ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。   作:ゔぁいらす

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休日の乙(漢)女吹雪大淀編 後編:告白

 俺達は家へと足を進めていた。ん?何か忘れているような気がするぞ?

「あっ、そうだ。」

俺はそれが何かを思い出し声を上げる。

「どうしたのお兄ちゃん?」

吹雪が俺の顔を覗き込む。

「ああ。帰る前に晩飯の食材やらを買って帰ろうと思ってな。家には多分何もないだろうし」

「夕飯なら私が作るわ」

淀屋が俺に言った。淀屋が料理してる所なんて見た事無いし心配だなぁ・・・

「料理ってお前いつもコンビニ弁当とかしか食ってなかっただろ?まあ折角だし今日は俺が作るよ。」

「もう!私だって・・・ちょっとは勉強したんだから・・・」

淀屋は悔しそうにそう言った。

「まあ疲れてるだろうし任せとけって。久々にオムライス作ってやるからさ。」

俺自身もあまり料理は得意な方ではないのだが何故かオムライスだけはホテル級の物が作れるのだ。別に習った訳でも教わった訳でもないのに不思議だけどそんな事はどうでもいい。

「オムライスかぁ・・・・・謙よく私に食べさせてくれたよねオムライス。」

淀屋が懐かしそうに言う

「ああ。お前いつも身体に悪そうなもんばっかり食ってたからな。」

「私もお兄ちゃんのオムライス食べたい!」

吹雪も楽しみにしてくれている様だ。

「よっしゃ!それじゃあ今日は俺が腕によりをかけて作ってやるから楽しみにしててくれよ!」

俺は吹雪にそう言った。

そして家の近所のスーパーにたどり着き、そこで買物をしていると

「おお!謙じゃん久しぶり!」

と声をかけられる

「カイト!久しぶりだなぁ!!」

彼は大須海斗。小学生の頃からの友人だ。

「いやぁお前が提督になったって聞いてビックリしたよ。どうよ女ばっかりの職場・・・羨ましいよなぁ・・・・入った大学全然女の子いねぇんだもん。んでアレか?ゴールデンウイークだから帰ってきた感じ?」

カイトは羨ましそうに俺を見る。流石に鎮守府に居た艦娘が皆男だったなんて事言っても信じてもらえそうにないし適当に返事をしてよう。

「ああ。そうだけど」

俺がそんな返事をしていると

「謙!デミグラスソースってこれでよかったんだっけ?」

と淀屋がデミグラスソースを持って俺に近付いてきた。またこんなめんどくさい時に・・・

それを見たカイトは

「呼び捨て!?おいお前鎮守府勤務で彼女まで作っちゃうとかお前も隅に置けない奴だなぁ・・・で、付き合って何ヶ月なんだよ・・・水臭いなぁオイ・・・どこまで行ったんだよ?え?ちょっと教えろよ」

とオッサンの様なウザ絡みをしてきた。別に悪い奴ではないんだけどなぁ・・・

「いや・・・あのアレは彼女とかじゃなくて・・・」

流石にコイツ実は淀屋だって言う訳にもいかないし

「じゃあなんだよ!?もしかしてアレか?肉体だけの関係とか言うヤツ?」

俺が言い訳を考えている間にカイトは好き勝手な事を言ってくる。男子校と言うのは下ネタへの抵抗を著しく下げるその後遺症がまだ彼には残っていると見た。しかしなんと言った物かなぁ・・・そうだ

「そんなんじゃねえよ。アレだ。従姉妹だよ!ほらゴールデンウイークだろ?ちょっと泊まりに来てんの。なっ!淀子!!」

俺はそう言って淀屋にアイコンタクトする。

「えっ!?私?あっ・・・はい謙の従姉妹の淀子です・・・謙がお世話になってるみたいで・・・」

よかった。淀屋が話を合わせてくれた。そんな俺と淀屋を見た海斗は

「淀子さん・・・・素敵なお名前ですね。謙の友達の大須海斗って言います。よかったら僕とお茶でもしませんか?」

お前目の前で従姉妹って紹介したヤツをナンパする奴があるかよ・・・・ホントに節操無いなコイツ・・・

「いえ。私既に彼がいるので結構です。私まだ買物が残ってるので失礼します。謙、ごゆっくり。」

淀屋はゴミを見るような目でカイトを一蹴し、その場を去った。

「ああっ・・・俺撃沈・・・でもそのゴミを見るような視線も素敵だぁ・・・」

コイツ本当にバカだなぁ。コイツが高校時代の元クラスメイトだとも知らずに・・・俺も海斗を哀れみの目で見つめた。

「謙お前こんな綺麗な従姉妹まで居るとかうらやましいなチクショウ!!」

海斗は俺の方をバンバンと叩く

「ああもう分かったから。俺もまだ買物残ってんだよ」

といってその場を離れようとするが

「なんだよぉ俺とお前の仲じゃないかよぉ〜久々の再開なんだからよぉ〜」

と言って海斗は付いてくる。ああもう距離が近いなぁ・・・・

「ああもう距離が近いっての!気持ちわりぃ!離れろよぉ!!」

こんなバカな事高校時代は良くやったっけなぁ・・・・カイトの絡みは少しウザかったが同時に懐かしさも感じた。そんな時である

「お兄ちゃん!コレ買ってもいい?」

吹雪が食玩を持ってこっちに走ってきた。またタイミングの悪い・・・・

「おっ!?お兄ちゃん!?お前妹居たの!?畜生聞いてねぇぞ!」

また海斗が驚きの声を上げる

「ああ妹は妹でもさっきの淀子の妹だから・・・」

俺の口から流れるように出任せが出てくる

「そうかぁ・・・あんな可愛い姉妹の従姉妹が居るとかお前どうなってんだよぉ・・・まあでもこの娘くらいの年なら俺の範囲外かなぁ」

「うるせぇよ!人の従姉妹をそんな目で見てる事を平然と公言するんじゃねぇ!」

俺と海斗がそんな話をしていると

「お兄ちゃん?そっちの人は?」

と吹雪が不思議そうに聞いてくる

「ああ。昔からの腐れ縁だよ。」

「腐れ縁ってなんだよお前。あっこんにちは僕謙の小学校からの友達の海斗って言うんだけどお姉さんによろしく伝えといてね。」

コイツがあの淀子の正体が淀屋だって知ったらどうなることやら・・・逆に反応が見たくなってきたがまあそこは情けで黙っておいてやろう

「えっ?お姉さん・・・?ああ大y・・・」

吹雪は海斗に言われたお姉さんという言葉に反応し返事をしようとしたがここでその名前を出されるとめんどくさい事になる。よし。ここは吹雪の力をかりてこの場を切り抜けよう。

「ああそうだ俺もまだ買物あるから。じゃあ行こうか吹雪!おやつもっと買ってやるから見に行こうぜ!じゃあなカイトまたそのうち」

俺はそう言って強引に吹雪を連れその場を立ち去った。はぁ〜なんとかなったか・・・

それにしても久しぶりだからか無駄に疲れた・・・アイツ本当に高校の時から全然変わってないしのんきで良いよなぁ・・・

「あの・・・海斗さんとはもうお話しなくてもいいの?」

吹雪は聞いてくる

「ああ。別に積もる話も無いしな。じゃあ淀屋と合流しようか。」

「うん。」

俺はそう言って吹雪と一緒に淀屋を探した

そんな時である

「友達って羨ましいなぁ・・・・」

吹雪がぽつりと呟く

「吹雪お前・・・」

言われてみれば鎮守府には年上の艦娘しかおらず吹雪に友達と呼べる知り合いは居ないのかも知れない。

「でっ、でもお兄ちゃんやお姉ちゃんそれにほかの皆が居てくれるから寂しくないよ!」

吹雪は俺に心配をかけまいとしたのかそう明るく振る舞った。

「そ・・・そうか」

そう言えば今度補充要因が来るって言ってたな。吹雪と友達になってくれるような奴が来てくれると良いんだけど

俺はそんな事を思いながら淀屋を探した。そして肉売り場で淀屋を見つける。

「淀屋!探したぜ」

俺が淀屋に声をかける

「謙、大須くんとお楽しみだったみたいだけど?」

淀屋は笑顔でそう言ったが顔は笑っていない

「お楽しみってお前・・・しょうがねぇだろ彼女って言う訳にもいかないし従姉妹って言うくらいしか無かったんだよ」

「それくらい分かってる。でも淀子は流石に無いわ・・・・」

淀屋はそう言って鼻で笑った

「仕方ねぇだろとっさに考えたんだから!」

「そう。でも私は別に・・・・」

淀屋は何かをブツブツと言っていたが聞き取れなかったので

「えっ?今なんて言ったんだ?」

と聞き返すと

「えっ!?別になんでもない!そんな事より早く買物済ませて帰りましょ。私も早く謙のオムライス食べたいし」

そう言って淀屋はそそくさと俺を連れてレジへ向かった。

そして会計が済み俺達は再び家路に付く。その時の事だった。

「お兄ちゃんとお姉ちゃんってお友達だったんだよね?」

と吹雪が言い出す

「ああ。そうだけど?」

俺はもちろんそう返すが淀屋の様子が何やらおかしい

「吹雪ちゃん。確かにそうだったけど今は友達じゃなくてあくまで艦娘と提督なのよ・・・」

とどこか寂しげに言う

「そんな事言うなよ!俺はどうなってもお前の事を親友だって言ってるだろ?そんな寂しい事言わないでくれよ」

俺は淀屋にそう言った

「ごめんなさい・・・・私・・・もうこんなのになっちゃったから以前の様な友達では居られないの・・・私だって昔みたいに謙とずっとバカ騒ぎしてたかった・・・・でももう私は艦娘なのよ・・・」

淀屋の表情はどんどんと暗くなっていく。そんな時吹雪が淀屋の片手を握り

「それじゃあお兄ちゃんとお姉ちゃんはもう家族みたいな物だね!」

と言った。

「かっ・・・・家族!?」

俺と淀屋は驚きの声を上げる

「そうでしょ?あの鎮守府の皆は家族みたいな物じゃない!だからお兄ちゃんもお姉ちゃんも私も他の皆も家族でしょ!」

そう言って吹雪は俺と淀屋の間に入った。

家族かぁ・・・・吹雪が鎮守府をそう思ってくれていたのならそれはそれで良いのかもしれない。でも淀屋は何でさっきあんな事を言ったんだろう・・・・俺の心の中に疑念が残る中吹雪は俺の右手と淀屋の左手を握った。

「私こうやって歩くのが夢だったんだ。家族ってこうやって手をつないで歩くんでしょ?」

吹雪は嬉しそうに言った

「吹雪ちゃん・・・うん。そうね」

淀屋の表情が少しさっきよりもマシになる

「なんか恥ずかしいな」

俺は少し顔が赤くなった。

「あっ、そうだ!」

俺はふと有る事を思い出す。

「何?謙」

淀屋はそう聞く

「オムライスだけじゃ物足りないだろ?肉屋でコロッケ買って帰ろうぜ!よく学校帰りに買って食ってたヤツ!」

俺はそう提案した。

「コロッケかぁ・・・あのお店のコロッケずっと食べてないし私も食べたい」

淀屋は言った

「私も食べてみたいな!!」

吹雪もそう言った

「よしじゃぁ決まりだな!ちょっと遠回りになるけど行くか」

俺達は肉屋のある商店街の方へ向かった。

そしてその肉屋に到着する。

「ここだぜ吹雪」

夕暮れ時いつもここに来ると香ばしい揚げ物の香りがしていて今も変わらず食欲がそそられる。

「うわぁ〜良い匂い!」

吹雪はそんな香りに誘われてかよだれを垂らしている。

「よし。じゃあコロッケ買ってくるわ。おばちゃん!コロッケ3っつね」

俺は店員のおばちゃんに声をかけた

「あら謙くんじゃない!最近見ないから心配してたのよ?」

「ちょっと色々あって今は家から離れて仕事してるんすよ。そんで休暇貰えたから帰って来たんで折角だしここのコロッケ食べたいなって思って」

「あら〜大変なのねぇ〜ところでえーっと淀屋くん・・・だっけ?」

おばちゃんがそう言ったとき淀屋はびくりと身を振るわせた。

もしかしておばちゃん淀屋の事わかってるのか!?

「よ・・・淀屋がどうかしたんですか?」

俺は恐る恐る聞いた

「あの子も最近見て無いなって思って。元気にしてるの?いかにも不健康そうな子だったから心配で・・・」

なんだぁ・・・単にどうしてるか聞きたかっただけかぁ。

俺と後ろに居た淀屋はそっと胸をなでおろした。

「あ、ああアイツもこの町を離れたみたいなんですけど一応元気でやってるみたいっすよ」

流石に今艦娘やってて今後ろに居るメガネ美少女が淀屋ですとは言えず俺はそう苦し紛れに返した。

「そうだ謙くん!後ろの娘・・・もしかして彼女?謙くんも隅に置けないわねぇ〜」

おばちゃんはそう俺に耳打ちした。今日この話題を振られるのは2度目だ。

そんなに俺と淀屋が一緒に居るとカップルに見えるのかな・・・

「いや・・・そんなんじゃなくて従姉妹っすよ」

俺はそうさっきと同じ返答をする。

「謙くん従姉妹いたのね〜ちょっと謙くんの従姉妹さん!?謙くんいい子だから女の子いたら紹介してあげてね?謙くんずっと彼女ほしい彼女欲しいって言ってたんだから!」

おばちゃんは後ろに居た淀屋に話しかけた。ちょっとそんな恥ずかしい事こんな所で言わないでくれよおばちゃん・・・いやまあこの店に通ってた時一緒にその話をずっと聞いてた淀屋だから問題無いっちゃないんだけど・・・

「えっ!?あっ・・・はい」

淀屋は少し複雑そうにそう返事をする。

「あなた美人だからコロッケ1個オマケしてあげる!そこのお嬢ちゃんも可愛いしもう1個入れたげようかな〜?」

おばちゃんはそう言って袋に余分に2つコロッケを入れてくれた

「すみません・・・」

淀屋は頭を下げる。

「ありがとうおばちゃん」

「それじゃあコロッケ3っつで180円ね!」

「はい。それじゃあ180円丁度で」

「はい毎度ありがとね。それじゃあがんばんなさいよ謙くん!それじゃあまた来てね」

おばちゃんはそう言ってコロッケの入った袋を手渡し俺達の事を見送ってくれた。

 

そしてようやく俺達は家に到着した。

「いやぁ2ヶ月とちょっとぶりかなぁ」

俺はそんな事をぼやきながら家のカギを開ける。

「じゃあ入ってくれ。特に何も無いけどくつろいでくれよな」

俺はそう言って2人を部屋に通した

「おじゃましまーす!うわぁ〜ここがお兄ちゃんの住んでた家かぁ・・・」

吹雪はそう言って家に上がり目を輝かせて辺りを見回している

「淀屋も入ってくれよ。」

俺は何やら戸惑っている淀屋を呼ぶ

「ええ。そうね。まだ1年も経ってないのにここに来るのはとても久しぶりに感じるわ。お邪魔します。」

淀屋もそう呟き家に上がった。

そして俺は2人を和室に通した。

「淀屋、ここで良くゲームやったよなぁ・・・・」

「ええそうね。」

俺と淀屋はしばし思い出話に花を咲かせた。そして少し経った頃

「じゃあそろそろ飯の準備するか。それじゃあ吹雪は先に風呂入るか?」

俺は吹雪にそう言った

「うん!わかった!」

吹雪は頷いた

「それじゃあ今から入れるからちょっと待っててくれよ」

俺は風呂を沸かし始めた。

それからしばらくして風呂が焚けたので吹雪を風呂に案内した。

「何かあったら呼んでくれ。それじゃあ飯の準備してるから」

吹雪にそう言い残し俺は台所で準備を始めた。

「私に何か手伝える事あったら言ってね」

と淀屋が言うので

「それじゃあ食器出しといてくれるか?」

と頼むと戸棚から丁度良い皿を3枚用意してくれた。

正に勝手知ったる他人の家って感じだな

「ありがとう淀屋。それじゃあ後は任せてくれ」

俺は淀屋に礼を言い料理に取りかかった。

なんというか頭で考えると言うより身体が覚えてるって言った方がいいのか俺は着々とオムライスを作った

「よし!後は卵をかけるだけだな」

そんなとき吹雪が風呂から戻ってきたので

「良し!吹雪ナイスタイミングだ。丁度今から出来上がる所だぞもうテーブル座っててくれ。淀屋ーもう出来そうだからお前もこっち来いよ!」

俺は吹雪と淀屋を食卓に座らせた

「お兄ちゃんの料理楽しみだなぁ」

吹雪は目を輝かせて俺を見つめるので俺はすこし恰好を付けて卵をライスの上に乗せ上からソースをかける

「よし完成!我ながら素晴らしい出来栄えだ」

俺は作ったオムライスを食卓へ運んだ

「お待たせ」

「うわぁ〜おいしそう!ただきます!」

吹雪はオムライスを見るなり食べ始めた

「いつ見ても謙のオムライスはおいしそうねそれじゃあ私も頂きます」

淀屋もそう言って食べ始める

2人が食べ始めたのを見計らい俺もオムライスを口に運んだ。我ながら美味い。自分が作った物じゃないってレベルだ。そんな事を考えていると

「お兄ちゃんコレ本当に美味しいよ!こんな美味しいオムライス食べた事無い!」

吹雪はとても嬉しそうだ

「当たり前じゃない!謙のオムライスはどこのオムライスよりも美味しいんだから!!本当に一流のホテルとかで出しても良いくらい!」

淀屋も得意気にそう言った。

高校時代も本当にいつも俺の出したオムライスをうまそうに淀屋は食べてくれていたし、食べる度にそうやっていつも俺を褒めてくれた。

「だからホテルじゃねぇっての!!そんなすごいもんじゃねぇって」

俺は淀屋の褒め言葉にいつも返していた様に謙遜をした。

 

それからオムライスを食べ終わってしばらくすると

「ご飯食べたら眠くなってきちゃった・・・」

吹雪は目を擦っている。

「そうか。今日は移動で疲れたもんな。寝間はそこに空いてる部屋があるからそこ使ってくれ。今から布団出してやるから」

俺はそう言って吹雪が寝られるように布団を敷いてやった。

「まだ俺達は起きてるから何かあったら言いにきてくれ。じゃあお休み」

「うん。お兄ちゃん、お姉ちゃんお休み・・・」

吹雪は布団に入った

そして食卓には俺と淀屋の2人っきりになり

「吹雪も寝ちゃったし冷めないうちに淀屋お前先に風呂入ってくれよ」

「私最後で良いから謙が先に入ってよ」

「それじゃあお言葉に甘えて」

俺は淀屋に言われるがまま風呂に入った

「いやぁ・・狭いけどやっぱり家の風呂が一番だなぁ」

俺はそんな事を言いながら湯船に使っていた。

それからしばらくすると何やら風呂の扉の向こうに人の気配がする。

「淀・・・屋?」

なんでアイツ風呂に来てんだよ?

まだ俺上がってないけど・・・・そんな事を思っていると戸が開かれ一糸まとわぬ淀屋が風呂に入ってくる

「お・・・お邪魔します・・・」

「およよよ淀屋ぁ!?何で入って来るんだよ!!すぐ上がるからもうちょい待ってろよ!!」

俺は手で目を覆う

「謙・・・・恥ずかしいけど私の身体・・・見て・・・・」

淀屋は恥ずかしそうに言った。

「バカそんなの見れる訳・・・」

あれ?なんで俺淀屋の裸見れないんだろう?別に見れない理由なんて無い筈なのに

「やっぱり見れないよね・・・ここはぜんぜん変わらないけどほら・・・おっぱいだって阿賀野達ほどじゃないけどちょっとづつ膨らんできてるしお尻も・・・・こんな女なのか男なのか分からない身体・・・少し前まで本当は謙には見られるのは怖かったの・・・でも・・・でもね・・・・」

淀屋の口がそこで止まる。そして俺は目を覆っているので見えなかったが淀屋が湯船に入ってくるのが分かった

「おいお前・・・何してんだよ・・・・!」

俺は訳が分からなくなり手を顔から離す。するとそこには淀屋が居る

「謙・・・・やっと見てくれた。こんな身体になっても・・・もう昔の面影なって全然無くなった私の事親友だって言ってくれる?大須くんも・・・肉屋のおばさんも私に気付いてくれなかった。もう私が本当に淀屋大なのかどうか自分自身でもわからなくて・・・・」

淀屋は聞いてくる。そんなの当たり前だ。それに淀屋はどうなったって淀屋だ。俺はずっとそうだと思っていた。しかし今目の前に居る彼にそう二つ返事では答えられなかった。目の前に居るのは淀屋ではなく大淀という艦娘にしか見えないからだ。いや違う。見た目が変わろうが口調が変わってしまおうがコイツはどうなったって淀屋なんだ。俺がそう思ってやらないでどうするんだ!?俺は心の中で自問自答を繰り返す。しかしなんと言えば良いのか言葉が見つからず

「そっ・・・それは・・・・」

と俺が返答に困っていると

「私ね・・・謙が大須くんと仲良くしてる所を見て羨ましいって思ったの。私も謙の一人の友達として高校を出た後もバカな事をやっていたいって・・・・私だって謙の事大切な親友だって思っていたいし親友の淀屋大で居たいの。居たかったの・・・・でも・・・でもね・・・・艦娘になってからどんどんその時の感情が薄れていって他の感情に変わっていって・・・」

淀屋はそう言ってまた言葉に詰まる

「おっおいそれって・・・・つまり・・・」

ダメだ!それ以上は言わないでくれ!!

「謙!私・・・・大淀としてあなたの事が・・・・」

そんな事を言われたら俺はどうしてやれば良いのか・・・・

「あなたの事が好きなの!!」

淀屋は俺を見つめてそう言った後涙を流し始めた。

淀屋が俺の事を・・・・・でもコイツは男で・・・・

「ごめんなさい・・・・ずっと言いたかった。でも言ってしまったら謙とはもう元の関係に戻れなくなるとずっと思ってた。でも今日大須くんと謙を見てて思ったの。もう既にあの頃の自分には戻れないんだって・・・・だから・・・ごめん。こんな強引なやり方しか私思いつかなくって・・・・ごめんね謙。こんな訳分からない事言ったら軽蔑されてもしょうがないよね・・・」

淀屋はそう言って黙り込んでしまう。

俺は一体なんて声をかけてやれば良いんだ?俺は精一杯悩んだ。そして頭に浮かんだ一つの行動を実行する。

俺は淀屋を抱きしめた。抱きしめると肌の感触、そして手に触れる長い髪。そして柔らかな身体の感触が伝わってくる。昔よくふざけて抱き合ったりはしたがその時の感触とは全く違う。その感触を肌で感じて更に淀屋が以前の淀屋から変わってってしまったんだと感じてしまう。

「ちょっ!!け・・・謙!?」

淀屋は驚く

「ごめん。俺バカだから何て言ってやれば良いのか分からないんだ。それに俺はお前が今の姿でも親友だって思っていたい。でもお前の言う通りお前の身体を見て胸を張ってそう言えるか自分で考えたけどダメだった。だから今はこうする事しか出来ない。ごめんな淀屋。お前もずっと悩んでたんだろうけど少し時間をくれ・・・今の俺にはお前の好意を受け止めてやれる自信が無いんだ。まだお前の事を親友だって思っていたい。だってそうしないと誰が淀屋の事を覚えててやれるんだよ。俺は今のお前の事ももちろん淀屋としても大淀としても大切に思ってる。でも以前の淀屋との思い出だって大切な思い出なんだよ・・・お前は俺の中では親友なんだよ。それを今更になって否定する事なんか出来ない。でも今のお前を親友だと断言する勇気もない。だからもう少し時間をくれ。でもお前の事は絶対に嫌いにはならない。それだけは覚えといて欲しいんだ。こんな曖昧な返事しか出来なくてごめん・・・・」

俺も思いのたけを淀屋にぶつけた。

「謙・・・そうだよね・・・急にそんな事言われても困るよね・・・・ごめん。でも私の事ちゃんと想ってくれてるのはしっかり伝わったよ。だから少しだけ待ってあげる。でも今度はしっかりと謙の口からちゃんとした気持ちを伝えて欲しいかな」

淀屋は泣きそうな顔で無理矢理笑ってそう言った。

俺は確かに淀屋を大切な人だと思っている。しかしそれは親友としてであって今の淀屋の想いに答えるとするならば今までの親友としての淀屋を否定してしまう事になる。それに何より彼は男なのだ。これだけは変わらない。でも淀屋の想いを無碍にする訳にも行かないし俺は一体どうすれば良いんだ・・・

俺と淀屋を静寂が包み少ししてから

「ごめんね。謙。お風呂の邪魔しちゃって。じゃあ私また上がるからゆっくりお風呂入って。」

淀屋は風呂を上がろうとする

「ああ俺ももう上がろうと思ってたからそのまま風呂入っててくれよ。うわあぁ!!」

俺がそれを止めて風呂を出ようとした時盛大にすっ転んでしまう。誰だよこんな所に石けんおいた奴・・・・

「いてててて・・・」

俺は何かの上に倒れ込んでいる。そして右手には柔らかな感触が・・・・ああこれはいつものアレか・・・・俺が手元にふと目をやると予想通り淀屋の胸を掴んでいた。もうCカップくらいはあるのかなぁ・・・・いやいやそんな事考えてる場合じゃないこりゃまた殴られる奴だ・・・俺がそう思っていると

「謙・・・・強引なんだから♡でも謙とならいい・・・よ?」

あれ?いつもな全力の右ストレートが俺の顔面を襲う筈なのに・・・・

しかし俺の目に映った淀屋は完全に恋する少女の顔をしていた。

「こっ・・・これは事故で・・・・・ごっごめんなさあああああああああい!!!!」

俺はそう言って風呂場を凄まじい勢いで抜け出した。

 

次の日淀屋にこの事を土下座して謝ると冷静に考え直してとても恥ずかしかったのか顔を真っ赤にした淀屋に俺は結局殴られた。

そしてそんなこんなで俺達三人は地元で短い休暇を過ごし、俺達は鎮守府へ戻ってきた。

しかしこれから俺は淀屋もとい大淀と今まで通りにやっていく事が出来るのだろうか・・・・?そんな一抹の不安が俺の心の隅で燻っていた。




次話は愛宕高雄編なのですがR-18なのでこちらの方に載せます。どうかこちらもご覧頂けると嬉しいですhttps://novel.syosetu.org/119455/2.html

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