ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。   作:ゔぁいらす

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今回は別視点での二部構成です。
活動報告の方でアンケートをとっているのでこちらもご覧頂けたらなと思いますhttps://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=150980&uid=190486


天高く吹き抜けて:side提督

 「お兄ちゃん・・・」

「謙・・・」

俺は2人の少女(いやどっちも男なんだけど)に迫られていた

「ちょ・・・ちょっと待て!お前ら何のつもりだよ!!」

俺は必死に抵抗するが何故か身体の自由が利かない

「お兄ちゃん・・・また・・・キス・・・しよ?」

「吹雪ちゃんばっかりズルよ・・・私とももう一回して?」

2人はそう言って俺に顔を近づけてくる。

「待ってくれ!キスっつったってアレは事故みたいなもんでだなぁ・・・・そんな気安くする様なもんじゃないんだぞ!?」

俺の言葉は2人の耳には届いていない様だ。どんどん2人の唇が俺に迫ってくる。

それにしても淀屋の唇・・・結構みずみずしくて綺麗だなぁ・・・いやいやいや何俺は男の唇に見とれてるんだ!!この状況を脱しないと・・・

俺は2人から離れようとするがそんな事お構いなしに2人は俺に唇を近づけてくる

「お兄ちゃん・・・逃げちゃダメだよ・・・前よりもっといっぱいして・・・」

吹雪は俺の頬に手を当ててそう言った。

「吹雪ちゃんは良いのに私はダメなの?事故とか不可抗力じゃなくてちゃんと私ともして?こんなに可愛くなってもやっぱり友達とキスするのは嫌?私の唇・・・柔らかかったでしょ?だから・・・」

大淀は俺を見つめる。

そして2人は俺に更に唇を近づけてくるので

「わー!!もう勘弁してくれえええええ!!!!」

俺はそう叫んだ所で目を覚ます。

良かった・・・夢だったか・・・いやしかしあんな夢を見るなんて俺も相当疲れてるな。

なんせ昨日は色々あったし1日に2人とキスしちまったんだから・・・・海斗が聞いたら羨ましがるだろうがどっちも男だから自慢するにできないなぁ・・・

そして俺はぼやけた目を擦る。すると目の前には吹雪の寝顔があった。

「うわぁ!!」

俺はそれを見て思わず声を上げてしまう。

いや別に吹雪が俺の布団で寝ている事は珍しい事ではないのだが昨日あんな事があってしかもあんな夢を見た直後なだけに少し意識をしてしまうと言うかなんと言うか・・・・

そんな俺の声に気付いたのか吹雪のまぶたがぴくりと動き吹雪も目を覚ました

「んんっ・・・・おはよお兄ちゃん。どうしたの?大きい声出してたけど」

吹雪は目を擦り俺に尋ねてくる。そんな俺を見つめる吹雪の唇にどうしても目がいってしまう。

昨日・・・キスしちゃったんだよな・・・俺はそんな事を思い出し赤面する。

「あ、ああちょっと変な夢を見ててな・・・」

俺は吹雪から目を逸らし言った。

すると

「お兄ちゃん!?もしかしてうなされてたの?大丈夫?」

吹雪は心配そうに顔を近づけてくる。

だから顔を近づけるなって!!吹雪の唇が尚更気になってしまう

それに夢の内容を素直に話す訳にもいかず・・・

「いっ・・・いや別にそれほどの夢でもなかったし内容も忘れちゃったから大丈夫だ」

と話をはぐらかすことにした。

「そうなんだ・・・・あっ、お兄ちゃん!今日は私春風ちゃんとランニングする約束してるんだ!ちょっと早いけど行かなきゃ!!」

吹雪はベッドから飛び降り身支度を始めた。

しかし昨日あんな事があったと言うのに当の本人は全然気にしていない様だ。

いちいち気にしてる俺がバカみたいじゃないか・・・

そんな事を考えていると

「それじゃあお兄ちゃん!私行ってくるね!!また後で」

吹雪は着替えて部屋を後にした。

「はぁ・・・・」

俺は独りになり大きなため息を一つ吐いた。

それにしても俺は今日どんな顔をして淀屋と会えばいいんだろう?前に告白された時はなんとかなったが今日はそうも行かないだろう・・・・朝っぱらから気が重いなぁ・・・

 

そんな事があってから数時間が経ち、俺は執務室に重い足取りで向かう。

そして扉の前で立ち止まった。中では多分いつもの様に大淀と高雄さんが作業をしているはずだ。俺は大淀にどう声をかけてやれば良いのか・・・?はぁ〜気まずいなぁ・・・・

どうすばいい?ここはいつも通りで入れば良いのか・・・?いつも通り?いつもどうやって入ってたっけ?ああもうわかんねぇ!もうどうにでもなれ!!

俺は半ばヤケクソになり扉を開け

「おはようございまーっす!!!!」

と叫んだ

「おっ、おはようございます提督・・・今日は元気がいいんですね。」

高雄さんは少し驚いた様な顔をしていた。そして問題の大淀はというと

「おっ・・・おはようございます」

と俺から目を逸らし言った。

「あ、ああ・・・」

俺はそう答える。それから少しの間執務室は沈黙に包まれるが

「あっ、そうだ!紅茶淹れますね!!」

大淀が思い出した様に紅茶を淹れる用意をした。すると

「それでは私は朝ごはん食べてきます。後はお願いしますね提督」

高雄さんはそう言って出て行ってしまった。

執務室は俺と大淀の二人っきりになる

俺はそう思いながら席に着いた。これもいつもの事といえばいつもの事なのだがやはり昨日の事と夢の事で少し意識してしまう。

うーん気まずい・・・・

すると

「お待たせしました紅茶です。」

大淀は俺の前にマグカップを置き、紅茶を注ぎ始めた

その紅茶を入れる横顔を俺はまじまじと見つめてしまう。やっぱり綺麗な唇してるよなぁ・・・・口紅とか付けてるんだろうか?その横顔にはもはや以前見た友人の面影はほぼ無い。

そんな彼の横顔に見とれていると膝から股間部にかけて何やら温かい・・・いや熱い感覚がある。

俺はふと我に返り机に目をやるとマグカップから溢れた紅茶が俺の太ももに滴っていた。

「あっつ!!大淀、ちょっ!!紅茶こぼれてるんだけど!!」

俺は熱さで思わず立ち上がる

「あっ、ごめんなさい謙・・・いえ提督!大丈夫ですか!?火傷してませんか!?火傷していたら大変です早くズボン脱いでください!!」

大淀は慌てて俺に言った。

「あ、ああわかった!!」

俺はすかさずズボンを下ろす。大淀は机と床にこぼれた紅茶を布巾で拭いていた。

「すみません提督、私少し考え事をしてて・・・」

大淀はそう言って俺の太ももを拭いてくれた

「あ、ああ。俺もぼーっとしてたし・・・」

俺も言った。しかし気まずい・・・・それにこんなときなんて言えば良いんだろう?以前ならもっと気軽に声をかけてやれたんじゃないか?そんな事が脳裏によぎる。

すると

「ごめんなさい提督・・・これ早く洗わないとシミになっちゃいますね」

大淀は俺の脱いだズボンを拾い上げた。そのとき

「ハーイ!ケン!!グッドモーニングデース!!」

このタイミングで俺と大淀が気まずい雰囲気になった元凶が執務室にやってきた。

なんてBADなタイミング・・・

「お・・・オーウ・・・朝から熱いネー!でもワタシも負けまセーン!でっ・・・でも今日は見逃してあげるデース!!」

金剛はそう言って扉を閉めた。

朝から熱い?確かに熱い紅茶を膝にこぼしたんだけど・・・いやそう言う事じゃない。冷静に今自分の置かれている状況を思い返してみると目の前には屈んだ大淀、そして俺はズボンを脱いでいる・・・

この状況非常に誤解されるよーな状況じゃないか・・・・?

「待ってくれ金剛!!違うんだこれはその・・・誤解で・・・」

俺はそう叫び執務室の扉を開ける。

するとそこには目をまん丸にした天津風が立っていた

「あっ・・・天津風・・・?おはよう・・・」

俺は頭が真っ白になりひとまず挨拶をしてみるが

「なっ・・・・何がおはよう・・・よ!!パンツだけで出てくるなんて頭おかしいんじゃないの!?いっぺん死ね!!」

天津風はそう叫び俺の金的に蹴りを一発かましてその場を走り去ってしまった。

「ぎゃあああああああ!!まっ・・・まってくれ・・・・」

俺はその場にうずくまり天津風に手を伸ばすが天津風の背中はどんどんと遠のいていった。

 

 

「はぁ〜朝から散々な目にあったぜ・・・昨日も今日も厄日だ」

金的蹴りのダメージから回復した俺は執務室の椅子に座りそう呟いた。

「すみません提督・・・私が紅茶をこぼしてしまったせいで・・・あっ、これ替えのズボンです。汚した方のズボンを持っていった時に吹雪ちゃんに持って来てもらったんです」

大淀は俺に新しいズボンを手渡した。

「ありがとう。後その・・・さっきの事は気にすんな。まあそう言う事もあるって・・・それよりあの2人になんて説明しようかなぁ・・・」

そんな事を大淀と話していると

「提督さん!大変だよ!!」

扉が勢い良く開かれ阿賀野が執務室に入ってくる

「どうした阿賀野?」

「それがね、今哨戒の帰りなんだけど偵察機に深海棲艦の反応があって急いで戻って来たの!」

阿賀野はそう言った。その声色からは焦りの色を感じさせる。

「なんだって!?数は?いつもみたいにはぐれ駆逐艦が何隻かとかじゃなさそうだな・・・」

俺は阿賀野に尋ねた

「それが・・・・1艦隊を率いれるくらいの数で6隻・・・それでね・・・旗艦はネ級だったの!私1人じゃどうにも出来ないから急いで戻って来たんだけど早くなんとかしないと漁港が危ないよ!!」

阿賀野は言った。

「それじゃあ総員をひとまずここに集めよう」

俺は執務室に艦娘達を呼び集めた。それから5分もしないうちに艦娘達は執務室に揃い

「先ほど哨戒に出ていた阿賀野の偵察機に6隻の敵艦隊が補足されました。これを撃破するのが今回の作戦です。敵艦隊には重巡ネ級も確認されています。注意して作戦に当たってくださいそれでは今回の編成は・・・」

大淀が淡々と艦娘達に伝える。

「ワタシの腕の見せ所ネー!ケン!私の活躍見ててくだサーイ!」

金剛はそう言った。まだ今回の編成の事言って無いんだけど・・・すると

「ねえねえ提督?那珂ちゃん達の活躍見たくない?見たいでしょ〜?」

那珂ちゃんが聞いてくる

「あ、ああ。まあそのつもりだったんだけど・・・」

俺は編成を伝える

「今回は旗艦に愛宕さん、それから吹雪、春風、天津風、那珂・・・ちゃん、金剛の6人にお願いする。新しく入ってきた君達の実力を見せて欲しい。それじゃあ愛宕さん、吹雪、他の4人のフォローは任せるぞ」

俺はそう告げる

「はーい任せてください。それじゃあ皆、行くわよ〜」

愛宕さんはそう言って執務室を出て行った

「春風、司令官様のために全力で参ります。それでは行ってきますね」

「司令官!私・・・駆逐艦の子と一緒に出撃なんて始めてだから少し嬉しいです!皆の足を引っ張らない様に吹雪も頑張ります!行こっ!春風ちゃん!!」

吹雪は春風を連れて愛宕さんの後を付いていった。

「提督〜私にお仕事くれてありがとー!センターじゃないのはちょっと納得出来ないけど那珂ちゃんのことしっかり見ててね!キャハッ☆」

那珂ちゃんもそう言って出て行った。

そしてそこには天津風が1人ぽつんと立っている。

「どうした?まさか出撃もしたくないなんて言うんじゃないだろうな?」

俺は彼女を睨みつけた

「ふんっ!そんなんじゃないわよ!!あんたみたいなマヌケそうな顔した奴の采配がちょっと心配になっただけ!でも命令には従ってあげる。じゃあね」

天津風はそう悪態を突いた。

なんだよアイツ・・・・俺は憤りを感じる。

「本当に大丈夫なんですか?」

高雄さんは心配そうに俺に声をかけた。

「ええ。幸いネ級以外は駆逐艦らしいですし。那珂ちゃんや金剛達の立ち回りを見る良い機会ですよ」

俺はそう返事をした

「それじゃあ阿賀野は今からちょっと早いけどお昼飯食べてこよーっとまた何かあったら呼んでね提督さん」

阿賀野はそう言って執務室を後にした。ホントに飯の事しか考えてないなぁ

そして

「提督〜出撃準備完了しましたぁ〜」

愛宕さんから通信が入る。

「それじゃあ愛宕さん。出撃お願いします」

俺がそう言うと

「はぁ〜いそれじゃあみんな私について来てーヨーソロー。うふっ♪」

愛宕さんがそう言うと艦隊は深海棲艦の発見されたポイント方面へと舵を取った。

そして数分後

「提督!愛宕さんから入電!!敵艦隊発見したようです!そのまま交戦に突入した模様」

大淀が言った。何事も起こらないと良いんだけど・・・・

そして

「敵艦隊の損傷70%こちらは那珂が小破、天津風が中破、春風が大破しているようです!敵艦隊は撤退を始めているようですが追撃しますか?」

大淀が俺に聞いてくる。

「一応相手は撤退してるんだな?それに春風が大破・・・もう追撃せずに帰還する様に伝えてくれ。」

俺はそう大淀に伝えた。

「はい。それではそう愛宕さんに伝えますね」

大淀はそう言って愛宕さんに追撃せずとの通信を送った。しかし

「提督!天津風、命令を無視して単騎で追撃を開始しました!!」

大淀が俺にそう告げた

「なんだって!?アイツどこまで利かん坊なんだよッ!!」

俺は机を叩く

「ひとまず天津風を愛宕さんと金剛と吹雪に追いかけさせろ!那珂ちゃんはには春風を連れて先に退避させる様に伝えてくれ」

俺は大淀にそう伝えた

「はい。わかりました!」

いやな予感がする・・・何も起きなきゃいいけど・・・俺は心の中で祈った

それからまた時間は過ぎ・・・

「敵艦隊完全沈黙!しかし追撃の際天津風並びに吹雪が大破した模様!吹雪ちゃんは酷い損傷みたいです・・・!吹雪ちゃん!!」

大淀は叫んだ。

「吹雪が!?早く艦隊を帰還させてくれ!!天津風が抵抗するなら無理矢理にでも」

俺はそう命令を下す。

「私は医務室で待機してますね!」

高雄さんはそう言って医務室へ向かった。

そして俺は居ても立っても居られなくなり港へ駆け出した

それからしばらくして春風と那珂ちゃんが港へ到着する

「へへっ・・・私とした事がネ級に全く歯が立たなかったよー今日のステージはかっこ悪い所見せちゃったね・・・」

那珂ちゃんは言った。そして

「申し訳ありません司令官様・・・わたくし何もできなかった・・・ごめんない・・・・ごめんなさい・・・・」

春風は涙を浮かべていた。

「酷いダメージだ。でもなんとか無事なだけで俺はもう十分だから・・・早く入渠して来るんだ」

俺は春風にそう言った

「那珂ちゃん小破だし天津風ちゃんを先に入れてあげて!那珂ちゃんの入渠は皆が済んでからで大丈夫。それじゃあ那珂ちゃんは春風ちゃんを大浴場まで連れてくね。それじゃあ提督、また後で。春風ちゃん大丈夫?歩ける?」

「はい・・・すみません那珂ちゃんさん・・・・それでは司令官様失礼致します」

那珂ちゃんは春風を連れて大浴場へと去っていった。

ひとまず春風はなんとか大丈夫な様だ・・・しかし問題は吹雪と天津風だ

俺はそのまま残る4人の帰りを待った。そして

「提督、今帰還したわ」

愛宕さんの声が聞こえた

「愛宕さん!!吹雪は!?吹雪はどうなったんですか!?」

俺は愛宕さんに詰め寄った。すると

「提督ごめんネー。吹雪は天津風を庇って大破したデース。ワタシがもっと早く反応出来てたらこんな事にはならなかったネー・・・」

そう言って金剛はおぶっていた吹雪を地面に下ろした。吹雪はキズだらけになってぐったりとしている

「吹雪?!吹雪!!」

俺はそんな吹雪に声をかけるが返事は無い

「おい!吹雪!!目を開けてくれよ!!」

俺は吹雪を揺さぶる

「ダメよ提督キズが深いんだからそんな乱暴な事しちゃ!!大丈夫。気を失ってるだけだから。幸い命に悦状は無いわ。でも気を失っている状態で入渠させるのも危ないからまずは医務室に運んであげて!!」

愛宕さんはそう言った。

「それじゃあ金剛・・・吹雪を医務室まで連れていってやってくれるか・・・?」

俺は吹雪をこんな状態にする原因を作った天津風に対する怒りが込み上げた

「わかったデース!」

金剛は吹雪を抱き医務室へと走っていった。

そして

「天津風はどうしたんですか?」

俺は愛宕さんに聞く

「天津風ちゃんはそこよ。でも今はそっとしておいてあげて」

愛宕さんが指差す方向を見るとぼろぼろになった天津風が港の隅で座り込んでいた

俺は愛宕さんの言葉を無視し天津風の方に走った。

「天津風ェ!お前自分が何やったかわかってんのか!?」

俺はそう問いつめると

「私はただ艦娘としての職務を全うしただけよ。深海棲艦を一隻残らず消す。それが艦娘の仕事でしょ?」

天津風は言った。昨日からずっと我慢していたがもう我慢の限界だ。

「ふざけんな!お前の命令無視のせいで吹雪が・・・吹雪が沈む所だったんだぞ!!」

俺は天津風の胸ぐらを掴んだ

「ふんっ!吹雪吹雪って・・・相当吹雪って娘に肩入れしてるみたいじゃない。別に謹慎でも懲罰でも好きにすれば?」

天津風は俺を睨みつける。

ふざけんな・・・・

俺の頭の中で何かが切れた。

「もう我慢の限界だ。バカにするのもいい加減にしろよ!」

俺は拳を握り天津風に殴り掛かっていた。

しかしその拳は天津風に届く事はなかった。愛宕さんが俺の腕を掴んで制止したからだ。

それにしても凄い力だ。俺は愛宕さんの制止で冷静さを取り戻した。

「ちょっと提督、やり過ぎじゃないかしら?天津風ちゃんもそうとうなダメージを受けてるのよ?だからお説教はあ・と・で。ね?」

愛宕さんは俺に言った。

「ぐっ・・・離してください愛宕さん!コイツの事一発ぶん殴ってやらないと気が済まないんです!!」

俺は唇を噛み締めた。

すると

「ごめんね天津風ちゃん」

愛宕さんはそう言うや否や天津風の頬を平手打ちした

「なっ・・・」

俺は予想外の事に目を丸くする。

天津風は

「なっ・・・何すんのよ!!」

天津風は愛宕をさんを睨みつけた。

「天津風ちゃん・・・命令無視のお説教は後にするとしてこれは提督の代わり。提督は吹雪ちゃんの事をどれだけ心配してたと思ってるの?それなのにあの言い方はないんじゃないかしら?旗艦の私にだってあなたを指導する責任がある。このビンタはその分よ。提督、この場はこれであなたも頭を冷やして。ね?」

愛宕さんがそう言うと天津風は黙り込んで頬を摩り

「そっ・・・それじゃあ私は入渠してくるから」

足を引きずりながら逃げる様に大浴場に向かって歩いて行った。

「クソッなんなんだよアイツ・・・」

俺は天津風の背中を睨みつけ吐き捨てる

「ねぇ提督」

愛宕さんがこちらを見ている

「なんですか!?それより俺は吹雪の容態が気になるんで医務室へ・・・」

俺がその場を去ろうとすると

「それより前に天津風に手ェあげようとしたのは頂けないよなぁ?男としてどうなんだ?ええ?」

愛宕さんはドスの聞いた声で俺を睨みつける。

「そっ・・・それは・・・命令を無視した挙げ句あんな態度だったからつい・・・カッとなって・・・」

俺はそんな愛宕さんの気迫に押され身じろぎをした

「気にくわねぇなら殴って良いってか?お前さぁそんなんで提督務まると思ってんのか?ええ?」

愛宕さんはそう言って俺の胸ぐらを掴む

「だって・・・・それは天津風が・・・それに愛宕さんだってビンタしてたし何より愛宕さんも男じゃ・・・」

俺は半泣きになりつつ反論をした。

「ゴチャゴチャうるせぇよ!オメーは完全に冷静さを欠いてただ腹が立ったから殴ろうとしただけだろ?そんなのただの暴力じゃねぇかよ!吹雪の事に対して横柄な態度を取られた事について腹が立ったのはわかる。だからってそれを理由に話し合う前から暴力を振うなんてのは上に立つ人間として一番やっちゃいけねぇ事じゃねえかよ!!お前はここの提督なんだろ?艦娘達を指示し導くのが仕事なんだ。それを放棄して暴力で訴えかけるなんつーのは提督として一番やっちゃいけない事なんだよ!!わかってんのか?ああ!?」

愛宕さんは俺をそう怒鳴りつけた。

そうか。あの時俺は完全に頭に来ていたから気付かなかったけどあれはただ天津風の事が憎たらしくて殴ろうとしていただけだったんだ。あんな事をしていては何の解決にもならない。

「すっ、すみません・・・俺・・・」

俺はただそう言う事しかできなかった。

「それじゃあこれからどうすんだよ?言ってみろ」

愛宕さんは言う

「そっ・・・・それは・・・」

俺がしなければならない事・・・・それは・・・

「天津風ともう一度話をします。今度は冷静に・・・それに殴り掛かろうとした事も謝らなきゃ」

「おう・・・そうか・・・うん。合格♪」

それを聞いた愛宕さんの声色がいつもの優しい声色へと戻り、俺の胸ぐらを掴んでいた手を離した。俺は腰が抜けて地面にへたり込んでしまう。

「私の方からも天津風ちゃんを叱っておくから他の判断はそれからでも遅くないでしょ?ね?」

愛宕さんは笑った。

「は・・・はい・・・」

俺はそう頷く事しか出来なかった。

「それじゃあ吹雪ちゃんの所に行ってらっしゃい。私は入渠ドックが空くまでちょっと休憩してるわ」

愛宕さんはそう言ってその場を立ち去り何処かへ行ってしまった。

「そうだ!こんなところでへたり込んでる場合じゃねぇ!」

俺は腰を上げ吹雪の運ばれた医務室へと走った。

「吹雪!!高雄さん・・・吹雪はどうなったんですか!?」

俺は医務室に居た高雄さんに詰め寄る

「命に別状はないしケガも入渠すれば治るだろうけどまだ目は覚まさないわ。でも大丈夫。すぐに良くなるわ。目を覚ましたら入渠させてあげたいんだけど・・・」

高雄さんは言った

「吹雪・・・」

俺はキズだらけになった痛々しい吹雪の寝顔を見つめる

「俺・・・吹雪が目を覚ますまでここに居ても良いですか?俺・・・ずっと吹雪の側に居てやるって決めたんです。だから・・・」

俺は高雄さんに尋ねる

「ええ良いですけど・・・・丁度私は艤装の修理やらで今日は徹夜しなきゃダメそうですし居てくれるなら助かるわ」

高雄さんは言った。

「ありがとうございます高雄さん」

俺は頭を下げた

「それじゃあ私は工廠に行っていますね。濡れタオルが温かくなったら新しいのに替えてあげてください。何かあったら呼んでくださいね。それでは吹雪ちゃんの看病お願いします。提督失礼します」

高雄さんは医務室を後にした。

吹雪・・・・ごめん。俺浮かれすぎてたのかな・・・?

俺は目を覚まさない吹雪にそう語りかけていた。

 

 

その頃

高雄が工廠に向かうとそこには愛宕が居た。

「あら愛宕?艤装の修理手伝ってくれるの?珍しいじゃないいつもめんどくさいからって手伝ってくれないのに。明日は雨かしらね」

「ええ。高雄だけじゃ大変だと思って。それに・・・その・・・」

愛宕は目を泳がせる

「愛宕あなたもしかして吹雪ちゃんと天津風ちゃんの事責任感じてるの?」

「やっぱり高雄には隠し事は出来ないわね。吹雪ちゃんがああなったのは元はと言えば旗艦である私がちゃんとしてなかったせいで・・・」

「自分を責めないで愛宕・・・あなたはいっつも独りで抱え込んじゃうんだから・・・素直じゃないのはあの子もあなたもおんなじね。そういえば提督の目が赤かったけどもしかして愛宕が泣かせたの?」

「え、ええ・・・ちょっと言い過ぎちゃったかしらね・・・私にも責任があるのについ熱くなっちゃって・・・あの時天津風ちゃんを叱るのは提督じゃなくて私の役目だったのに・・・でも長門からあの子の事聞いてたからちゃんと叱る事もできずに結局提督が殴り掛かるのを止めさせる為に代わりにビンタする事くらいしか私にはできなくて・・・私がついていれば大丈夫だって思ってたからあんな事にはならないと思ってたんだけど・・・私もダメね・・・艦娘の立場って難しいわ」

「愛宕・・・」

「ごめんなさい高雄。どうしても提督を見てると昔の自分を見てるみたいでつい・・・」

「愛宕・・・いえあなたもそう思うのね。私も提督を見てると昔のあなたの事思い出すわ。ちょっとダメだけど芯がしっかりしててまっすぐな目をしてて・・・」

「も〜!ダメは余計でしょ!?」

愛宕は頬を膨らませる。

「あらごめんなさい。それじゃああなたもその事明日提督に謝らなきゃね。っとその前にこれ全部終わらせなきゃ!ちょっとそこのスパナ取ってくれる?」

高雄はそう言って道具箱を指差した。

「高雄も人使い荒いのは昔っから変わらないんだから!はいこれ」

高雄と愛宕はそのまま艤装の修理をしつつ過去の話に花を咲かせ夜は深けていった。


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