらす
前回までのあらすじ:ラノベで読んだ様な夢の職場で働けると思っていたら実はそこは美人な男だらけの職場だった上にその中の一人が高校の親友だったのだ。
何を言っているのかわからないと思うがこの時の俺もなんのこっちゃわからなかった・・・・
「う・・・うーん」
目が覚めると俺はなにやら医務室らしい所にいた。
なんだろう?とてつもなく凄まじい夢を見ていた様な気がする。
この鎮守府の艦娘が皆男でさらにその中の一人が高校時代の親友だったなんて。
「そんな訳ないよな!いくら女性と関わる事がここ数年間無かったとはいえこの鎮守府の艦娘がみんな野郎だなんてそんな夢を見るとか俺も相当疲れてるな!ハハハ・・・」
俺は一人で言い聞かせる様にそう呟くと
「残念ですが提督、夢ではないと言って差し上げますわ。良かった目が覚めたようですね」
と声がしてベッドに備え付けられたカーテンが開き濡れたタオルを持った高雄さんが現れた。
「うわぁ!た、高雄さん!いつからそこに!!というか夢じゃないってどこからどこまで!?」
さっき彼女(?)が立ちションしていたところを思い出し俺は焦りつつも尋ねる
「残念ながら提督がさっき発言された全部がです。それよりもうお体の方は大丈夫なんですか?お水飲みます?」
高雄さんはそう答え、続けて心配そうに聞いてきた。
「あ、ああもう多分体の方は大丈夫なんだけど色んな事が一気に起こりすぎてまだちょっと受け止め切れていないと言いますか・・・・」
「やっぱりそうですよね。いくら見た目が女性でも何の用意も無くあんな物を見せてしまったんですから気持ち悪いですよね。ごめんなさい提督・・・」
高雄さんは悲しそうにそう言った。
気持ち悪いとまでは思わなかったし、どちらかというとこれだけの美人が男だと言う事に驚いている訳であって別に嫌悪感の様な物がある訳ではない。
「いや・・・気持ち悪いなんてそんな事思ってないですよ高雄さん。ただあの時は取り乱してしまって。こっちの方こそ酷い事を言ってしまったから謝らないと。すみませんでした。それに仮に高雄さん達が男だとしてもとても美人だと思います。それに・・・・」
と続けようとした刹那、
「ありがとうございます提督。私・・・そんな事言われたのは初めてで・・・・貴方の様な素敵な提督で良かったです。これからも貴方の手となり足となり頑張りますのでどうかよろしくお願いします!」
急に高雄さんが俺の手を握り涙混じりに詰め寄って来た。
うわぁ・・・近くで見ても男だってわからないくらい美人だなこの人・・・
しかし手は華奢で柔らかかったが結構握力が強かったのでやっぱり男なんだなと再認識させられる。
「あ、はいこちらこそよろしくお願いします・・・」
そして俺は気になった事があったので聞いてみる事にした。
「あの・・・高雄さん?」
「あっ、提督ごめんなさい。痛かったですか?私嬉しくてつい・・・」
自覚はあったらしい。しかしその事ではなかったので
「ここまで高雄さんが運んできてくれたんですか?」
と尋ねると
「いえ。大淀が提督をここまで運んできたんですよ」
高雄さんはそう答えた。
「あいつが運んできてくれたのか・・・・」
俺は高校時代河原で足を怪我して溺れた時淀屋に家までおぶって運んでもらった貰った事を思い出す。
「やっぱ見た目は変わってもあいつはあいつのままなんだな・・・」
俺は少し安心した。
「提督?貴方大淀と知り合いなのですか?最近赴任したばかりで過去の事は何も話してくれないんですけどこの鎮守府の艦娘たちは皆過去に背負ったものを少なからず持っている艦娘ばかりなので詮索はしません。でも昔の事を思い出すと辛い事も有ると思うので出来るだけ昔の事は忘れて接してあげてくださいね。過去なんて忘れてしまった方が良いですから・・・・」
高雄さんは少し暗い表情でそう言った。
高雄さんは相当過去に辛い事があったんだと思うがその事を聞いて今の関係が崩れ、お互いに傷つくのが嫌だったのでそれ以上は聞かない事にした。
しかし淀屋はどうなんだろう・・・・?アイツは本当に俺と一緒に居たい為だけに艦娘になったんだろうか?
俺はそんな事を考えながら高雄さんの持ってきた水を一杯飲んでいると急に外からドタドタと慌ただしい足音が聞こえてきて医務室のドアが勢いよく開かれる。
「提督さん提督さん!大変なの!」
そんな声とともに息を荒げながら阿賀野が医務室に入ってきた。
「ちょっと阿賀野いつも医務室に入ってくるときはノックをしなさいって言ってるでしょ?それに提督も今起きた所なんだから大声をださないの」
高雄さんは阿賀野を優しく諌める。
「違うのそれどころじゃないの!吹雪ちゃんが・・・・吹雪ちゃんがどこにも居ないの!!」
阿賀野は泣きそうになっている。
吹雪が居ない・・・?もしかして俺の覗きが原因で・・・?俺は自分の浅はかな行為を悔いる。
「俺のせいだ・・・」
俺は呟く。
「提督?何があったのか詳しく聞かせてくれませんか?」
高雄さんはそう聞いてくるので出来心で覗きをしてしまった事、そして俺がぶっ倒れるまでの事を全て高雄さんと阿賀野に話した。
「ひっど〜いレディーのお風呂を覗くなんて」
阿賀野は頬を膨らませる。
レディーってお前ら男だろ・・・そう言いかけたが流石に言う訳にもいかなかったので喉まで出かかった言葉を胸の奥にしまい込む。
「でもこれは非常に危ない状態ですよ提督・・・」
高雄さんがそう言ったので何が危ないんだろう?もしかして覗きって重罪なのか?俺軍法会議か何かにかけられて射殺されちゃうのか?という不安が俺をよぎる中、高雄さんは話を続けた。
「私たちは普通の人間が素体になっている艦娘なんですが、駆逐艦に適合する人間はそれほど年端のいかない少年少女だけなんですがその年端のいかない少年少女は大体艦娘適合手術に耐えられなかったため駆逐艦の娘たちの大半は先代の駆逐艦の艦娘達の遺伝子から生まれたクローンの様な存在なんです。なので細胞分裂が著しく普通の艦娘より早くて1日に1回は投薬をしなければ生きていけない体なんです」
良かった・・・・俺の事じゃなかったか・・ってええ?それどころじゃないじゃないか!
吹雪がクローンでこのままだと死ぬ?そんな馬鹿な事があってたまるか。
このまま謝らないで死なれてしまったら俺が一生後悔する事になる。
しかし気がかりな事があったのでひとまず聞いてみる事にした。
「あの・・・クローンならなんでわざわざ男にする必要が有るんだ?艦娘なんだから女のクローンを作れば良いじゃないか」
「実はね提督・・・そのクローンは基本女の子として作られるんだけどごく少数イレギュラーとして男の子が生まれてくるの・・・吹雪ちゃんはそのイレギュラーなんだけど前の鎮守府でそれがバレて酷くいじめられていたの・・・もしかしたらそれがトラウマになってて提督に見られちゃったから出て行ったのかも・・・私たちが男だっていう事も早めに打ち明けようと思ったんだけどまだ吹雪ちゃんには伝えられてなくて・・・・提督さんごめんなさい。もっと早くにこの事を伝えておけば良かったのに・・・」
そう言うと阿賀野は泣き出してしまった。
なんて事をしてしまったんだ俺は・・・それこそ早く探しに行かなきゃいけないじゃないか。
「高雄さん!俺吹雪を探しに行って来ます!ちょっと留守番たお願い出来ますか?」
俺は居ても立っても居られなくなりベットから飛び降た。
「え、ええ。それはいいのだけれど提督・・・」
高雄さんが顔を赤らめている。
「なんです?」
「服は着た方が良いんじゃないかしら・・・・?」
あっ、そうだった俺バスタオルのままだったんだっけ。
てか素っ裸じゃん俺。淀屋の奴気が利かない所まで前と全然変わらないじゃないか。目の前に居る二人にまじまじと全裸を見られた俺は何故か恥ずかしくなってきた
「ごっごっごめんなさあぁい!!!!今すぐ服着て出直してきまあぁす!!!!!」
俺は床に落ちていたバスタオルで股間を隠し自室へ向かって一目散に走り出す。
今日俺めちゃくちゃ走ってんな・・・・
そして自室に戻るともちろん吹雪の姿は無く、机にメモが1枚置いてあった。
「なんだろうこれ?」
そのメモを手に取り読むと
【司令官ごめんなさい。私はもうこの鎮守府には居られません。短い間でしたがお世話になりました。さようなら 吹雪】
と書かれていた。
そんなの絶対にダメだ!まだ今日会ったばかりじゃないか!!
俺はもっと吹雪の事が知りたい!
もっと話したい!
こんな別れ方絶対ダメだ!!
自分勝手かもしれないけどそんな理由でお前を死なせたくない!
俺は整理し切れていない段ボールの山からジャージの上下を探し出し袖を通す。
そして俺は医務室へ戻り
「高雄さん!阿賀野。俺は絶対に吹雪を見つけ出してきます!」
俺は二人にそう告げて医務室を後にしようとすると
「既に愛宕と大淀が探しに行っているわ。提督、この辺りの外れは日が落ちると街頭すらない真っ暗闇だから気をつけて・・・。私も出来る限りの事をやるわ」
高雄さんがそう言った。
「わかりました!では行って来ます!」
再び医務室を出ようとしたその時
「待って!」
次は阿賀野が俺を呼び止めてくる。
「なんだよ?」
俺は焦りからか少し声を荒げて聞くと
「提督さん、私も一緒に行く!提督さんよりはこの辺りの地理には詳しいはずだしきっと役に立つよ。だから連一緒に連れて行って!」
確かに何もわからない土地で一人で人探しをするなんて無茶だと思ったので阿賀野と一緒に行く事にした。
「それじゃあ高雄さん!留守番お願いします!行ってきます!」
俺は阿賀野と共にに鎮守府を飛び出した。
待ってろよ吹雪!俺は絶対お前を見つけ出して鎮守府に連れ戻してやるからな!!
「あのまっすぐな瞳・・・昔のあの人の事を思い出すわね・・・・」
高雄は二人を見送りつつ聞こえないくらいの声でそう呟いた。